新型コロナウイルスの影響によって、働く場所を失ったり家賃が払えなくなったりと、仕事や生活に大きな影響が出ている人は少なくない。そんななか、女性蔑視問題も浮き彫りになっている。
中高生を中心とする10代の女性を支援する「一般社団法人Colabo」の活動現場では、国会議員によるセクハラ行為が発生。また、経済的に困窮した女性が風俗業界に入ることを期待すると発言したお笑い芸人が謝罪する出来事もあった。女性蔑視問題について、私たちが考えるべきことやできることはなんなのだろうか。
5月7日(木)にオンエアされた『JAM THE WORLD』の「UP CLOSE」では、ジャーナリストで元衆議院議員の井戸まさえをゲストに迎え、コロナ禍における女性蔑視の現実と解決策について掘り下げた。話を訊いたのは、木曜日のニューススーパーバイザー・堀 潤。
■視察で起きた議員によるセクハラ
井戸は最初に、「一般社団法人Colabo」(以下、Colabo)を巡るセクハラ行為について説明した。Colaboは、社会活動家の仁藤夢乃が代表を務める。4月下旬に起きた今回の問題は、仁藤がSNSを通じて状況を懸命に発信し続けたことで世間一般にも広く知れ渡ることになった。
井戸:外出自粛要請が続く中で、育児放棄や性暴力を受けていた少女たちが家を出て外でさまようことが問題視されました。そこでColaboはマスクや食べ物などを無料提供するカフェスタイルのバス「バスカフェ」を公園などで展開し、少女が性的搾取に遭わないための活動を続けてきました。そのバスカフェに、自民党の「ハウジングファースト勉強会」の馳 浩(はせ・ひろし)衆議院議員一行が視察に来たのですが、Colaboが制限していた人数よりも多い、5名以上が背広姿でやってきた。身バレ(身元が明らかになること)を恐れる虐待や性暴力被害者が多いなか、写真を無断撮影して自身のSNSで「ボランティアしてきました」というアピールに使われた。さらに、10代のメンバーである女性に対して馳議員がうしろを通る際に彼女の腰を触ってセクハラ行為をしたのではないかということで、仁藤さんが抗議文と要望書を出しました。
堀:Colaboは女性たちが主体的に動いて運営しているのに、議員たちが「僕が助けてあげるよ」といったステレオタイプな女性に対する目線を投げかけていた。そうしたことにも、仁藤さんは不信感やショックを感じられていたそうですね。
その後、馳議員は自身のホームページ上に謝罪文を掲載したが、実際には仁藤さん側に謝罪をしたわけではなかった。この対応についても仁藤は「誠意が感じられない」と憤りを発信している。
井戸:仁藤さんが勇気を持って指摘をしたのに、その返答はそもそも問題の本質をわかっていない言い訳のような説明でした。仁藤さんたちに対してではなく、世間で騒ぎになったことを収めるための発信。本心からの謝罪ではないことは周りから見ていても明らかでした。
井戸は今回の件について、「議員の政治アピールのために使ったこと」の問題点を指摘する。
井戸:今までの男性社会では、女性が「不快だ」「これは違う」と声をあげても「声をあげるほうがおかしい」「こっちは善意でやっているのに誤解だ」と言われてきました。今回の馳さんの謝罪文にもそれが透けて見えます。「誤解するほうが悪い」とすることで、問題をなかったことにする。それがフラワーデモ(性暴力根絶を目指すデモ)やMeToo運動の広がりによって環境が変わりつつあります。「自分たちの振る舞いが誰かを不快にしたり危険にさらしたりするのではないか」とその都度考えることが大事だと思います。
堀:「興味があって見に来た」と「問題解決のために自分ができることを知るために来た」というのは違いますよね。
井戸:私も他の虐待に取り組む団体へボランティアに行くときなどには、絶対にその団体や名前、場所を絶対に外に言いません。虐待やDV加害者が目ざとく相手を見つけてそこでまた攻撃することも深刻化しています。今回の議員の方々の目的はこの問題を解決することではなく、有権者の票。視察に行って問題に取り組んでいるかのような自分を有権者に見せることを目的としていることに、一番の問題があると思います。
堀:仁藤さんが不信感を持たれた要因も「あなたたちはなんのために来たんですか?」ということに尽きるのかもしれないですね。
■性犯罪や性搾取は社会問題と地続き
時を同じくして4月下旬、ナインティナインの岡村隆史が、自身がパーソナリティを務めるラジオ番組で「コロナ禍で風俗に行けない」というリスナーの相談に答える形で「コロナが終息したらおもしろいことがある。お金がなくなった美人が風俗嬢をやるから、それまで待とう」という趣旨の発言をした。この発言がネットニュースになるや否や、番組側や本人が謝罪するまでに至った。この件に対して井戸は「許せない」と怒りを口にした。
井戸:こういった会話がこれまでもずっとあって、それが許される環境にあったんでしょうね。「風俗に通うことが女性の生活援助だ」と堂々と言っている。どこかに「男性が貧しい女性を救ってあげる」というヒーロー気取りをしている一面があるので、これはすごく深刻な話だと思いますね。
この発言に対しては、さまざまな人が持論を展開する事態となった。一方で、発言の“当事者”であるコロナ禍で困窮している女性や現役で風俗産業に従事している女性たち以外の人たちが、外から見た上で白熱した議論を交わすといった状況にもなっている。
堀:Colaboの件では10代の少女たちの思いが置き去りに、岡村さんの件では(実際に風俗で)働いている方々の状況や問題が置き去りにされていますよね。
井戸:岡村さんは、女性たちがどんな形で風俗に追いやられているかについては興味や関心はないんですよ。やっぱり「自分が行くことで彼女たちを助けている」「いいことをしている」という行動の正当化。うしろにある背景まで理解して問題を考えてはいないことが問題だと思いますね。これはやっぱり女性蔑視。尊厳がないモノ扱いですよね。そこにある女性たちの気持ちや主張が関係なく、人としての一対一の対話がないことは蔑視だと思います。
井戸は、「性搾取や性犯罪の裏にあるのは、貧困や育児放棄など社会問題と地続き。社会のルールを決める上で女性の声を反映してこなかった結果が今の状況」と指摘。そして、男性による無意識の女性蔑視や加害性について「ハッキリ指摘しても本人は何も感じていない部分がある。こうした問題に不感になってはならず、知識不足があれば情報共有を男女ともにしていく必要がある」と語った。
■DVや虐待被害者への給付要件が広がった
井戸は議員になる前から、無戸籍の方々やDV被害に遭った女性たちへの支援活動を続けてきた。今回のコロナ禍では無戸籍に関する相談窓口も開設しており、1人10万円の特別定額給付金についての相談も多く寄せられている。当初、無戸籍の方々は給付対象外だったからだ。
井戸:原則として給付対象が住民票を持つ人でしたが、無戸籍の方々は住民票がありません。法務省は無戸籍の方々の存在を把握しているにもかかわらず、給付されない予定でした。しかし、声をあげたことで無戸籍の方々も住民票がなくてももらえるようになりました。
堀:みなさんが一生懸命、現場から声をあげましたもんね。
井戸:議員の方々も動いてくださいました。DV被害者についても、当初は市町村や相談支援センターが発行した証明書が必要でしたが、発行元に支援団体も含まれるようになりましたし、(DVから避難した先の)今の自治体に住民票を移せばもらえることになった。無戸籍の方々のために住民票がなくても給付金をもらえるように動いたことで、DVや虐待被害者などの給付要件も広がっていったのはとてもおもしろいなと思っていましたね。
一律給付金については、個人ではなく「世帯主にまとめて振り込まれる」と規定されたことにも多くの批判が集まっている。
井戸:無戸籍とDVは表裏一体です。たとえば、別居して夫から逃げてきた人が違う場所で10万円給付のために住民票を移したとすると、夫に住民票を移したことがバレてしまう。「どこかに行ったから追いかけてやる」と、これまで収まっていた感情や暴力がまた起きてしまう懸念はありますよね。被害者の方々もそれをとても恐れています。
堀:そもそもこの給付金はなぜ個人単位ではないのかという根幹の問題がありますよね。
井戸:政府は「時間がかかるから世帯主にまとめて振り込む」と言っていたんですが、個人単位ではないといろいろな問題が起きてしまいます。戦後に家制度はなくなったと言われていますが、戸籍の編成は今でも「夫婦と未婚の子」という婚姻家族が基本。福祉も世帯を中心に考えられている。世帯以外の個人でやっていくという考えがそもそもないんです。
■相談することが社会を変えていく強い力になる
今回のコロナ禍は、マイナンバーカードの手続きの煩雑さや在宅勤務の妨げになっているハンコ文化など、さまざまな問題を浮き彫りにしている。奇しくもコロナが、古くからの制度や構造的な問題を改善させるきっかけになっている側面もある。
井戸:これまでも世帯主の問題について言い続けてきても反応がなかったのに、今回は当たり前のように批判が聞かれるようになりました。ただ、憲法は変わっても民法は何も変わっていません。家制度の名残が形を変えているだけで今でも世帯で縛り、家プレッシャーをかけている。今回はそれが露になり「やっぱりこれはおかしい」と感じて制度自体を変えていかないと、次もまた同じことが起こると思います。
堀:総理の会見では「家族」という言葉を多用されていた印象です。でも国民を守る上では個人がきちんと活躍できる社会を作るようにバージョンアップしてほしい。
井戸:本当にそうですね。日本社会がこのままの形なら、非常に非効率なままでフリーズしてしまう。国民も声をあげて変えていかないと、今後コロナとは違うことが起きたときに、さらに大変なことが起こる。国民登録制度や戸籍、マイナンバーなどが活用できていない現状を、この機会に変えていかなければいけないと思います。
最後に井戸は、いま不安に感じている人へメッセージを送った。
井戸:相談に来る人たちは「明日どうやって生きていこうか」という深刻な状態にある方も非常に多いです。でも、一人ではありません。声をあげて相談してくれたことで、私たちも検証できるので、次の社会を変える強い力になっていきます。相談者の方々は自己評価が低い傾向にあるんですが、そうではありません。本当は社会の力なんです。いま大変な思いをしている方々が社会を変えていく力なんだ、他の人を救っていく力なんだ、ということを伝えたいです。
堀:不安を口にしてくれた方に対しては「教えてくれてありがとうございます」と言いたいですね。
J-WAVE『JAM THE WORLD』のコーナー「UP CLOSE」では、社会の問題に切り込む。放送時間は月曜~木曜の20時20分頃から。お聴き逃しなく。
【この記事の放送回をradikoで聴く】(2020年5月14日28時59分まで)
PC・スマホアプリ「radiko.jpプレミアム」(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は「radiko.jpタイムフリー」機能で聴き直せます。
【番組情報】
番組名:『JAM THE WORLD』
放送日時:月・火・水・木曜 19時-21時
オフィシャルサイト: https://www.j-wave.co.jp/original/jamtheworld/
中高生を中心とする10代の女性を支援する「一般社団法人Colabo」の活動現場では、国会議員によるセクハラ行為が発生。また、経済的に困窮した女性が風俗業界に入ることを期待すると発言したお笑い芸人が謝罪する出来事もあった。女性蔑視問題について、私たちが考えるべきことやできることはなんなのだろうか。
5月7日(木)にオンエアされた『JAM THE WORLD』の「UP CLOSE」では、ジャーナリストで元衆議院議員の井戸まさえをゲストに迎え、コロナ禍における女性蔑視の現実と解決策について掘り下げた。話を訊いたのは、木曜日のニューススーパーバイザー・堀 潤。
■視察で起きた議員によるセクハラ
井戸は最初に、「一般社団法人Colabo」(以下、Colabo)を巡るセクハラ行為について説明した。Colaboは、社会活動家の仁藤夢乃が代表を務める。4月下旬に起きた今回の問題は、仁藤がSNSを通じて状況を懸命に発信し続けたことで世間一般にも広く知れ渡ることになった。
井戸:外出自粛要請が続く中で、育児放棄や性暴力を受けていた少女たちが家を出て外でさまようことが問題視されました。そこでColaboはマスクや食べ物などを無料提供するカフェスタイルのバス「バスカフェ」を公園などで展開し、少女が性的搾取に遭わないための活動を続けてきました。そのバスカフェに、自民党の「ハウジングファースト勉強会」の馳 浩(はせ・ひろし)衆議院議員一行が視察に来たのですが、Colaboが制限していた人数よりも多い、5名以上が背広姿でやってきた。身バレ(身元が明らかになること)を恐れる虐待や性暴力被害者が多いなか、写真を無断撮影して自身のSNSで「ボランティアしてきました」というアピールに使われた。さらに、10代のメンバーである女性に対して馳議員がうしろを通る際に彼女の腰を触ってセクハラ行為をしたのではないかということで、仁藤さんが抗議文と要望書を出しました。
堀:Colaboは女性たちが主体的に動いて運営しているのに、議員たちが「僕が助けてあげるよ」といったステレオタイプな女性に対する目線を投げかけていた。そうしたことにも、仁藤さんは不信感やショックを感じられていたそうですね。
その後、馳議員は自身のホームページ上に謝罪文を掲載したが、実際には仁藤さん側に謝罪をしたわけではなかった。この対応についても仁藤は「誠意が感じられない」と憤りを発信している。
井戸:仁藤さんが勇気を持って指摘をしたのに、その返答はそもそも問題の本質をわかっていない言い訳のような説明でした。仁藤さんたちに対してではなく、世間で騒ぎになったことを収めるための発信。本心からの謝罪ではないことは周りから見ていても明らかでした。
井戸は今回の件について、「議員の政治アピールのために使ったこと」の問題点を指摘する。
井戸:今までの男性社会では、女性が「不快だ」「これは違う」と声をあげても「声をあげるほうがおかしい」「こっちは善意でやっているのに誤解だ」と言われてきました。今回の馳さんの謝罪文にもそれが透けて見えます。「誤解するほうが悪い」とすることで、問題をなかったことにする。それがフラワーデモ(性暴力根絶を目指すデモ)やMeToo運動の広がりによって環境が変わりつつあります。「自分たちの振る舞いが誰かを不快にしたり危険にさらしたりするのではないか」とその都度考えることが大事だと思います。
堀:「興味があって見に来た」と「問題解決のために自分ができることを知るために来た」というのは違いますよね。
井戸:私も他の虐待に取り組む団体へボランティアに行くときなどには、絶対にその団体や名前、場所を絶対に外に言いません。虐待やDV加害者が目ざとく相手を見つけてそこでまた攻撃することも深刻化しています。今回の議員の方々の目的はこの問題を解決することではなく、有権者の票。視察に行って問題に取り組んでいるかのような自分を有権者に見せることを目的としていることに、一番の問題があると思います。
堀:仁藤さんが不信感を持たれた要因も「あなたたちはなんのために来たんですか?」ということに尽きるのかもしれないですね。
■性犯罪や性搾取は社会問題と地続き
時を同じくして4月下旬、ナインティナインの岡村隆史が、自身がパーソナリティを務めるラジオ番組で「コロナ禍で風俗に行けない」というリスナーの相談に答える形で「コロナが終息したらおもしろいことがある。お金がなくなった美人が風俗嬢をやるから、それまで待とう」という趣旨の発言をした。この発言がネットニュースになるや否や、番組側や本人が謝罪するまでに至った。この件に対して井戸は「許せない」と怒りを口にした。
井戸:こういった会話がこれまでもずっとあって、それが許される環境にあったんでしょうね。「風俗に通うことが女性の生活援助だ」と堂々と言っている。どこかに「男性が貧しい女性を救ってあげる」というヒーロー気取りをしている一面があるので、これはすごく深刻な話だと思いますね。
この発言に対しては、さまざまな人が持論を展開する事態となった。一方で、発言の“当事者”であるコロナ禍で困窮している女性や現役で風俗産業に従事している女性たち以外の人たちが、外から見た上で白熱した議論を交わすといった状況にもなっている。
堀:Colaboの件では10代の少女たちの思いが置き去りに、岡村さんの件では(実際に風俗で)働いている方々の状況や問題が置き去りにされていますよね。
井戸:岡村さんは、女性たちがどんな形で風俗に追いやられているかについては興味や関心はないんですよ。やっぱり「自分が行くことで彼女たちを助けている」「いいことをしている」という行動の正当化。うしろにある背景まで理解して問題を考えてはいないことが問題だと思いますね。これはやっぱり女性蔑視。尊厳がないモノ扱いですよね。そこにある女性たちの気持ちや主張が関係なく、人としての一対一の対話がないことは蔑視だと思います。
井戸は、「性搾取や性犯罪の裏にあるのは、貧困や育児放棄など社会問題と地続き。社会のルールを決める上で女性の声を反映してこなかった結果が今の状況」と指摘。そして、男性による無意識の女性蔑視や加害性について「ハッキリ指摘しても本人は何も感じていない部分がある。こうした問題に不感になってはならず、知識不足があれば情報共有を男女ともにしていく必要がある」と語った。
■DVや虐待被害者への給付要件が広がった
井戸は議員になる前から、無戸籍の方々やDV被害に遭った女性たちへの支援活動を続けてきた。今回のコロナ禍では無戸籍に関する相談窓口も開設しており、1人10万円の特別定額給付金についての相談も多く寄せられている。当初、無戸籍の方々は給付対象外だったからだ。
井戸:原則として給付対象が住民票を持つ人でしたが、無戸籍の方々は住民票がありません。法務省は無戸籍の方々の存在を把握しているにもかかわらず、給付されない予定でした。しかし、声をあげたことで無戸籍の方々も住民票がなくてももらえるようになりました。
堀:みなさんが一生懸命、現場から声をあげましたもんね。
井戸:議員の方々も動いてくださいました。DV被害者についても、当初は市町村や相談支援センターが発行した証明書が必要でしたが、発行元に支援団体も含まれるようになりましたし、(DVから避難した先の)今の自治体に住民票を移せばもらえることになった。無戸籍の方々のために住民票がなくても給付金をもらえるように動いたことで、DVや虐待被害者などの給付要件も広がっていったのはとてもおもしろいなと思っていましたね。
一律給付金については、個人ではなく「世帯主にまとめて振り込まれる」と規定されたことにも多くの批判が集まっている。
井戸:無戸籍とDVは表裏一体です。たとえば、別居して夫から逃げてきた人が違う場所で10万円給付のために住民票を移したとすると、夫に住民票を移したことがバレてしまう。「どこかに行ったから追いかけてやる」と、これまで収まっていた感情や暴力がまた起きてしまう懸念はありますよね。被害者の方々もそれをとても恐れています。
堀:そもそもこの給付金はなぜ個人単位ではないのかという根幹の問題がありますよね。
井戸:政府は「時間がかかるから世帯主にまとめて振り込む」と言っていたんですが、個人単位ではないといろいろな問題が起きてしまいます。戦後に家制度はなくなったと言われていますが、戸籍の編成は今でも「夫婦と未婚の子」という婚姻家族が基本。福祉も世帯を中心に考えられている。世帯以外の個人でやっていくという考えがそもそもないんです。
■相談することが社会を変えていく強い力になる
今回のコロナ禍は、マイナンバーカードの手続きの煩雑さや在宅勤務の妨げになっているハンコ文化など、さまざまな問題を浮き彫りにしている。奇しくもコロナが、古くからの制度や構造的な問題を改善させるきっかけになっている側面もある。
井戸:これまでも世帯主の問題について言い続けてきても反応がなかったのに、今回は当たり前のように批判が聞かれるようになりました。ただ、憲法は変わっても民法は何も変わっていません。家制度の名残が形を変えているだけで今でも世帯で縛り、家プレッシャーをかけている。今回はそれが露になり「やっぱりこれはおかしい」と感じて制度自体を変えていかないと、次もまた同じことが起こると思います。
堀:総理の会見では「家族」という言葉を多用されていた印象です。でも国民を守る上では個人がきちんと活躍できる社会を作るようにバージョンアップしてほしい。
井戸:本当にそうですね。日本社会がこのままの形なら、非常に非効率なままでフリーズしてしまう。国民も声をあげて変えていかないと、今後コロナとは違うことが起きたときに、さらに大変なことが起こる。国民登録制度や戸籍、マイナンバーなどが活用できていない現状を、この機会に変えていかなければいけないと思います。
最後に井戸は、いま不安に感じている人へメッセージを送った。
井戸:相談に来る人たちは「明日どうやって生きていこうか」という深刻な状態にある方も非常に多いです。でも、一人ではありません。声をあげて相談してくれたことで、私たちも検証できるので、次の社会を変える強い力になっていきます。相談者の方々は自己評価が低い傾向にあるんですが、そうではありません。本当は社会の力なんです。いま大変な思いをしている方々が社会を変えていく力なんだ、他の人を救っていく力なんだ、ということを伝えたいです。
堀:不安を口にしてくれた方に対しては「教えてくれてありがとうございます」と言いたいですね。
J-WAVE『JAM THE WORLD』のコーナー「UP CLOSE」では、社会の問題に切り込む。放送時間は月曜~木曜の20時20分頃から。お聴き逃しなく。
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【番組情報】
番組名:『JAM THE WORLD』
放送日時:月・火・水・木曜 19時-21時
オフィシャルサイト: https://www.j-wave.co.jp/original/jamtheworld/
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