J-WAVEで放送中の番組『VOLVO CROSSING LOUNGE』(ナビゲーター:アン ミカ)。仲間や家族とコーヒーブレイクをするスウェーデンの文化「FIKA」を、多様なゲストと楽しむ番組だ。
3月27日(金)のオンエアでは、シンガーソングライターの松室政哉がゲストに登場。映画好きの松室が、おすすめの北欧映画を語った。
■いい映画の中には北欧映画がたくさんある
1990年生まれ大阪府出身の松室は、2017年11月にメジャーデビューしたシンガーソングライター。学生時代には年間約300本を観るほどの映画好きで、現在は映画について語る連載も持っている。そんな松室に北欧映画について訊くと、「北欧映画を観るというより、いい映画の中に北欧映画がたくさんある」のだとか。
松室:僕の好きな『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』というスウェーデンの作品は、30、40年くらい前の映画です。少年の成長物語で名作です。「気付いたら北欧の映画だった」ということが多いですね。
アン ミカ:「気付いたら」という心のテンションで観る北欧映画はどんなパターンですか?
松室:映像として自然光がパキっとしていなくて、すごくいい意味でぼんやりしているんです。特に人間ドラマを描くときに、そのぼんやりとして輪郭をハッキリさせない感じが一つの演出になっていて、こじれた話を描いても包むような優しさが漂っている感じがするんですよね。
アン ミカ:私、スウェーデンに行ったことないんですけど、私のイメージするスウェーデンはそんな感じがします。家具とか自然の素材を大事にして、目につくところに自然界のものがある。優しい自然光が漂っているというのはものすごく伝わりやすい。
松室:そうですよね。逆に、室内の家具とかは色がハッキリしていて、デザイン性も映像的に映える。「これ、もしかしたら北欧映画なんじゃないかな」というのは、ポスターを見るだけでもわかりますよね。
『未来を生きる君たちへ』という2010年のデンマークとスウェーデンの合作映画も、松室おすすめの作品だ。その年のアカデミー賞の外国語映画賞(現在の国際長編映画賞)を受賞した。
松室:話自体は重たいんですよ。テーマは「復讐と赦し」。
アン ミカ:深いなあ。
松室:出てくるのは子ども二人と、そのお父さん。子どもはいじめられたから復讐したい。「殴られたから殴り返して何が悪いねん」と言うんです。でも、お父さんは、アフリカの難民キャンプでお医者さんをやっていて、「暴力に暴力で返しても何の意味もない。そこから負の連鎖しか生まれない」と言うんですが、子どもはピンとこない。その後、お父さんが自分の主張に惑うようなことが難民キャンプで起こってしまう。子どもも大人も目の前に起こる出来事に戸惑いながらも成長していくという話です。
アン ミカ:人って一生悩むでしょう。「復讐なんてしたらあかん」って正義とか倫理でわかってんねんけど、心の中でそういう小さな思いを抱いただけで罪悪感があったり、「じゃあ許せるのか」というとずっとしこりが残っていたり。
松室:そうですよね。映画は終わるんですけど、心の中でずっと続いていく感じ。考えるものがあります。
■鬼才ラース・フォン・トリアー監督による「ドグマ95」とは
ハリウッドで活躍する北欧出身の監督や俳優が多いなか、松室は『ダンサー・イン・ザ・ダーク』などで知られるラース・フォン・トリアー監督を取り上げた。
松室:変わった映画をたくさん撮るんですけど、この人の話で面白いのが1995年に「ドグマ95」という映画運動をしたんですよ。すごく発想が北欧らしいんですけど、まず「照明とかを使わずに自然光しか使ってはいけない」とか「あとで効果音を足してはいけない」といったルールを作ったんです。「もちろんCGや合成は使ってはいけない」「カメラは手持ち」「時間軸は入れ替えてはいけない」などです。90年代にハリウッドで大作映画がたくさん出てきて「このままで、それだけでいいのか」という思いがあって、あえて偏ったルールを作ることで「もう一回考え直そうよ」という運動でした。
アン ミカ:はい。
松室:当時、その「ドグマ95」で作られた作品はちょっとしかなくて、今ではもうほとんど言うことはないんですけど、それをしたことで他の映画人も「たしかに今の時代だからこそこういう映画を撮ろう」と考えるきっかけになって、それが今の人たちにもけっこう影響を与えているんですよ。
アン ミカ:面白い。一回そこに立ち返ることで、また視点が変わった映画ができてね。
松室:そうです。ラース・フォン・トリアーも今はめちゃくちゃCGを使っているんですが、一回そういうことを言ったのが一つの意味がある。その発想が北欧の人らしい、自然を大事にする感じや生きてるなかで自分の目で見えているものを大切にしようという意味があって、すごく素敵だなって思いました。
松室は、3月11日(水)に新作EP『ハジマリノ鐘』をリリースした。松室おすすめの作品とともに、こちらもチェックしてみては。
『VOLVO CROSSING LOUNGE』では、様々なジャンルのプロフェッショナルをゲストに迎えて、大人の良質なクロストークを繰り広げる。オンエアは毎週金曜23時30分から。
【この記事の放送回をradikoで聴く】(2020年4月3日28時59分まで)
PC・スマホアプリ「radiko.jpプレミアム」(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は「radiko.jpタイムフリー」機能で聴き直せます。
【番組情報】
番組名:『VOLVO CROSSING LOUNGE』
放送日時:毎週金曜 23時30分-24時
オフィシャルサイト: https://www.j-wave.co.jp/original/crossinglounge/
3月27日(金)のオンエアでは、シンガーソングライターの松室政哉がゲストに登場。映画好きの松室が、おすすめの北欧映画を語った。
■いい映画の中には北欧映画がたくさんある
1990年生まれ大阪府出身の松室は、2017年11月にメジャーデビューしたシンガーソングライター。学生時代には年間約300本を観るほどの映画好きで、現在は映画について語る連載も持っている。そんな松室に北欧映画について訊くと、「北欧映画を観るというより、いい映画の中に北欧映画がたくさんある」のだとか。
松室:僕の好きな『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』というスウェーデンの作品は、30、40年くらい前の映画です。少年の成長物語で名作です。「気付いたら北欧の映画だった」ということが多いですね。
アン ミカ:「気付いたら」という心のテンションで観る北欧映画はどんなパターンですか?
松室:映像として自然光がパキっとしていなくて、すごくいい意味でぼんやりしているんです。特に人間ドラマを描くときに、そのぼんやりとして輪郭をハッキリさせない感じが一つの演出になっていて、こじれた話を描いても包むような優しさが漂っている感じがするんですよね。
アン ミカ:私、スウェーデンに行ったことないんですけど、私のイメージするスウェーデンはそんな感じがします。家具とか自然の素材を大事にして、目につくところに自然界のものがある。優しい自然光が漂っているというのはものすごく伝わりやすい。
松室:そうですよね。逆に、室内の家具とかは色がハッキリしていて、デザイン性も映像的に映える。「これ、もしかしたら北欧映画なんじゃないかな」というのは、ポスターを見るだけでもわかりますよね。
『未来を生きる君たちへ』という2010年のデンマークとスウェーデンの合作映画も、松室おすすめの作品だ。その年のアカデミー賞の外国語映画賞(現在の国際長編映画賞)を受賞した。
松室:話自体は重たいんですよ。テーマは「復讐と赦し」。
アン ミカ:深いなあ。
松室:出てくるのは子ども二人と、そのお父さん。子どもはいじめられたから復讐したい。「殴られたから殴り返して何が悪いねん」と言うんです。でも、お父さんは、アフリカの難民キャンプでお医者さんをやっていて、「暴力に暴力で返しても何の意味もない。そこから負の連鎖しか生まれない」と言うんですが、子どもはピンとこない。その後、お父さんが自分の主張に惑うようなことが難民キャンプで起こってしまう。子どもも大人も目の前に起こる出来事に戸惑いながらも成長していくという話です。
アン ミカ:人って一生悩むでしょう。「復讐なんてしたらあかん」って正義とか倫理でわかってんねんけど、心の中でそういう小さな思いを抱いただけで罪悪感があったり、「じゃあ許せるのか」というとずっとしこりが残っていたり。
松室:そうですよね。映画は終わるんですけど、心の中でずっと続いていく感じ。考えるものがあります。
■鬼才ラース・フォン・トリアー監督による「ドグマ95」とは
ハリウッドで活躍する北欧出身の監督や俳優が多いなか、松室は『ダンサー・イン・ザ・ダーク』などで知られるラース・フォン・トリアー監督を取り上げた。
松室:変わった映画をたくさん撮るんですけど、この人の話で面白いのが1995年に「ドグマ95」という映画運動をしたんですよ。すごく発想が北欧らしいんですけど、まず「照明とかを使わずに自然光しか使ってはいけない」とか「あとで効果音を足してはいけない」といったルールを作ったんです。「もちろんCGや合成は使ってはいけない」「カメラは手持ち」「時間軸は入れ替えてはいけない」などです。90年代にハリウッドで大作映画がたくさん出てきて「このままで、それだけでいいのか」という思いがあって、あえて偏ったルールを作ることで「もう一回考え直そうよ」という運動でした。
アン ミカ:はい。
松室:当時、その「ドグマ95」で作られた作品はちょっとしかなくて、今ではもうほとんど言うことはないんですけど、それをしたことで他の映画人も「たしかに今の時代だからこそこういう映画を撮ろう」と考えるきっかけになって、それが今の人たちにもけっこう影響を与えているんですよ。
アン ミカ:面白い。一回そこに立ち返ることで、また視点が変わった映画ができてね。
松室:そうです。ラース・フォン・トリアーも今はめちゃくちゃCGを使っているんですが、一回そういうことを言ったのが一つの意味がある。その発想が北欧の人らしい、自然を大事にする感じや生きてるなかで自分の目で見えているものを大切にしようという意味があって、すごく素敵だなって思いました。
松室は、3月11日(水)に新作EP『ハジマリノ鐘』をリリースした。松室おすすめの作品とともに、こちらもチェックしてみては。
『VOLVO CROSSING LOUNGE』では、様々なジャンルのプロフェッショナルをゲストに迎えて、大人の良質なクロストークを繰り広げる。オンエアは毎週金曜23時30分から。
【この記事の放送回をradikoで聴く】(2020年4月3日28時59分まで)
PC・スマホアプリ「radiko.jpプレミアム」(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は「radiko.jpタイムフリー」機能で聴き直せます。
【番組情報】
番組名:『VOLVO CROSSING LOUNGE』
放送日時:毎週金曜 23時30分-24時
オフィシャルサイト: https://www.j-wave.co.jp/original/crossinglounge/