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ラミン・カリムルー「歌うことはコミュニケーション」ミュージカル俳優として大切にしていること

ラミン・カリムルー「歌うことはコミュニケーション」ミュージカル俳優として大切にしていること

J-WAVEで放送中の番組『STAGE PIA WE/LIVE/MUSICAL』(ナビゲーター:中井智彦)。2月7日(金)のオンエアでは、2月9日(日)まで国際フォーラム ホールCで上演された『CHESS THE MUSICAL』に主演していた世界的ミュージカル・スターのラミン・カリムルーがゲストに登場。同ミュージカルで共演し、番組ナビゲーターを務める中井智彦と共に『CHESS THE MUSICAL』について熱く語った。また、貴重なギターの弾き語りを披露した。


■代表作『オペラ座の怪人』は、「音」と「物語」のパーフェクトなマリアージュ

ラミン・カリムルーは、1978年イラン生まれ。幼いころにカナダに移住し、現在はロンドンを拠点に活動している。代表作は『オペラ座の怪人』『レ・ミゼラブル』『ラブ・ネバー・ダイ』など。中井は、ラミンの魅力を「生きている言葉を歌として表現することができる素晴らしさ。ただの歌にとどまらず、とても自然な演技だからこそ伝わる切なさ、愛、人間らしさ。そういう思いや物語を歌に込めて表現できること」と熱く語る。ラミンが歌で表現することに目覚めたのはいつだったのだろう。

ラミン:音楽は、ぼくにとってスピリチュアルなものだと思います。その人によって受け止め方が違うユニークなものだと思うんです。表現をする形のひとつだと思います。僕が11歳くらいのころ、音楽とつながっていると感じて、音楽に心を動かされるような出来事がありました。音楽もひとつのストーリーテリングだと思います。そのころから、個々の役者の方たちにも興味を持ち始め、当時の僕にとって音楽は大切な存在ものであり、喜びでした。
中井:ミュージカルを歌うとき、ある意味僕らって固まっちゃうというか、こういう風に歌わなきゃって力みが生じてしまうのが悩みなんですが、ラミンさんを見ていると、シングするではなくて、言葉を伝えたいから歌っているっていうことを今回共演させていただいてすごく感じているんです。
ラミン:これには2面性があると思います。言葉というものと、音符である音というものは、聴く人にとってそれぞれ違うと思っています。私にとって歌うことはコミュニケーションだと思っているので、言葉が一番大切です。そういう想いで役者をやっています。バンドで歌うときも、いい声を出そうと気にしていません。いい音を出したいのであれば、楽器で演奏すればいいわけですから。人間ですから、コミュニケーションとして言葉をアプローチとして使っています。そして、何よりも大切なのが、「真実を伝える」ということです。

ラミンがミュージカルをやろうと決めたのは、『オペラ座の怪人』を観たのがきっかけだ。中井は、同ミュージカルの魅力を「音楽と言葉がすごく一致しているから」だと述べると、ラミンも同意する。

ラミン:『オペラ座の怪人』はパーフェクトなチームで作られたものだと思います。ストーリーも分かりやすくて、もちろんアンドリュー・ロイド・ウェバーの音楽も素晴らしいですが、やはりファントムの望んでいるもの、欲望のようなものが非常に素晴らしく描かれていると思うんです。おっしゃる通り「音」と「物語」のパーフェクトなマリアージュだと思います。このミュージカルが好きな理由はいくつかあります。僕はカナダ版のコルム・ウィルキンソンの『オペラ座の怪人』を観たんですが、彼には独特の声があって、その声に魂が込められていた。そして、もうひとつ魅力的だったのがファントムのキャラクター性です。言ってみれば、彼は負け犬の方に入るわけですが、それでいてすごく乱暴な殺人鬼でもある。その両面性を持っていることがとても魅力的だと感じました。


■『CHESS THE MUSICAL』は“自分を探す旅”

この日のオンエアでは、ラミンが弾き語りで有名なブロードウェイ・ミュージカル『ショウ・ボート』から黒人の労働歌「O'L MAN RIVER(オール・マン・リヴァー)」を披露。渋みのある低音がスタジオ中に心地よく響いた。

【radikoで聴く】ラミン・カリムルー弾き語り「O'L MAN RIVER」(『ショウ・ボート』より)

中井:(弾き語りが終わって)ソー・ファンタスティック! ラミンさんが、この「O'L MAN RIVER」が好きな理由を知りたいです。
ラミン:『ショウ・ボート』を観たときに、この役をやっていた人がものすごいディープな声で、僕はとてもそこまで低い音が出ないのですが、劇場全体が揺れたと感じるくらいパワーのある歌声だったんです。この作品の物語、この時代の歴史、役者にとってこの役を演じる意味ですね、そういうストーリーテリングが自分に伝わってきました。それで僕も、「あのとき伝わってきた感情を誰かに伝えたい、あのときの喜びを伝えたい」と思って、自分のバンドで披露するようになりました。
中井:伝わった……。サンキュー!
ラミン:アリガト(笑)。

ラミン・カリムルー

■『CHESS THE MUSICAL』は“自分を探す旅”

ラミンと中井は、1月25日(土)から2月9日(日)まで計16回上演されたミュージカル『CHESS THE MUSICAL』で共演した。1986年にロンドンで初演された同作は、米ソ冷戦時代のチェスの世界選手権を舞台に人間模様を描いた作品。ラミンは、ソ連代表選手のアナトリーを演じた。今回は日英合同キャストということで、イギリスからラミン、サマンサ・バークス、ルーク・ウォルシュの3名が出演。ラミンが演じたアナトリーというキャラクターについて訊いた。

ラミン:アナトリーという役は、当時の冷戦の中で色んな体験をしているロシア人です。彼はとにかく幸福、愛、何よりも故郷(ホーム)を探して、それを模索している役だと思います。僕自身も戦争で引き裂かれた国で生まれて、カナダが僕たちを受け入れてくれて、もちろんイギリスもアメリカも、そして日本も歓迎してくれました。パスポートはカナダですが、イギリスで暮らしていますし、グローバルなキャリアを築くことができたと思っています。このアナトリーという役は、自分のルーツを探す旅だと思っています。中井さんは世界で活躍するようになっても日本という基盤があると思いますが、残念ながらアナトリーは嘘だったり、今まで良かったものが崩れて行ったり、そういった中で苦しんでいる役です。ですから、この作品の中で「Anthem」という曲が本当に大好きなんですけど、故郷という点ではまだ僕も見つけられていないのだと思っています。

同作でラミンを共演した中井は、一番好きな曲を「Where I Want To Be」だと明かす。中井にとってラミンは、優しく技術的にも素晴らしく、演技もナチュラルで魅力的な存在だ。完璧なラミンが、同楽曲で見せる苦悩する姿に魅了されたという。

ラミン:僕の役作りが正解だったってことですね。でも、外見は必ずしも心の中を映し出しているとは思いません。誰しもつらい想いや思い出を抱えていると思うんです。当時アナトリーは、ロックスターのような扱いだったと思うんです。ジョニー・キャッシュの歌にもありますが、億万長者でも必ずしも幸せではないと思うんです。人との関係性や愛の方がいかにお金よりも大切なのかだと思います。
中井:今回、アナトリーを演じているラミンを見て、語弊があるかもしれませんが本当にはまり役だなと思っていて。ラミンはアナトリーのような生き方をする人ではない、ラミンは愛にあふれている人だからなんですけど、自分が求めるチャンピオンのために突き進むがゆえの葛藤や、愛してしまったがゆえに引き下がれなくなったりとか、最終的にハッピーエンディングではないものの中に人間味があるのかなっていうのをすごく感じる作品で、アナトリーを演じているラミンさんがすごく好きです。
ラミン:とにかく完璧な人間、完璧な人生なんてないと思うんですよね。彼はプレッシャーを感じながら、周囲の人たちも悪い人たちではないんですが、みんな抑圧された中で暮らしていて、彼も葛藤がある。だから最後の試合が大切になっていて、彼がこれだけは譲れない、自分の試合だ、自分の縄張りだけは譲りたくない、ということになるんだと思います。
中井:最後の試合は、僕も緊張感をもって演じています。
ラミン:僕もあなたとのチェスシーンが好きなんですね。中井さんが演じている役と、僕が演じている役は3分間も見つめ合わなければいけない。中井さん以外このシーンを演じられる人はいないと思っています。何もしない中で表現していて、中井さんで良かったなと思っています。
中井:ありがとう。今回この役が決まってから、チェスを勉強したんです。稽古中に、ラミンがちょっとずつ「これはそう動かせないから」と教えてくれて、それが今となってはすごくいい思い出です。本番でもリアリティーがちゃんと表現できているかなと思います。
ラミン:あれは実際に本当に2人で本気で試合をしているので、とっても大変なんですよ。ショーの方もちゃんとやらなければならないし、試合もちゃんとしなければならない。とっても大変ですよね。お互い負けたくないと思って試合をしていると思います。
中井:そこがリアリティですね。

そして、ラミンは『チェス・ザ・ミュージカル』で一番好きだという曲「アンセム」を披露。愛を知り、故郷を捨てる決意をしたアナトリーが「故郷をどうして捨てられる? 国境を越えてなお、ぼくは今もそこにいる」と歌い上げる感動の名曲。

【radikoで聴く】ラミン・カリムルー「「アンセム」」(『フロム・ナウ・オン [ジャパン・スペシャル・エディション]』より)

最後に「また来てください」と言う中井に、ラミンは「いつでも呼んでください。役者と話せるのは楽しい」とコメントし、彼の誠実な人柄を感じさせる貴重なインタビューは幕を閉じた。

【この記事の放送回をradikoで聴く】
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ラミン・カリムルー アルバム『フロム・ナウ・オン [ジャパン・スペシャル・エディション]』発売中
https://www.sonymusic.co.jp/artist/raminkarimloo/


【番組情報】
番組名:『STAGE PIA WE/LIVE/MUSICAL』
  放送日時:毎週金曜 22時30分-23時
  オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/musical/

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