J-WAVEで放送中の番組『FUTURISM』(ナビゲーター:小川和也・南沢奈央)。12月8日(日)のオンエアでは、「芸術と街の関係、その未来」をテーマにお届け。森美術館館長、南條史生さんをゲストに迎え、現在開催中の展覧会「未来と芸術展:AI、ロボット、都市、生命――人は明日どう生きるのか」が発信するメッセージに注目した。
【この記事の放送回をradikoで聴く】(2019年12月15日28時59分まで)
■未来ではなく現実が展示されている
森美術館で開催している「未来と芸術展:AI、ロボット、都市、生命――人は明日どう生きるのか」は、AIやバイオ技術、ロボット工学、拡張現実など最先端のテクノロジーとその影響を受けたアートやデザインを通して、近未来の都市や環境問題、ライフスタイル、社会や人間の在り方を考える展覧会だ。
小川:僕が印象に残っているのが、ゴッホが自分で切り落とした左耳をバイオ技術で再現していた作品です。
南條:ドイツ人アーティストの作品ですね。ゴッホの弟の玄孫やその方のお母さんの家系からもらった遺伝子を合わせ、培養して耳の形に育てました。
南沢:へ~!
南條:つまり、限りなくゴッホの遺伝子に近い耳を作り直した。偉人のエピソードを再現したプロジェクトなわけです。
小川:技術で人体を再現というと、体温調整皮膚形成手術による赤ちゃんの作品もありましたね。
南條:遺伝子をデザインして思ったとおりの人間を作るのは「デザイナーベイビー」と言われ、すでに実現しかけています。こうした技術は再生医療などにも適用されるのですが、このまま拡張すれば「こういう人間を作りたい」という方向に行く可能性があります。倫理も道徳教育も法律もないのに、技術はあるという今の危ない現状を伝えているのがこの作品です。
今回の展覧会ではほかにも、データ化した味覚を3Dプリンターで造形することでどこでも同じ味を食べられることを提示したお寿司ロボットや、遺伝子操作で作る食用ゴキブリといった展示を見ることができる。
南條:ゴキブリの作品の制作背景としては、人口増加や環境汚染による食料難です。最も足りなくなると言われるのがタンパク質。今では、牛肉の細胞から増殖させていくお肉も実現しており、家畜を殖やして牛を殺さなくても肉が食べられるようになっています。今回の展示は「未来と芸術」と言っていますが、すでに現実になっていることばかりなんです。
■「アートは街に溢れ、人々の生活に溶け込むべき」と考える理由
2006年に森美術館2代目館長に就任した南條さんは、2019年12月末を持って館長の職を退任することが決まっている。館長として歩んだ13年間は、美術館やアートの枠組みを壊す試みを数多く行ってきた。その中でも特筆すべきは、南條さんが実行委員長を務める「六本木アートナイト」だ。
小川:これは街自体がアートになっていく試みですよね。
南條:やっぱり森美術館としては、現代美術に対する敷居や距離をなくしてアートを楽しめる社会にしようというミッションも掲げています。
小川:同じような試みをする地方も出てきていますよね。
南條:地方は芸術祭として、作品が街の中に置かれているケース。手法としては似ていますが、六本木は一晩限り、街の真ん中に作品を集約、夜中遅くまで開催という違いがあります。私としては六本木アートナイトを長く続けて将来的には「東京ビエンナーレ」のようなイベントに育てたいですね。
六本木という繁華街で、人々の持つアートに対する垣根を取っ払ってきた南條さん。直島の地中美術館や金沢21世紀美術館など、日本は全国各地にその街ならではの特徴的な美術館が点在する”美術館大国“も目指すべき一つの形だと言う。そのように、芸術が街に溶け込み人々の生活の中に入っていくことは、何を意味するのだろうか。
南條:自然とやってくるのではなく、私たちとともにある未来のためには、今何をするかがとても大事になってきます。その中でクリエイティビティの塊であるアートに接することは、フレキシブルに物事を考える訓練の場。アートを通して、枠にはまった考え方ではなく、きちんと物事を見て判断するフレキシブルな考え方を持たないと、いい未来はこないのではないかと思っています。
小川:街とアートが一体化していくのが理想の未来ですか?
南條:美術館は消えることはないと思いますが、それくらいの意気込みでアートを広めていきたいですね。
今、私たちが何を考え、どのような未来を作っていけばいいのかを考えることのできる「未来と芸術展:AI、ロボット、都市、生命――人は明日どう生きるのか」、チェックしてみてほしい。
【この記事の放送回をradikoで聴く】(2019年12月15日28時59分まで)
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【番組情報】
番組名:『FUTURISM』
放送日時:毎週日曜 21時-21時54分
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/futurism/
【この記事の放送回をradikoで聴く】(2019年12月15日28時59分まで)
■未来ではなく現実が展示されている
森美術館で開催している「未来と芸術展:AI、ロボット、都市、生命――人は明日どう生きるのか」は、AIやバイオ技術、ロボット工学、拡張現実など最先端のテクノロジーとその影響を受けたアートやデザインを通して、近未来の都市や環境問題、ライフスタイル、社会や人間の在り方を考える展覧会だ。
小川:僕が印象に残っているのが、ゴッホが自分で切り落とした左耳をバイオ技術で再現していた作品です。
南條:ドイツ人アーティストの作品ですね。ゴッホの弟の玄孫やその方のお母さんの家系からもらった遺伝子を合わせ、培養して耳の形に育てました。
南沢:へ~!
南條:つまり、限りなくゴッホの遺伝子に近い耳を作り直した。偉人のエピソードを再現したプロジェクトなわけです。
ゴッホの耳を再現!
— Mori Art Museum 森美術館 (@mori_art_museum) September 24, 2019
「未来と芸術展」(2019/11/19より)では、ゴッホが自分で切り落としたとされる左耳を現代のバイオ技術で再現した作品も展示します。https://t.co/kPuEzroB7j#未来と芸術展#森美術館#ゴッホ展 pic.twitter.com/2WKlqVwFyI
小川:技術で人体を再現というと、体温調整皮膚形成手術による赤ちゃんの作品もありましたね。
南條:遺伝子をデザインして思ったとおりの人間を作るのは「デザイナーベイビー」と言われ、すでに実現しかけています。こうした技術は再生医療などにも適用されるのですが、このまま拡張すれば「こういう人間を作りたい」という方向に行く可能性があります。倫理も道徳教育も法律もないのに、技術はあるという今の危ない現状を伝えているのがこの作品です。
今回の展覧会ではほかにも、データ化した味覚を3Dプリンターで造形することでどこでも同じ味を食べられることを提示したお寿司ロボットや、遺伝子操作で作る食用ゴキブリといった展示を見ることができる。
南條:ゴキブリの作品の制作背景としては、人口増加や環境汚染による食料難です。最も足りなくなると言われるのがタンパク質。今では、牛肉の細胞から増殖させていくお肉も実現しており、家畜を殖やして牛を殺さなくても肉が食べられるようになっています。今回の展示は「未来と芸術」と言っていますが、すでに現実になっていることばかりなんです。
年末年始も開館!
— Mori Art Museum 森美術館 (@mori_art_museum) November 25, 2019
森美術館は年末年始も休まず営業します。2020年1月1日(水・祝)も夜10時まで開館!ぜひ「未来と芸術展」にお越しください。https://t.co/4VzDyYtJqF#未来と芸術展#森美術館 pic.twitter.com/D1bW9Xh37k
■「アートは街に溢れ、人々の生活に溶け込むべき」と考える理由
2006年に森美術館2代目館長に就任した南條さんは、2019年12月末を持って館長の職を退任することが決まっている。館長として歩んだ13年間は、美術館やアートの枠組みを壊す試みを数多く行ってきた。その中でも特筆すべきは、南條さんが実行委員長を務める「六本木アートナイト」だ。
小川:これは街自体がアートになっていく試みですよね。
南條:やっぱり森美術館としては、現代美術に対する敷居や距離をなくしてアートを楽しめる社会にしようというミッションも掲げています。
小川:同じような試みをする地方も出てきていますよね。
南條:地方は芸術祭として、作品が街の中に置かれているケース。手法としては似ていますが、六本木は一晩限り、街の真ん中に作品を集約、夜中遅くまで開催という違いがあります。私としては六本木アートナイトを長く続けて将来的には「東京ビエンナーレ」のようなイベントに育てたいですね。
六本木という繁華街で、人々の持つアートに対する垣根を取っ払ってきた南條さん。直島の地中美術館や金沢21世紀美術館など、日本は全国各地にその街ならではの特徴的な美術館が点在する”美術館大国“も目指すべき一つの形だと言う。そのように、芸術が街に溶け込み人々の生活の中に入っていくことは、何を意味するのだろうか。
南條:自然とやってくるのではなく、私たちとともにある未来のためには、今何をするかがとても大事になってきます。その中でクリエイティビティの塊であるアートに接することは、フレキシブルに物事を考える訓練の場。アートを通して、枠にはまった考え方ではなく、きちんと物事を見て判断するフレキシブルな考え方を持たないと、いい未来はこないのではないかと思っています。
小川:街とアートが一体化していくのが理想の未来ですか?
南條:美術館は消えることはないと思いますが、それくらいの意気込みでアートを広めていきたいですね。
今、私たちが何を考え、どのような未来を作っていけばいいのかを考えることのできる「未来と芸術展:AI、ロボット、都市、生命――人は明日どう生きるのか」、チェックしてみてほしい。
【この記事の放送回をradikoで聴く】(2019年12月15日28時59分まで)
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【番組情報】
番組名:『FUTURISM』
放送日時:毎週日曜 21時-21時54分
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/futurism/