J-WAVEで放送中の番組『TOPPAN FUTURISM』(ナビゲーター:小川和也・南沢奈央)。12月23日(日)のオンエアでは、スマートニュース メディア研究所・所長の瀬尾 傑さんをゲストにお迎えし、「2018年にテクノロジーが生みだしたものとは?」というテーマでお届けしました。
瀬尾さんは講談社在籍時代に『現代ビジネス』『ゲキサカ』『クーリエ・ジャポン』『FORZA STYLE』など、ウェブメディアの統括や新しいメディア戦略を作る部署のマネジメントを担当。今年8月に講談社を退社し、スマートニュース メディア研究所の所長に就任しました。
■2018年で印象に残ったテクノロジーの出来事
まずは2018年上半期で印象に残ったテクノロジーの出来事を伺うと、フェイスブックのCEOであるマーク・ザッカーバーグがアメリカ上院に呼ばれたことだと回答。
瀬尾:それまで新しいソーシャルメディアは「世の中を良くするものだ」「フラットな社会にして個人の情報発信ができる」「政府や大企業が中心の世の中を市民中心の社会に変えるんだ」とバラ色なイメージがありました。その中でザッカーバーグがアメリカ上院に呼ばれ、フェイスブックの問題がいくつも明らかになりました。
これまでネットニュースが良い方向に行くのではないかと思われたものの、今は悪い方向に行っているとして、それが表面化したのが2018年だったと述べます。
小川:どうして悪い方向に行っているんですか?
瀬尾:フェイスブックやツイッターのような新しいメディアの動きが出てきて、社会の情報発信の仕組みを変えていこうとしている。そうするとこれまでの仕組みの中で生活できていた人が職を失ったり、これまでのビジネスモデルを続けられなくなったり。この人たちの不満がたまっていたと思います。
小川:なるほど。
瀬尾:一方で、トランプ大統領の登場やイギリスのEU離脱問題など、国民にとって大きな選択があり、なおかつ国を二分するようなことが起きているときに、実はこれを後押ししたのがソーシャルメディアじゃないか、という疑いがありました。さらに、それを意図的にやっていたのではないか、という疑いも出てきました。
このように今まで隠されてきた問題が一気に噴出した象徴が、このフェイスブック問題だった、と瀬尾さんは話しました。
続いて、瀬尾さんが2018年下半期で印象に残ったテクノロジーの出来事は、沖縄県知事選挙の際に、沖縄の地元紙の『琉球新報』や『沖縄タイムス』がファクトチェックをしたことだと言います。
瀬尾:選挙期間中に流れる本当のことやデマ、政治家の発言がうそか本当かをチェックすることを、この沖縄の新聞社たちが行いました。これがファクトチェックです。今回、琉球新報がその試みをするときに、テクノロジーの会社と提携して、テクノロジーがツイッターやフェイスブックをリサーチし、そのビッグデータの中から話題になっている、もしくはうそじゃないかと思われる情報を集めました。その後のチェックは新聞社の記者が行う方式を採用しました。これはテクノロジーが、もしかすると今のフェイクニュースやフィルターバブルのようなものに対してひとつの解決方法を示す一例になるのではないかと思っています。
■「うそ?」「本当?」情報の正しい見分け方とは
本当の情報か、うその情報かを見分けるための簡単な方法が、一つあるそうです。
瀬尾:たとえば、自分の子どもが外で遊んでいるときに、見通しが悪くて交通量の多い交差点で飛び出しそうになったら「危ない、飛び出すな」「左右をよく見ろ」と注意しますよね。インターネットの世界も通行量の多い交差点と同じで、非常に多くの情報が流れています。そこに入るときに、最初に見た情報に飛びつくのではなく、ゆっくりと判断する必要があります。交差点で左右を見るように、いろんな種類の情報があるので全部見て、その中で判断してください。
■もっとゆっくりとしたニュースが必要
最後に、2019年のニュース報道のあり方について伺いました。
瀬尾:今ニュースは、スローニュースとファストニュースがあり、私は「もっとゆっくりとしたニュースが必要だ」と考え、スローニュースを提唱しています。スローニュースは事件や事故など発生したものを追いかけるのではなくて、自分たちで掘り起こすニュースです。
スローニュースについて、森友学園問題における財務省の公文書改ざん問題を例に説明します。
瀬尾:この改ざん問題は朝日新聞がスクープしないと、絶対に世の中に出なかったんですよね。たとえば10年後に情報公開請求をしても、改ざんされた文章なんて誰も分からなかったと思います。このスクープの発掘がスローニュースだと思っています。
こういった情報を取材するためには、プロが手間をかけお金をかける必要があるが、情報としては確度が高く社会的な意味がある、とも言います。
瀬尾:また、その情報は独創的でクリエイティブなものなので、非常に価値があります。新聞社やテレビ局の経営が厳しいと言われるのは、ファストニュースの価値が下がる中で新しいニュースの価値が作られていないからだと思います。私はニュースの価値を、速さではなく深さで測るようにしたい。それを実現する仕組みをスマートニュース メディア研究所で作ってみたいと思っています。
普段何気なく見ているニュースを鵜呑みにするのではなく、ニュースを読み解く力がこれからの時代には必要になるのではないでしょうか。
【この記事の放送回をradikoで聴く】
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【番組情報】
番組名:『TOPPAN FUTURISM』
放送日時:毎週日曜 21時-21時54分
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/futurism/
瀬尾さんは講談社在籍時代に『現代ビジネス』『ゲキサカ』『クーリエ・ジャポン』『FORZA STYLE』など、ウェブメディアの統括や新しいメディア戦略を作る部署のマネジメントを担当。今年8月に講談社を退社し、スマートニュース メディア研究所の所長に就任しました。
■2018年で印象に残ったテクノロジーの出来事
まずは2018年上半期で印象に残ったテクノロジーの出来事を伺うと、フェイスブックのCEOであるマーク・ザッカーバーグがアメリカ上院に呼ばれたことだと回答。
瀬尾:それまで新しいソーシャルメディアは「世の中を良くするものだ」「フラットな社会にして個人の情報発信ができる」「政府や大企業が中心の世の中を市民中心の社会に変えるんだ」とバラ色なイメージがありました。その中でザッカーバーグがアメリカ上院に呼ばれ、フェイスブックの問題がいくつも明らかになりました。
これまでネットニュースが良い方向に行くのではないかと思われたものの、今は悪い方向に行っているとして、それが表面化したのが2018年だったと述べます。
小川:どうして悪い方向に行っているんですか?
瀬尾:フェイスブックやツイッターのような新しいメディアの動きが出てきて、社会の情報発信の仕組みを変えていこうとしている。そうするとこれまでの仕組みの中で生活できていた人が職を失ったり、これまでのビジネスモデルを続けられなくなったり。この人たちの不満がたまっていたと思います。
小川:なるほど。
瀬尾:一方で、トランプ大統領の登場やイギリスのEU離脱問題など、国民にとって大きな選択があり、なおかつ国を二分するようなことが起きているときに、実はこれを後押ししたのがソーシャルメディアじゃないか、という疑いがありました。さらに、それを意図的にやっていたのではないか、という疑いも出てきました。
このように今まで隠されてきた問題が一気に噴出した象徴が、このフェイスブック問題だった、と瀬尾さんは話しました。
続いて、瀬尾さんが2018年下半期で印象に残ったテクノロジーの出来事は、沖縄県知事選挙の際に、沖縄の地元紙の『琉球新報』や『沖縄タイムス』がファクトチェックをしたことだと言います。
瀬尾:選挙期間中に流れる本当のことやデマ、政治家の発言がうそか本当かをチェックすることを、この沖縄の新聞社たちが行いました。これがファクトチェックです。今回、琉球新報がその試みをするときに、テクノロジーの会社と提携して、テクノロジーがツイッターやフェイスブックをリサーチし、そのビッグデータの中から話題になっている、もしくはうそじゃないかと思われる情報を集めました。その後のチェックは新聞社の記者が行う方式を採用しました。これはテクノロジーが、もしかすると今のフェイクニュースやフィルターバブルのようなものに対してひとつの解決方法を示す一例になるのではないかと思っています。
■「うそ?」「本当?」情報の正しい見分け方とは
本当の情報か、うその情報かを見分けるための簡単な方法が、一つあるそうです。
瀬尾:たとえば、自分の子どもが外で遊んでいるときに、見通しが悪くて交通量の多い交差点で飛び出しそうになったら「危ない、飛び出すな」「左右をよく見ろ」と注意しますよね。インターネットの世界も通行量の多い交差点と同じで、非常に多くの情報が流れています。そこに入るときに、最初に見た情報に飛びつくのではなく、ゆっくりと判断する必要があります。交差点で左右を見るように、いろんな種類の情報があるので全部見て、その中で判断してください。
■もっとゆっくりとしたニュースが必要
最後に、2019年のニュース報道のあり方について伺いました。
瀬尾:今ニュースは、スローニュースとファストニュースがあり、私は「もっとゆっくりとしたニュースが必要だ」と考え、スローニュースを提唱しています。スローニュースは事件や事故など発生したものを追いかけるのではなくて、自分たちで掘り起こすニュースです。
スローニュースについて、森友学園問題における財務省の公文書改ざん問題を例に説明します。
瀬尾:この改ざん問題は朝日新聞がスクープしないと、絶対に世の中に出なかったんですよね。たとえば10年後に情報公開請求をしても、改ざんされた文章なんて誰も分からなかったと思います。このスクープの発掘がスローニュースだと思っています。
こういった情報を取材するためには、プロが手間をかけお金をかける必要があるが、情報としては確度が高く社会的な意味がある、とも言います。
瀬尾:また、その情報は独創的でクリエイティブなものなので、非常に価値があります。新聞社やテレビ局の経営が厳しいと言われるのは、ファストニュースの価値が下がる中で新しいニュースの価値が作られていないからだと思います。私はニュースの価値を、速さではなく深さで測るようにしたい。それを実現する仕組みをスマートニュース メディア研究所で作ってみたいと思っています。
普段何気なく見ているニュースを鵜呑みにするのではなく、ニュースを読み解く力がこれからの時代には必要になるのではないでしょうか。
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【番組情報】
番組名:『TOPPAN FUTURISM』
放送日時:毎週日曜 21時-21時54分
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/futurism/