GAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)が時代の覇権を握る中、この状況を変える可能性があるとして「Blockchain(ブロックチェーン)」という技術が注目されている。日本ブロックチェーン協会のアドバイザーで、EYアドバイザリー・アンド・コンサルティング株式会社パートナーの荻生泰之さんに「ブロックチェーン」について話を訊いた。
【J-WAVE『JAM THE WORLD』9月2日(月)の『UP CLOSE』】
■ブロックチェーンとは?
ブロックチェーンはデータベースの一種で、ふたつの特徴がある。ひとつは、データがブロックの中に入っているため改ざんができないこと。このブロックは時間単位で区切られ、過去から未来に繋がっている。このブロックがチェーンになっているということで「ブロックチェーン」と呼ばれるようになった。
荻生:たとえば、過去のある時点でデータを改ざんした人がいる場合、そこで改ざんすると、過去から未来にデータが繋がっているので、過去のデータだけでなく、過去のある時点からすべての未来のデータを変えない限りは改ざんできません。
もうひとつの特徴は、ブロックチェーンは複数台のサーバーで運用されていること。複数台で運用するメリットは、システムが停止しないこと。たとえば、ひとつのマシンがダウンした場合でも、複数のマシンが動いているので運用を継続できる。もうひとつのメリットは、複数台のサーバーそれぞれがデータの全量を持っていること。つまり、システムが動くだけではなく、データ自体も棄損していない状態を保つことができる。
荻生:仮にシステムに何か起こったとしても、他のサーバーが動いているために、システムとしてはずっと動き続けることができます。
ブロックチェーンの最大の価値は、上記した「改ざんができないこと」「システムが停止しないこと」に加え、「低コストで運用できること」が挙げられると荻生さんは付け加えた。
■複数で運営されることの強み
ブロックチェーンで一番大切な概念は「コミュニティで運用されること」だと荻生さんは話す。
ブロックチェーンはひとつの企業が運営するのではなく、複数の企業や複数の個人、複数の政府や国家がひとつのコミュニティになって運営し続ける。そうなると、今まで縦割りでできなかったことが可能になる。
荻生:たとえば、サプライチェーン。多数の部品がいろいろな会社から流れてきて最終的に車や飛行機などになったりしています。その場合、当然その中には物が流れるだけではなく、売り買いや契約も発生します。こういったことがすべて入るような、壮大なブロックチェーンで作ったサプライチェーンの仕組みを考える企業も出てきました。
他にも、ブロックチェーンの連続する特長を活かし、食の安全性の確保やフェアトレードなどに応用されているケースもあるそう。
■GAFAとブロックチェーンの最大の違い
いま、ブロックチェーンがGAFA自体を変える可能性があると言われているが、それはなぜなのか。
GAFAそれぞれの企業は(私たちから得た)膨大な情報を自社で囲い、加えてこの情報を私たちから見えないところで活用している。そういった"見えないビジネス"がGAFAの競争力の源泉である。
一方で、ブロックチェーンはビットコインと同じように、コミュニティを使ってさまざまな人が参加し、その中でいろいろな取引ややり取りがすべて透明化されている。そのため、価格や価値の交換もすべて透明化されているので、GAFAが競争の源泉として持つ、いわば秘密のデータとは真逆の存在だ。
そうした理由から「ブロックチェーンがGAFAの脅威となり得る」と荻生さんは見解を述べた。
津田:ブロックチェーンをGAFAが活用することも考えられますよね?
荻生:当たり前ですが GAFAもIT企業なので、ブロックチェーンを研究して、彼らのビジネスにどう採用できるかを考えています。ただ、透明化をどこまで作るのか。GAFA側は自分たちの利益を失ってまでブロックチェーンに何かを投入するのかという葛藤が存在しています。
■ブロックチェーンで社会はどう変わる?
今後、ブロックチェーンが広がると、私たちの生活はどのように変化していくのだろうか。
これに対して荻生さんは「見た目としてはそこまで変わらず、ただ便利になったなと感じる程度」だとしながらも「ブロックチェーンの処理はリアルタイムで行われる」と、そのメリットを詳しく説明する。
荻生:1~2日ほど待たなければいけないようなものが、ほぼ瞬間に終わってしまう。たとえばビットコインで考えた場合、銀行で国際送金をすると1週間くらいかかってしまうが、ビットコインだと1時間くらいで送金できてしまう。その差ですね。
津田:よりリアルタイムで世界が繋がるわけですね。
荻生:他にも、引っ越しの場合、役所で住民票を変えてそれを持って警察署に行って運転免許証を変更しますよね。これはそれぞれのシステムが分断しているからです。でもこれをブロックチェーンでうまく繋げてしまえば、役所に行かなくても自分の手元だけですべて変更できるかもしれません。
津田は「いまだに役所にハンコが残っているような非効率を絵に描いたような日本だからこそ、ブロックチェーンが浸透していったときの社会のメリットも大きいのでは」と語り、荻生さんは「最近、労働力不足と言われていますが、無駄なことが解消されていけば、日本人もより高付加価値な仕事に従事できて、高品質なサービスも受けられるのではないか」と期待を膨らませた。
ブロックチェーンは私たちの生活に浸透する存在となるのか。今後の動向に注目したい。
J-WAVE『JAM THE WORLD』のコーナー「UP CLOSE」では、社会の問題に切り込む。放送時間は月曜~木曜の20時20分頃から。ぜひチェックしてほしい。
【番組情報】
番組名:『JAM THE WORLD』
放送日時:月・火・水・木曜 19時-21時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/jamtheworld/
【J-WAVE『JAM THE WORLD』9月2日(月)の『UP CLOSE』】
■ブロックチェーンとは?
ブロックチェーンはデータベースの一種で、ふたつの特徴がある。ひとつは、データがブロックの中に入っているため改ざんができないこと。このブロックは時間単位で区切られ、過去から未来に繋がっている。このブロックがチェーンになっているということで「ブロックチェーン」と呼ばれるようになった。
荻生:たとえば、過去のある時点でデータを改ざんした人がいる場合、そこで改ざんすると、過去から未来にデータが繋がっているので、過去のデータだけでなく、過去のある時点からすべての未来のデータを変えない限りは改ざんできません。
もうひとつの特徴は、ブロックチェーンは複数台のサーバーで運用されていること。複数台で運用するメリットは、システムが停止しないこと。たとえば、ひとつのマシンがダウンした場合でも、複数のマシンが動いているので運用を継続できる。もうひとつのメリットは、複数台のサーバーそれぞれがデータの全量を持っていること。つまり、システムが動くだけではなく、データ自体も棄損していない状態を保つことができる。
荻生:仮にシステムに何か起こったとしても、他のサーバーが動いているために、システムとしてはずっと動き続けることができます。
ブロックチェーンの最大の価値は、上記した「改ざんができないこと」「システムが停止しないこと」に加え、「低コストで運用できること」が挙げられると荻生さんは付け加えた。
■複数で運営されることの強み
ブロックチェーンで一番大切な概念は「コミュニティで運用されること」だと荻生さんは話す。
ブロックチェーンはひとつの企業が運営するのではなく、複数の企業や複数の個人、複数の政府や国家がひとつのコミュニティになって運営し続ける。そうなると、今まで縦割りでできなかったことが可能になる。
荻生:たとえば、サプライチェーン。多数の部品がいろいろな会社から流れてきて最終的に車や飛行機などになったりしています。その場合、当然その中には物が流れるだけではなく、売り買いや契約も発生します。こういったことがすべて入るような、壮大なブロックチェーンで作ったサプライチェーンの仕組みを考える企業も出てきました。
他にも、ブロックチェーンの連続する特長を活かし、食の安全性の確保やフェアトレードなどに応用されているケースもあるそう。
■GAFAとブロックチェーンの最大の違い
いま、ブロックチェーンがGAFA自体を変える可能性があると言われているが、それはなぜなのか。
GAFAそれぞれの企業は(私たちから得た)膨大な情報を自社で囲い、加えてこの情報を私たちから見えないところで活用している。そういった"見えないビジネス"がGAFAの競争力の源泉である。
一方で、ブロックチェーンはビットコインと同じように、コミュニティを使ってさまざまな人が参加し、その中でいろいろな取引ややり取りがすべて透明化されている。そのため、価格や価値の交換もすべて透明化されているので、GAFAが競争の源泉として持つ、いわば秘密のデータとは真逆の存在だ。
そうした理由から「ブロックチェーンがGAFAの脅威となり得る」と荻生さんは見解を述べた。
津田:ブロックチェーンをGAFAが活用することも考えられますよね?
荻生:当たり前ですが GAFAもIT企業なので、ブロックチェーンを研究して、彼らのビジネスにどう採用できるかを考えています。ただ、透明化をどこまで作るのか。GAFA側は自分たちの利益を失ってまでブロックチェーンに何かを投入するのかという葛藤が存在しています。
■ブロックチェーンで社会はどう変わる?
今後、ブロックチェーンが広がると、私たちの生活はどのように変化していくのだろうか。
これに対して荻生さんは「見た目としてはそこまで変わらず、ただ便利になったなと感じる程度」だとしながらも「ブロックチェーンの処理はリアルタイムで行われる」と、そのメリットを詳しく説明する。
荻生:1~2日ほど待たなければいけないようなものが、ほぼ瞬間に終わってしまう。たとえばビットコインで考えた場合、銀行で国際送金をすると1週間くらいかかってしまうが、ビットコインだと1時間くらいで送金できてしまう。その差ですね。
津田:よりリアルタイムで世界が繋がるわけですね。
荻生:他にも、引っ越しの場合、役所で住民票を変えてそれを持って警察署に行って運転免許証を変更しますよね。これはそれぞれのシステムが分断しているからです。でもこれをブロックチェーンでうまく繋げてしまえば、役所に行かなくても自分の手元だけですべて変更できるかもしれません。
津田は「いまだに役所にハンコが残っているような非効率を絵に描いたような日本だからこそ、ブロックチェーンが浸透していったときの社会のメリットも大きいのでは」と語り、荻生さんは「最近、労働力不足と言われていますが、無駄なことが解消されていけば、日本人もより高付加価値な仕事に従事できて、高品質なサービスも受けられるのではないか」と期待を膨らませた。
ブロックチェーンは私たちの生活に浸透する存在となるのか。今後の動向に注目したい。
J-WAVE『JAM THE WORLD』のコーナー「UP CLOSE」では、社会の問題に切り込む。放送時間は月曜~木曜の20時20分頃から。ぜひチェックしてほしい。
【番組情報】
番組名:『JAM THE WORLD』
放送日時:月・火・水・木曜 19時-21時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/jamtheworld/
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