Kan Sano、理想の音楽は? いきものがかり・水野良樹と対談

J-WAVEで放送中の番組『SPARK』(月曜ナビゲーター:水野良樹)。6月24日のオンエアでは、鍵盤をはじめとするマルチプレイヤー、Kan Sanoさんとの3週にわたる対談の完結編をお届けしました。今回はプロデュース業や、Kan Sanoさんのルーツ音楽の話になりました。

【1回目】Kan Sano×いきものがかり・水野良樹が音楽対談「曲はどこからつくる?」
【2回目】「日本語の歌詞」を作るのは、何が難しい? Kan Sano×いきものがかり・水野良樹が語り合う


■自分がやりたいことをやった

水野:Kan Sanoさんはいろいろな作品のプロデュースをされてます。そのときどきで、テンションや考え方に違いはありますか?
Kan Sano:もともとピアニスト、キーボーディストで、俯瞰で見るタイプだから、自分のスキルを必要としてくれている人がいれば提供したいです。最近はメジャーアーティストと仕事をすることも増えていて、僕はJ-POPも好きだけど、自分の居場所ではないとどこかで思っています。好きだから関わっていきたいけど、自分がやる音楽とは離れているし、モードは違うかもしれないですね。
水野:なるほど。
Kan Sano:特に今回のアルバム『Ghost Notes』は自分がやりたいことをやった感じで、それがどう受け止められるかとかも、考えずにやっちゃったんですよね。
水野:それがいいと思います(笑)。
Kan Sano:本当はもっとアバンギャルドな内容になる可能性もあったけど、結果的に意外とポップな作品になったと自分では思っています。それが今の自分のバランスなのかなって思ってます。
水野:確かにおっしゃる通りかもしれないです。好きなことを表現して、僕みたいにかなり遠い人間が「かっこいい」と思ったということは、そこにある種のポップさというか、他の趣味の人たちにも届く広さみたいなものが、Kan Sanoさんの今のモードとして多少はあるのかなって。
Kan Sano:このアルバムをつくっている間も、絢香さんのプロデュースをやったり、CHARAさんのツアーをまわったり、そういうことを並行してやりながらだったので、その影響もあるかもしれないです。
水野:この先どうなっていくんでしょうね?
Kan Sano:どうなんでしょうね(笑)。このあいだ初めて韓国でライブやったんですけど、めちゃくちゃ盛り上がって。今、海外ではSpotifyで聴かれれてるみたいなので、もっと海外にアプローチしていきたいです。
水野:絶対にやったほうがいいです。
Kan Sano:僕の願望も含めてですけどね。
水野:日本語のほうがユニークなものとして、一番ウケるのではないか、もしくは届くのではないかと思います。
Kan Sano:韓国でライブをやったとき、日本語で歌ったらきちんと届いていたので、「これでいいんだ」って思いましたね。
水野:(Kan Sanoさんは)J-POPをどういう風に思われてるんですか?
Kan Sano:僕も10代の頃からミスチルとかを聴いてきたから、ポップスが次の入口になってほしいと思ってます。僕の場合はミスチルの曲を聴いていて「このファンキーな音は何だろう」と思って調べたらクラビネットで、そのクラビネットは70年代あたりにスティービー・ワンダーとかがよく使っていたから、そこからブラックミュージックにいったりして。「入口であってほしい」という思いがあるので、J-POPでも、少し自分の理解をこえたものとか、それは毒といってもいいし、異物といってもいいし、カウンターカルチャー精神でも何でもいいんですけど、そういうものが入っているものが好きです。
水野:なるほど。僕も頑張ろう!

対談を振り返って、「学びが多かった」と水野。

水野:特に、歌詞の部分で日本語の扱いについて、Kan Sanoさんがいろいろな工夫をしたり、試行錯誤していたことには共感する部分がありました。最先端で、今の時代に合う格好いいサウンドをつくっている方も、言葉の扱いについてはいろいろ苦労してるんだと、すごく勉強なりました。

と、改めて振り返りました。Kan Sanoさんのニューアルバム『Ghost Notes』もチェックしてみてください。 次回の不定期対談企画もお楽しみに。


■おすすめの小説

オンエアではリスナーからの「水野さんのおすすめの本を教えてください」という質問にこたえました。

水野:最近読んだので面白かったのは、早瀬 耕さんの『未必のマクベス』。早瀬さんの22年ぶりの作品だそう。近所の書店で見つけて興味が湧きました。帯にも「こんな素晴らしい小説はない」と書いてあって「読みたい」と思いました。

『マクベス』はシェイクスピアの戯曲です。偶然にも水野は1、2ヵ月前に劇団 新感線と宮藤官九郎さんがタッグを組んだ舞台『メタルマクベス』を観に行ったばかりでした。

水野:『メタルマクベス』は宮藤官九郎さんだから面白おかしく、いろいろなギャグも盛り込まれていて、元の『マクベス』に変化が加えられているんだけど、『マクベス』のプロットは本当にすごいです。人間の業というか、欲深さにハマっていく悲劇とかが、「お話の構造ってこんなに大事なものなんだ」とすごく感銘を受けました。宮藤官九郎さんのカラーが出て面白いけど、骨となるあらすじの部分がすごく大事だと感じました。『未必のマクベス』は『マクベス』をモチーフにした現代の小説で、面白いんですよね。スリリングな展開で主人公が命を狙われていくというもので、なかなかハードボイルド。すごく面白くて一気に読んじゃいました。

そのほか、榎本憲男『エアー2.0』、山田宗樹『百年法』、伊藤計劃『ハーモニー』『虐殺器官』もおすすめとして紹介しました。

(※記事初出時、「クラリネット」と記載していましたが、正しくは「クラビネット」となります。お詫びして訂正させていただきます)

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【番組情報】
番組名:『SPARK』
放送日時:月・火・水・木曜 24時-25時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/spark

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