夫婦別姓を選択できる法制度がないのは憲法に違反するのか、しないのか。先日、注目の判決が東京地裁であり、「現行制度は合憲」との判断が下されました。この裁判の原告のひとりで、サイボウズ株式会社代表取締役社長の青野慶久さんに「なぜ夫婦別姓を求めるのか」話を訊きました。
【4月1日(月)のオンエア:『JAM THE WORLD』の「UP CLOSE」(ナビゲーター:グローバー/月曜担当ニュースアドバイザー:津田大介)
http://radiko.jp/share/?sid=FMJ&t=20190401201900
■夫婦同姓のデメリットは?
そもそも、なぜ青野さんは選択的夫婦別姓を求めたのでしょうか。
青野:選択的夫婦別姓の提案は、今の日本では結婚したときに必ず同姓にしなくてはいけませんが、別姓も選べるという法律を作ってはどうか、という内容です。私が結婚したときに、妻が名字を変えたくないと言ったので、私が名字を変えました。名字を変えても仕事では旧姓を使い続けることは珍しくはなく、当時は困らないと考えていました。ところが、年を追うごとに困難なことが多く出てきました。たとえば、結婚して名字が変わると運転免許証やパスポート、銀行口座やクレジットカードの名義も変えないといけないなど、非常に手間がかかります。
また、名字が変わることで金銭的にもコストがかかるそう。
青野:私は上場企業の社長なので自社株式を持っていますが、結婚で名字が変わることで、株式名簿から旧姓の青野が消えて、戸籍姓がどんどん出てきて「これは誰だ」となり、社会的信頼も毀損しています。また、株主総会は戸籍名を使わなくてはいけません。このような状況から「これからは夫婦別姓を選択できるようにしなくては」と考えていました。
■外国人と結婚した日本人だけが優遇されている?
これまで何度か夫婦別姓についての裁判があり、その内容を踏まえながら青野さんたちは、違う切り口で裁判に挑んだといいます。
青野:2015年に最高裁までいった裁判では「男女の不平等」を切り口に訴えていました。確かに名前を変えるのは96パーセントの夫婦が女性であることから、これを訴えましたが敗訴してしまった。そこで、私たちは外国人と日本人の差を切り口に裁判に挑みました。日本人は外国人と結婚するときには同姓にするか別姓にするかを選べる法律になっています。それにも関わらず、日本人同士で結婚する場合は必ずどちらかが名字を変えなくてはならない。これは憲法14条に定められた法の下の平等の原則に反しているというロジックで訴訟をしました。
津田:つまり、外国人と結婚した日本人だけが合法的に夫婦別姓を名乗れるという状態になっているわけですね。
青野:そうです。その内容だと一部の人だけが優遇されていることになるから、日本人同士が結婚した場合も同じ内容にした方がいい、と訴えたんです。
しかし、東京地裁はこの訴えを棄却。「判決を聞いた瞬間はガクッとした」と青野さんは振り返ります。
青野:今回の訴えはいけるんじゃないか。地裁ではあるが、勝訴が取れれば国会議員も動いてくれるのではという期待があっただけに、ガッカリしましたね。
津田:納得できないところはどういうところですか?
青野:外国人と結婚した人が優遇されていて、日本人同士が結婚した人が優遇されていないという不平等について訴えたのですが、これについては完全にスルーしているんです。そうではなく、優遇される人は優遇されるだけの合理的理由があると説明するだけで、優遇されていない人の合理的理由な説明はありませんでした。そうなると、裁判所は不平等を認めていることになりますよね。その状態で判決を下されたことに驚きました。
■選択的夫婦別姓は何度も潰されてきた
これまで何度か法務省は「選択的夫婦別姓をやるべきだ」と提案しているにも関わらず、一部の保守派議員によって反対され、つぶされてきたと津田は指摘します。
津田:この状況は国会議員の怠慢でもあると思いますが。
青野:そうですね。この問題は何十年も議論してきたことで、もう答えが見えているにも関わらず、やらない。やっぱりそれは国会議員の怠慢と言うしかないですよね。この制度が変わらないのは、まだまだ声の上げ方が足りないんだと思います。司法ですらあまり期待できないような状況なので、不満に思っている人は思いきってどんどん声をあげるべきです。そのひとつの方法には選挙もあります。また、各地方の議会から「国会で選択的夫婦別姓についての法制度を進めなさい」と意見書をあげる陳情アクションも活発になっています。そして、私たちの訴えが棄却したことによって、さらに動きが加速しそうですね。
今回の東京地裁の棄却が多くのメディアで取り上げられ、さまざまな議論を巻き起こしているなか、世論の空気が変わってきたと青野さんは感じています。
青野:ビックリするくらい世論は動いていますね。昨年はじめた署名は4年前に比べ約2.5倍の5万人ほど集まりました。おそらく選択的夫婦別姓についてのアンケートをとれば、賛成派が過半数を占めるのではないでしょうか。この状況から立法はそろそろ動かなくてはいけなくなるのではと考えています。
津田:これからの戦略はどう考えていますか?
青野:東京地裁の判決の穴をつくように、高等裁判所では攻めていきたいと思います。とにかく何度でも控訴します。そのたびにメディアが取り上げてくれることで世論が動いていくので、できるまでやり続けるという思いです。
津田:青野さんは男性でありながら選択的夫婦別姓を訴えているので、男性が関われる貴重な機会でもありますよね。
青野:この問題は長らく女性の問題だと考えられていました。それも改革が進みにくかったひとつの理由だと思います。しかし、今回はせっかくの機会なので男性もどんどん声をあげてほしいですね。
最後に青野さんは「私たちの考えに共感してくれた方は、ひとつでもふたつでもアクションを起こしてほしい」と話し、「一緒に国会を動かして、もっと楽しい日本をつくっていきましょう」とリスナーにメッセージを送りました。
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【番組情報】
番組名:『JAM THE WORLD』
放送日時:月・火・水・木曜 19時-21時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/jamtheworld/
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■夫婦同姓のデメリットは?
そもそも、なぜ青野さんは選択的夫婦別姓を求めたのでしょうか。
青野:選択的夫婦別姓の提案は、今の日本では結婚したときに必ず同姓にしなくてはいけませんが、別姓も選べるという法律を作ってはどうか、という内容です。私が結婚したときに、妻が名字を変えたくないと言ったので、私が名字を変えました。名字を変えても仕事では旧姓を使い続けることは珍しくはなく、当時は困らないと考えていました。ところが、年を追うごとに困難なことが多く出てきました。たとえば、結婚して名字が変わると運転免許証やパスポート、銀行口座やクレジットカードの名義も変えないといけないなど、非常に手間がかかります。
また、名字が変わることで金銭的にもコストがかかるそう。
青野:私は上場企業の社長なので自社株式を持っていますが、結婚で名字が変わることで、株式名簿から旧姓の青野が消えて、戸籍姓がどんどん出てきて「これは誰だ」となり、社会的信頼も毀損しています。また、株主総会は戸籍名を使わなくてはいけません。このような状況から「これからは夫婦別姓を選択できるようにしなくては」と考えていました。
■外国人と結婚した日本人だけが優遇されている?
これまで何度か夫婦別姓についての裁判があり、その内容を踏まえながら青野さんたちは、違う切り口で裁判に挑んだといいます。
青野:2015年に最高裁までいった裁判では「男女の不平等」を切り口に訴えていました。確かに名前を変えるのは96パーセントの夫婦が女性であることから、これを訴えましたが敗訴してしまった。そこで、私たちは外国人と日本人の差を切り口に裁判に挑みました。日本人は外国人と結婚するときには同姓にするか別姓にするかを選べる法律になっています。それにも関わらず、日本人同士で結婚する場合は必ずどちらかが名字を変えなくてはならない。これは憲法14条に定められた法の下の平等の原則に反しているというロジックで訴訟をしました。
津田:つまり、外国人と結婚した日本人だけが合法的に夫婦別姓を名乗れるという状態になっているわけですね。
青野:そうです。その内容だと一部の人だけが優遇されていることになるから、日本人同士が結婚した場合も同じ内容にした方がいい、と訴えたんです。
しかし、東京地裁はこの訴えを棄却。「判決を聞いた瞬間はガクッとした」と青野さんは振り返ります。
青野:今回の訴えはいけるんじゃないか。地裁ではあるが、勝訴が取れれば国会議員も動いてくれるのではという期待があっただけに、ガッカリしましたね。
津田:納得できないところはどういうところですか?
青野:外国人と結婚した人が優遇されていて、日本人同士が結婚した人が優遇されていないという不平等について訴えたのですが、これについては完全にスルーしているんです。そうではなく、優遇される人は優遇されるだけの合理的理由があると説明するだけで、優遇されていない人の合理的理由な説明はありませんでした。そうなると、裁判所は不平等を認めていることになりますよね。その状態で判決を下されたことに驚きました。
■選択的夫婦別姓は何度も潰されてきた
これまで何度か法務省は「選択的夫婦別姓をやるべきだ」と提案しているにも関わらず、一部の保守派議員によって反対され、つぶされてきたと津田は指摘します。
津田:この状況は国会議員の怠慢でもあると思いますが。
青野:そうですね。この問題は何十年も議論してきたことで、もう答えが見えているにも関わらず、やらない。やっぱりそれは国会議員の怠慢と言うしかないですよね。この制度が変わらないのは、まだまだ声の上げ方が足りないんだと思います。司法ですらあまり期待できないような状況なので、不満に思っている人は思いきってどんどん声をあげるべきです。そのひとつの方法には選挙もあります。また、各地方の議会から「国会で選択的夫婦別姓についての法制度を進めなさい」と意見書をあげる陳情アクションも活発になっています。そして、私たちの訴えが棄却したことによって、さらに動きが加速しそうですね。
今回の東京地裁の棄却が多くのメディアで取り上げられ、さまざまな議論を巻き起こしているなか、世論の空気が変わってきたと青野さんは感じています。
青野:ビックリするくらい世論は動いていますね。昨年はじめた署名は4年前に比べ約2.5倍の5万人ほど集まりました。おそらく選択的夫婦別姓についてのアンケートをとれば、賛成派が過半数を占めるのではないでしょうか。この状況から立法はそろそろ動かなくてはいけなくなるのではと考えています。
津田:これからの戦略はどう考えていますか?
青野:東京地裁の判決の穴をつくように、高等裁判所では攻めていきたいと思います。とにかく何度でも控訴します。そのたびにメディアが取り上げてくれることで世論が動いていくので、できるまでやり続けるという思いです。
津田:青野さんは男性でありながら選択的夫婦別姓を訴えているので、男性が関われる貴重な機会でもありますよね。
青野:この問題は長らく女性の問題だと考えられていました。それも改革が進みにくかったひとつの理由だと思います。しかし、今回はせっかくの機会なので男性もどんどん声をあげてほしいですね。
最後に青野さんは「私たちの考えに共感してくれた方は、ひとつでもふたつでもアクションを起こしてほしい」と話し、「一緒に国会を動かして、もっと楽しい日本をつくっていきましょう」とリスナーにメッセージを送りました。
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番組名:『JAM THE WORLD』
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