「ムーミン」は名前ではない! 研究家が明かす、意外と知らない事実

J-WAVEで放送中の番組『ACROSS THE SKY』(ナビゲーター:玄理)のワンコーナー「WORLD CONNECTORS」。3月24日(日)のオンエアでは、ムーミンや作者のトーベ・ヤンソンを通して、フィンランドの文化に注目。株式会社ムーミン物語のクリエイティブディレクターで、ムーミン研究家の川崎亜利沙さんにお話を訊きました。

ムーミンの出版物は、世界で50近い言語で翻訳・出版されています。1954年にイギリスで始まった新聞の漫画連載は世界40ヶ国、120紙に転載。1990年代に日本で作られたアニメーションシリーズも、124ヶ国で放映されています。


■ムーミンの魅力

世界中でムーミンが愛される理由は何なのでしょう? 川崎さんに訊きました。

川崎:ビジュアルが丸くて愛らしいこと。原作や物語を知っていくと、言葉の奥深さも魅力につながります。作者は小説も絵も両方書けるので、読む度に違うことに気づいたり、大人になってからも読み返すことができます。さまざまな形のキャラクターの中から、お気に入りのキャラクターを見つけられるところも魅力です。

「ムーミンはアニメーションだと思っていた」と明かす玄理ですが、もともとは小説でした。

川崎:小説は9冊発行されています。戦争中に画材がなくなり、トーベ・ヤンソンが絵を描けなくなって、現実逃避のために書き始めたのが小説の始まりです。
玄理:そうだったんですか!

知名度は地域によって異なります。最も知名度の高いフィンランドの次は、アニメーションを生んだ日本での知名度が高いです。ただし、アメリカや北米ではあまり知られていないのだとか。

川崎:起承転結や勝ち負けもない。派手なシーンもないので、ハリウッドとは真逆の世界なんです。シンプルだけど分かりにくいといった点で、アメリカなどではあまり浸透していないんです。
玄理:日本ではスナフキンが人気ですが、フィンランドではそうでもないと訊きました。
川崎:スナフキンはフィンランド語ではNuuskamuikkunen(ヌースカムイックネン)という名前で、「小魚、嗅ぎタバコ」といった感じで意味がない名前なんです。だから、フィンランドで「スナフキンが好き」って言うと「変わってる人」というか、ヒッピーっぽい感じの印象を持たれるんです。
玄理:面白いですね!


■フィンランドの様々な価値観が反映された作品

作者トーベ・ヤンソンの生き方や思想は、作品にどのような影響を与えているのでしょうか。

川崎:トーベ・ヤンソンにとってフィンランド語は母語ではありません。スウェーデン語を話すスウェーデン系フィンランド人というマイノリティです。フィンランドでは6パーセントほどの割合にあたります。家で話す言葉と外で聞こえる言葉が違うのは、彼女のアイデンティティに影響を与えています。
玄理:マイノリティといえば、トーベ・ヤンソンは同性愛者だったそうですね。
川崎:男性の恋人がいた時期もありましたが、最終的に女性のパートナーと付き合うようになりました。
玄理:作者の知り合いがモデルになっている登場人物も何人か登場すると聞きました。
川崎:スナフキンも男性の恋人がモデルだったりします。トゥーティッキというキャラクターは、女性の恋人の名前をほぼ変えずに登場させています。原作を読み進めていき、トーベ・ヤンソンの人生と照らし合わせていくと、“ムーミン=トーベ・ヤンソンの人生”となっているところがあります。

ムーミンには、フィンランドの人々の自然観も物語に反映されています。

川崎:夏至の時期を舞台にしたお話があります。北欧では夏至は一年で最も重要なイベントのひとつです。冬は長くて暗くて寒い時期が多い中で、夏至のときには巨大なかがり火が焚かれたり、ダンスパーティーをしたりします。お話の中ではそういったことが全て描かれています。
玄理:自然のもの、きのこやベリーを摘むシーンもありますよね?
川崎:フィンランドを含む北欧には、自然はみんなのもので、誰でも森に入ってキノコを摘んだりベリーを摘んだりしてもいい、という法律があります。それは、我々外国人も同じです。自然の恩恵を受けている人たちなので、環境問題への意識が高いですね。

また、ムーミンのお話の中にはこんな傾向があるそうです。

川崎:ムーミンたちは、大変なときこそ楽しむという傾向があります。彗星が迫ってくるときにダンスパーティーをしたり、家族がバラバラになりそうな中で、ムーミンママが「雨が降っているけどピクニックに行こう」と促して、実際に行くとどうでもよくなってきて、ものごとが解決していくということもありました。楽観主義ではありませんが、心の余裕のようなものがフィンランドらしいです。

ほかにも川崎さんは、ムーミンにはたくさんのキャラクターが出てきますが、それらには名前がないと、驚きの事実も明かしました。

川崎:実は“◯◯の種族の◯◯”という呼ばれ方をしています。例えば、“ムーミンの種族のママ”などです。アイデンティティがあるのか、ないのか……強烈な個性の前では“肩書き”はどうでもいいのかなと。それも、とてもフィンランドらしいと思います。

番組では、川崎さんが選曲したALMAの『Starlight』をオンエア。「4月から日本で、フィンランドで制作されたムーミンの新しいアニメが放送されるんですが、そのサウンドトラックの曲をALMAが歌っています」と紹介しました。

【この記事の放送回をradikoで聴く】
PC・スマホアプリ「radiko.jpプレミアム」(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は「radiko.jpタイムフリー」機能で聴き直せます。

【番組情報】
番組名:『ACROSS THE SKY』
放送日時:日曜 9時-12時
オフィシャルサイト:http://www.j-wave.co.jp/original/acrossthesky/

関連記事