J-WAVEがいま注目するさまざまなトピックをお届けする日曜夜の番組『J-WAVE SELECTION』。毎月第3日曜は、震災復興プログラム『Hitachi Systems HEART TO HEART』(ナビゲーター:重松 清)をお届けしています。12月16日(日)のオンエアでは、ジャーナリストの鎌田 靖さんを迎え、災害報道のあり方や、被災地、被災者に寄り添った報道について考えました。
■災害は伝え続けることに意味がある
鎌田さんはNHKの解説委員として東日本大震災の報道に長年関わり、フリーとなった今も震災被災地のその後を追い続けています。また、鎌田さんはNHK神戸放送局にいた際には、阪神大震災に遭遇しました。
今回重松は、今年6月の大阪北部地震と、9月の台風21号の被災地を訪れ、大阪で現地の方がどのように災害報道を考え、報道によってどんな影響があったのかを取材しました。大阪のシンボル・大阪城と周辺の公園を管理する大阪城パークセンターの平栗 豊さんにお話を伺うと、こんな言葉が返ってきました。
重松:災害を報じるマスコミに対し、災害の当事者として何か思うことはありますか?
平栗:本当に危ない状態のときに、「あそこはこういう被害が出た」「こういう状態になっている」ということをオンタイムで知らせてくれることは非常にありがたいです。危険な所も安全な所も伝えてほしいので、それらをオンタイムで伝えてもらえたら非常に助かります。
取材コメントを受けて、災害を伝える側の視点から鎌田さんは以下のように話します。
鎌田:たとえば東京に台風が接近して、東京から台風が過ぎ去ったときに、東京の人は「これくらいの被害でよかった」と思いますが、その台風は東北から北海道に行くこともあります。そのため、決して災害は終わりではありません。また、災害はどこかの時点で終わるのかもしれませんが、とりわけ大きい災害の場合は伝え続けることに意味があると思っています。どこで終わりとかはないということが結論です。
■報道がなくなると災害を忘れてしまう
今年、6月の大阪北部地震のあと、すぐに西日本豪雨がありました。9月の台風21号の場合も、そのすぐあとに北海道胆振東部地震が起きました。どちらも報道の軸足があとに起きた別の災害に移ってしまい、さまざまな関心やボランディアの動きが変わってしまいました。その影響について被災地の方々は、「報道がなくなると、災害をみなさんが忘れてしまうので、ボランディアも来なくなります。被災していたことも忘れて風化が早くなってしまうことがいちばん大きなことですね」「災害時は1日に40人から50人いたボランディアが5、6人になるくらいガクンと減ってしまいました。でも(ボランティアを)引き留めることは難しいです。どちらも被災地で、どちらも困っているので」と話していました。
これを聞いた蒲田さんは……。
鎌田:ニュースは新しい情報を伝えるものなので、どうしても前の災害よりもあとの災害に関心が移ってしまいます。これはある意味で仕方のないことかもしれません。とはいえ、できるだけ忘れられないようにする必要があると常に考えています。しかし、放送の時間は限られてしまうのが現状です。最近はインターネットを使ったりツールがありますから、独自にネットで発信しているところもあります。ネットが普及する以前よりは情報が増えているとは思います。
重松:報道の受け手の僕たちも、「まだ災害が終わっているわけではない」と、いつも想像力で肝に銘じておく必要があるかもしれません。
鎌田:そうですね。それがベースにあれば、災害報道が短くそれほど深くない内容であっても、視聴者の背中をちょっと押すことができるかもしれません。
■いちばん苦しんでいる人たちが何を望んでいるのか
災害報道に関して心がけていることがあると鎌田さんは言います。
鎌田:被災地で取材が終われば、次は別の取材者に行くことになります。ただ、放送で誰かを使ったときには、なるべくその人にもう一度会いに行ったり、すぐに会いに行けなかったとしても、繰り返し会うことは心がけていました。その人がどのようなかたちで変わっていくのかをフォローしていくことは意味のある内容にもなります。それはあざといと言えばそうかもしれません。しかしそうは言っても、報道を継続していくことが大事なんじゃないかなと思います。
SNSなどの情報は災害における重要な手がかりになる一方で、フェイクニュースなど混乱も招く危険性もあります。
重松:これからのマスコミは正しさを担保する役割も必要になると思います。
鎌田:それをマスコミが担っていかなくてはいけないでしょうね。少なくとも情報の選択についてマスコミは歴史があり慣れているので、ある程度は信頼してほしいという気はします。被災者に寄り添いたいとみんなが思っています。本当にいちばん苦しんでいる人たちが何を望んでいるのか。それをきちんと掌握したうえで、放送や報道内容についての批判でもいいので、どんどん言ってきてほしいです。そこから新しい放送が生まれると思います。これが本当の寄り添うという意味ではないかと考えています。
災害報道のあり方について、興味深い内容が多く語られたオンエアとなりました。
【番組情報】
番組名:『Hitachi Systems HEART TO HEART』
放送日時:毎月第3日曜 22時-22時54分
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/special/hearttoheart/
■災害は伝え続けることに意味がある
鎌田さんはNHKの解説委員として東日本大震災の報道に長年関わり、フリーとなった今も震災被災地のその後を追い続けています。また、鎌田さんはNHK神戸放送局にいた際には、阪神大震災に遭遇しました。
今回重松は、今年6月の大阪北部地震と、9月の台風21号の被災地を訪れ、大阪で現地の方がどのように災害報道を考え、報道によってどんな影響があったのかを取材しました。大阪のシンボル・大阪城と周辺の公園を管理する大阪城パークセンターの平栗 豊さんにお話を伺うと、こんな言葉が返ってきました。
重松:災害を報じるマスコミに対し、災害の当事者として何か思うことはありますか?
平栗:本当に危ない状態のときに、「あそこはこういう被害が出た」「こういう状態になっている」ということをオンタイムで知らせてくれることは非常にありがたいです。危険な所も安全な所も伝えてほしいので、それらをオンタイムで伝えてもらえたら非常に助かります。
取材コメントを受けて、災害を伝える側の視点から鎌田さんは以下のように話します。
鎌田:たとえば東京に台風が接近して、東京から台風が過ぎ去ったときに、東京の人は「これくらいの被害でよかった」と思いますが、その台風は東北から北海道に行くこともあります。そのため、決して災害は終わりではありません。また、災害はどこかの時点で終わるのかもしれませんが、とりわけ大きい災害の場合は伝え続けることに意味があると思っています。どこで終わりとかはないということが結論です。
■報道がなくなると災害を忘れてしまう
今年、6月の大阪北部地震のあと、すぐに西日本豪雨がありました。9月の台風21号の場合も、そのすぐあとに北海道胆振東部地震が起きました。どちらも報道の軸足があとに起きた別の災害に移ってしまい、さまざまな関心やボランディアの動きが変わってしまいました。その影響について被災地の方々は、「報道がなくなると、災害をみなさんが忘れてしまうので、ボランディアも来なくなります。被災していたことも忘れて風化が早くなってしまうことがいちばん大きなことですね」「災害時は1日に40人から50人いたボランディアが5、6人になるくらいガクンと減ってしまいました。でも(ボランティアを)引き留めることは難しいです。どちらも被災地で、どちらも困っているので」と話していました。
これを聞いた蒲田さんは……。
鎌田:ニュースは新しい情報を伝えるものなので、どうしても前の災害よりもあとの災害に関心が移ってしまいます。これはある意味で仕方のないことかもしれません。とはいえ、できるだけ忘れられないようにする必要があると常に考えています。しかし、放送の時間は限られてしまうのが現状です。最近はインターネットを使ったりツールがありますから、独自にネットで発信しているところもあります。ネットが普及する以前よりは情報が増えているとは思います。
重松:報道の受け手の僕たちも、「まだ災害が終わっているわけではない」と、いつも想像力で肝に銘じておく必要があるかもしれません。
鎌田:そうですね。それがベースにあれば、災害報道が短くそれほど深くない内容であっても、視聴者の背中をちょっと押すことができるかもしれません。
■いちばん苦しんでいる人たちが何を望んでいるのか
災害報道に関して心がけていることがあると鎌田さんは言います。
鎌田:被災地で取材が終われば、次は別の取材者に行くことになります。ただ、放送で誰かを使ったときには、なるべくその人にもう一度会いに行ったり、すぐに会いに行けなかったとしても、繰り返し会うことは心がけていました。その人がどのようなかたちで変わっていくのかをフォローしていくことは意味のある内容にもなります。それはあざといと言えばそうかもしれません。しかしそうは言っても、報道を継続していくことが大事なんじゃないかなと思います。
SNSなどの情報は災害における重要な手がかりになる一方で、フェイクニュースなど混乱も招く危険性もあります。
重松:これからのマスコミは正しさを担保する役割も必要になると思います。
鎌田:それをマスコミが担っていかなくてはいけないでしょうね。少なくとも情報の選択についてマスコミは歴史があり慣れているので、ある程度は信頼してほしいという気はします。被災者に寄り添いたいとみんなが思っています。本当にいちばん苦しんでいる人たちが何を望んでいるのか。それをきちんと掌握したうえで、放送や報道内容についての批判でもいいので、どんどん言ってきてほしいです。そこから新しい放送が生まれると思います。これが本当の寄り添うという意味ではないかと考えています。
災害報道のあり方について、興味深い内容が多く語られたオンエアとなりました。
【番組情報】
番組名:『Hitachi Systems HEART TO HEART』
放送日時:毎月第3日曜 22時-22時54分
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/special/hearttoheart/