J-WAVEがいま注目するさまざまなトピックをお届けする日曜夜の番組『J-WAVE SELECTION』。毎月第3日曜は、震災復興プログラム『Hitachi Systems HEART TO HEART』(ナビゲーター:重松 清)をお届けしています。10月21日(日)のオンエアでは、防災行動学の見地から、東日本大震災や西日本豪雨など様々な災害について研究分析されているNPO法人環境防災総合政策研究機構、環境・防災研究所副所長で東京大学大学院客員教授の松尾一郎さんを迎え、「どうしたら災害を自分事ととらえることができるのか」を考えました。
■防災意識は高かったのに…被害は想像を超えた
今回、重松は7月の西日本豪雨の被災地である岡山県倉敷市真備町を訪れ、被災した方々にお話を伺いました。被災地のみなさんの話で共通していたのが「まさか自分が被災者になるとは思っていなかったこと」だと話します。
重松が取材した一人、真備町薗地区に住む浅野静子さんは民生委員やまちづくり協議会のメンバーを務め、自身は日頃から防災の意識は高かったほうだ、と話していました。
浅野:明治や昭和にこの地を襲った水害の話を父からは聞いていました。ただ、それでもここまで水はこなかったんです。今回のようにまさか末政川が決壊する想像はできていませんでした。
重松:近所のみなさんもそうでしたか?
浅野:そうなんです。水が引いたあと、各家を歩いてまわりました。みなさん「玄関先まで水が来たけど、そこで終わるだろうと思った」と話していました。でも、「だんだん水が流れ込み、畳の上まで来て、2階まで来た」という方がたくさんいました。
■「自分だけは助かる」と思ってしまう
取材を振り返り、重松と松尾さんは以下のように話しました。
重松:末政川に行くと一級河川の小田川の支流で本当に小さな川なんです。水量もそれほど多くなかったので、「まさかこの川があふれるとは」というイメージを持ちました。
松尾:私も西日本豪雨の被災地である岡山・広島・愛媛を訪れました。そのときに真備町にも行き、5、6人の方にお話を聞きました。みなさん異口同音で「まさか河川が氾濫するとは思ってもみなかった」と話していました。川の堤防はしっかり強化されているし、川の近くに排水機場も設置され内水氾濫も少なくなったので、地域の方はそれなりに整備が強化されたと思っていました。だから、まさかのまさかでした。これは真備町だけではなく、広島や愛媛もそうでした。要因はいくつかあり、例えば人生80年の尺度で物事をみたときに、ほとんど大きな災害の経験がない方が多い。自分には経験がないことだし、両親から聞いたことはあるけど、具体的な被害を自分自身の頭で整理されているわけではありません。日本人は危険に直面しても「自分だけは助かる」と信念を持っているんです。
重松:なるほど。
松尾:これは日本だけじゃなくてアメリカも含め、人としての普遍的な考え方だと言えます。だけど、私たち日本を考えたときには、過去に大きな災害を何度も経験しているので、ある意味で私たちのDNAにはその災害感が入っていると考えています。私たちの先人も含めて経験してきた災害感があるなか、物事が起こっても「これは自分の生き死にに関係するのか」と思いたくないということもあるかもしれません。
重松:むしろ、災害を考えたくない。無縁の存在にしておきたいと。
松尾:そうです。防災が進まないのはそこなんです。多くの方が楽しいことだけ考えていたいと思っているし、辛いことは考えてもいない。四六時中、災害のことを考えたくない日本人であっても、災害のことを時々は考えられるような仕組みをどうやって作っていくかが今必要なことだと思います。
そう話す松尾さんは「物事が起こり始めて逃げるのでは遅い」と指摘します。
松尾:起こり始める前に逃げることが大切です。そのなかで危険が空振りに終わったとしても、それを許容する社会であることが重要です。いくら予想が外れたとしても行政を責めるようではダメだと思います。「災害が起きても自分は大丈夫だ」と考える人もいますが、そもそも今は自然がどんどん変化しています。それを私たちは真摯に受け止めて、自然に逆らわらず対応することが重要だと考えています。
■「つらいことは考えたくないけれど、考える」のが大事
松尾さんの話を聞いて、重松は以下のように話しました。
重松:考えたくないことかもしれないけど、それをしっかり考えて想像しなくてはいけない。私たちはなるべく悪いことは考えたくないという本音はあると思いますが、悪いことが起きてからではもう間に合わない。「明日は我が身」の明日になったのではもう遅いということを心がけたいと思います。
「自分は大丈夫」とは考えず、被害の可能性を考えながら早めに行動することが大切です。
【番組情報】
番組名:『Hitachi Systems HEART TO HEART』
放送日時:毎月第3日曜 22時-22時54分
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/special/hearttoheart/
■防災意識は高かったのに…被害は想像を超えた
今回、重松は7月の西日本豪雨の被災地である岡山県倉敷市真備町を訪れ、被災した方々にお話を伺いました。被災地のみなさんの話で共通していたのが「まさか自分が被災者になるとは思っていなかったこと」だと話します。
重松が取材した一人、真備町薗地区に住む浅野静子さんは民生委員やまちづくり協議会のメンバーを務め、自身は日頃から防災の意識は高かったほうだ、と話していました。
浅野:明治や昭和にこの地を襲った水害の話を父からは聞いていました。ただ、それでもここまで水はこなかったんです。今回のようにまさか末政川が決壊する想像はできていませんでした。
重松:近所のみなさんもそうでしたか?
浅野:そうなんです。水が引いたあと、各家を歩いてまわりました。みなさん「玄関先まで水が来たけど、そこで終わるだろうと思った」と話していました。でも、「だんだん水が流れ込み、畳の上まで来て、2階まで来た」という方がたくさんいました。
■「自分だけは助かる」と思ってしまう
取材を振り返り、重松と松尾さんは以下のように話しました。
重松:末政川に行くと一級河川の小田川の支流で本当に小さな川なんです。水量もそれほど多くなかったので、「まさかこの川があふれるとは」というイメージを持ちました。
松尾:私も西日本豪雨の被災地である岡山・広島・愛媛を訪れました。そのときに真備町にも行き、5、6人の方にお話を聞きました。みなさん異口同音で「まさか河川が氾濫するとは思ってもみなかった」と話していました。川の堤防はしっかり強化されているし、川の近くに排水機場も設置され内水氾濫も少なくなったので、地域の方はそれなりに整備が強化されたと思っていました。だから、まさかのまさかでした。これは真備町だけではなく、広島や愛媛もそうでした。要因はいくつかあり、例えば人生80年の尺度で物事をみたときに、ほとんど大きな災害の経験がない方が多い。自分には経験がないことだし、両親から聞いたことはあるけど、具体的な被害を自分自身の頭で整理されているわけではありません。日本人は危険に直面しても「自分だけは助かる」と信念を持っているんです。
重松:なるほど。
松尾:これは日本だけじゃなくてアメリカも含め、人としての普遍的な考え方だと言えます。だけど、私たち日本を考えたときには、過去に大きな災害を何度も経験しているので、ある意味で私たちのDNAにはその災害感が入っていると考えています。私たちの先人も含めて経験してきた災害感があるなか、物事が起こっても「これは自分の生き死にに関係するのか」と思いたくないということもあるかもしれません。
重松:むしろ、災害を考えたくない。無縁の存在にしておきたいと。
松尾:そうです。防災が進まないのはそこなんです。多くの方が楽しいことだけ考えていたいと思っているし、辛いことは考えてもいない。四六時中、災害のことを考えたくない日本人であっても、災害のことを時々は考えられるような仕組みをどうやって作っていくかが今必要なことだと思います。
そう話す松尾さんは「物事が起こり始めて逃げるのでは遅い」と指摘します。
松尾:起こり始める前に逃げることが大切です。そのなかで危険が空振りに終わったとしても、それを許容する社会であることが重要です。いくら予想が外れたとしても行政を責めるようではダメだと思います。「災害が起きても自分は大丈夫だ」と考える人もいますが、そもそも今は自然がどんどん変化しています。それを私たちは真摯に受け止めて、自然に逆らわらず対応することが重要だと考えています。
■「つらいことは考えたくないけれど、考える」のが大事
松尾さんの話を聞いて、重松は以下のように話しました。
重松:考えたくないことかもしれないけど、それをしっかり考えて想像しなくてはいけない。私たちはなるべく悪いことは考えたくないという本音はあると思いますが、悪いことが起きてからではもう間に合わない。「明日は我が身」の明日になったのではもう遅いということを心がけたいと思います。
「自分は大丈夫」とは考えず、被害の可能性を考えながら早めに行動することが大切です。
【番組情報】
番組名:『Hitachi Systems HEART TO HEART』
放送日時:毎月第3日曜 22時-22時54分
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/special/hearttoheart/