音楽ストリーミングによって、何が変わったか? 亀田誠治、蔦谷好位置、ジェイ・コウガミらがトーク

日本最大級のテクノロジーと音楽の祭典「J-WAVE INNOVATION WORLD FESTA 2018 Supported by CHINTAI」(以下、イノフェス)が、9月29日(土)、30日(日)に六 本木ヒルズで開催。本記事では初日に「TDK イノフェス メディア・カフェ」にて開催されたトークセッション「J-POPの世界戦略」の模様をお届けする。

出演は、亀田誠治(音楽プロデューサー)、蔦谷好位置(音楽プロデューサー)、ジェイ・コウガミ(デジタル・音楽ジャーナリスト)。進行は鈴木貴歩(エンターテック・アクセラレーター)という錚々たるメンバーだ。


■ストリーミングの重要性

まずは「音楽市場の変化」をテーマに、トークセッションがスタート。ストリーミングで楽しんでいる人の割合は、アメリカではおよそ75%、イギリスも60%強に上っている。観客にも訊ねると、ストリーミングサービスで楽しむという人が半数を占めていた。鈴木は「日本はパッケージ大国といわれているが、変化していく可能性は高く、“世界を狙う”という意味では、ストリーミングというプラットフォームは欠かせないものになっていく」と解説。

さらに、韓国の男性グループ、BTSがアメリカのビルボードのチャートで1位を獲得した理由を検証した。亀田は、BTSは大きなプロダクションに所属しているわけではないが、うまくソーシャルメディアを使ってファンを巻き込んでいることに触れた。

海外では、インディーズのアーティストが楽曲をフリーでアップできるサービスも注目されている。蔦谷氏はサウンドクラウドなどで、フォロワーが少ない人の作品を探すものの、権利などの問題で番組で紹介できないため、「そういうことをクリアにしてほしい」と述べた。こうしたサービスにアップロードされた楽曲は、再生されるとチャートに反映される。これには亀田氏も「画期的」と賞賛した。


■これからのクリエイティブ戦略

蔦谷氏によると、ストリーミングの需要が伸びるにつれて、楽曲が短くなり、2分台の曲が増えているそう。若いアーティストと作るときは短く作っているそうだ。亀田氏も、イントロが4小節があると「長い」と言われると語った。

ストリーミングの長所を、亀田氏は3点あげた。
・国境や時代が地続きになったこと
・解禁を待たなくてもよくなったこと
・世界で受け入れられている音楽が瞬時に共有できること

そのほか、日本と海外の違いとして、“共作”に対する考え方の違いが話題に上がった。日本では作詞・作曲を一人で行うことが多いものの、海外では共作が当たり前になっている。亀田も海外では共作に関わっており、大勢のクリエイターがひとつの場所に集まりエネルギーを注ぎ込むことで、パンチのある音楽が出来ることを述べた。また、ジェイは、海外では若いプロデューサーが活躍していることを指摘。土壌が広がる要因になっているそうだ。


■ストリーミングが伸びる国、伸びない国

ジェイによると、ストリーミングが伸びる国と、そうではない国とでは特徴の違いがあるそうだ。
・伸びる国:レコード会社がファンと向き合っている。
・伸びない国:レコード会社が上司と向き合っている。
レコード会社がアーティストの優れた点を、業界を絡めてファンに提案できているかどうかがポイントだ。また、蔦谷は松任谷由実が楽曲の配信を解禁したことに触れ、ほかのアーティストも配信することを提案。いろいろなアーティストの曲が、並列で聴くことができることの重要性を訴えた。

トークセッションではこのほか、「ストリーミングを利用することで、高齢者でも簡単に楽曲を楽しむことができることを、もっとアピールすべき」(亀田)、「次世代が憧れるスターが誕生することの重要性」(蔦谷)といった話が飛び出した。締めくくりに亀田は音楽の未来について「世界と地続きになった今、誰にも平等にチャンスはある。いろいろなボールを投げていくことが大事。未来は明るいと思う」と話した。

【お知らせ】
明日9月30日(日)開催の「J-WAVE INNOVATION WORLD FESTA 2018 Supported by CHINTAI」は、台風24号の影響により、六本木ヒルズアリーナでのコンテンツを中止。ヒルズカフェ/スペース、大屋根プラザ、TSUKUBA INNOVATION Lab. のみで開催します。

「J-WAVE INNOVATION WORLD FESTA 2018 Supported by CHINTAI」公式サイト

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