カンヌ最高賞受賞! 是枝裕和監督が語る、日本映画を海外に広めるために必要なこと

J-WAVEで放送中の番組『ACROSS THE SKY』(ナビゲーター:玄理)のワンコーナー「LEXUS TOKYO TREASURE」。6月3日(日)のオンエアでは、日本映画としては21年ぶりにカンヌ国際映画祭の最高賞・パルムドールを受賞した映画『万引き家族』の監督、是枝裕和さんをお迎えしました。


■パルムドール受賞の心境

『万引き家族』のパルムドール受賞はニュースなどでも話題になっていますが、まずは改めて、パルムドールを受賞された現在のお気持ちを、是枝監督にお訊きしました。

是枝:なかなか実感を持つって難しいんですけど……でもタクシーの運転手さんに「おめでとう」って声をかけられたり、街中でご飯食べて出た時にお店の前で待ってたおばちゃんたちに肩叩かれたり(笑)。そういうのは嬉しいですね。

『万引き家族』は、監督として通算7回目のカンヌ国際映画祭出品作です。そのため、今回の受賞についてニュースなどでは「悲願」と書かれたりもしていますが、是枝監督は……。

是枝:まぁ賞を獲るために参加しているわけではないんですけど。どうしても賞レースの結果に注目が集まるので、映画祭って。そう言われてもしょうがないところはあるんですけど、競い合うという感覚は、実は言ってしまうとそんなにないんですよ。

是枝監督にとってカンヌ国際映画祭の一番の目的は、みんなが豊かな映画の文化に浸っている感じを味わうことだそう。しかし、最高賞という結果が伴ってくると、自分が考えていたよりも賞の大きさを実感したと言います。


■日本映画が海外に広まっていくために必要なこと

是枝監督に、“日本映画の海外進出”について意見を伺いました。今後、日本映画がもっと海外に広まっていくために必要なことはどんなことでしょうか?

是枝:これね、難しいんだよね。僕がやっているような、映画祭に出てヨーロッパのいろんな国で劇場公開までもっていこうと思ったときには、おそらくより強く監督の個性、監督の作家性っていうのを打ち出した作品を作っていくっていうことだと思います。ヨーロッパでは「映画は監督のもの」「監督の作品」という意識がものすごく強いんですよね。そこの色が薄まれば薄まるほど映画作品としては認められなくなっていくところがあるんですよね。

ただ、これがアメリカになるとまた別なので、エンターテイメントの映画としての作り手が日本から海外に出て行こうと思ったときには、もっと日本の中だけではなくて、言語ができるようになったほうがいいでしょうし、海外の学校で学ぶ学生が出てきたほうがいいと思うんです。今はその両方が内向きになってしまっているので、なかなか難しい状況にあると思います。

でも、これを突破しないことには、国内マーケットだけでは徐々に縮小していってしまい、ますます大きくなっていく中国マーケットに対抗するためにも、考え方を少し変えなければいけないと難しいと思います。


■日本映画の体制について言いたいこと

続けて、日本の映画作りの体制に対して思うことを訊きました。

是枝:この10~15年で二極化が進んでしまったので、僕がデビューした頃にあった、中規模の作品を日本中のミニシアターを通じて劇場公開してペイすることはなくなってしまいました。これはもうしょうがないことですが、個性のある映画館を支えて存続させていくか、ということが僕らにとって大事なことです。僕の作品もそうですけど、本当は中規模な公開規模に適した作品が、逆に今は300館という大きな規模で一斉に公開されて上映が終了するという……。あとは単館で、なかなか頑張っても製作費が回収できない状況で、一目に触れずに終わってしまうという二極化が進んでいます。そのため、もう少し興行の形が多様化していくために、東宝や松竹などが多様な配給に対応できる体制を作っていくといいな、と苦言を呈しています。
玄理:観たいと思っていても、ビッグバジェットの映画でもあっという間に終わっていたりするんですよね。
是枝:昔は8週持つと言われていたんですけど、今はもう3週……観る方の興味の持続がそこまで続かなくなっている。それは作品の力もあると思うんですけど、なかなかそこまで引っ張れなくなっているんですね。
玄理:3週間ですと、撮影する期間の方が長くてやるせないですよね?
是枝:そうですね。

今後は「様々なジャンルに挑戦していきたい」と、パルムドール受賞時に答えていた是枝監督。「例えば純粋なラブストーリーや『ちはやふる』のような青春ものもやってみたい」と挙げましたが、「なかなかそういうのはオファー来ないんですよね(笑)。重苦しい感じが、僕の作品のリストから漂っているのかもしれません」と本音を明かしました。

最後に『万引き家族』のどんな点に注目して観てほしいかと伺うと、是枝監督は「とにかく役者が本当にすばらしくて、自分の映画かどうか抜きにしても、彼らのアンサンブルがいつまでも観ていられるくらい、全ての役者がよかったと思います。奇跡的に役と作品と役柄が出会ったのかなと思っています。まずはその役者を堪能しに来ていただければと思います」と語った是枝監督。

リリー・フランキー、安藤サクラ、松岡茉優、樹木希林など錚々たる顔ぶれが出演している映画『万引き家族』は、6月8日(金)より全国公開されます。ぜひ劇場に足を運んでみてください。

この記事の放送回をradikoで聴く
PC・スマホアプリ「radiko.jpプレミアム」(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は「radiko.jpタイムフリー」機能で聴き直せます。

【番組情報】
番組名:『ACROSS THE SKY』
放送日時:日曜9時-12時
オフィシャルサイト: http://www.j-wave.co.jp/original/acrossthesky/

関連記事