痴漢をする原因は「性欲」だけじゃない…専門家が語る、常習者の心理

J-WAVEで放送中の番組『JAM THE WORLD』(ナビゲーター:グローバー)のワンコーナー「UP CLOSE」。5月8日(火)のオンエアでは、火曜日のニュース・スーパーバイザー、青木 理が登場。ゲストに大森榎本クリニック精神保健福祉部長の斉藤章佳さんをお迎えし、「なぜ痴漢をするのか」「どう減らしていくか」を考えました。


■痴漢をする男性の心理

昨年、痴漢を疑われた電車の乗客が線路上を逃走した事件が大きく報道されました。JR東日本は今年度以降、新たに製造する全ての旅客車両の車内に痴漢対策として防犯カメラを設けるそうです。

斉藤さんは「痴漢は依存症の側面があり、医学的治療が必要」と訴え、昨年、はじめて社会病理的な視点から痴漢を解析した書籍『男が痴漢になる理由』(イースト・プレス)を発売。日本で先駆的に性犯罪再発防止プログラムに取り組んでいます。

斉藤さんのクリニックには、2000名を超える性犯罪を犯してしまった人たちが訪れ、そのなかで特に痴漢を犯した人がいちばん多かったそうです。痴漢をした人は、データによると、四大卒で妻子があるサラリーマンという、いわゆる日本人男性のいちばん多いとされている層でした。

斉藤:痴漢をする男性に対して、「非モテで、性欲を持て余している」「性欲がコントロールできない」といったイメージを抱く人も多いでしょうが、実態はそうではないと明らかになったのです。

では、どのような動機で痴漢をしてしまうのでしょうか。

斉藤:「性犯罪を犯す根っこには、性欲があるのではないか」と一般的には思われています。実際に性犯罪を犯した人たちに聞くと、確かにそういう側面もある。ただ、特に痴漢行為に限っては、いじめに似た支配欲求、つまり弱いものをいじめることで自分が優位に立つ優越感や、問題行動を達成したときの達成感や高揚感、「今日はどのような人が釣れるのか」と釣りを連想させるゲーム的な感覚など、複合的な快楽を覚えていることがわかりました。


■「たまたま手が触れた」が痴漢のきっかけに

痴漢は性犯罪のなかで再犯率が最も高いといわれています。

青木:痴漢が依存症になる以前、最初に痴漢をやるきっかけはどのようなことが多いのでしょうか。
斉藤:「痴漢を扱ったアダルトビデオがきっかけになっているのでは」と言われることもありますが、これは証拠のない偏見です。彼らが最初に痴漢をやるきっかけは、たまたま手が触れた、ということがいちばん多いんです。それ以外にも、他の人の痴漢行為を目撃して自分にもできると思いやってしまうとか。少数派ですが、痴漢サイトを模倣して実行に移す人もいます。


■「監視」が痴漢を亢進させることも…なぜ?

痴漢は性欲だけに基づく犯罪行為ではないため、罰して社会的制裁を与えるだけでは、なくならない。医療的な治療行為が必要だと、斉藤さんは指摘します。

斉藤:痴漢が常習化していない人や初犯の人たちに対して、罰や監視は非常に効果的だと言われています。しかし、常習化し、依存症のようになった人には、罰や監視がさらに問題行動を亢進させる側面があります。より難しい環境で問題行動をおこなうことによる達成感は代え難いものだと、(痴漢を犯した)本人たちが言っていました。電車内の防犯カメラは常習化した人たちに効果的かどうか、議論をしたほうがいいでしょう。

斉藤さんは、何度も痴漢を犯してしまう人たちに対して、「リラプス・プリベンションモデル」(再発防止モデル)という治療プログラムをおこなっています。

斉藤:これは「習慣化された問題行動を変化させるにはどうすればいいか」に焦点を置いたプログラムです。まず、痴漢行為につながりやすい引き金をしっかり特定し、その引き金に対して適切な対処をする。そして自分のリスクマネジメントをしっかりとやる。これを毎日地道に繰り返すことで習慣が少しずつ変わっていきます。決して難しい作業をするのではなくて、シンプルなことを丁寧にやりながら、「今日一日、痴漢しなくてすんだ」という日を積み重ねていくという非常に地道な作業になります。

例として、電車の乗る車両を変えたり、電車が混む時間帯を避けたり、自分なりのリスク回避方法を毎日のなかで身につけていくと、斉藤さんは話しました。痴漢をなくすためには、痴漢を犯してしまう人の特性を正しく理解し、治療することが重要と言えます。

5月24日(木)には港区立男女平等参画センター1階リーブラホールで、斉藤さんが参加するシンポジウム「性犯罪をなくすための対話 第2回『軽視される痴漢被害』」が開催されます。こちらもぜひチェックしてみてください。

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【番組情報】
番組名:『JAM THE WORLD』
放送日時:月・火・水・木曜 19時-21時
オフィシャルサイト:http://www.j-wave.co.jp/original/jamtheworld/

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