【連載】やきそばかおるのEar!Ear!Ear!(vol.31)
あるラジオ番組を聴いていたら、高校生からのメールで「彼女と付き合ったことがないので、夏休みの間に彼女を作って花火大会に行きたい」というメッセージが紹介されていました。すると、その番組のパーソナリティーが「初めてのデートで花火大会に行くのはハードルが高い。まずは普通の日に一緒に買い物に行ったり、美味しいものを食べた方がいい」とアドバイスをしていました。
さて、あなたは「初めてのデートで、花火大会派」「初めてのデートは、普通に町歩き派」のどちらでしょう。
この回答は、今までにどんな花火大会を経験してきたかによって、変わってくると思われます。つまり、都会の花火を見てきたか、田舎の花火を見てきたか…によるのです。田舎から上京した私が、都会の花火大会を見て思ったことは「都会の花火大会は、なんて派手で大盤振る舞いなんだ」ということでした。神宮外苑花火大会は、およそ1万2000発も打ち上がるほか、豪華なアーティストのライブも行われます。隅田川花火大会に至っては、およそ2万2000発も派手に打ち上げられます。
カップルにとって花火がジャンジャン上がることのメリットは、口下手でも困らないこと。「うわー、綺麗」「綺麗だね」ぐらいの少ない会話でも、花火が2人の甘い雰囲気を盛り上げてくれます。花火大会が終わった後に、その余韻で線香花火をやったとしても風情があります。そういった“花火エリート”な街に生まれ育った方は「初めてのデートで、花火大会派」になるでしょう。
ところが、田舎の花火大会だとそうはいきません。私が育った自治体の花火大会は3000発。一度、バブルの頃に3500発に増量された時は、地元の新聞で大ニュースになったほどです。家の庭で花火をする時に「せっかく買ってきた花火に、どんどん火をつけたらもったいない!」と言わんばかりに、我が故郷の花火大会では、1時間半も時間をかけて、ちょっとずつ上げていきます。具体的にいうと、花火が30秒から1分ぐらい上がると、それから10分くらい休憩が入るのです。この間、花火大会の会場では、小学生の鼓笛隊の演奏(ある意味ライブ)や、地元の婦人会の盆踊りが披露されます。花火30秒に鼓笛隊9分30秒だなんて、どう考えてもバランスが合いません。会場で見れば時間はつぶせますが、さすがに「うわー、あの盆踊り、素敵」とはならないわけで、口数が少ないカップルにとっては、ハードルが高いものがあります。というわけで、私は「初めてのデートは普通に町歩き派」です。
カップルの会話といえば、J-WAVEで放送されている「TOYOTA DRIVE IN JAPAN」(金曜 16時)では、理想ともいえるべき男女の会話が聞けます。番組では山口智充さん(ぐっさん)と、モデルの浦浜アリサさん(アリちゃん)が車に乗ってドライブします。月ごとに目的地が変わり、例えば、6月は横浜の本牧ふ頭をめざしてドライブ。その様子を5週に分けて放送していました。途中で船に乗って魚を釣ったり、その魚をさばいて天ぷらにして揚げたてを食べたり、地元のお店でカッコイイ洋服を選んだりとアグレッシブ。収録の様子が番組のインスタグラムで見られますが、実に楽しそうです。
中でも注目は、ラジオを通じて伝わってくる、ぐっさんの優しい気遣い。その会話術は、思わずメモをとりたくなります。
本牧ふ頭に向かう日は天気が非常に良かったため、浦浜さんは「ぐっさんは、晴れ男でしょ」と一言。ここで普通の男だったら「そう、俺は晴れ男なんだよ」と言って、自分の手柄にしようとしがちですが、ぐっさんともなると言うことが違います。かといって「アリちゃんの方こそ、晴れ女じゃないの?」と言うのもありがちです。
「2人のパワーじゃないですか?」
この「2人の」というところがニクい。自分ひとりでも、相手でもなく「2人」なのです。この一言は私の心のボキャブラリー(ページ数薄め)には掲載されていなかったため、深く心に刻んでおきました。
他にも、シロギスの鱗をとってさばく作業でも、オンエアではぐっさんが器用にさばいているように聞こえましたが、ぐっさんは「(実は)アリちゃんの方がうまかったんです! さすが!」と、さりげなく褒めていました。
ぐっさんから学ぶ会話術として、ほかにも「この先の出来事に関する“あるある”を言う」というのがあります。人間は日常会話の中で「あるある」なことを言われると、共感して笑ってしまうことがあります。例えば、前述のようにぐっさんがシロギスの鱗を剥いでいた時のこと。その様子を見ていた浦浜さんに「こういう時って、家に帰ってふと自分の足を見た時に、なぜか鱗がくっついていたりするんだよね」と、いかにもありそうなことを言って場を和ませていました。
ぐっさんに学ぶ会話術のポイントは、食事の場面にもあります。食事をする時のリアクションが大きめなのです。例えば…
浦浜さんが「うーーん、おいしそう!」「フレンチフライ、大好き!」「グレイビーソース、おいしいーー!」と言えば、ぐっさんも「めちゃくちゃおいしそう!」「うまい! うまい!」と同じようなテンションで言います。実は、自分と同じような仕草や表情をする相手に好感を抱く傾向があり、心理学では「ミラー効果」と呼ばれています。2人はもともとリアクションが大きいので無意識にやっていると思われますが、ミラー効果は恋人がいない人にとっては参考になるため、独り身の人は試したいところです(特に私が)。
このように「TOYOTA DRIVE IN JAPAN」では、聴いていて微笑ましいやりとりが行われるわけですが、一点だけ、ぐっさんにとっては恐怖の瞬間になったと思われる場面がありました。それは、走行中に横浜港の話が出てきた時のことです。浦浜さんが何気なく、こんな一言を言いました。
「初めて横浜港に入港してきた船には、何が載せられていたんですかね?」
さぁ、大変です。いきなり言われて、分かる由がありません。浦浜さんがなんの悪気もなく投げかけた質問でも、芸人であるぐっさんにとってみれば、これはクイズではなく、大喜利なのです。不意に出されたお題に一瞬、凍りついたであろう、ぐっさん。のんびりと部屋でゴロゴロしていたところに、抜き打ちで「IPPONグランプリ」(フジテレビ)が始まったようなものです。ぐっさんは、この突然の出来事に対応できるのだろうか…と固唾を飲んでラジオに耳を傾けていると、ぐっさんは、ちょっと困ったような声で、
「下着かな…しかも大量に」と答えを“提出”。
すると、クスリとした浦浜さん! この一言で、ぐっさんは無事、難を逃れました。
TOYOTA DRIVE IN JAPAN https://www.j-wave.co.jp/original/driveinjapan/
あるラジオ番組を聴いていたら、高校生からのメールで「彼女と付き合ったことがないので、夏休みの間に彼女を作って花火大会に行きたい」というメッセージが紹介されていました。すると、その番組のパーソナリティーが「初めてのデートで花火大会に行くのはハードルが高い。まずは普通の日に一緒に買い物に行ったり、美味しいものを食べた方がいい」とアドバイスをしていました。
さて、あなたは「初めてのデートで、花火大会派」「初めてのデートは、普通に町歩き派」のどちらでしょう。
この回答は、今までにどんな花火大会を経験してきたかによって、変わってくると思われます。つまり、都会の花火を見てきたか、田舎の花火を見てきたか…によるのです。田舎から上京した私が、都会の花火大会を見て思ったことは「都会の花火大会は、なんて派手で大盤振る舞いなんだ」ということでした。神宮外苑花火大会は、およそ1万2000発も打ち上がるほか、豪華なアーティストのライブも行われます。隅田川花火大会に至っては、およそ2万2000発も派手に打ち上げられます。
カップルにとって花火がジャンジャン上がることのメリットは、口下手でも困らないこと。「うわー、綺麗」「綺麗だね」ぐらいの少ない会話でも、花火が2人の甘い雰囲気を盛り上げてくれます。花火大会が終わった後に、その余韻で線香花火をやったとしても風情があります。そういった“花火エリート”な街に生まれ育った方は「初めてのデートで、花火大会派」になるでしょう。
ところが、田舎の花火大会だとそうはいきません。私が育った自治体の花火大会は3000発。一度、バブルの頃に3500発に増量された時は、地元の新聞で大ニュースになったほどです。家の庭で花火をする時に「せっかく買ってきた花火に、どんどん火をつけたらもったいない!」と言わんばかりに、我が故郷の花火大会では、1時間半も時間をかけて、ちょっとずつ上げていきます。具体的にいうと、花火が30秒から1分ぐらい上がると、それから10分くらい休憩が入るのです。この間、花火大会の会場では、小学生の鼓笛隊の演奏(ある意味ライブ)や、地元の婦人会の盆踊りが披露されます。花火30秒に鼓笛隊9分30秒だなんて、どう考えてもバランスが合いません。会場で見れば時間はつぶせますが、さすがに「うわー、あの盆踊り、素敵」とはならないわけで、口数が少ないカップルにとっては、ハードルが高いものがあります。というわけで、私は「初めてのデートは普通に町歩き派」です。
カップルの会話といえば、J-WAVEで放送されている「TOYOTA DRIVE IN JAPAN」(金曜 16時)では、理想ともいえるべき男女の会話が聞けます。番組では山口智充さん(ぐっさん)と、モデルの浦浜アリサさん(アリちゃん)が車に乗ってドライブします。月ごとに目的地が変わり、例えば、6月は横浜の本牧ふ頭をめざしてドライブ。その様子を5週に分けて放送していました。途中で船に乗って魚を釣ったり、その魚をさばいて天ぷらにして揚げたてを食べたり、地元のお店でカッコイイ洋服を選んだりとアグレッシブ。収録の様子が番組のインスタグラムで見られますが、実に楽しそうです。
中でも注目は、ラジオを通じて伝わってくる、ぐっさんの優しい気遣い。その会話術は、思わずメモをとりたくなります。
本牧ふ頭に向かう日は天気が非常に良かったため、浦浜さんは「ぐっさんは、晴れ男でしょ」と一言。ここで普通の男だったら「そう、俺は晴れ男なんだよ」と言って、自分の手柄にしようとしがちですが、ぐっさんともなると言うことが違います。かといって「アリちゃんの方こそ、晴れ女じゃないの?」と言うのもありがちです。
「2人のパワーじゃないですか?」
この「2人の」というところがニクい。自分ひとりでも、相手でもなく「2人」なのです。この一言は私の心のボキャブラリー(ページ数薄め)には掲載されていなかったため、深く心に刻んでおきました。
他にも、シロギスの鱗をとってさばく作業でも、オンエアではぐっさんが器用にさばいているように聞こえましたが、ぐっさんは「(実は)アリちゃんの方がうまかったんです! さすが!」と、さりげなく褒めていました。
ぐっさんから学ぶ会話術として、ほかにも「この先の出来事に関する“あるある”を言う」というのがあります。人間は日常会話の中で「あるある」なことを言われると、共感して笑ってしまうことがあります。例えば、前述のようにぐっさんがシロギスの鱗を剥いでいた時のこと。その様子を見ていた浦浜さんに「こういう時って、家に帰ってふと自分の足を見た時に、なぜか鱗がくっついていたりするんだよね」と、いかにもありそうなことを言って場を和ませていました。
ぐっさんに学ぶ会話術のポイントは、食事の場面にもあります。食事をする時のリアクションが大きめなのです。例えば…
浦浜さんが「うーーん、おいしそう!」「フレンチフライ、大好き!」「グレイビーソース、おいしいーー!」と言えば、ぐっさんも「めちゃくちゃおいしそう!」「うまい! うまい!」と同じようなテンションで言います。実は、自分と同じような仕草や表情をする相手に好感を抱く傾向があり、心理学では「ミラー効果」と呼ばれています。2人はもともとリアクションが大きいので無意識にやっていると思われますが、ミラー効果は恋人がいない人にとっては参考になるため、独り身の人は試したいところです(特に私が)。
このように「TOYOTA DRIVE IN JAPAN」では、聴いていて微笑ましいやりとりが行われるわけですが、一点だけ、ぐっさんにとっては恐怖の瞬間になったと思われる場面がありました。それは、走行中に横浜港の話が出てきた時のことです。浦浜さんが何気なく、こんな一言を言いました。
「初めて横浜港に入港してきた船には、何が載せられていたんですかね?」
さぁ、大変です。いきなり言われて、分かる由がありません。浦浜さんがなんの悪気もなく投げかけた質問でも、芸人であるぐっさんにとってみれば、これはクイズではなく、大喜利なのです。不意に出されたお題に一瞬、凍りついたであろう、ぐっさん。のんびりと部屋でゴロゴロしていたところに、抜き打ちで「IPPONグランプリ」(フジテレビ)が始まったようなものです。ぐっさんは、この突然の出来事に対応できるのだろうか…と固唾を飲んでラジオに耳を傾けていると、ぐっさんは、ちょっと困ったような声で、
「下着かな…しかも大量に」と答えを“提出”。
すると、クスリとした浦浜さん! この一言で、ぐっさんは無事、難を逃れました。
TOYOTA DRIVE IN JAPAN https://www.j-wave.co.jp/original/driveinjapan/
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