ブルーノ・マーズも取り入れる新たな潮流――現在進行形の“新時代ソウルミュージック”とは?

来年1月に開催されるブルーノ・マーズの来日公演は来日アーティスト史上最大級と言われるほど大きなツアーです。6都市12公演(しかも全てドーム!)を約1カ月かけて日本を縦断していくツアーは、既にSOLD OUTになっている地区もある等、大きな反響を見せています。

ブルーノは現代を代表するポップスターですが、音楽業界でのデビューは裏方で、アーティストへの楽曲提供やプロデューサー業務からそのキャリアをスタートさせました。その経験が今にも生きており、自分自身をプロデュースすると共に、常に潮流を読み取り音楽性を変化させながら、時代を反映させた楽曲を発表し続けているのです。

そんなブルーノ・マーズがここ数年大いに取り入れているのがラテン、そしてもう一つが今回取り上げるソウルミュージックです。

Bruno Mars - Risk It All [Official Music Video]

「ソウルミュージック」とは?

皆さんは「ソウルミュージック」と聞いて、どういったイメージをお持ちでしょうか?

熱心な音楽ファンはレイ・チャールズやサム・クック、ジェームス・ブラウンのような往時の名前を思い浮かべるでしょうか。ゴスペルやR&B由来の正に魂(ソウル)の叫びを音楽に込めたもの。それが原点と言われています。

Ray Charles | No One | Official Video

今、そのソウル・ミュージックに、新しい風が吹いています。ブルーノ・マーズの最新アルバム『The Romantic』をはじめ、英国の新星Sekouをはじめ、世界の音楽フェスティバルの出演者を見ても、20代の若手アーティストの中で、あらたなソウルミュージックの大波が起きています。

例えるならそれは「New Vintage Soul/ニューヴィンテージソウル」ともいうべき、新たなジャンル。この記事では、J-WAVE NEWS編集部が、ソウルミュージックの変遷とともに、「New Vintage Soul」について解説します。

『SOUL TRAIN』に夢中になったあの頃…

ソウルミュージックは公民権運動やブラックカルチャーの勃興と歩幅を併せてその存在感を強めました。その時期に出てきたアレサ・フランクリン、スティービー・ワンダー、マービン・ゲイなど、60~70年代にかけての印象が強い方も多いと思います。

Marvin Gaye - What's Going On (Official Video 2019)

特に60年代には、デトロイト発祥の伝説的な音楽レーベル・モータウンを中心にアメリカの各地域で一大ブームが巻き起こり、数多のスターが誕生。ソウルミュージックはブラックコミュニティの音楽から、ポピュラーミュージックとして大きな存在感と影響力を持つようになりました。

その華やかなイメージを世界に広めた象徴の一つが、テレビ番組『SOUL TRAIN』でした。 アフロヘアに胸元まであけた派手なシャツ、大胆なベルボトムのパンツで踊る若者たちの姿。番組が作り上げた世界観は今なお「ソウル」の黄金時代を正に体現したものだと言えます。

あのマイケル・ジャクソンも、キャリアの初期からこの番組に出ていたことは有名な話です。早い段階から商業と強く結びついたことで、とても華やかなイメージがついて回り、“ソウルミュージックらしさ”という固定概念が出来上がったのもこの時期かもしれません。

映画『Michael/マイケル』日本版本予告|6月12日(金)全国公開

音楽、ダンス、ファッションがテレビと結びつくことで、ソウルミュージックは耳で聞く音楽としてだけではなく、目で見て楽しむ文化的側面がとても強くなったのです。

「ネオソウル」が更新したソウルのイメージ

時代は下り、そんなソウルミュージックが再び大きな注目を集めたのが、90年代後半に勃興したネオソウルブームでした。

エリカ・バドゥ、ディアンジェロ、ローリン・ヒルなどに代表されるアーティストたちは、HIP HOPやJAZZなど、洗練された音楽をソウルと融合させることにより、とてもソフィスティケートされた都会的な音楽に昇華し、新しい音楽ジャンルとして熱狂的に受け入れられました。

Erykah Badu - On & On (Remix Edit)

商業的な成功と共にグラミー賞でも前述のアーティスト達が数多く受賞したことで、音楽業界でも高く評価される潮流となったのです(アーティストによってはブームになり過ぎて、ネオソウルと言われる事に対して強く反発する人もいましたが……)。

当時、開局間もないJ-WAVEでも大量にオンエアされ、音楽感度の高いリスナーを中心に日本でも人気のあるジャンルであったことを覚えている方も少ないくないはず。

80年代は技術の進化も相まって、打ち込みやシンセサイザーに代表されるように、音楽が一気にデジタル化した時代でもありました。それに反発する形で生の楽器音や、何よりもアーティスト自身のボーカルの魅力が求められた結果だったのかもしれません。時代も欧米を中心にオーガニック志向が強くなりライフスタイル産業として大きく飛躍したタイミングで、そういった空気感もネオソウルにとてもマッチしたと言えます。

いま再び現れたソウルの新しい波

そんなソウルミュージックが今、異なる形で存在感を強めています。

近年の動きを一つのジャンルとして定義してしまうのは、まだ早いのかもしれませんが、ここではあえてネオソウルを更に進化させたものとして、「New Vintage Soul」と名付けたいと思います。

60~70年代のソウル、ファンク、さらにはディスコの質感を現在の感覚で再解釈する音楽。それは音楽だけでなく、ダンス、ファッション、SNSでの拡散含め、一つの世界観がそこにはあります。

「New Vintage Soul」の大きな特徴としては以下の2つが上げられます。

まず、60年代のソウル黄金時代を彷彿とさせるノスタルジックな王道サウンド。そして、ショート動画時代を意識したコスプレと言えるほどのビジュアル作りです。

その存在を感じさせる切っ掛けとなったアーティストが、J-WAVEの公式カウントダウンプログラム、SAISON CARD TOKIO HOT 100の最新チャートでも最新曲『Someday, Somewhere』で見事一位を獲得したJUNGLEです。

Jungle - Someday, Somewhere (Official Video)

JUNGLEは2013年にジョシュ・ロイド・ワトソンとトム・マクファーランドの二人を中心に結成されたロンドン出身のソウル/ファンクバンド。

彼らが2023年に発表した『BACK ON 74』は、郷愁を感じるサウンドと彼ららしいダンスナンバー、そしてなによりタイトルの通り70年代中盤を彷彿とさせるソウルナンバーとワンショットで撮影されたMVが大うけしてUGC(TikTokやInstagramを通じてユーザーが作成、発表したコンテンツ)を誘発。この曲を使った大量のショート動画が巷にあふれたのです。

Jungle - Back On 74 (Official Video)

若年層を中心にTikTokを代表としたショート動画が新しい音楽との出会いになっているのは紛れもない事実です。そういった中で、いかにもソウルミュージックといった音楽、アフロヘアや胸元を空けたシャツ、スパンコール、集団でのダンスなど黄金時代のソウルミュージックをコスプレとも見えるぐらいの佇まいが巡り巡ってうけているのです。

ソウルやディスコが持つ視覚的な記号は、この瞬間見る人の目を引き、楽曲の世界観を瞬時に伝えることが出来るのです。

若い世代にとっての“体験していない懐かしさ”

この「New Vintage Soul」の流れは世界中で広がりを見せています。

若くして非凡な才能で注目を集めるイギリスのシンガーソングライターSekouの新曲『Does She Know』は、まさに「New Vintage Soul」を感じさせる楽曲とMVの構成。

Sekou - Does She Know

さらに、今年のコーチェラフェスティバルでも注目された54Ultra、オーストラリアでモデルも務めるシンガーのDON WESTなど、いずれも20代の若きアーティスト達がヴィンテージなソウルを体現した楽曲を続々と発表しています。

DON WEST - Dreamin (Visualizer)

54 Ultra - Upside Down (Official Music Video)

嗅覚するどいブルーノ・マーズも、現在進行形のソウルミュージックを意識した楽曲を多く発表しています。しかも、ラテンまで取り込みながら!

Bruno Mars - I Just Might [Official Music Video]

ソウルのブームをリアルタイムで体験していない世代が、6、70年代の黄金時代のソウルにより近づいた表現になっていることがとても興味深いです。それはY2Kブームや昭和ブームにも通じる、ノスタルジーを感じる時代へのファンタジー的な憧れとも言える現象が起きているとも言えるのかもしれません。

若い世代は過去を懐かしむのではなく、過去の断片をサンプリングして自分たちにとっての新しい世界を作っているのです。

なぜ今、ソウルミュージックが求められるのか?

あえてもう一つ、このヒットの背景を考えると、コロナウイルスの流行も外せないのかもしれません。

世界各国で緊急事態宣言が発令され外出が禁止、ライブやフェス、クラブなど音楽イベントは軒並み中止となり、人々の日常会話でさえ気を付けなくてはいけない日々は、記憶に新しいかと思います。音楽において同じ時間を共有することの価値を大きく再確認させられるタイミングでした。

近年のポップミュージックは、個人の内面や孤独を静かに描く作品が多くあります。 それに対して、現在のソウルのリバイバルには、音楽を通じて他者とつながり、喜びや高揚感を共有しようとする力があります。

「New Vintage Soul」が求められている背景には、過去への懐古だけではなく、身体性や共同性を取り戻したいという、そういった現代の気分もあるのかもしれません。

懐かしくて、新しい音楽

音楽との出会いでショート動画が大きな役割を担い、刺激的なビジュアルで目を引きながら、音楽としてはどこか郷愁や人肌を感じるソウルミュージックはコロナ後の音楽シーンにおいて大きな存在感を示しています。

古くからの音楽ファンにとっては懐かしい、新しい音楽ファンにとっては新しい音楽として。その両方を兼ねていることが、この「New Vintage Soul」の面白いポイントなのです。

歌は世につれ、世は歌につれ――。音楽の歴史は常に巡っていきますが、決して同じところに戻る事はありません。

この夏、様々な音楽シーンであなたも懐かしくて新しい「New Vintage Soul」に出会うかもしれません。

ブルーノ・マーズ来日公演

10年ぶりの最新アルバムを携えて、史上最大級のジャパン・ドームツアー開催!

イベント名:Bruno Mars - The Romantic Tour in Japan
開催日時:【埼玉】2027年1月15日(水)、1月16日(木)【東京】1月27日(水)、1月28日(木)
会場:【埼玉】ベルーナドーム(西武ドーム)【東京】東京ドーム
公式HP:https://www.livenationhip.co.jp/all-events/bruno-mars-tickets-ae147754
※東京ドーム公演は両日SOLD OUT!チャンスは埼玉・ベルーナドーム!

Bruno Mars, Anderson .Paak, Silk Sonic - Smokin Out The Window [Official Music Video]

(執筆◎J-WAVE 朝から朝倉)

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