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藤井 風、千葉雄喜、IO…ライブ演出を手がけた山田健人が舞台裏を明かす

藤井 風、千葉雄喜、IO…ライブ演出を手がけた山田健人が舞台裏を明かす

映像作家の山田健人が、7月に開催された藤井 風や千葉雄喜、IOのライブ演出の舞台裏について語った。

山田が7月の自身の活動を総括したのは、7月25日(金)放送のJ-WAVE『THE PLAYBACK』(ナビゲーター:山田健人)。映像作家でミュージシャンの山田健人が、MVなど様々な“見る”を言語化するプログラムだ。

「2度とないだろうな」と感じた藤井 風のライブ

この日の『THE PLAYBACK』は、山田が7月に手がけたライブ演出の仕事を振り返ることに。まず、語ったのが藤井の「FUJII KAZE EUROPE TOUR 2025」だ。

山田:スタートが7月頭のドイツ・ベルリンから6カ所7公演ぐらいになるのかな。そのあいだにフェスとかが挟まっていて、ワンマンとフェスをやっていくようなツアーでした。ライブの演出を今回も少しやらせてもらった部分があります。今回のヨーロッパは、藤井さんのキャリアのなかで初めてということになるんでしょうか。お客さんがもみくちゃになる感じのライブをするタイプのアーティストではないとは思うんですけど、人が押し寄せていて、そこでやるという光景自体は初めてに近い感じで、そういう新鮮さはありました。

普段の藤井のライブでは多彩な演出が観られるが、今回の内容はシンプルなものだったそう。

山田:めちゃめちゃ音楽勝負というか、ただ演奏あるのみ、という感じのセットでした。そういう意味でも新鮮さがあったし、逆にもう「2度とないだろうな」という感じも個人的にもしています。ここまでフィジカルなライブというか、本人もピアノをめちゃめちゃ弾いているし、バンドメンバーもいろいろな仕事をされている、というような感じのライブでした。しかも、それをライブハウスぐらいの近い距離で感じられるという、お客さん目線で言うと貴重な経験というか、楽しかったんじゃないかなと思います。

ライブ中に雨が降ることもあったが、それがより場を盛り上げてくれたそう。

山田:途中で雨が降りまして。ステージ部分はテントがありますし、風さんのステージは大きなテントの中のステージみたいなところだったので。スタートの時点でほとんどぎっちり埋まっていたんですけど、雨除けみたいな感じでさらに人が集まって、すごい数の人がライブを見届けるというような感じになり、そういう天気的なパワーにもある種、恵まれて、いいライブになったんじゃないかなと感じました。ちなみに風さんで言うと、8月1日(金)から「FUJII KAZE NORTH AMERICA TOUR 2025」というのがあります。北米の9カ所11公演という、ツアーとフェスの入り組んだ公演が始まりますので、頑張ってください。

千葉雄喜の武道館公演はトーンの異なる2部構成に

続いて、山田は7月3日(木)に行われた千葉雄喜の武道館公演「STAR LIVE」について語った。

山田:千葉雄喜さんとしての初のワンマンライブです。『チーム友達』という楽曲が、近年の千葉さんの活動のなかでも象徴的なトピックとして世間的にもあると思います。すごい数のゲストが出てきて、ゲストとガチの友だちみたいな方がいっぱいステージに上がったり、みたいな。前半と後半が分かれているみたいな構成になっていまして、ヒップホップ的に楽しく騒げるみたいな部分と、後半は最新作というかアンビエントなアルバムを中心に、全然トーンが違うものが共存するという、面白いライブになったんじゃないかなと思っています。

演出面では、千葉から「普段、よくあるかたちじゃないものをやりたい」といった要望があり、さらに「武道館に空を作りたい」というリクエストを受けたという。

山田:映像的な意味で、ですけど。LEDをお客さんに見えるような見え方で吊ったりするんですけど、LEDの面を下向きに吊ると言えばいいのかな。武道館はすり鉢状なので、上のほうの人は映像がまったく見えていないと思います。アリーナにいる人は一緒に空を見上げるような感じで見られた人もいると思います。とにかく、そういうものを吊りたい。スタッフさんともそういう方向性でいろいろ検証しながら。武道館はそんなに天井が強くないので、特にセンターのほうはという感じなのかな。LEDも最大面積を頑張って、そこに流す映像を作ったという感じに近いのかな?

山田はLEDに映すために1時間半から2時間ほどの映像を作成したという。

山田:ちょっと激しい曲のスタートだったので、スタートが雷雲で、いきなり暗雲が立ち込めてきて、雷がとどろき、雨が降るような感じの空の映像……その空を見上げる感じなので雨というのも降っているというよりも降ってきている感じ。奥から手前に雨粒が飛んでくる感じの映像なんです。ビニール傘を差して上を向いたときの感じに近いのかな……たとえ方が難しくて(笑)。でも、ガラスがいちばん感覚的に近くて、自分の頭上にガラスを1枚やって、空を見上げたときの感じの映像です。

雨の表現に加えて、さらに演出として工夫したことを語る。

山田:途中でお金の曲があるんですが、お金の話になったときにお札が空から急に降ってくる、というのも頭上にどんどんお札が積もって埋め尽くされて。今度は、それが風で飛んだら夕方になり、虹が見えたり青空に戻ったりという感じの流れにしていました。大きく2部構成で後半は日が落ちて、星空になったあと、ちょっとファンタジーというか。映像で言うと地球から見上げた空の感じでしたが、いつの間にか大気圏から見た宇宙みたいな視点にどんどん移動していって、星雲のなかを突き抜けていったり、みたいな感じの映像表現になっていくという流れは意識して作りました。

IOの武道館公演でこだわったさまざまな演出

最後に振り返ったのは、千葉と同じく武道館公演を7月16日(水)に開催したIOの「JUST SHOW」だ。

山田:IOくんがアルバム『JUST ALBUM』を出したばかりで「JUST SHOW」というライブをしました。どんなライブか、で言うとけっこうシンプルでした。映像とかはほぼなくて、ステージに円形のお盆のような台を作りまして、一部バンドセットのライブだったので、そこの上にバンドメンバーのドラム、キーボード、ギター、ベース、あとはDJさんの機材が置いてあって、さらにそこに僕の私物やレンタルしてきた楽器も含めた、ありとあらゆる楽器が置いてあって。ちょっとした美術とかも置いてあるんですが、スタジオをそのまま武道館に持ってきた、みたいなコンセプトでやろうという感じでした。

山田はステージ上にあえてスタジオを作った意図について語った。

山田:そんなに、めちゃめちゃ「武道館ワンマンだ!」「頑張るぞ!」みたいに意気込んでいる感じでもないので、いい意味で緩くというか。普段、スタジオでバンドメンバーとやっているテンション感をそのままやりましょう、というコンセプトでした。客演の方もいっぱいいたんですが、基本的にそんなに煽らない感じというか、「お客さんのことも無理に盛り上げるのはいらないですね」という話はしていて。さらっとやって、さらっと帰る、ノーMC、ひと言もしゃべらず、アンコールもなしの1時間半ぐらい、それをやって帰るみたいな感じのライブになりました。

通常のライブのステージ上に「お盆のステージ」を用意したことで、その外側を一風変わった演出にすることができたそう。

山田:お盆の外側の部分はステージじゃないということで、スタッフさんとかも普通にいるし、ようはライブの舞台袖みたいな扱いです。モニターさんという、アーティストの耳にはめているイヤホンに音を返す仕事をしてくださる方がいるんです。「卓」というんですが、ミキサー卓みたいな大きな機材とかも普通は見えないところにあるんですけど、お盆の外側が袖なので全然見える。そこに普通に人もいるし、カメラもお盆の外側にレールを敷いて撮っているみたいな、普段見えないものもちゃんと見せていく感じのライブになっていたんじゃないかなと思います。

山田はライブの「終わり方」へのこだわりについても振り返った。

山田:最後の『Bill.』のアウトロで、写真のカメラマンが普通にステージの上に乗り上げてきて、アウトロ中にIOくんの写真をいきなり撮影し始める。ストロボも焚いてパシャパシャ光ってる。普通に撮って、アーティストの撮影を生で見せてみる。で、その写真を撮り終わったら、本人はなにも言わずにはけていくんですけど、はけ終わったあとに、その写真がいきなりすぐ現像されたという感じでLEDにポンポンと出る、という感じの演出でした。それはけっこうかっこいいんじゃないかなという想像でやって、かっこよくちゃんと決まったので、よかったなと俺的には思っています。

山田健人が気になる、この夏公開の映画とは?

映像作家でミュージシャンの山田健人が、さまざまな“見る”を言語化するプログラム『THE PLAYBACK』の放送は毎週金曜26時から。

8月8日(金)の放送は、山田健人がこの夏公開の新作映画をピックアップして、ゆるく紹介する。芸人・永野が監督した『MAD MASK』、スペイン発の異色作『入国審査』、オムニバス映画『LABYRINTHIA ラビリンシア』、さらに累計180万本超えの人気ゲームを実写化した『8番出口』など……。そのほか、どのような作品がセレクトされるのか、山田健人による作品の魅力の言語化にも注目だ。

radikoでは、8月15日(金)28時頃まで再生可能だ。

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番組情報
THE PLAYBACK
毎週金曜
26:00-26:30

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