AIを活用したスポーツ指導アプリを開発・提供する筑波大学発のベンチャー企業「Sportip」の代表・高久侑也さんが、起業に至った経緯や開発したアプリにかける思い、今後のビジョンなどについて語った
高久さんは現在30歳。スマホで身体を撮影するだけで、AIがその人の姿勢を分析し、特徴や癖を可視化できる画期的なアプリを開発し、ヘルスケア業界で注目を集める若手経営者だ。
高久さんが登場したのは、俳優の小澤征悦がナビゲーターを務めるJ-WAVEの番組『BMW FREUDE FOR LIFE』(毎週土曜 11:00-11:30)。同番組は、新しい時代を切り開き駆け抜けていく人物を毎回ゲストに招き、BMWでの車中インタビューを通して、これまでの軌跡や今後の展望に迫るプログラムだ。
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同社でローンチしているアプリの一つが「Sportip Pro」だ。スマートフォンやタブレットで身体の動きを撮影してその特性やバランス、動きをデータ化し、適切なトレーニングメニューを数秒で提供するこのサービス。実際、どのように活用されているのだろうか?
高久:「Sportip Pro」は、トレーナーや理学療法士などをアシストし、エンドユーザーである患者様・トレーニングをされる方々に正しい指導を提供するアプリです。整体・接骨院や整形外科、学校、フィットネスクラブのほか、町田ゼルビアさん・阪神タイガースさんといったプロスポーツチームにも導入いただいています。本アプリでは身体を撮影するだけで、身体の問題点やどういった運動メニューが適してるかを1秒で提示することが可能です。AIアプリが導き出す正しい指導によって売り上げアップやコストカットに繋げられると、多くの法人様からご好評いただいています。また、エンドユーザーからの反響としては、たとえば野球のジュニアの方であれば、身体の使い方を改善したことで打球が飛ぶようになったなど、パフォーマンス面に直結したとの声が寄せられています。さらに歩行の分析も行えるので、モデルの方にもご利用いただいています。
高久:僕は甲子園にどうしても行きたくて野球をずっと続けていたのですが、先天的に「胸郭出口症候群」という、手に血が流れにくくなる疾患を抱えていて。そこに根性指導が掛け合わさり、野球を諦めるという経験をしました。この負の気持ちを解消するために、また、個人の身体と目的に合わせて正しい指導をしたいという想いから、まずは先生になろうと考えました。先生になるために、スポーツ領域に強みを持つ大学はどこかと探した結果見つけたのが、筑波大学だったんです。ただ、筑波大学進学後は、スポーツのみならず幅広い学問を履修しているうちに、自分が感じたマイナスポイントを解決することで世の中に貢献したいと思うようになって。それに、自分の父親も会社を経営していて「起業」を身近に感じていたこともあって、会社を立ち上げました。
高久:有楽町は、起業する前に会社とはどんなものなのか、また、事業を作るとはどういうことなのかを理解する目的でインターンをした会社がある場所です。その会社は、ヘルスケアのAIアプリを作っている企業で、僕は、マーケティングや事業そのものを外部パートナーとともに作っていくことを勉強させていただきました。大学のキャンパスがあるつくば駅から有楽町駅まで、毎日長い距離を通っていましたが苦にならず、朝早くから夜遅くまで楽しみながら日々の仕事に励み、起業するまでの礎を作らせてもらいました。
このインターン期間中、一番の学びになったのは、できるかできないかを問題視せず、やると決めたら実現するための方法を模索してやりきるということです。具体的なエピソードでいうと、インターンの初日、医療法人の方とのミーティングがあったのですが、飛び交う専門用語の意味が全くわからず、当時20歳の僕は議事録を取ることができませんでした。その際、指導に当たってくださった方に「できないと言った時点で何も始まらない」と言われたことで、自分の考えを変えてチャレンジすると決めたんです。あの頃の気持ちは今も忘れていませんし、この先どれほど高い壁が目の前に立ちはだかったとしても、自分の思考にブレーキをかけることをせず、実現するための方法を導き出して実行し、やり切りたいと思っています。
できる・できないではなく、やるかやらないか――。AIの進化が日々加速する中で、好奇心や探究心を止めずに常に前に進むという高久さんの姿勢が、新たなイノベーションを生み出すことに繋がっているようだ。なお、新有楽町ビルは現在建て替え中で、高久さんがインターンで訪れていたオフィスも移転しているが、それでもこのエリアに足を運ぶと、会社立ち上げに向けて奔走していた頃の記憶と思いが鮮明に蘇ってくるという。
高久:「リハケア」は、高齢者の姿勢や歩行の解析、口腔機能の評価などが行えるAIアプリです。介護施設は加算申請という形式で報酬を得るため、必要書類を提出しなければならないのですが、そのタスクをサポートするソフトウェアを提供しています。なので、入所者様の健康を支援することはもちろん、スタッフの方々の業務効率化も実現するアプリとなっているんです。入所者様への使い方としては、身体を撮影して分析するほか、音声を録音すれば嚥下機能における問題の有無を明らかにすることもできます。
高久:現状スマートフォンやタブレットで撮影することにより結果が可視化されるというサービスを展開していますが、これをなくしたいと思っていて。どういうことかというと、施設の中に入ったら、その人が過去にどんなことに取り組み、これからどんな運動をやればいいのかといった情報を自動で提供する体験を作っていこうと考えているんです。最初に導入先として想定している施設はフィットネスジムです。ジムに入館したら、自分がこれまでにどのマシンを何回使用し、どのフォームに問題があって、今何をすればいいかをリアルタイムで情報共有する。このシステムが導入されれば、人間がいなくてもAIトレーナーが指導を代行できるようになります。さらには、自分の好きな推しから指導を受けるなど、エンターテイメントの要素も取り入れた体験も可能となり、この業界がより楽しくなると思うんですよね。
最新テクノロジーを駆使した独創的なアプリ・システムの開発により、ヘルスケア業界に新たな風を吹き込み続ける高久さん。最後に彼にとっての挑戦、そしてその先にあるFreude=喜びとは何かと尋ねると、こんな答えが返ってきた。
高久:現在、子どもから高齢者まで幅広くサービスを提供していますが、各人のフェーズにおける最適な指導を届けて可能性を最大化しつつ、最終的に一人ひとりが健康な人生を送っていけるような支援をしていきたいと考えています。当社の社員は、体型に悩まれている方のダイエットをサポートしたい、より発展的な健康支援を行いたい、さらには、サッカー日本代表をワールドカップで優勝させるための技術を提供したいなど、それぞれの領域で大きな野心を持っています。それら全て実現していきたいと思っていますし、その目標に向かっていく今が一番ワクワクしてますね。
高久さんは現在30歳。スマホで身体を撮影するだけで、AIがその人の姿勢を分析し、特徴や癖を可視化できる画期的なアプリを開発し、ヘルスケア業界で注目を集める若手経営者だ。
高久さんが登場したのは、俳優の小澤征悦がナビゲーターを務めるJ-WAVEの番組『BMW FREUDE FOR LIFE』(毎週土曜 11:00-11:30)。同番組は、新しい時代を切り開き駆け抜けていく人物を毎回ゲストに招き、BMWでの車中インタビューを通して、これまでの軌跡や今後の展望に迫るプログラムだ。
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プロスポーツチームも導入するAIアプリ「Sportip Pro」
六本木ヒルズを出発した「BMW iX1 xDrive30 M Sport」。その車内に座る高久さんは筑波大学体育専門学群卒業後の2018年、「すべての人へ、可能性を最大化する指導を届ける」というミッションのもと、動作解析とAIテクノロジーを駆使して運動指導アプリなどを提供するスタートアップ企業「Sportip」を創業した。同社でローンチしているアプリの一つが「Sportip Pro」だ。スマートフォンやタブレットで身体の動きを撮影してその特性やバランス、動きをデータ化し、適切なトレーニングメニューを数秒で提供するこのサービス。実際、どのように活用されているのだろうか?
高久:「Sportip Pro」は、トレーナーや理学療法士などをアシストし、エンドユーザーである患者様・トレーニングをされる方々に正しい指導を提供するアプリです。整体・接骨院や整形外科、学校、フィットネスクラブのほか、町田ゼルビアさん・阪神タイガースさんといったプロスポーツチームにも導入いただいています。本アプリでは身体を撮影するだけで、身体の問題点やどういった運動メニューが適してるかを1秒で提示することが可能です。AIアプリが導き出す正しい指導によって売り上げアップやコストカットに繋げられると、多くの法人様からご好評いただいています。また、エンドユーザーからの反響としては、たとえば野球のジュニアの方であれば、身体の使い方を改善したことで打球が飛ぶようになったなど、パフォーマンス面に直結したとの声が寄せられています。さらに歩行の分析も行えるので、モデルの方にもご利用いただいています。
野球を諦めざるを得なかった無念さが起業の原動力に
高久さんが事業を立ち上げたきっかけは10代の頃に遡る。野球少年として目標としていた夢を志半ばで諦めざるを得なかった無念が、起業の原動力となったようだ。高久:僕は甲子園にどうしても行きたくて野球をずっと続けていたのですが、先天的に「胸郭出口症候群」という、手に血が流れにくくなる疾患を抱えていて。そこに根性指導が掛け合わさり、野球を諦めるという経験をしました。この負の気持ちを解消するために、また、個人の身体と目的に合わせて正しい指導をしたいという想いから、まずは先生になろうと考えました。先生になるために、スポーツ領域に強みを持つ大学はどこかと探した結果見つけたのが、筑波大学だったんです。ただ、筑波大学進学後は、スポーツのみならず幅広い学問を履修しているうちに、自分が感じたマイナスポイントを解決することで世の中に貢献したいと思うようになって。それに、自分の父親も会社を経営していて「起業」を身近に感じていたこともあって、会社を立ち上げました。
インターンではつくば市から有楽町まで毎日通勤
高久さんを乗せた「BMW iX1 xDrive30 M Sport」は、最初の目的地である有楽町エリアに到着。その中心地に建つ新有楽町ビルは、初心に還る場所なのだとか。高久:有楽町は、起業する前に会社とはどんなものなのか、また、事業を作るとはどういうことなのかを理解する目的でインターンをした会社がある場所です。その会社は、ヘルスケアのAIアプリを作っている企業で、僕は、マーケティングや事業そのものを外部パートナーとともに作っていくことを勉強させていただきました。大学のキャンパスがあるつくば駅から有楽町駅まで、毎日長い距離を通っていましたが苦にならず、朝早くから夜遅くまで楽しみながら日々の仕事に励み、起業するまでの礎を作らせてもらいました。
このインターン期間中、一番の学びになったのは、できるかできないかを問題視せず、やると決めたら実現するための方法を模索してやりきるということです。具体的なエピソードでいうと、インターンの初日、医療法人の方とのミーティングがあったのですが、飛び交う専門用語の意味が全くわからず、当時20歳の僕は議事録を取ることができませんでした。その際、指導に当たってくださった方に「できないと言った時点で何も始まらない」と言われたことで、自分の考えを変えてチャレンジすると決めたんです。あの頃の気持ちは今も忘れていませんし、この先どれほど高い壁が目の前に立ちはだかったとしても、自分の思考にブレーキをかけることをせず、実現するための方法を導き出して実行し、やり切りたいと思っています。
介護施設のアルバイト経験を経て介護支援アプリを開発
続いて「BMW iX1 xDrive30 M Sport」がやってきたのは神楽坂エリア近辺。高久さんはかつて、同エリアにある介護施設でヘルパーとして働いていたとし、「新規事業として介護向けのサービス作ろうと考え、介護施設で土日にアルバイトをさせていただきました。実際に職務にあたることで、働く人たちの気持ち、大変さを理解することができたと思います」と振り返る。この実体験をもってリリースした介護支援サービスアプリが「リハケア」だ。いったいどんなアプリなのか?今年ローンチ予定の画期的サービスとは?
個人の運動能力を上げるための「Sportip Pro」と、介護の現場で働く方々をサポートする「リハケア」。いずれもAIを使った画期的なサービスだが、高久さんは常に先を見据えて開発を進めている。今年中にローンチ予定という驚きのシステムとは?高久:現状スマートフォンやタブレットで撮影することにより結果が可視化されるというサービスを展開していますが、これをなくしたいと思っていて。どういうことかというと、施設の中に入ったら、その人が過去にどんなことに取り組み、これからどんな運動をやればいいのかといった情報を自動で提供する体験を作っていこうと考えているんです。最初に導入先として想定している施設はフィットネスジムです。ジムに入館したら、自分がこれまでにどのマシンを何回使用し、どのフォームに問題があって、今何をすればいいかをリアルタイムで情報共有する。このシステムが導入されれば、人間がいなくてもAIトレーナーが指導を代行できるようになります。さらには、自分の好きな推しから指導を受けるなど、エンターテイメントの要素も取り入れた体験も可能となり、この業界がより楽しくなると思うんですよね。
最新テクノロジーを駆使した独創的なアプリ・システムの開発により、ヘルスケア業界に新たな風を吹き込み続ける高久さん。最後に彼にとっての挑戦、そしてその先にあるFreude=喜びとは何かと尋ねると、こんな答えが返ってきた。
高久:現在、子どもから高齢者まで幅広くサービスを提供していますが、各人のフェーズにおける最適な指導を届けて可能性を最大化しつつ、最終的に一人ひとりが健康な人生を送っていけるような支援をしていきたいと考えています。当社の社員は、体型に悩まれている方のダイエットをサポートしたい、より発展的な健康支援を行いたい、さらには、サッカー日本代表をワールドカップで優勝させるための技術を提供したいなど、それぞれの領域で大きな野心を持っています。それら全て実現していきたいと思っていますし、その目標に向かっていく今が一番ワクワクしてますね。