片桐 仁が生み出す「不条理粘土アート」とは? 粘土を1000袋ほど使った経験も

俳優の片桐 仁が、現在の活動や私生活について語った。

片桐が登場したのは、4月29日(火)に放送されたJ-WAVEの特別番組『J-WAVE GOLDEN WEEK SPECIAL CADILLAC presents BEYOND THE HORIZON』(ナビゲーター:SOIL&"PIMP"SESSIONS・社長、浦浜アリサ)。想像を超えた、未来をつくる9時間だ。

ラーメンズの大ファンだった社長

1973年生まれの片桐は、多摩美術大学在学中に小林賢太郎とコントグループ・ラーメンズを結成。単独公演は人気を博し、海外でも高く評価された。現在は俳優業を中心に、造形作家としても活躍しており、プライベートでは2児の父でもあり、オフの日は犬の散歩や家庭菜園なども楽しんでいるそうだ。

ラーメンズが大好きだったという社長は、「たぶん、DVD全部持っています!」と明かし、片桐も「本当ですか!?」と驚きの声を上げた。

社長:SOIL&"PIMP"SESSIONSはヨーロッパツアーもやるのですが、ツアーに行くとバスのなかにテレビがついていてDVDが見られるんですよ。そのときに(かけるのが)メタリカのドキュメンタリーと、ラーメンズのDVDです。

浦浜:メタリカと争えるラーメンズ、強いですね!

社長:ヨーロッパ回るなかでは、DVDにいろいろと助けられました(笑)。

片桐:そうですか、ありがたいですね。舞台も観に来てくださったんですか?

社長:行ったことあります、大好きです!

片桐:ありがとうございます。ラーメンズの最後の舞台は2009年なので、そこからもう15年くらいですからね。

社長:もうそんなに経ちますか。本当にたくさんの時間を、ラーメンズとともに過ごさせていただきました。

片桐:いまはYouTubeでも公式映像として観られるので、当時生まれていないような中学生の子とかも見てくれたりして、ありがたい世の中ですよね。

当時のラーメンズのステージを振り返り、社長は「コントと言われるけど、僕からしたら前衛芸術ですよ」と語る。

浦浜:演技、芝居ということにおいては、ルーツ的には同じですよね。

片桐:完全にそうですね。

社長:即興という意味では、同じ演目のときに2日間行ったことがあったのですが、(それぞれの日に)違うことをやる。「これ、本当にその場で全部作ってるんだなぁ」と思いました。

片桐:そんなことはないですよ(笑)! 台本はもちろんありますから……。

社長:でも、台本から逸脱していますよね?

片桐:相方がひと言もしゃべらないでひとりでやっているときは、多少あるかもしれないですね。

社長:僕のなかで片桐さんは最初からすごい俳優、役者だと思っているので、俳優としてお芝居されている片桐さんを観ても、すごくしっくりきます。

片桐:お笑いの人たちは2、3人で誰かが作って演出している職業になっているけど、作家がいて演出家とか監督がいて役者がいる、というのが一般的です。(ラーメンズは)相方が全部やっていたのでそういうのを知らなくて、当時は「芸人ってそういうものだ」と思ってやっていたので、俳優をやるようになって「すごく特殊なかたちだったんだな」ということに気づきました。

社長:でも、ふたりの信頼関係があるから、あの自由な時間も回収されて笑いにつながっていくという。だから痛快なんですよね。

片桐:元は大学の同級生ですからね(笑)。

俳優業は「集団行動の1パーツ」

俳優だけでなく、造形作家としても活躍する片桐。ラーメンズ時代にも連載を持っていたが、その作風は「いろいろなものに粘土を盛る」というものだ。

片桐:これは「モアイフォン」というiPhoneケースですが、ガラケー時代から粘土を盛っているんですよ。

片桐 仁が作った「モアイフォン」

浦浜:ガラケーのケースも作っていらっしゃった……?

片桐:そうなんです。スマホケースは誰でも使うけど、ガラケーの頃は誰もケースに入れていなかったので理解してもらえなかった。やっと時代が僕に追いついてきましたね。僕、『99.9』というドラマで明石達也という役をやったのですが、これは「片桐 仁の粘土作品を明石が作っている」という設定で、『99.9』の劇場版用に作ったものです。

社長:ちなみに、制作にはどれくらい(時間が)かかるのでしょうか?

片桐:モアイの顔を作るだけだったら1週間ぐらいですが、粘土で作るともろいので、それをシリコンゴムで型取りして、そこに樹脂を流し込んだ複製を、自分用と美術さんに渡す用で2個作るんですよ。

浦浜:手間暇かかっている! 小道具さんがやる域ですよね……。

片桐:『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ』という映画では「鬼フォン」と「鬼パッド」を作ったのですが、それは美術さんが柔らかい素材で複製してくださいましたね。

俳優としてのアウトプット、そしてものづくりのアウトプットには「通ずる部分とそうでない部分がある」と語る浦浜。片桐は、その棲み分けをどのようにしているのだろうか。

片桐:ものづくりはひとりでもできますが、やっぱり俳優業はひとりではできませんからね。映像に関しては、「俳優部」という集団行動の1パーツとして出て、完成はおまかせという感じです。粘土とかは、部屋でチマチマやっています。

社長:片桐さんがこれまでなさってきたいろいろな仕事を振り返っていただいて、「これは自分のなかでの想像を超えてきたな」という出来事があったら、教えていただけますか?

片桐:俳優業は、想像を超えてくることしかないですね。大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』は去年の夏ぐらいに撮ったのですが、そのちょっと前にもNHK BSの『雲霧仁左衛門ファイナル』という時代劇の撮影で京都にいました。いわゆる、ちょんまげのカツラは、ちょんまげの髪の毛の部分の下に「羽二重」というはげヅラをつけるのですが、僕は想像を超えて頭の形が悪いらしいんですよ。

浦浜:どういうことですか(笑)?

片桐:「片桐さんの頭は筒です」「引っかからない」と言われて、なおかつおでこが狭いので、おでこにシワを寄せると羽二重と地肌のあいだに詰める肌色の粘土みたいなものが割れるんですよ。だから、真夏に撮っていたのですが「汗をかかないでください」「眉毛を上げないでください」って言われて(笑)。

社長:難しい話! そんなこと言われてもね(笑)。

片桐:でも、『べらぼう』の現場に行ったら、羽二重じゃなくてシリコンになっていて、それだといくらおでこにしわをよせても割れませんでした(笑)。

続いて片桐は、ドラマ『相棒』撮影時に「全部の現場が巻いた」ことに驚かされたことを明かした。

浦浜:(スケジュールが)押すことがない?

片桐:ないんですよ、びっくりしました。3ページくらいの歩きながらのシーンも3、4カットでとにかく流れで撮っていくので、震えましたね。

社長:プロフェッショナルですね。

浦浜:映像の現場では珍しいですね。

片桐:水谷 豊さんと寺脇康文さんは普通に気さくにしゃべってくれるのですが、本番になった瞬間に杉下右京さんと亀山 薫さんのふたりになって、一切、間違えないので(笑)。あんな現場はないですね。25年近くずっと、1年の半分近く(『相棒』の撮影を)やっているわけで、でも終わったらほかの映画や時代劇にも出られていて、「どんなバイタリティなんだ」と思いましたね。

さまざまなものに粘土を盛る「不条理粘土アート」

社長は、気になる「不条理粘土アート」というワードについて、どのようなものなのかを片桐に訊いた。

片桐:僕、美大にいたときには版画科で、4年間、木版画をやっていたんですけど、「平面ってけっこう難しいな」と思っていたときに、教員免許を取るための授業が彫刻科の先生だったので、彫刻をやり始めたらうまかったんですよ(笑)。で、大学を卒業してラーメンズでいろいろとやらせてもらっているなかで「雑誌連載で好きにやりませんか?」という話になって、相方はマンガを書くことになって「おまえは粘土をやったらどう?」と言われました。粘土って、街なかにもいわゆる彫刻がいっぱい並んでいますが、みんなスルーなんですよ。ハチ公の前に集まっていても、有名なモニュメントとしては見るけれど、ハチ公の造形にみんな興味はない。

浦浜:待ち合わせ場所っていう。

片桐:そう。だけど、「何かに粘土を盛れば注目してもらえるんじゃないか」「ウケるんじゃないか」と思ったんですね。そこで、「お笑いをやりながらもアーティスト」というところで合致したのが「不条理粘土アート」です。文房具など、いろいろなものに粘土を盛って「それ、使いづらいですよね」というひと笑いをいただく。そして、「モアイフォンって重いですよね?」「全然重くないですよ。しかも、鼻の部分がちょうどスタンドになります」といったように、そこでコミュニケーションが生まれるので、これまで会ったことがない人に会うときに「作品を持ち歩けるな」と思って、いろいろなことをするようになりましたね。

社長:これまでで、いちばん変わったものに盛ったのって……?

片桐:便器とかね。

社長:どこにどう盛るの!?

片桐:便器の「器」を「亀」っていう字にして「便亀」。おまるみたいな形で亀の頭にハンドルがついていて、足が生えているというものです。あとは、公園の大きいタコの形のすべり台の地獄版みたいなもので、「公園魔」というものを、粘土を1,000袋くらい使って横4メートル、縦3メートルくらいで作りました。

浦浜:それ、保管はどうされているのですか?

片桐:地元の街に寄贈しまして、中学の教室に分解して押し込められていますね(笑)。想像を超えた大きさだったので、仕方がなく家族や友だちとみんなでやったのですが、カラー粘土を使ったらみんなめちゃくちゃするんですけど、トータルで見たらすごく面白かったんですよ。本当は自分ひとりでやりたいけど、「人とやるとこんな化学変化が生まれるんだ」というのは、発見でしたね。

片桐は現在、毎週火曜21時放送の『天久鷹央の推理カルテ』(テレビ朝日)、毎週木曜23時放送の『死ぬほど愛して』(ABEMA SPECIAL)、そして、毎週金曜21時の『失踪人捜索班 消えた真実』(テレビ東京)と、3本のドラマに出演中だ。そのほか、最新情報はトゥインクル・コーポレーションの公式サイトまで。
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2025年5月6日28時59分まで

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番組情報
J-WAVE GOLDEN WEEK SPECIAL CADILLAC presents BEYOND THE HORIZON
2025年4月29日(火・祝)
9:00-17:55

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