
いきものがかり・水野良樹がナビゲートする番組『Samsung SSD CREATOR'S NOTE』が、J-WAVEでオンエア中だ。今を代表するクリエイターをゲストに迎え、ものづくりの原点を探求している。好評につき4月から放送時間が拡大され、毎週土曜21時-21時54分の放送となる。
水野はさまざまなクリエイターと対話するうちに、ある「共通した考え」があることに気づいたそうだ。クリエイターを目指すために必要なことや、自身が成長を続けるために心がけていることなど話を聞いた。
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やっぱり全く異なる分野の方々と話すことはおもしろいですし、若い世代や違うジャンルのミュージシャンなどと語り合えることも、ありがたい機会だと感じています。番組を続けるなかで感じたのは、それぞれ分野が異なるクリエイターの方でも、お話の内容にどこかリンクしている部分があること。創作に関する秘訣もそうですし、番組の最後に必ず投げかけている「これからクリエイターを目指すリスナーにメッセージをください」という質問に対する回答もそうです。
──どんな回答が多いのですか?
「とにかく1回、完結させましょう」とおっしゃる方が多いんです。ミュージシャンであれば「1曲、仕上げてみよう」、漫画の編集者だと「まずは1作を最後まで描いてみよう」と。クリエイターに憧れを抱きつつも行動を起こせない方っていらっしゃいますよね。自分が目指すものよりもクオリティが低くて区切りをつけられない、とか。でも、そこで投げ出さずに作り上げる経験をしないと、次のステップに進めない。この考えは、どの分野のクリエイターにも共通するんだなという気づきがありました。
──水野さんの初心者クリエイター時代はいかがでしたか?
初めてちゃんと曲を作って、多くの人に聴いてもらう経験をしたのは高校生の頃です。通っていた高校に、文化祭のテーマソングを全校生徒の投票で決めるというシステムがあったんですよ。当時はバンドブームだったから、同級生も先輩も見よう見まねでカセットテープに録音して、その曲を給食の時間に流して、選ばれた人が中庭のメインステージで曲を演奏できるという、学校版『ミュージックステーション』のような憧れの舞台があったんです。そこに提出する前に、サトウくんというノリがいい同級生に声をかけて、その場で歌って聴いてもらったんです。そしたら、めちゃくちゃ褒めてくれて。「水野すげえよ! 超天才だよ!」と驚いて、身振り手振りをつけて。校内放送で流れたあとも、それまで僕は地味な存在だったのに、別のクラスから「あの曲、あいつが作ったらしいぞ」と見に来る人がいたりして。
──すごい! マンガのようなエピソードですね。
もしかするとサトウくんはただ調子がよかっただけかもしれないんですけど(笑)、そのリアクションは高校生の僕にとってはすごく大きなものだったんですよね。そういうふうに作品に対する反応があると前に進めるので、やっぱり作品を作って誰かの感想をもらうことが、次のステップに進むために大事なんだろうと思います。
たしかに今のSNSとかって、いろんな言葉が飛び交う“アクションバブル”みたいな状態ですし、とくに若い世代は「これはアウトかセーフか」というバランス感覚があるから、創作した作品を世に出すことに恐怖心がある人もいると思います。だけど、最初に作るものなんて、だいたいろくなものじゃないですよ(笑)。最初からすごい人なんて、ひと握り中のひと握りだけ。だからやっぱり怖がらずに行動することがやっぱり大切なんじゃないかなと。
番組のゲストの方も、同じようなことを言っていました。たとえばダウ90000の蓮見 翔さんは、お笑いが好きで漫才をやったけどウケなかったと。そうすると「自分に漫才は合ってないんだな」ってわかるじゃないですか。じゃあコントだったらいけるかもしれないと考えて、次の行動を起こして、今の活躍に繋がっている。きっと他の方も同様で、いきなり天職に出会えるわけではなく、トライアンドエラーをすることで前に進むんだと思います。
基本的にビビりなので、怖いです(笑)。いつも「うまくいかないだろうな」と思ってやっています。ラジオでゲストをお迎えするのも毎回緊張していて。でも、その緊張自体が求めているものでもあるんです。
ありがたいことに、いきものがかりは多くの方に聴いていただけて、ライブをすればお客さんが集まってくださり、異常なほど幸せな状態と言えます。その状況に甘えることはできるし、甘えさせてもらっている部分もあるんだけど、自分が成長していくためには緊張感を味わう機会を意識的に作ることが大切だと思っていて。なるべく裸の状態になって、新しいものに出会いたい。「自分はたいしたことがないんだな」って感じる瞬間を何度も味わわないと、慢心してダメになってしまうと思うんです。だから、そういったチャンスがあれば、できるだけ飛び込むようにしています。
この番組のナビゲーターに声をかけてもらったのも、「あいつだったら、いろんな人と話せるかもしれない」と考えてのことなのかなと思うんですけど、そういうふうに出会いを引き寄せられることも幸福なので、今後もこの姿勢は続けていきたいと考えています。
──なるほど。今お話を聞いていて、水野さんのそうした謙虚な姿勢もクリエイターとして活躍するために大切なことなのだろうなと感じました。
いやいや、僕は謙虚じゃないんですよ。番組でゲストとお話していても「みなさん各分野の第一線で活躍している方なのに、なんで対等みたいな感じで話してんだよ」と自分で思います(笑)。だから謙虚というか、いろんなことをおもしろがる精神でいこう、という感じですね。
──ちなみに音楽と小説は、表現する感覚としてはどんな違いがありますか?
作る過程で言えば近いところはけっこうあります。ただ、受け手に使っていただく想像力に違いがあると感じますね。歌詞の場合は使える文字数がすごく少ないから、聴いてくださる方にいろんな想像をしていただいたり、ご自身の経験や心情を重ねていただいたり、委ねる部分が大きい。一方で小説は、例えばカップルが登場する話だったとして、「こういう人たちである」などいろんな情報を書くことができる。すると、なにかトラブルが起こったという物語である場合、「登場人物の胸の痛みは、どういうものなんだろう」などと細やかに想像してもらえますよね。そういった受け手に委ねる想像力の違いが、創作のおもしろさに繋がっていると感じます。
ポジティブな評判にしろネガティブな情報にしろ、先入観や事前情報に印象を左右されないよう心がけています。誰かにお会いするときも、作品に触れるときも、自分の目で耳で判断しようと。自分の考えや感性を絶対視するわけではないけど、自分の判断を基本にしておかないと、相手に失礼になるし、間違った方向に流されてしまうことがあると思うんですね。たとえば、巷の評判に流されて、「これは褒めたほうがかっこよく見えるかな」みたいな考え方をしてしまうとか。番組のゲストも、有名な方だといろんな情報が飛び交っていますが、それらはいったん置いといて、会ってみてどういう方なのかを知るようにしています。
── 一人ひとりと真摯に向き合う中で、とくに印象に残る瞬間はありますか。
ゲストの方々の話に熱を帯びる瞬間は、心に残るものがあります。たとえば、落語家の立川吉笑さんと話したとき、最初は「どうして突然、番組に呼ばれたんだろう?」というような距離を少し感じていましたが、話が進むうちに落語づくりを熱く語ってくださって、その温度の違いにふれたのは嬉しい経験でした。
あと、CMプランナーの福里真一さんは、どんな質問を投げても秒速で答えてくれて、しかもワンコーナー5分なら5分間ずっと話してくれる。そのトークの構築力に驚きました。普段から企画を練ってクライアントに提案し続けているからこそ、どんな場でもスムーズに深い内容を話せるのかなと。そういった、ゲストの方々の仕事に対する姿勢や人柄がトークで自然に表れている瞬間は、本当におもしろいです。
──今後、ラジオでやってみたいことや呼んでみたいゲストがいれば教えてください。
音楽家が普段出会わないような分野の方々ともつながりを持ち、それを番組で紹介できたらおもしろいと思います。ゲストの方々が話してくださった内容がリスナーに刺激を与え、その刺激が新しい創作につながるような番組になればいいなと。これからもジャンルを問わず、さまざまな分野の方々と出会って、リスナーのみなさんにも新しい発見を届けていきたいですね。
YouTubeやインスタグラムなどのショート動画を見ていると、みなさん演奏がうますぎて驚きます。曲芸的にテクニカルな演奏を極めているアーティストは、ひとつのジャンルとしてすごいなと。一方で、個人的におもしろさを感じるのは、シンプルにメロディーで勝負している人かな。最近だと、ゆっきゅんというアーティストの歌詞に衝撃を受けました。創作物としておもしろいだけでなく、技術的にも非常に優れていて。とくに『プライベート・スーパースター』が衝撃的でした。今後もっと多くの人に注目されるアーティストなんじゃないかなと思います。
『Samsung SSD CREATOR'S NOTE』のオンエアは、J-WAVEで土曜21時-21時54分。
(取材=西田友紀 構成・文=西澤慎太郎)
水野はさまざまなクリエイターと対話するうちに、ある「共通した考え」があることに気づいたそうだ。クリエイターを目指すために必要なことや、自身が成長を続けるために心がけていることなど話を聞いた。
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どの分野のクリエイターも重要視する「最初の一歩」
──番組ゲストとして登場するクリエイターは、ミュージシャン、イラストレーター、ゲームクリエイター、映画監督、漫画編集者、建築家など、ジャンルが多岐にわたります。お話していて、どんな気づきがありますか?やっぱり全く異なる分野の方々と話すことはおもしろいですし、若い世代や違うジャンルのミュージシャンなどと語り合えることも、ありがたい機会だと感じています。番組を続けるなかで感じたのは、それぞれ分野が異なるクリエイターの方でも、お話の内容にどこかリンクしている部分があること。創作に関する秘訣もそうですし、番組の最後に必ず投げかけている「これからクリエイターを目指すリスナーにメッセージをください」という質問に対する回答もそうです。
──どんな回答が多いのですか?
「とにかく1回、完結させましょう」とおっしゃる方が多いんです。ミュージシャンであれば「1曲、仕上げてみよう」、漫画の編集者だと「まずは1作を最後まで描いてみよう」と。クリエイターに憧れを抱きつつも行動を起こせない方っていらっしゃいますよね。自分が目指すものよりもクオリティが低くて区切りをつけられない、とか。でも、そこで投げ出さずに作り上げる経験をしないと、次のステップに進めない。この考えは、どの分野のクリエイターにも共通するんだなという気づきがありました。
──水野さんの初心者クリエイター時代はいかがでしたか?
初めてちゃんと曲を作って、多くの人に聴いてもらう経験をしたのは高校生の頃です。通っていた高校に、文化祭のテーマソングを全校生徒の投票で決めるというシステムがあったんですよ。当時はバンドブームだったから、同級生も先輩も見よう見まねでカセットテープに録音して、その曲を給食の時間に流して、選ばれた人が中庭のメインステージで曲を演奏できるという、学校版『ミュージックステーション』のような憧れの舞台があったんです。そこに提出する前に、サトウくんというノリがいい同級生に声をかけて、その場で歌って聴いてもらったんです。そしたら、めちゃくちゃ褒めてくれて。「水野すげえよ! 超天才だよ!」と驚いて、身振り手振りをつけて。校内放送で流れたあとも、それまで僕は地味な存在だったのに、別のクラスから「あの曲、あいつが作ったらしいぞ」と見に来る人がいたりして。
──すごい! マンガのようなエピソードですね。
もしかするとサトウくんはただ調子がよかっただけかもしれないんですけど(笑)、そのリアクションは高校生の僕にとってはすごく大きなものだったんですよね。そういうふうに作品に対する反応があると前に進めるので、やっぱり作品を作って誰かの感想をもらうことが、次のステップに進むために大事なんだろうと思います。
天職は、いきなり出会えるものではない
──今はその文化祭のようなイベントがなくても、SNS等で簡単に作品の発表ができますし、反応も得られますよね。しかし手軽だからこそ、なかなか踏み出せないという人もいそうです。たしかに今のSNSとかって、いろんな言葉が飛び交う“アクションバブル”みたいな状態ですし、とくに若い世代は「これはアウトかセーフか」というバランス感覚があるから、創作した作品を世に出すことに恐怖心がある人もいると思います。だけど、最初に作るものなんて、だいたいろくなものじゃないですよ(笑)。最初からすごい人なんて、ひと握り中のひと握りだけ。だからやっぱり怖がらずに行動することがやっぱり大切なんじゃないかなと。
番組のゲストの方も、同じようなことを言っていました。たとえばダウ90000の蓮見 翔さんは、お笑いが好きで漫才をやったけどウケなかったと。そうすると「自分に漫才は合ってないんだな」ってわかるじゃないですか。じゃあコントだったらいけるかもしれないと考えて、次の行動を起こして、今の活躍に繋がっている。きっと他の方も同様で、いきなり天職に出会えるわけではなく、トライアンドエラーをすることで前に進むんだと思います。
「自分はたいしたことがない」と感じる機会を、あえて何度も作る
──近年は音楽だけでなく、「清志まれ」名義で小説も出されています。その他、クリエイター同士で交流や実験をするというソロプロジェクト「HIROBA」も続けるなど、新しいチャレンジに積極的な印象があります。挑戦する際は、どういうマインドを持っていますか。基本的にビビりなので、怖いです(笑)。いつも「うまくいかないだろうな」と思ってやっています。ラジオでゲストをお迎えするのも毎回緊張していて。でも、その緊張自体が求めているものでもあるんです。
ありがたいことに、いきものがかりは多くの方に聴いていただけて、ライブをすればお客さんが集まってくださり、異常なほど幸せな状態と言えます。その状況に甘えることはできるし、甘えさせてもらっている部分もあるんだけど、自分が成長していくためには緊張感を味わう機会を意識的に作ることが大切だと思っていて。なるべく裸の状態になって、新しいものに出会いたい。「自分はたいしたことがないんだな」って感じる瞬間を何度も味わわないと、慢心してダメになってしまうと思うんです。だから、そういったチャンスがあれば、できるだけ飛び込むようにしています。
この番組のナビゲーターに声をかけてもらったのも、「あいつだったら、いろんな人と話せるかもしれない」と考えてのことなのかなと思うんですけど、そういうふうに出会いを引き寄せられることも幸福なので、今後もこの姿勢は続けていきたいと考えています。
──なるほど。今お話を聞いていて、水野さんのそうした謙虚な姿勢もクリエイターとして活躍するために大切なことなのだろうなと感じました。
いやいや、僕は謙虚じゃないんですよ。番組でゲストとお話していても「みなさん各分野の第一線で活躍している方なのに、なんで対等みたいな感じで話してんだよ」と自分で思います(笑)。だから謙虚というか、いろんなことをおもしろがる精神でいこう、という感じですね。
──ちなみに音楽と小説は、表現する感覚としてはどんな違いがありますか?
作る過程で言えば近いところはけっこうあります。ただ、受け手に使っていただく想像力に違いがあると感じますね。歌詞の場合は使える文字数がすごく少ないから、聴いてくださる方にいろんな想像をしていただいたり、ご自身の経験や心情を重ねていただいたり、委ねる部分が大きい。一方で小説は、例えばカップルが登場する話だったとして、「こういう人たちである」などいろんな情報を書くことができる。すると、なにかトラブルが起こったという物語である場合、「登場人物の胸の痛みは、どういうものなんだろう」などと細やかに想像してもらえますよね。そういった受け手に委ねる想像力の違いが、創作のおもしろさに繋がっていると感じます。
世間の評判に左右されず、自分の感じることを大切に
──“受け手”の話で言うと、水野さん自身が受け手として大切にしていることはありますか? あらゆるアーティストに楽曲提供をしたり、番組のゲストにお迎えしたりする際に、相手の魅力を見出す“受け手の目”が優れているからこそ、いいものが生み出せるのではないかと想像していて。ポジティブな評判にしろネガティブな情報にしろ、先入観や事前情報に印象を左右されないよう心がけています。誰かにお会いするときも、作品に触れるときも、自分の目で耳で判断しようと。自分の考えや感性を絶対視するわけではないけど、自分の判断を基本にしておかないと、相手に失礼になるし、間違った方向に流されてしまうことがあると思うんですね。たとえば、巷の評判に流されて、「これは褒めたほうがかっこよく見えるかな」みたいな考え方をしてしまうとか。番組のゲストも、有名な方だといろんな情報が飛び交っていますが、それらはいったん置いといて、会ってみてどういう方なのかを知るようにしています。
── 一人ひとりと真摯に向き合う中で、とくに印象に残る瞬間はありますか。
ゲストの方々の話に熱を帯びる瞬間は、心に残るものがあります。たとえば、落語家の立川吉笑さんと話したとき、最初は「どうして突然、番組に呼ばれたんだろう?」というような距離を少し感じていましたが、話が進むうちに落語づくりを熱く語ってくださって、その温度の違いにふれたのは嬉しい経験でした。
あと、CMプランナーの福里真一さんは、どんな質問を投げても秒速で答えてくれて、しかもワンコーナー5分なら5分間ずっと話してくれる。そのトークの構築力に驚きました。普段から企画を練ってクライアントに提案し続けているからこそ、どんな場でもスムーズに深い内容を話せるのかなと。そういった、ゲストの方々の仕事に対する姿勢や人柄がトークで自然に表れている瞬間は、本当におもしろいです。
──今後、ラジオでやってみたいことや呼んでみたいゲストがいれば教えてください。
音楽家が普段出会わないような分野の方々ともつながりを持ち、それを番組で紹介できたらおもしろいと思います。ゲストの方々が話してくださった内容がリスナーに刺激を与え、その刺激が新しい創作につながるような番組になればいいなと。これからもジャンルを問わず、さまざまな分野の方々と出会って、リスナーのみなさんにも新しい発見を届けていきたいですね。
最近、おもしろいと思ったアーティストは?
──最後に、水野さんが最近気になった音楽を教えてください。YouTubeやインスタグラムなどのショート動画を見ていると、みなさん演奏がうますぎて驚きます。曲芸的にテクニカルな演奏を極めているアーティストは、ひとつのジャンルとしてすごいなと。一方で、個人的におもしろさを感じるのは、シンプルにメロディーで勝負している人かな。最近だと、ゆっきゅんというアーティストの歌詞に衝撃を受けました。創作物としておもしろいだけでなく、技術的にも非常に優れていて。とくに『プライベート・スーパースター』が衝撃的でした。今後もっと多くの人に注目されるアーティストなんじゃないかなと思います。
ゆっきゅん×君島大空『プライベート・スーパースター』Music Video
(取材=西田友紀 構成・文=西澤慎太郎)
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