スタイリストの大草直子さんが、ファッション誌の編集者になるために頑張っていた20歳の頃の話など、“20歳”をテーマに語った。
大草さんが登場したのは1月13日(月・祝)に放送されたJ-WAVEの特別番組『J-WAVE SPECIAL SAPPORO BEER AT AGE 20, THE BEGINNING』(ナビゲーター:シシド・カフカ)。毎年、成人の日に、人生の大きな節目である「20歳」をテーマに放送し、2025年で4回目を迎えた。
シシド:20歳の頃に、すでにスタイリストを目指していらっしゃいましたか?
大草:私のキャリアのスタートは雑誌の編集者なのですが、中学の卒業文集に「ファッション誌の編集者になりたい」と書いているんです。大学生の頃にはよりクリアになっていて、「どういう活動、勉強をすればたどり着けるか」ということをすごく考えていました。でも、あくまで夢とか目標だったので、その不安やもどかしさ、「何者でもない自分への焦り」みたいな感じが、ない交ぜになっていましたね。
シシド:大学に通っている学生という身ではあるものの、周りの輝いている先輩たちを見て、「自分の立ち位置は、向かっているゴールに対して正常なのか?」という焦りみたいなものがあったということですね。
大草:ありました。よく人と比較していたと、いまになって思いますね。
シシド:その頃の忘れられない体験や出会い、いまにつながるものなどで、覚えていることはありますか?
大草:私が20歳の頃は、体育会に近いようなけっこう厳しい部活をやっていました。というのも、それまで運動はしていましたが、あまりチームでやるような競技ではなかったので、「おそらくチーム競技ができるのは、大学生が最後だろうな」と思って、ちょうど日本に入ってきたラクロスというスポーツを始めて、部活に心を燃やしていた時期でした。そのときに、まだ何もない状態の新しい部活だったので、みんなで「ユニフォームを作ろう」ということになり、私がデザインさせてもらいました。
シシド:すごい! 楽しそう。
大草:服を作る面白さやみんなでそれを共有する楽しさは、そのときに初めて味わった感じですね。
シシド:デザインする側の気持ちや、自分がデザインしたものをみんなが喜んで着てくれるという気持ち、チーム一丸となってひとつの結果を求める心みたいなものを、そこで培うことができたのかもしれないですね。
大草:そうですね。チームワークを実際に体験できたのは、大きかったと思います。
大草:とにかく、モヤモヤ焦ってほしいなと思います。年齢を重ねるとなかなかその時間がないし、周りも許してくれない。
シシド:そうですね。
大草:あと、20歳でもう働いている方や、子育てをしている方もいらっしゃるかもしれません。いろいろなことが始まると、物事をちょっと逆算して考えるクセができるというか、そうしないとおそらく回らないんですよね。たとえば、仕事は「ここまでに終わらせなきゃいけない」「成果を出さなきゃいけない」ということがあります。私は雑誌の編集者だったので、「今月末までに、必ず原稿を仕上げて出さなきゃいけない」と、逆算になってしまいます。お子さんを育てている方も「この時間までに寝かせなきゃいけない」「18時までにごはんを食べさせなければいけない」(ということがある)。その“逆算”をしないで生きられるのはこの(年齢)ぐらいまでなので、自分の経験上、あまり締め切りを決めずに、考え方や行動をできる範囲でやれるといいのではないかなと思います。
20歳の人たちには「身の回りにあることに目を留めたり、『やってみたい!』と思うことに猛進してみたり、気の向くまま時間を費やして、そのたびに自分を見つめる機会を設けてほしい」という、大草さん。番組では、そんな大草さんが20歳の頃によく聴いていた、「いまの20歳の方に贈りたい曲」として、Boyz Ⅱ Menの『END OF THE ROAD』がオンエアされた。
大草:20歳の頃によく聴いていたし、よく流れていました。
シシド:その当時の流行りの曲だったのでしょうか?
大草:そうですね。レストランやラジオなど、本当にさまざまなところで流れていました。すごくきれいなコーラスなので耳に残っているのと、歌詞がちょっとだけウェットなんですよ。捉え方はいろいろですが、別れた彼女に対しての、けっこう未練がましい感じがチャーミングだなと思って(笑)。
シシド:先ほど、20歳の頃のエピソードを伺いましたが、ときが経ち、年齢を重ねていくなかで、ご自身にどんな変化を感じていらっしゃいますか?
大草:本当に「思えば遠くに来たもんだ」という感じです(笑)。20歳の頃の話をすることは、あまりないじゃないですか。いま52歳なのでちょっと前は40歳ぐらい、だから20歳はだいぶ前で(笑)。仕事を始めてからのほうが長くなってしまいましたが、キャリアに関してはいろいろなことはやらせていただいているものの、同じファッションやメディアの仕事をずっとさせてもらっていて「本当に幸せだな」と思いますね。ただ、52歳というと人生の後半戦ではあるので、体調や体型の変化などは感じます。
シシド:そうですよね。年を重ねてきて経験値が増えてきたからこそ気づけること、そして手間をかけられることは変わっていきますよね。
大草:変わりますね。
大草:ありがとうございます。自分がすごく大事にしていることをおっしゃってくださったので、うれしいです。私は雑誌の言葉や小説の言葉など、言葉に救われたことがすごく多かったので、それをすごく大事にするようにしています。おしゃれを伝えるときに、いままでは写真、ビジュアルがメインだったのですが、それを見ても「すごく素敵。だけど、どうしてこれは素敵なんだろう。どうやったらこうなれるんだろう」と、わからない人がたくさんいると思います。そういったときにいちばんの力になるのは、言葉なんですよね。たとえば「白シャツを3つ目までボタンを開けてデコルテの凹凸を出して、女の人はここに光と影があるので、その光と影をシャツの襟のVゾーンのなかに作りましょう」という言葉があれば、それだけで「なるほど。この写真の人がかっこいいのは、そういうことなんだ!」となります。それをどうしてもやりたくて、どんなに忙しくても、絶対に本や雑誌などのメディアでの原稿は全部自分で書くようにしていたし、いまもしています。提案するコーディネートとディレクションする写真、そして言葉で100パーセントになればいいかなと思ってずっと仕事をしてきました。
シシド:自分に対して嘘のない言葉や肌触りのいい言葉を見つけるのはとても難しいし、お伝えしなければいけないお仕事をずっとされていたからこそ、相手に伝わらなければ意味がないという客観的な目を持つというのも難しいと思いますが、いまはすべての世代にそれが求められているんだろうなというのは、ちょっと感じますよね。
大草:そうですね。言葉は生まれつきのセンスももちろんありますが、訓練の部分もけっこうあるので、たくさん本を読んだり人とお話ししたりしたことがすごく生きてくるとは、実感として思います。
シシド:最後に、大草さんがいま活動をしているなかで、いちばん大事にしていることをお聞かせください。
大草:キャリアも含む人生で、いままで本当にたくさんのご縁と愛をいただいたので、「どうやってお返しできるか」ということをすごく考えていて、たとえば、あとに続く後輩の方たちがより楽に、楽しく生きられるように情報を選定して出すようにしています。そのなかの活動のひとつとして、ホルモンの話をいろいろなところでしています。思春期もあれば、男性の更年期もあって、私たちはホルモンに左右されるんですよ。なので、ホルモンを上手にマネジメントできるような情報を発信していきたいと思って、それを一生懸命やっています。
シシド:すべての基本となる、体のことですね。そういうお話もたくさん聞ける2025年を楽しみにしています。
大草さんが登場したのは1月13日(月・祝)に放送されたJ-WAVEの特別番組『J-WAVE SPECIAL SAPPORO BEER AT AGE 20, THE BEGINNING』(ナビゲーター:シシド・カフカ)。毎年、成人の日に、人生の大きな節目である「20歳」をテーマに放送し、2025年で4回目を迎えた。
不安や焦りを抱えていた、20歳の自分
ファッションエディター、スタイリストとして多方面で活躍している大草さん。大学生だった20歳の頃を振り返り、「モヤモヤしていました」と、笑い混じりに語る。シシド:20歳の頃に、すでにスタイリストを目指していらっしゃいましたか?
大草:私のキャリアのスタートは雑誌の編集者なのですが、中学の卒業文集に「ファッション誌の編集者になりたい」と書いているんです。大学生の頃にはよりクリアになっていて、「どういう活動、勉強をすればたどり着けるか」ということをすごく考えていました。でも、あくまで夢とか目標だったので、その不安やもどかしさ、「何者でもない自分への焦り」みたいな感じが、ない交ぜになっていましたね。
シシド:大学に通っている学生という身ではあるものの、周りの輝いている先輩たちを見て、「自分の立ち位置は、向かっているゴールに対して正常なのか?」という焦りみたいなものがあったということですね。
大草:ありました。よく人と比較していたと、いまになって思いますね。
シシド:その頃の忘れられない体験や出会い、いまにつながるものなどで、覚えていることはありますか?
大草:私が20歳の頃は、体育会に近いようなけっこう厳しい部活をやっていました。というのも、それまで運動はしていましたが、あまりチームでやるような競技ではなかったので、「おそらくチーム競技ができるのは、大学生が最後だろうな」と思って、ちょうど日本に入ってきたラクロスというスポーツを始めて、部活に心を燃やしていた時期でした。そのときに、まだ何もない状態の新しい部活だったので、みんなで「ユニフォームを作ろう」ということになり、私がデザインさせてもらいました。
シシド:すごい! 楽しそう。
大草:服を作る面白さやみんなでそれを共有する楽しさは、そのときに初めて味わった感じですね。
シシド:デザインする側の気持ちや、自分がデザインしたものをみんなが喜んで着てくれるという気持ち、チーム一丸となってひとつの結果を求める心みたいなものを、そこで培うことができたのかもしれないですね。
大草:そうですね。チームワークを実際に体験できたのは、大きかったと思います。
20歳は「逆算せず、モヤモヤ焦って生きて」
続いて、20歳を迎えた人たちに、自身の経験から伝えたいことを訊いた。大草:とにかく、モヤモヤ焦ってほしいなと思います。年齢を重ねるとなかなかその時間がないし、周りも許してくれない。
シシド:そうですね。
大草:あと、20歳でもう働いている方や、子育てをしている方もいらっしゃるかもしれません。いろいろなことが始まると、物事をちょっと逆算して考えるクセができるというか、そうしないとおそらく回らないんですよね。たとえば、仕事は「ここまでに終わらせなきゃいけない」「成果を出さなきゃいけない」ということがあります。私は雑誌の編集者だったので、「今月末までに、必ず原稿を仕上げて出さなきゃいけない」と、逆算になってしまいます。お子さんを育てている方も「この時間までに寝かせなきゃいけない」「18時までにごはんを食べさせなければいけない」(ということがある)。その“逆算”をしないで生きられるのはこの(年齢)ぐらいまでなので、自分の経験上、あまり締め切りを決めずに、考え方や行動をできる範囲でやれるといいのではないかなと思います。
20歳の人たちには「身の回りにあることに目を留めたり、『やってみたい!』と思うことに猛進してみたり、気の向くまま時間を費やして、そのたびに自分を見つめる機会を設けてほしい」という、大草さん。番組では、そんな大草さんが20歳の頃によく聴いていた、「いまの20歳の方に贈りたい曲」として、Boyz Ⅱ Menの『END OF THE ROAD』がオンエアされた。
大草:20歳の頃によく聴いていたし、よく流れていました。
シシド:その当時の流行りの曲だったのでしょうか?
大草:そうですね。レストランやラジオなど、本当にさまざまなところで流れていました。すごくきれいなコーラスなので耳に残っているのと、歌詞がちょっとだけウェットなんですよ。捉え方はいろいろですが、別れた彼女に対しての、けっこう未練がましい感じがチャーミングだなと思って(笑)。
Boyz Ⅱ Men - END OF THE ROAD
大草:本当に「思えば遠くに来たもんだ」という感じです(笑)。20歳の頃の話をすることは、あまりないじゃないですか。いま52歳なのでちょっと前は40歳ぐらい、だから20歳はだいぶ前で(笑)。仕事を始めてからのほうが長くなってしまいましたが、キャリアに関してはいろいろなことはやらせていただいているものの、同じファッションやメディアの仕事をずっとさせてもらっていて「本当に幸せだな」と思いますね。ただ、52歳というと人生の後半戦ではあるので、体調や体型の変化などは感じます。
シシド:そうですよね。年を重ねてきて経験値が増えてきたからこそ気づけること、そして手間をかけられることは変わっていきますよね。
大草:変わりますね。
人生でもらった「ご縁と愛」を返すために
今回の大草さんとの対談、そして著書やさまざまな記事から、「すごく言葉を大切になさっている」と感じたシシドは、大草さんに「言葉が持つ強さや力を、どのように捉えているか」を問う。大草:ありがとうございます。自分がすごく大事にしていることをおっしゃってくださったので、うれしいです。私は雑誌の言葉や小説の言葉など、言葉に救われたことがすごく多かったので、それをすごく大事にするようにしています。おしゃれを伝えるときに、いままでは写真、ビジュアルがメインだったのですが、それを見ても「すごく素敵。だけど、どうしてこれは素敵なんだろう。どうやったらこうなれるんだろう」と、わからない人がたくさんいると思います。そういったときにいちばんの力になるのは、言葉なんですよね。たとえば「白シャツを3つ目までボタンを開けてデコルテの凹凸を出して、女の人はここに光と影があるので、その光と影をシャツの襟のVゾーンのなかに作りましょう」という言葉があれば、それだけで「なるほど。この写真の人がかっこいいのは、そういうことなんだ!」となります。それをどうしてもやりたくて、どんなに忙しくても、絶対に本や雑誌などのメディアでの原稿は全部自分で書くようにしていたし、いまもしています。提案するコーディネートとディレクションする写真、そして言葉で100パーセントになればいいかなと思ってずっと仕事をしてきました。
シシド:自分に対して嘘のない言葉や肌触りのいい言葉を見つけるのはとても難しいし、お伝えしなければいけないお仕事をずっとされていたからこそ、相手に伝わらなければ意味がないという客観的な目を持つというのも難しいと思いますが、いまはすべての世代にそれが求められているんだろうなというのは、ちょっと感じますよね。
大草:そうですね。言葉は生まれつきのセンスももちろんありますが、訓練の部分もけっこうあるので、たくさん本を読んだり人とお話ししたりしたことがすごく生きてくるとは、実感として思います。
シシド:最後に、大草さんがいま活動をしているなかで、いちばん大事にしていることをお聞かせください。
大草:キャリアも含む人生で、いままで本当にたくさんのご縁と愛をいただいたので、「どうやってお返しできるか」ということをすごく考えていて、たとえば、あとに続く後輩の方たちがより楽に、楽しく生きられるように情報を選定して出すようにしています。そのなかの活動のひとつとして、ホルモンの話をいろいろなところでしています。思春期もあれば、男性の更年期もあって、私たちはホルモンに左右されるんですよ。なので、ホルモンを上手にマネジメントできるような情報を発信していきたいと思って、それを一生懸命やっています。
シシド:すべての基本となる、体のことですね。そういうお話もたくさん聞ける2025年を楽しみにしています。
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