今年の心揺さぶられた映画を、俳優の井之脇 海、映画監督の奥山大史、俳優でシンガーソングライターの松下洸平、俳優の岸井ゆきのが紹介した。4人が語ったのは、12月1日(日)にJ-WAVEで放送された『J-WAVE SELECTION INPEX RETELL THE FILM』。同番組のナビゲーターを務めたのは井之脇 海。
12月1日は、128年前の1896年に日本で初めて映画が公開されたことを記念して制定された「映画の日」。それにちなみ、今年の12月1日はJ-WAVEで一夜限りの名も無き映画館がオープンするというコンセプトでオンエア。この映画館の館長を務める井之脇 海をはじめ、ゲストが今年1年、心揺さぶられた映画について語った。
番組には映画監督の奥山大史がゲストで登場。奥山が今年、心揺さぶられた映画としてアンソニー・チェン監督の『国境ナイトクルージング』を挙げた。
井之脇:いい映画ですよね。
奥山:これすごく好きでした。あらすじを説明するのはなかなか(難しいというか)、一言で言うとどこか孤独を抱えている女性1人と男性2人が磁石のように引き寄せられ合って一冬を過ごす。一冬の4日間を描く作品です。何が好きだったかを挙げるときりがないんですけれど、単純に映っているものがすごく好きだったんですよ。フィギュアスケートが撮られていたり、雪景色、中国の若者の描き方も。北朝鮮との国境近くにある延吉を舞台にしているんですけど、そこで息をしている若者たちのちょっとした葛藤や生きづらさみたいなものが、セリフには出てこないけどジワジワと伝わってきて、その伝え方も含めてすごく好きでした。
井之脇:僕も観て、まず絵力がすごいなって。ロケーション選びもですけど、その中で3人のメインの人物を映す距離感だったり、彼らの歯がゆさを映すカメラワークとかが素晴らしいなと思って観ていましたね。奥山さんはフィギュアスケートが好きなんですか?
奥山:実は習っていたことがありまして。子どもの頃に7年間くらい滑っていたんです。一生懸命に頑張って選手を目指していたという時期は1日もなかったんですが、でも楽しい日々だったんですよ。だからいつか映画に撮れたらなって思って、『ぼくのお日さま』でフィギュアスケートを題材に撮りました。
奥山:この映画を撮った後に映画を作ったアンソニー・チェン監督に釜山映画祭で会ったんです。その前にご挨拶はしたことがあって、チェン監督に「今回、何で来てるの?」と言われて「こういう映画を撮ったんです」と言ったら、「マジで!? 僕の映画もフィギュアスケート出てるよ」って言われて。しかも、もう少しで日本でも公開されると聞いて、そこでチェン監督と会ってから楽しみにしていました。それでこの前観て本当に感動して。「いい映画を観たな」と思ったので、心揺さぶられた映画として真っ先に出てきましたね。
松下:これは戸田彬弘監督の作品で、僕は公開当初は映画館で観ることができなかったので観たいなと思っていたのですが、たまたま乗った飛行機でこの映画をやっていて観ることができました。とても素敵な映画でした。杉咲 花さん、若葉竜也さんが出演していて、本当に静かな物語ではあるんですけど、結末まで予想できない作品でした。最後の最後で「なるほど、そうか」と気持ちが感じたことのないところに行ってしまうような作品でした。杉咲さんのお芝居が本当に素敵だったのがとても印象的です。映像もすごくきれいですし、決して派手な作品ではないかもしれないけれども、人の心の奥底に手が届く作品だったなと思います。まだ観てなかったらぜひ観てみてください。
松下は11月にニューシングル『愛してるって言ってみてもいいかな』をリリース。番組ではこのタイトル曲『愛してるって言ってみてもいいかな』をオンエアした。
井之脇:この映画を観たときは心がジワッと温まるような、でも考えさせられることもたくさんある映画で、本当に好きな映画でしたね。これを観たときに、恋愛だけじゃなく重なる部分がすごくあるなって(思いました)。「あのときこの行動をしていたらどうなっていたんだろう」とか。逆にあのときにこの行動をしたからいまの自分があるとか。そういった人生の選択というか一秒一秒、一瞬一瞬に僕の人生って乗っているんだなと考えさせられて、それがすごく心に響きましたね。
ゲストの奥山もこの作品を観たそうで、「いろんな意味で、こういう映画が作りたいな」と感じたと話す。
奥山:映画の中で国境を越えて行くじゃないですか。それがまず今っぽいなって思いますし、国境を越えるっていうことは、つまり言語が映画の中で韓国語と英語の2つ出てくる。その言語を越えられない人たちも出てくるんですよね。このストーリーで言うとアーサーは韓国語がわからないからこそのグッときちゃうシーンもありますよね。ああいうのを見ているとストーリー自体は散々120年の映画史で何度もやられてきたものなのに新しく見える。だからこういう映画を作りたいなって思いました。
井之脇:奥山さんがおっしゃられたように越えていくとか、でも映画の中の彼らはオンラインでは会っていて。でもオンラインで会うこととまた時を経て生身で会いに行くっていうことのエネルギーの違いだったりとか、今この世の中は誰とでもすぐにテレビ電話できて会った気になっちゃってるけれど、やっぱり対面で会うことの心揺さぶられるものが全然違うなと、あらためて思わされました。本当にアーサーと主人公のノラとヘソンの三者三様の思いがあって、彼らの人生の選択があって、観ていてウルッときちゃうときもあり、アーサーって思うときもあったりしました。
岸井:この映画は東京からわりと近くにある高原で、主人公の巧と娘の花が太陽のサイクルのように生活しているんですけど、その場所でグランピング場を建てるという話が出てくるんですね。そこでの住民とグランピング会社との対話からいろいろなことが起こっていくという映画です。すごく好きなセリフがあって、巧が「俺は便利屋。このまちの」って言うんですね。これはなかなかすごいセリフだなと思って。自分に置き換えてみると「私は俳優。日本の」とか。例えば「私は会社員。J-WAVEの」とかってあんまり言わないですよね。でもすごく自然で少し奇妙で何かが起こる気がするというか。その一言ですごく感じたんですよね。
別のシーンでも岸野は心に残る言葉があったという。
岸井:もとから住んでいる住民の人たちが説明会で、なぜここで営みを続けているのか。なぜここがいいのか。なぜグランピングを建てるべきではないのかを話すシーンがあるんですけど、すごくシンプルな言葉で力強くて、なぜかここで涙が出てくるんですよね。すごく好きなシーンでした。『悪は存在しない』は今年、2回映画館で観た映画なので、また上映した際にはぜひみなさんぜひご覧になってください。
番組も終わりに近づき、最後に井之脇は自分にとっての心揺さぶられた映画について語る。
井之脇:やっぱり一緒に寄り添ってくれるような映画に心揺さぶられますね。映画に非日常や刺激を求めることももちろんあるんですけど、日々を生きていく中でつらいこととか生きにくいことがあるときに映画を観て、無理に背中を押すとかではなく一緒に横を歩いてくれるようなそんな映画が心地よくて、心を揺さぶられます。今後もそんな映画をたくさん観たいですし、そんな映画に関わっていけたらなと思います。
井之脇は現在公開中の映画『ピアニストを待ちながら』に出演。
井之脇 海の最新情報は、株式会社ユマニテの公式サイトまで。
再生は2024年12月8日28時ごろ
セリフには出てこないけどジワジワと伝わってきた
映画を観るとき、多くの人が、落ち込んだ気持ちを救ってくれるような言葉や、そのときの自分に寄り添ってくれるようなセリフ、シーンに出会ったことがあるはず。12月1日は、128年前の1896年に日本で初めて映画が公開されたことを記念して制定された「映画の日」。それにちなみ、今年の12月1日はJ-WAVEで一夜限りの名も無き映画館がオープンするというコンセプトでオンエア。この映画館の館長を務める井之脇 海をはじめ、ゲストが今年1年、心揺さぶられた映画について語った。
番組には映画監督の奥山大史がゲストで登場。奥山が今年、心揺さぶられた映画としてアンソニー・チェン監督の『国境ナイトクルージング』を挙げた。
映画『国境ナイトクルージング』あらすじ
母からのプレッシャーに心を壊したエリート社員。オリンピック出場を断念した元フィギュアスケーター。勉強が苦手で故郷を飛び出した料理人。挫折をひた隠し、閉塞感の中で縮こまる3人が、中国と北朝鮮の国境の街、延吉に流れ着いた。磁石のように引き寄せられ、数日間を気ままに過ごす彼ら。深入りせずに、この瞬間をひたすら楽しむ、それが暗黙のルールだ。過去も未来も忘れ、極寒の延吉をクルーズするうちに、凍りついていた孤独がほどけていった。
(映画『国境ナイトクルージング』公式サイトより)
井之脇:いい映画ですよね。
奥山:これすごく好きでした。あらすじを説明するのはなかなか(難しいというか)、一言で言うとどこか孤独を抱えている女性1人と男性2人が磁石のように引き寄せられ合って一冬を過ごす。一冬の4日間を描く作品です。何が好きだったかを挙げるときりがないんですけれど、単純に映っているものがすごく好きだったんですよ。フィギュアスケートが撮られていたり、雪景色、中国の若者の描き方も。北朝鮮との国境近くにある延吉を舞台にしているんですけど、そこで息をしている若者たちのちょっとした葛藤や生きづらさみたいなものが、セリフには出てこないけどジワジワと伝わってきて、その伝え方も含めてすごく好きでした。
井之脇:僕も観て、まず絵力がすごいなって。ロケーション選びもですけど、その中で3人のメインの人物を映す距離感だったり、彼らの歯がゆさを映すカメラワークとかが素晴らしいなと思って観ていましたね。奥山さんはフィギュアスケートが好きなんですか?
奥山:実は習っていたことがありまして。子どもの頃に7年間くらい滑っていたんです。一生懸命に頑張って選手を目指していたという時期は1日もなかったんですが、でも楽しい日々だったんですよ。だからいつか映画に撮れたらなって思って、『ぼくのお日さま』でフィギュアスケートを題材に撮りました。
松下洸平が選ぶ、結末まで予想できない作品
続いては、俳優でシンガーソングライターの松下洸平がコメントで登場。松下の心揺さぶられた映画は『市子』だった。映画『市子』あらすじ
市子(杉咲 花)は、恋人の長谷川義則(若葉竜也)からプロポーズを受けた翌日に、突然失踪。長谷川が行方を追い、これまで彼女と関わりがあった人々から証言を得ていくと、切なくも衝撃的な事実が次々と浮かび上がる…。市子の人生を狂わせた悲しき宿命。名前を変え、人を欺き、社会から逃れるように生きてきた。なぜ、彼女はこのような人生を歩まなければならなかったのか―。
(『市子』公式サイトより)
松下:これは戸田彬弘監督の作品で、僕は公開当初は映画館で観ることができなかったので観たいなと思っていたのですが、たまたま乗った飛行機でこの映画をやっていて観ることができました。とても素敵な映画でした。杉咲 花さん、若葉竜也さんが出演していて、本当に静かな物語ではあるんですけど、結末まで予想できない作品でした。最後の最後で「なるほど、そうか」と気持ちが感じたことのないところに行ってしまうような作品でした。杉咲さんのお芝居が本当に素敵だったのがとても印象的です。映像もすごくきれいですし、決して派手な作品ではないかもしれないけれども、人の心の奥底に手が届く作品だったなと思います。まだ観てなかったらぜひ観てみてください。
松下は11月にニューシングル『愛してるって言ってみてもいいかな』をリリース。番組ではこのタイトル曲『愛してるって言ってみてもいいかな』をオンエアした。
井之脇 海が、重なる部分を感じた作品
番組後半には井之脇が心揺さぶられた映画を紹介。その作品は韓国・ソウル出身のセリーヌ・ソンが手掛けた映画『パスト ライブス/再会』だった。映画『パスト ライブス/再会』あらすじ
ソウルに暮らす12歳の少女ノラと少年ヘソン。ふたりはお互いに恋心を抱いていたが、ノラの海外移住により離れ離れになってしまう。12年後24歳になり、ニューヨークとソウルでそれぞれの人生を歩んでいたふたりは、オンラインで再会を果たし、お互いを想いながらもすれ違ってしまう。そして12年後の36歳、ノラは作家のアーサーと結婚していた。ヘソンはそのことを知りながらも、ノラに会うためにニューヨークを訪れる。24年ぶりにやっとめぐり逢えたふたりの再会の7日間。ふたりが選ぶ、運命とは―。
(映画『パスト ライブス/再会』公式サイトより)
井之脇:この映画を観たときは心がジワッと温まるような、でも考えさせられることもたくさんある映画で、本当に好きな映画でしたね。これを観たときに、恋愛だけじゃなく重なる部分がすごくあるなって(思いました)。「あのときこの行動をしていたらどうなっていたんだろう」とか。逆にあのときにこの行動をしたからいまの自分があるとか。そういった人生の選択というか一秒一秒、一瞬一瞬に僕の人生って乗っているんだなと考えさせられて、それがすごく心に響きましたね。
ゲストの奥山もこの作品を観たそうで、「いろんな意味で、こういう映画が作りたいな」と感じたと話す。
奥山:映画の中で国境を越えて行くじゃないですか。それがまず今っぽいなって思いますし、国境を越えるっていうことは、つまり言語が映画の中で韓国語と英語の2つ出てくる。その言語を越えられない人たちも出てくるんですよね。このストーリーで言うとアーサーは韓国語がわからないからこそのグッときちゃうシーンもありますよね。ああいうのを見ているとストーリー自体は散々120年の映画史で何度もやられてきたものなのに新しく見える。だからこういう映画を作りたいなって思いました。
井之脇:奥山さんがおっしゃられたように越えていくとか、でも映画の中の彼らはオンラインでは会っていて。でもオンラインで会うこととまた時を経て生身で会いに行くっていうことのエネルギーの違いだったりとか、今この世の中は誰とでもすぐにテレビ電話できて会った気になっちゃってるけれど、やっぱり対面で会うことの心揺さぶられるものが全然違うなと、あらためて思わされました。本当にアーサーと主人公のノラとヘソンの三者三様の思いがあって、彼らの人生の選択があって、観ていてウルッときちゃうときもあり、アーサーって思うときもあったりしました。
岸井ゆきのが「すごい」と思ったセリフ
最後に、俳優の岸井ゆきのがコメントで登場。心揺さぶられた映画として濱竜介監督の『悪は存在しない』を紹介した。映画『悪は存在しない』あらすじ
長野県、水挽町(みずびきちょう)。自然が豊かな高原に位置し、東京からも近く、移住者は増加傾向でごく緩やかに発展している。代々そこで暮らす巧(大美賀均)とその娘・花(西川玲)の暮らしは、水を汲み、薪を割るような、自然に囲まれた慎ましいものだ。しかしある日、彼らの住む近くにグランピング場を作る計画が持ち上がる。コロナ禍のあおりを受けた芸能事務所が政府からの補助金を得て計画したものだったが、森の環境や町の水源を汚しかねないずさんな計画に町内は動揺し、その余波は巧たちの生活にも及んでいく。
(映画『悪は存在しない』公式サイトより)
岸井:この映画は東京からわりと近くにある高原で、主人公の巧と娘の花が太陽のサイクルのように生活しているんですけど、その場所でグランピング場を建てるという話が出てくるんですね。そこでの住民とグランピング会社との対話からいろいろなことが起こっていくという映画です。すごく好きなセリフがあって、巧が「俺は便利屋。このまちの」って言うんですね。これはなかなかすごいセリフだなと思って。自分に置き換えてみると「私は俳優。日本の」とか。例えば「私は会社員。J-WAVEの」とかってあんまり言わないですよね。でもすごく自然で少し奇妙で何かが起こる気がするというか。その一言ですごく感じたんですよね。
別のシーンでも岸野は心に残る言葉があったという。
岸井:もとから住んでいる住民の人たちが説明会で、なぜここで営みを続けているのか。なぜここがいいのか。なぜグランピングを建てるべきではないのかを話すシーンがあるんですけど、すごくシンプルな言葉で力強くて、なぜかここで涙が出てくるんですよね。すごく好きなシーンでした。『悪は存在しない』は今年、2回映画館で観た映画なので、また上映した際にはぜひみなさんぜひご覧になってください。
番組も終わりに近づき、最後に井之脇は自分にとっての心揺さぶられた映画について語る。
井之脇:やっぱり一緒に寄り添ってくれるような映画に心揺さぶられますね。映画に非日常や刺激を求めることももちろんあるんですけど、日々を生きていく中でつらいこととか生きにくいことがあるときに映画を観て、無理に背中を押すとかではなく一緒に横を歩いてくれるようなそんな映画が心地よくて、心を揺さぶられます。今後もそんな映画をたくさん観たいですし、そんな映画に関わっていけたらなと思います。
井之脇は現在公開中の映画『ピアニストを待ちながら』に出演。
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2024年12月8日28時59分まで
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番組情報
- J-WAVE SELECTION INPEX RETELL THE FILM
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2024年12月1日(日)22:00-22:54