提供:旭化成ファーマ
・本編に症状についての言及がありますが、あくまでも患者さん個人の意見になります。
・自身の症状で気になる方は必ず専門の医療施設を受診し、医師の診断に基づき適切な治療を行うようにしてください。
自分らしく、前向きに生きる──よく聞かれる言葉ではあるけれど、実践するのは難しいもの。年齢を重ねるほど、体の不調、心の落ち込み、ライフステージの変化など慌ただしい日々のなかで、自分本来の気持ちを見失ってしまうこともあるのでは。
そこで今回は、難病と戦いながらも前向きな人生を歩む女性へのインタビューを通じて、「自分らしく生きるコツ、工夫」を学んでみたい。ふたりが患っているのは、「全身性エリテマトーデス」(以下、SLE)という難病だ。聞き手は、J-WAVE『ALL GOOD FRIDAY』をナビゲートするLiLiCoと、J-WAVEニュースルームアナウンサーの東海林克江が務めた。
このインタビューは、「LiLiCoとまなぶ!毎日楽しく元気に生きるコツ」と題して、Podcastでも配信中。ふたりの体験談のほか、SLE患者さんから募集したお便りを紹介するなど、盛りだくさんな内容となっている。ここでは、その一部をテキストでお届けする。
症状は発熱や全身倦怠感、皮膚症状、関節炎などさまざま。患者の9割が女性で、20~30代に発症することが多く※2)、仕事や恋愛、結婚、出産など、人生の転機を迎えるタイミングと重なり、思い悩む人も多いとされる。体のつらさだけでなく、自己肯定感の低下などにも結びついてしまいやすい。
しかし、最近は治療法が進化して、病気を適切にコントロールしながら発症前と変わらない日常生活を送る患者さんもいる。今回登場したふたりも、仕事や表現活動などに精を出している。どのように病気と向き合ってきたのだろうか?
1)難病情報センター 全身性エリテマトーデス
2)難病情報センター 特定疾患の疫学に関する調査研究班報告書
そんな武さんの身体に異変が生じたのは、今から4年前のこと。もともと、疲れや足のむくみといった症状に悩まされていたものの、連日立ちっぱなしで働く美容師という職業柄もあり、病気だとは思わなかったそう。しかし26歳の冬、美容ハサミを握る手に痛みや震えが走るようになったほか、むくみが顔全体にもあらわれるように。上司や同僚からも心配され、病院を受診した結果、SLEの診断が下った。
LiLiCo:そもそもSLEという病気はご存じだったんですか?
武:はい、知っていました。以前、SLE患者が出てくるドラマを見たことがあって。また、膠原病(※SLEや関節リウマチなど、自己免疫疾患の総称)を発症した家族がいたこともあって、医師から病名を聞かされたときも、すごく落ち込むというよりは、「これからどう戦っていこうか」と考えていました。
時を同じくして、武さんは人生の転機を迎えていた。交際相手からプロポーズを受けたのだ。入院期間中は「相手に迷惑をかけてしまう」と迷っていたが、入院生活を経て、気持ちがかたまっていく。
武: 2か月半に及んだ入院生活の中で、一番支えてくれたのが彼だったんです。「自分のつらい部分も見せられるこの人と、これからどんなに大変なことが起こっても一緒に乗り越えていきたい」と思って、退院後に覚悟を伝えました。そしたら彼は「初めからそのつもりだったよ」と言ってくれたんです。
東海林:素敵ですね~!
LiLiCo:ほんとに! もう、なんかプレゼントしたくなっちゃう(笑)。
東海林:ということは、旦那様は、病気の症状などについて理解しているのですね?
武:そうですね。私が入院した期間がコロナ禍だったこともあって、両親と会うことがなかなかできませんでした。そこで彼には次期パートナーというかたちで、医師と話す際に同席してもらったんです。また、彼自身も、病気のことを調べて学んでくれたのではないかと思います。
東海林:心強いですね。
LiLiCo:きっと一生懸命、勉強してくれていると思いますよ。
東海林:病名は職場で早い段階で伝えたんですか?
武: SLEについて認知してもらえないかもしれないという不安があり、また、どこまで話すべきか判断がつかず、報告するのをためらっていました。今でも正直なところ、職場で私の病状について完全に把握している同僚は多くありません。一方で上司には、難病指定されていること、一生付き合っていく可能性のある病気であることなどを伝え、働かせていただいています。
LiLiCo:同僚の方全員に病気のことをオープンにしなかったのは、やっぱり、特別な目で見られたくない、気を遣われたくないという気持ちがあったから?
武:おっしゃる通りです。変に気を遣われるのも、優しくされ過ぎるのも、私の中では違和感があるというか……。SLEを患って変わってしまったことはあるけれど、美容が好きで、お客様を幸せにしたいという、根本の“自分”は変わらない。むしろ以前より強くなったくらいです。だからこそ、同僚には病気を気にしながら付き合ってもらうのは申し訳ないという考えがありました。
そんな彼女に「自分らしく生きるために大切にしていることは何か」と聞いてみた。
武:SLEになったことで、美容や身体の整いは生きていく上ですごく大切であり、そこから生まれる自信があると気づかされました。やはり、SLEの症状として体調が悪くなったり、お肌が荒れたりするとメンタルが落ちてしまいます。だからこそ、SLEを発症してからは健康であり続けるためには何をするべきかを深く学び、実践するようになりました。もちろん今でも日によっては落ち込むこともありますが、そういった病気になったことで得られた自分自身の経験・知識を、美容師の仕事や、個人で運用しているSNSなどを通じて伝えていくことが、自分らしく自信をもって生きていくことに繋がっているように感じます。
梅津さんが身体の不調を感じたのは、幼稚園教諭をしていた25歳。日常的に頭痛に悩まされるようになり、そこから関節痛、身体のこわばり、倦怠感といった症状が現れていき、趣味のサーフィン中に“異変”を明確に感じたという。ついには強い脱力感でペンを持つこともできなくなった。病院にかかり、SLEだとわかったのは27歳。当時の心境を、梅津さんはこう振り返る。
梅津:自分が罹患するまでSLEについては全くの無知でしたが、病名がわかって、実はちょっと安心したんです。というのも、「何の症状だろう……?」という漠然とした不安がなくなり、対処するお薬もあると知ったので。当時は「治療していけばこの酷い状態から回復するはず」と希望を持っていました。
だが、病状は悪化し、梅津さんの闘病生活は長引いてしまった。1か月半の入院生活を終えたのもつかの間、SLEの重症とされる「中枢神経ループス」を併発。身体を動かすことはおろか、食事を取ることもしゃべることも満足にできない寝たきり状態となり、2度目の入院期間は6年にも及んだ。リハビリを経て退院したのちは車いす生活に。10年ほど寛解状態が続いたが、2020年に受けた腰のオペをきっかけにSLEが再発。3度目となった入院生活は1年半続き、その間5度の手術を経験したという。しかも、SLEの治療を再びイチから始めなければならなくなったそうだ。
LiLiCo:私たちが想像もできないくらい、大変なご経験をされてきたのですね……。6年は長期間ですが、ご家族はどうされていましたか?
梅津:家族は振り回されて大変だったと思うんですけど、でも、私の状態を見て、ともに悲しんでくれました。すごく落ち込んでいた私に、少しでも元気を与えようとあえて明るく振る舞ったり、面白い話をして笑わせてくれたり。私が自暴自棄にならないよう、常に寄り添ってサポートしてくれたのを覚えています。
SLEと中枢神経ループスを併発したのは、新婚生活を送っていた幸せの絶頂期。そこから寝たきりになったことで、「自分の人生、こんなはずじゃなかったのに」と打ちひしがれていたと振り返る梅津さん。明るさを取り戻すまでには、「現状を無理に受け入れようとせず、思い切って現実逃避する」という工夫があったという。
梅津:楽しいことや身近な目標、自分の好きなことに目を向けるようにマインドセットしました。入院中にできることは限られていましたが、たとえば、治療やリハビリを一個ずつ頑張って一個できたら自分を褒めるようにして。周りのみんなも「絵里ちゃん頑張ったね、すごいね」と褒めてくれたので、モチベーションを維持しながら頑張ることができました。そうしていくうちに、自分の暗い闇の殻から抜け出せたんですよね。
LiLiCo:大きな目標を追いかけまわすのではなく、小さな目標達成を積み重ねて、自己肯定感を高めることってすごく大切ですよね。
梅津:ほんとにそう思います。あと、楽しいことで言えば、症状がだいぶ軽くなっていた入院後期に、昔から大ファンだった奥田民生さん率いるユニコーンが再結成したんですね。そこで、「このチャンスを逃すまい!」と、医師から外出許可を得てユニコーンのライブに行ったこともありました。
LiLiCo:えー! すごい!
梅津:ライブを鑑賞したことでめちゃくちゃ元気をもらえて、生きる希望も見い出せたんです。やっぱり音楽の力はすごいなと思いましたし、ユニコーンと奥田民生さんには心の底から感謝しています。
LiLiCo:奥田さんに番組とかでもし会う機会があれば伝えたいなぁ。「こんなに元気をもらった方がいるんですよ」って!
梅津:ぜひ、お願いします!
梅津:でも、世の中には病気や障がいがあっても活躍されている方がたくさんいることを知りました。そこで、私も病気を患った一歩先の景色を見たいと思い、6年間の入院生活を経てダンスに挑戦することを決めたんです。最初は、車いすユーザー3人でダンスユニット「BEYOND GIRLS」を結成し、自分たちの心のバリアフリーを広めることを目的として、歌やダンスなどのパフォーマンスを披露する活動を展開していました。
LiLiCo:BEYOND GIRLS! ユニット名がイケてますね!
梅津:ありがとうございます。障がいや病気は「つらい」「大変」などのイメージを持たれがちですが、そういった固定観念を越えてその先に行こう!という想いで名付けました。
東海林:BEYOND GIRLSの活動から、どのような経緯でパラダンススポーツのアスリートになられたのですか?
梅津:BEYOND GIRLSでの活動を通して、車いすダンスの魅力に気づくことができました。そんな折に、たまたま昨年ご縁があって、ミュージカルに出演し、舞台上でダンスをさせてもらったんです。このミュージカルがきっかけで、日本パランダンス協会からお話をいただき、今に至ります。
LiLiCo:すごい! 絵里さんの「ダンスが好き」「心のバリアフリーを広めたい」という思いが、ご縁を引き寄せたんでしょうね。
そして「絵里さんが自分らしく生きるために、大事にしていることはありますか?」とLiLiCoが問いかけると、こんな答えが返ってきた。
梅津:私はSLEを発症し、いろいろなことを諦めてきたものの、「好きなことを諦めない」ことを大切にしています。矛盾しているんですけど、好きなことはやらないと諦めきれません。やってダメだったらダメで納得できるけど、やらないと納得はできない。だから常にチャレンジすることを意識しているんです。また、たくさんの人に支えられて今があると思うので、感謝と笑顔を忘れないようにしています。そして、ダメなときもあるけど、それはそれで受け入れて「完璧主義なんてどうでもいい。“自分らしく”でいいじゃん」みたいなマインドで日常を愛していこうと心がけています。
武さんと梅津さん、異なるバックボーンを持つ2名のSLE患者の話を聞いたLiLiCoは、最後にこう感想を述べた。
LiLiCo:実際にお会いするまで、SLEの患者さんがどのような感じかイメージがつかなかったんですけど、スーパー美女が二人出てきてびっくりしました! SLEは20代、30代の女性に発症することが多いとのことで、10代のうちから知っておくべき情報だと感じたので、おふたりのお話を学校などで聞かせたいくらいです。私自身、昨日までの何も知らなかった自分から、今日の知ってる自分「LiLiCo 4.0」になったと思うくらい本当に勉強になりましたし。また、困難な状況の中で「自分と向き合うこと」を徹底しているお二人から、素敵な宝物のような言葉をたくさん聞くことができ、改めて「でも、だって……」とできない理由を探して自分で自分を止めるような生き方をするべきではないとも思いましたね。
ポッドキャストでは、あらゆる患者さんから寄せられた「前向きに生きるコツ」を紹介。パワフルなLiLiCoも心を打たれるほど強くしなやかな意見が集まった。前後編で配信中だ。
SLE患者の方々をサポートするためのスマートフォン用アプリ「ハピるん」は、服薬管理、日々の体調の記録・振り返り、通院カレンダーといった機能を搭載。SLEと向き合う人々の自分らしい生活を支援している。 (構成=小島浩平、撮影=竹内洋平)
・本編に症状についての言及がありますが、あくまでも患者さん個人の意見になります。
・自身の症状で気になる方は必ず専門の医療施設を受診し、医師の診断に基づき適切な治療を行うようにしてください。
自分らしく、前向きに生きる──よく聞かれる言葉ではあるけれど、実践するのは難しいもの。年齢を重ねるほど、体の不調、心の落ち込み、ライフステージの変化など慌ただしい日々のなかで、自分本来の気持ちを見失ってしまうこともあるのでは。
そこで今回は、難病と戦いながらも前向きな人生を歩む女性へのインタビューを通じて、「自分らしく生きるコツ、工夫」を学んでみたい。ふたりが患っているのは、「全身性エリテマトーデス」(以下、SLE)という難病だ。聞き手は、J-WAVE『ALL GOOD FRIDAY』をナビゲートするLiLiCoと、J-WAVEニュースルームアナウンサーの東海林克江が務めた。
このインタビューは、「LiLiCoとまなぶ!毎日楽しく元気に生きるコツ」と題して、Podcastでも配信中。ふたりの体験談のほか、SLE患者さんから募集したお便りを紹介するなど、盛りだくさんな内容となっている。ここでは、その一部をテキストでお届けする。
患者の9割が女性…全身性エリテマトーデスとは?
私たちの体には、自分の体を守るために細菌やウイルスなどの外敵を攻撃する「免疫」という働きが備わっている。ところが、免疫の働きになんらかの異常をきたし、自分自身の体の細胞や組織を攻撃してしまう「自己免疫疾患」という病気がある※1)。全身性エリテマトーデス(SLE)は代表的な自己免疫疾患の1つである。症状は発熱や全身倦怠感、皮膚症状、関節炎などさまざま。患者の9割が女性で、20~30代に発症することが多く※2)、仕事や恋愛、結婚、出産など、人生の転機を迎えるタイミングと重なり、思い悩む人も多いとされる。体のつらさだけでなく、自己肯定感の低下などにも結びついてしまいやすい。
しかし、最近は治療法が進化して、病気を適切にコントロールしながら発症前と変わらない日常生活を送る患者さんもいる。今回登場したふたりも、仕事や表現活動などに精を出している。どのように病気と向き合ってきたのだろうか?
1)難病情報センター 全身性エリテマトーデス
2)難病情報センター 特定疾患の疫学に関する調査研究班報告書
前知識のおかげで「どう戦っていこうか」と冷静になれた
最初に話を聞いた武 愛子さんは、美容師として働く31歳だ。そう聞いたLiLiCoは「髪の毛がきれい!」と納得。仕事も含めて美容を大切にしていることが一目で伝わる、華やかな女性だ。<武 愛子さん>
LiLiCo:そもそもSLEという病気はご存じだったんですか?
武:はい、知っていました。以前、SLE患者が出てくるドラマを見たことがあって。また、膠原病(※SLEや関節リウマチなど、自己免疫疾患の総称)を発症した家族がいたこともあって、医師から病名を聞かされたときも、すごく落ち込むというよりは、「これからどう戦っていこうか」と考えていました。
時を同じくして、武さんは人生の転機を迎えていた。交際相手からプロポーズを受けたのだ。入院期間中は「相手に迷惑をかけてしまう」と迷っていたが、入院生活を経て、気持ちがかたまっていく。
武: 2か月半に及んだ入院生活の中で、一番支えてくれたのが彼だったんです。「自分のつらい部分も見せられるこの人と、これからどんなに大変なことが起こっても一緒に乗り越えていきたい」と思って、退院後に覚悟を伝えました。そしたら彼は「初めからそのつもりだったよ」と言ってくれたんです。
東海林:素敵ですね~!
LiLiCo:ほんとに! もう、なんかプレゼントしたくなっちゃう(笑)。
<LiLiCo>
武:そうですね。私が入院した期間がコロナ禍だったこともあって、両親と会うことがなかなかできませんでした。そこで彼には次期パートナーというかたちで、医師と話す際に同席してもらったんです。また、彼自身も、病気のことを調べて学んでくれたのではないかと思います。
東海林:心強いですね。
LiLiCo:きっと一生懸命、勉強してくれていると思いますよ。
「病気による気づきや学び」を人生にも活かしていく
日によって体調が異なるため予定が立てにくいなど、SLEの症状に困難を感じながらも、夫や家族に支えられて明るく日々を過ごしている。仕事も退院後から復帰し、現在も時短で勤務中だ。東海林:病名は職場で早い段階で伝えたんですか?
<J-WAVEニュースルームアナウンサーの東海林克江>
LiLiCo:同僚の方全員に病気のことをオープンにしなかったのは、やっぱり、特別な目で見られたくない、気を遣われたくないという気持ちがあったから?
武:おっしゃる通りです。変に気を遣われるのも、優しくされ過ぎるのも、私の中では違和感があるというか……。SLEを患って変わってしまったことはあるけれど、美容が好きで、お客様を幸せにしたいという、根本の“自分”は変わらない。むしろ以前より強くなったくらいです。だからこそ、同僚には病気を気にしながら付き合ってもらうのは申し訳ないという考えがありました。
武:SLEになったことで、美容や身体の整いは生きていく上ですごく大切であり、そこから生まれる自信があると気づかされました。やはり、SLEの症状として体調が悪くなったり、お肌が荒れたりするとメンタルが落ちてしまいます。だからこそ、SLEを発症してからは健康であり続けるためには何をするべきかを深く学び、実践するようになりました。もちろん今でも日によっては落ち込むこともありますが、そういった病気になったことで得られた自分自身の経験・知識を、美容師の仕事や、個人で運用しているSNSなどを通じて伝えていくことが、自分らしく自信をもって生きていくことに繋がっているように感じます。
寝たきり状態から、メンタルを回復させた方法は?
二人目のゲストは梅津絵里さん(46)。幼少期から10年バレエを習い、エアロビインストラクターを経て幼稚園教諭に。さらには、車いすダンスユニットを結成──まさに“自分らしく前向きに生きる”という言葉がピッタリな経歴を持つ梅津さんだが、度重なる手術や、6年にも及ぶ入院生活を乗り越えて今がある。<梅津絵里さん>
梅津:自分が罹患するまでSLEについては全くの無知でしたが、病名がわかって、実はちょっと安心したんです。というのも、「何の症状だろう……?」という漠然とした不安がなくなり、対処するお薬もあると知ったので。当時は「治療していけばこの酷い状態から回復するはず」と希望を持っていました。
だが、病状は悪化し、梅津さんの闘病生活は長引いてしまった。1か月半の入院生活を終えたのもつかの間、SLEの重症とされる「中枢神経ループス」を併発。身体を動かすことはおろか、食事を取ることもしゃべることも満足にできない寝たきり状態となり、2度目の入院期間は6年にも及んだ。リハビリを経て退院したのちは車いす生活に。10年ほど寛解状態が続いたが、2020年に受けた腰のオペをきっかけにSLEが再発。3度目となった入院生活は1年半続き、その間5度の手術を経験したという。しかも、SLEの治療を再びイチから始めなければならなくなったそうだ。
LiLiCo:私たちが想像もできないくらい、大変なご経験をされてきたのですね……。6年は長期間ですが、ご家族はどうされていましたか?
梅津:家族は振り回されて大変だったと思うんですけど、でも、私の状態を見て、ともに悲しんでくれました。すごく落ち込んでいた私に、少しでも元気を与えようとあえて明るく振る舞ったり、面白い話をして笑わせてくれたり。私が自暴自棄にならないよう、常に寄り添ってサポートしてくれたのを覚えています。
SLEと中枢神経ループスを併発したのは、新婚生活を送っていた幸せの絶頂期。そこから寝たきりになったことで、「自分の人生、こんなはずじゃなかったのに」と打ちひしがれていたと振り返る梅津さん。明るさを取り戻すまでには、「現状を無理に受け入れようとせず、思い切って現実逃避する」という工夫があったという。
梅津:楽しいことや身近な目標、自分の好きなことに目を向けるようにマインドセットしました。入院中にできることは限られていましたが、たとえば、治療やリハビリを一個ずつ頑張って一個できたら自分を褒めるようにして。周りのみんなも「絵里ちゃん頑張ったね、すごいね」と褒めてくれたので、モチベーションを維持しながら頑張ることができました。そうしていくうちに、自分の暗い闇の殻から抜け出せたんですよね。
LiLiCo:大きな目標を追いかけまわすのではなく、小さな目標達成を積み重ねて、自己肯定感を高めることってすごく大切ですよね。
梅津:ほんとにそう思います。あと、楽しいことで言えば、症状がだいぶ軽くなっていた入院後期に、昔から大ファンだった奥田民生さん率いるユニコーンが再結成したんですね。そこで、「このチャンスを逃すまい!」と、医師から外出許可を得てユニコーンのライブに行ったこともありました。
LiLiCo:えー! すごい!
LiLiCo:奥田さんに番組とかでもし会う機会があれば伝えたいなぁ。「こんなに元気をもらった方がいるんですよ」って!
梅津:ぜひ、お願いします!
「病気を患った一歩先の景色を見たい」新たな挑戦
そんな梅津さんは現在、新たにチャレンジしていることがある。それがパラダンススポーツのアスリートだ。日本パランダンス協会の特別強化選手として週に1~2回の練習に励んでいるそう。バレエやエアロビインストラクターの経験を活かした挑戦だが、「もう自分にダンスはできない」と諦めていた時期もあった。梅津:でも、世の中には病気や障がいがあっても活躍されている方がたくさんいることを知りました。そこで、私も病気を患った一歩先の景色を見たいと思い、6年間の入院生活を経てダンスに挑戦することを決めたんです。最初は、車いすユーザー3人でダンスユニット「BEYOND GIRLS」を結成し、自分たちの心のバリアフリーを広めることを目的として、歌やダンスなどのパフォーマンスを披露する活動を展開していました。
LiLiCo:BEYOND GIRLS! ユニット名がイケてますね!
梅津:ありがとうございます。障がいや病気は「つらい」「大変」などのイメージを持たれがちですが、そういった固定観念を越えてその先に行こう!という想いで名付けました。
東海林:BEYOND GIRLSの活動から、どのような経緯でパラダンススポーツのアスリートになられたのですか?
梅津:BEYOND GIRLSでの活動を通して、車いすダンスの魅力に気づくことができました。そんな折に、たまたま昨年ご縁があって、ミュージカルに出演し、舞台上でダンスをさせてもらったんです。このミュージカルがきっかけで、日本パランダンス協会からお話をいただき、今に至ります。
そして「絵里さんが自分らしく生きるために、大事にしていることはありますか?」とLiLiCoが問いかけると、こんな答えが返ってきた。
梅津:私はSLEを発症し、いろいろなことを諦めてきたものの、「好きなことを諦めない」ことを大切にしています。矛盾しているんですけど、好きなことはやらないと諦めきれません。やってダメだったらダメで納得できるけど、やらないと納得はできない。だから常にチャレンジすることを意識しているんです。また、たくさんの人に支えられて今があると思うので、感謝と笑顔を忘れないようにしています。そして、ダメなときもあるけど、それはそれで受け入れて「完璧主義なんてどうでもいい。“自分らしく”でいいじゃん」みたいなマインドで日常を愛していこうと心がけています。
武さんと梅津さん、異なるバックボーンを持つ2名のSLE患者の話を聞いたLiLiCoは、最後にこう感想を述べた。
LiLiCo:実際にお会いするまで、SLEの患者さんがどのような感じかイメージがつかなかったんですけど、スーパー美女が二人出てきてびっくりしました! SLEは20代、30代の女性に発症することが多いとのことで、10代のうちから知っておくべき情報だと感じたので、おふたりのお話を学校などで聞かせたいくらいです。私自身、昨日までの何も知らなかった自分から、今日の知ってる自分「LiLiCo 4.0」になったと思うくらい本当に勉強になりましたし。また、困難な状況の中で「自分と向き合うこと」を徹底しているお二人から、素敵な宝物のような言葉をたくさん聞くことができ、改めて「でも、だって……」とできない理由を探して自分で自分を止めるような生き方をするべきではないとも思いましたね。
ポッドキャストでは、あらゆる患者さんから寄せられた「前向きに生きるコツ」を紹介。パワフルなLiLiCoも心を打たれるほど強くしなやかな意見が集まった。前後編で配信中だ。
SLE患者の方々をサポートするためのスマートフォン用アプリ「ハピるん」は、服薬管理、日々の体調の記録・振り返り、通院カレンダーといった機能を搭載。SLEと向き合う人々の自分らしい生活を支援している。 (構成=小島浩平、撮影=竹内洋平)
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