アトピー性皮膚炎などの「かゆみの治療」をマラソンで例えると? ハリー杉山が治療の最前線を医師に聞く

提供:サノフィ株式会社

11月12日は「いい皮膚の日」。皮膚は、目で見て手で触れる機会が多いものだからこそ、心地よい状態を目指したいもの。ただ、アトピー性皮膚炎や蕁麻疹などの疾患に悩む人はつらい症状が長く続くことによって、「かゆみが和らいでいればいい」「きっとこれ以上はよくならない」と、その人にとって“もっと良い皮膚の状態”を目指すことを諦めてしまっている場合もあるだろう。

しかし今、かゆみを伴う皮膚疾患の治療は格段に進化しているようだ。今回は治療の最前線や、“いい皮膚”に近づいた患者さんのエピソードを、医師にインタビューした。

話を聞いたのは、京都大学大学院の医学博士で皮膚科医の中島沙恵子先生。アトピー性皮膚炎の専門外来で診察をするほか、研究や医学部生の教育も行っている。聞き手は、アトピー性皮膚炎に悩まされる母を見守った経験を持つ、J-WAVEナビゲーターのハリー杉山が務めた。

皮膚は体重の約15%を占める「人体最大の臓器」

皮膚といえば「人体を覆う皮」と思っている人が多いかもしれない。しかし、皮膚科医からすると、その認識は正確ではないようだ。まずは、皮膚の大切さを教えてもらった。

ハリー:皮膚は人と接する際にまず目に入りますし、誰にとっても身近な存在ですが、その役割や機能を正しく説明できる人は少ない気がします。人体にとって、皮膚ってなんなのでしょう?

中島:一言で表すと、人間の内側と外側を隔てる臓器です。けっこう重量があり、体重のだいたい15%くらい、体重70kgの人であれば10.5kgです。重さの観点では、「人体最大の臓器」とも言えます。

ハリー:皮膚って「臓器」なんですね! 初めて知りました。

中島:はい。身体を外部から守ったり、体温調節をしたりといった機能を持ちます。人間は皮膚があるから生きていけるのですが、医療的に関心を向ける機会がないと、なかなか「臓器」としては認識しないですよね。

ハリー:そんな大切な臓器である皮膚がかゆくなることは、どんな意味があるのでしょうか?

中島:すごく原始的な機能の話をすれば、たとえば虫刺されなど、「身体によくないことが起きているよ」と脳に教えるシグナルのようなものだと考えられています。

<中島沙恵子◎京都大学大学院医学研究科 炎症性皮膚疾患創薬講座 皮膚科兼任 特定准教授。2003年大阪医科大学卒業後、京都大学医学部皮膚科へ入局。2012年、京都大学大学院博士課程修了。日本学術振興会 特別研究員(PD)を経て、2015年より米国国立衛生研究所へ客員研究員として留学。2017年4月に帰国し、京都大学大学院医学研究科皮膚科助教に。2020年5月より同講師、2021年5月より現職>

かゆみは、人生にも影響を及ぼしてしまう

中島先生のもとには、アトピー性皮膚炎をはじめ、蕁麻疹や、ボコボコとしたできものが生じる痒疹(ようしん)など、かゆみを伴う皮膚疾患の患者さんが数多く訪れる。そんな中島先生にハリーは、自身の母がアトピー性皮膚炎に悩まされた経験を明かしつつ、かゆみのつらさを掘り下げていった。

ハリー:僕の父が亡くなって数週間したあと、母が突然、全身のかゆみを訴えたんです。身体のケアを怠らない人だから今まで一度もそんなことがなかったのに……。特に発症してから半年~一年の間は症状がひどく、かきむしって皮膚が血まみれになるほどでした。現在は治療に加え、スキンケアを徹底することで症状が落ち着いたのですが、当時は患者さんのつらさを目の当たりにしました。

中島:それは大変でしたね……。快方に向かわれたようで何よりです。

ハリー:診察では、どんな悩みが聞かれますか?

中島:患者さんから一番よく聞くのは、「かゆみがひどくて寝られない」という声です。ひっかき傷が身体のあちこちにできて、ハリーさんのお母様と同じように出血してしまい、白い服が着られなかったり、ベッドシーツが血まみれになったり。女性の患者さんからは、お化粧ができない、ノースリーブが着られないなど見た目の悩みのほか、「恋愛に及び腰になってしまう」という話も聞いたことがあります。かゆみは、ただつらいだけではなく、日常生活や社会活動に大きな支障をきたしてしまうんです。

ハリー:母も症状が回復するまでは、趣味だったアートや展覧会に興味を向けなくなり、グレーな雰囲気をまとっていました。行動範囲が狭まって喜びも感じにくくなる──メンタルへの影響も計り知れないですよね。

<ハリー杉山◎東京生まれ、イギリス育ち。イギリス人の父と日本人の母を持つ。 日本語、英語、中国語、フランス語の4か国語を操る卓越した語学力を持ち、 司会、リポーター、モデル、俳優などマルチに活躍。ラジオ局・J-WAVEでは毎週土曜朝の番組『POP OF THE WORLD』を担当している。芸能界屈指のランナーとして知られ、フルマラソンでは3時間を切る「サブ3」の成績を持つ>

中島:あらゆることに悪影響がありますよね。小さなお子さんだと、かゆみのせいで睡眠の質が悪くなり、成長障害につながるとも言われているんです。私自身も子どものころアトピーに悩んでいたので、寝ているときにかゆみで起きてしまうのは実体験としてよくわかります。とくに当時は塗り薬しか治療法がありませんでしたし、大人になるまで症状が続いていました。「どうしたらいいんだろう」とすごく悩んだ経験があるので、皮膚科医になったんです。

治療法が進化! 医師も患者さんの状態に合わせて提案

中島先生によると、現在は治療が格段に進化。効果が期待できる注射薬や飲み薬などが次々と登場しているそうだ。中島先生自身も、皮膚科医として知識を持ち、新たな治療を試すことで、アトピー性皮膚炎とうまく付き合えるようになったのだという。

中島:私はよく、かゆみの治療を山登りで例えるんです。昔の塗り薬の治療が山のふもとから頂上まで歩いて登ることだったとすると、現在は8合目・9合目までロープウェイで瞬時に移動することができて、あとはちょっと頑張って10合目まで徒歩で行けばいい。そのくらいの違いがあるんです。

ハリー:そんなに違うんですか!

中島:はい。多様な治療法が登場したおかげで、患者さん一人ひとりに合ったご提案もできるようになりました。たとえば、治療にあまり積極的ではない患者さんに部位別の塗り薬をたくさんお出しすると「こんなに?」と辟易としてしまいますよね。そんな場合は、塗りやすい軟膏を1種類だけお出しします。「1か月、これだけを塗ってみましょう」と。それで効果を感じられたら、「1か月でここまで変わるなら、もうちょっとやってみよう」と自ら治療に前向きになってくれるので、大変有効な手段だと感じています。

ハリー:なるほど。僕も最近、似たような経験をしました。僕はマラソンをするので、よく屋外で走っていて、紫外線によるダメージで肌にボコボコが出てしまったんですよ。それで友人の田中みな実ちゃんに紹介してもらった皮膚科に行ったら、7段階くらいのケアを提案されて。正直「多いなあ」と思ったんですけど、言われた通りにやってみたら見違えるほどよくなったんです。最初は億劫でも、よくなった実感があると続けられる。そんな気持ちの変化や患者さんの希望に合わせて治療を進めていらっしゃるんですね。
中島:そうですね。かゆみを伴う皮膚疾患は治療が長期にわたることが多いので、患者さんとの人間関係を大事にしています。診察でも、「あなたが症状を改善したいと願うのと同様に、私もよくしたいと思っています。だから一緒に頑張りましょう」と伝えていて。相談しながら、どういった治療なら続けられそうかなど、方針を決めています。

ハリー:「一緒に頑張る」という言葉は、患者さんやそのご家族にとって、すごく心強いですよね。ただ、患者さんは医学的知識がないので、自分の肌をどういう状態にもっていきたいのか、先生への説明が難しいようにも感じます。「つるつるの見た目になりたい」「すべすべ、もちもちな触り心地を目指したい」など、感覚的な伝え方でもいいのでしょうか?

中島:もちろんです。かゆみを取り除くことと、つるつる、すべすべ、もちもちにすることは治療のステップが異なるものの、ぜひ教えていただきたいです。先ほどもお話した通り、治療計画は患者さんのご希望に合わせて考えます。かゆみをとるだけじゃなく、もっと良い状態にしたいと伝えてもらえれば、こちらも「じゃあ最初の1ヶ月はかゆみをとって、その次に……」と治療計画を立てることができます。

ハリー:マラソンにも似ているなと感じました。初心者の方に「5キロ走れるようになりたい」と相談されるのと、「いつかフルマラソンにトライしたい」と言われるのとでは、提案する練習メニューが異なってくるんです。

中島:まさにそういう感じですね。「こうなりたい」という希望を伝えたうえで、定期的に病院に来ていただいて、状態を見ながら次のステップに進んでいくのがいいと思います。

ハリー:あとは、皮膚科へ行くと先生が忙しそうにしていて、腰を据えて相談するのが気が引ける……という患者さんもいるかと思います。どう伝えるとわかりやすいでしょうか?

中島:たしかに、皮膚科の外来はいつも混んでますよね。それに、白衣を着て座っている医師を目の前にした瞬間、緊張して頭が真っ白になり、何を話そうとしていたか忘れてしまったという患者さんが過去に何人もいました。なので、聞きたいことをある程度メモして来ていただけると、スムーズに進めることができるかと思います。

「いい皮膚」は、自分への自信につながる

一人ひとりの気持ちに寄り添った治療を根気強く続ける中島先生。その先に待っているのは、症状が改善した患者さんからのうれしい報告だ。

中島:症状が悪化して失職してしまった患者さんが、治療がうまくいって「就職できました」とニコニコしながら報告してくださったことがありました。また最近だと、アトピーが酷くてお家にずっと引きこもっていた中学生の女の子が、治療の成果で状態がよくなって。つい先日も外来に来て、「メイクをしてみたんです」と写真を見せてくれました。「これ、“地雷系メイク”だよね! 知ってる!」と返したら、めちゃくちゃうれしそうにしていましたね(笑)。

ハリー:素敵ですね! そういった患者さんの表情の変化を見て、先生はどのように思われるのですか?
中島:いやもう、自分のことのようにうれしいですよ。自分の子どもが受験に合格したり、就職したくらいの気持ちで「よかったね~!」とキャッキャしてしまいます。

ハリー:先生は、そういったパーソナルなこともナチュラルに話し合えるくらいの関係性を患者さんと築き上げているんですね。

中島:ありがとうございます。話好きだからかもしれません(笑)。今、例にあげた患者さんたちのように、積極的な治療は前向きな生活につながっていくと思うので、ぜひ皮膚科に来てほしいというのが医師としての私の願いです。
ハリー:僕も皮膚科に行って、肌がきれいだと自信を持てるとあらためて感じました。テレビの前にも堂々と立つことができるし、自分の武器の一つになってくれるんだって。

中島:自分が快適に過ごすために、自信を持てる皮膚の状態でいることは大事ですよね。

ハリー:本当にそう思います。今回、先生のお話を聞いて、人間にとって皮膚はものすごく重要で、プライオリティの高い器官であると知りましたし、皮膚科に通うハードルも下がったように思います。どんどん治療法も発達しているし、先生もこれほど親身になってくれるものなんだなと。皮膚の状態がよくなることは、人生の豊かさにもつながることを多くの人に知っていただきたいと感じました。

中島:医師として「たとえうまくいかないことがあっても、必ず寄り添って診るから一緒に頑張ろうよ」という気持ちで向き合っていくので、一歩踏み出す患者さんが増えると嬉しいです。

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(取材、文=小島浩平、撮影=夛留見彩)
(ハリー杉山:スタイリスト=千葉 良<AVGVST>、ヘアメイク=豊田まさこ<dynamic>)


審査番号:MAT-JP-2406739-1.0-10/2024

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