中井貴一と佐々木蔵之介がW主演を務める映画『嘘八百 なにわ夢の陣』が1月6日に公開される。目利き古美術商の小池則夫(中井貴一)と、うだつの上がらない陶芸家・野田佐輔(佐々木蔵之介)がタッグを組み、国宝級の茶器をめぐる騙し合いを繰り広げる人気シリーズ『嘘八百』の第3弾だ。
今作の主題歌「夢のまた夢」を担当するのは桐谷健太。桐谷は映画には出演しておらず、歌手として主題歌のみを担当する。この初の試みについて、また作詞から携わったという主題歌「夢のまた夢」の曲づくりについて、桐谷に話を訊いた。
自分が出ていない作品で主題歌を歌うというのは初めてで、歌手としてのオファーということで、とてもうれしく思いました。あと、監督の武(正晴)さんは、僕の映画デビュー作『ゲロッパ!』に助監督として参加されていらっしゃっていたときからの、長い付き合いで。2021年に、僕は京都国際映画祭の三船敏郎賞をいただいたのですが、武監督も同じ映画祭で監督賞を受賞して、同じ舞台に上がりました。そのときに舞台袖で「いや〜、感動するよね。無名だった二人が受賞なんて」みたいな話をしたんです。そんなこともあって、武さんは今回ピンときたそうです。
──素敵な再会ですね。そもそも『嘘八百』シリーズはご覧になっていましたか?
はい、観ていました、過去のシリーズもすごく面白かったですし、今作は知っている人たちもたくさん出ていて。でもまさか自分が主題歌を歌うことになるとは。驚きましたね。僕は行けなかったんですけど、最初に、監督が主題歌のイメージや、僕の昔の話を、マネージャーに向けてすごく情熱的に話してくださったそうなんです。その話を聞いて、できれば自分で作詞をしたいなとぼんやり思いました。でも本当に「自分で書けたらいいなぁ」くらい。そしたらある日、起きたらポンポンポンっとフレーズが出てきて。それを全部マネージャーに送って、という形で歌詞を作っていきました。
──歌詞の出来上がり方が、劇中の佐輔やTAIKOH(演:安田章大)と似ていますね。
そうですね。必死に絞り出して作るということもあると思うんですけど、こういう映画だし、軽やかなほうがいいかなと思って。パッと思い浮かんでよかったです。
──歌詞の断片を投げたあと、MONGOL800・キヨサクさんが曲を付け形になったものを聴いたときはどう思いましたか?
最初、キヨサクくんからはギターの弾き語りであがってきたんですが、その時点で素敵だなと思いました。そこからSPECIAL OTHERSの方たちが入ってくださって、透明感が加わって。いろいろな人の関わり、縁によって曲が出来上がっていきました。キヨサクくんから上がってきたものを聞いたときに、さらに「ここの歌詞をこうしたらもっとイメージに合うな」っていうアイデアもどんどん出てきて。
──桐谷さんのアーティストとしての考えも反映されているんですね。
いや……自分の中には「アーティストだから」とか「役者として」みたいな感覚が本当になくてですね。なんというか……普通なんです。
──音楽のことを考えているときは音楽に対して意見が出てくるだけ?
そうです。単純に音楽が好きだから「このシンセサイザーをバイオリンにしてみたらどうなるんやろ」とか「ここもっと情熱的に歌ってみたいな」とか、そういう考えが自然と出てくる。この曲も、一回歌を録り終わってOKが出てから「もうちょっと柔らかく歌ってみたらどうなるか、ちょっとやってみよう」と思って、もう一度録ったものが使われているんです。そうやって、その場で感じたことをやっていくだけというか。本当に自分が思ったこと、感じたことをやっているだけですね。
──今、歌い方の話が出ましたが、この曲を歌う際に意識したことはありますか?
余白がちゃんとあって、幸せで楽しい気持ちで歌いたいなという気持ちはありました。この曲は、そういうふうに歌ったほうが、人の耳に、鼓膜に当たったときに伝わるんじゃないかなと思って。でも結局は、そのとき、その瞬間の声を録音するわけなので、あまり考え過ぎず、今出る軽やかさ、今日しかない幸せな感覚で歌えたらいいなと思いました。
──それはこの曲だから?
そうですね。例えば「海の声」だったら自然の景色やパワーをイメージして歌ったり、映画『火花』の主題歌として歌わせてもらった「浅草キッド」は芸人さんの想いで歌いたいなと思ったし。ものによって歌い方は違う。その中で、今回は“光が差していて、散歩しながら聴いて気持ちいい”というイメージを武さんが持っていらっしゃったので、そういう気持ちが出せたらいいなと思いながら歌いました。
曲の雰囲気もそうですし、スペアザさんの演奏もそうですけど、とっても気持ちいい曲になったなと思います。それこそ天気の良い日に散歩しながら聴いてもらったら気持ちいいんじゃないかな。実際、俺自身もそうやって聴いたりしていますし。自分としては気に入っていますね。
──歌詞が自然と出てきたとのことでしたが、映画のメッセージとご自身が普段から思っていることとリンクしているみたいなこともあったのでしょうか?
そうですね。人によってもちろん違うと思いますけど、僕はこの映画を観て、いい大人がワクワクと夢を求めて楽しく挑戦している姿っていいなと感じたんです。それって役者という仕事も同じで。いい大人が子どものような感覚で一生懸命やっているわけじゃないですか。この映画の伝えたいことはそういうことやな、“自分の好きなことを、好きにやっていけばええやん”って。子どもの頃はそういう想いが、純度の高い状態であふれていますけど、大人になっても全然できることのはずで。だから最初に<忘れてなんてないさ>という歌詞を持ってきたりして。ワクワクすること、楽しいことを意識していれば、当たり前のように楽しくなってくる。ということは、この先も、今は想像していない面白いことが待っているだろうし。そういうものを想像しながら歌いました。
──お話を伺って、まさに桐谷さんは「夢のまた夢」もワクワクしながら作られたんじゃないかなと感じました。
そうですね。初めてのことに挑戦するときは、ワクワク感と「どうしたらいいんだろう」という不安もあると思うんですけど、そこでもどうしたら自分が面白いと感じるかということを大事にしたいと思っていて。今回も楽しんでやらせていただきました。
──実際、ご自身が出ない作品の主題歌を手がけてみていかがでしたか?
試写室で映画を見させてもらったのですが、映画を楽しみながらも、終わりの方で「もうすぐで俺の歌流れるやん」ってそわそわして(笑)。エンドロールと一緒に曲が流れて、最後のフレーズのところでちょうど武さんの名前が出て、劇場が明るくなる。あの感じはほんまに贅沢でしたね。映画と曲もリンクしていて「なんかええやん」って思いました。歌詞のフレーズが出た時点で達成感を感じているし、キヨサクくんが歌ってくれてまた達成感があって。さらに歌い終わって達成感、映画と合わさってまた達成感。「夢のまた夢」は達成感の繰り返しでした。
(取材・文=小林千絵、撮影=夛留見彩、ヘアメイク:岩下倫之(Leinwand)、スタイリスト:岡井雄介)
主題歌クレジット
桐谷健太「夢のまた夢」 (ユニバーサル J)
作詞:桐谷健太、もゆる 作曲:キヨサク 編曲:SPECIAL OTHERS
噓八百 なにわ夢の陣
2023年1月6日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開
Ⓒ2023「嘘八百 なにわ夢の陣」製作委員会
配給:ギャガ
監督:武正晴 脚本:今井雅子 足立紳 音楽:富貴晴美
出演:中井貴一 佐々木蔵之介
安田章大 中村ゆり 友近 森川葵
前野朋哉 宇野祥平 塚地武雅 吹越満 松尾諭
酒井敏也 桂雀々 山田雅人 土平ドンペイ Blake Crawford 高田聖子
麿赤兒 芦屋小雁 / 升毅 / 笹野高史
今作の主題歌「夢のまた夢」を担当するのは桐谷健太。桐谷は映画には出演しておらず、歌手として主題歌のみを担当する。この初の試みについて、また作詞から携わったという主題歌「夢のまた夢」の曲づくりについて、桐谷に話を訊いた。
映画『嘘八百 なにわ夢の陣』
歌手としてのオファー、どう感じた?
──映画『嘘八百 なにわ夢の陣』の主題歌を担当することに決まった際の心境を教えてください。自分が出ていない作品で主題歌を歌うというのは初めてで、歌手としてのオファーということで、とてもうれしく思いました。あと、監督の武(正晴)さんは、僕の映画デビュー作『ゲロッパ!』に助監督として参加されていらっしゃっていたときからの、長い付き合いで。2021年に、僕は京都国際映画祭の三船敏郎賞をいただいたのですが、武監督も同じ映画祭で監督賞を受賞して、同じ舞台に上がりました。そのときに舞台袖で「いや〜、感動するよね。無名だった二人が受賞なんて」みたいな話をしたんです。そんなこともあって、武さんは今回ピンときたそうです。
──素敵な再会ですね。そもそも『嘘八百』シリーズはご覧になっていましたか?
はい、観ていました、過去のシリーズもすごく面白かったですし、今作は知っている人たちもたくさん出ていて。でもまさか自分が主題歌を歌うことになるとは。驚きましたね。僕は行けなかったんですけど、最初に、監督が主題歌のイメージや、僕の昔の話を、マネージャーに向けてすごく情熱的に話してくださったそうなんです。その話を聞いて、できれば自分で作詞をしたいなとぼんやり思いました。でも本当に「自分で書けたらいいなぁ」くらい。そしたらある日、起きたらポンポンポンっとフレーズが出てきて。それを全部マネージャーに送って、という形で歌詞を作っていきました。
──歌詞の出来上がり方が、劇中の佐輔やTAIKOH(演:安田章大)と似ていますね。
そうですね。必死に絞り出して作るということもあると思うんですけど、こういう映画だし、軽やかなほうがいいかなと思って。パッと思い浮かんでよかったです。
Ⓒ2023「嘘八百 なにわ夢の陣」製作委員会
感じたことを素直に表現
桐谷健太「夢のまた夢」Official MV
最初、キヨサクくんからはギターの弾き語りであがってきたんですが、その時点で素敵だなと思いました。そこからSPECIAL OTHERSの方たちが入ってくださって、透明感が加わって。いろいろな人の関わり、縁によって曲が出来上がっていきました。キヨサクくんから上がってきたものを聞いたときに、さらに「ここの歌詞をこうしたらもっとイメージに合うな」っていうアイデアもどんどん出てきて。
──桐谷さんのアーティストとしての考えも反映されているんですね。
いや……自分の中には「アーティストだから」とか「役者として」みたいな感覚が本当になくてですね。なんというか……普通なんです。
そうです。単純に音楽が好きだから「このシンセサイザーをバイオリンにしてみたらどうなるんやろ」とか「ここもっと情熱的に歌ってみたいな」とか、そういう考えが自然と出てくる。この曲も、一回歌を録り終わってOKが出てから「もうちょっと柔らかく歌ってみたらどうなるか、ちょっとやってみよう」と思って、もう一度録ったものが使われているんです。そうやって、その場で感じたことをやっていくだけというか。本当に自分が思ったこと、感じたことをやっているだけですね。
──今、歌い方の話が出ましたが、この曲を歌う際に意識したことはありますか?
余白がちゃんとあって、幸せで楽しい気持ちで歌いたいなという気持ちはありました。この曲は、そういうふうに歌ったほうが、人の耳に、鼓膜に当たったときに伝わるんじゃないかなと思って。でも結局は、そのとき、その瞬間の声を録音するわけなので、あまり考え過ぎず、今出る軽やかさ、今日しかない幸せな感覚で歌えたらいいなと思いました。
──それはこの曲だから?
そうですね。例えば「海の声」だったら自然の景色やパワーをイメージして歌ったり、映画『火花』の主題歌として歌わせてもらった「浅草キッド」は芸人さんの想いで歌いたいなと思ったし。ものによって歌い方は違う。その中で、今回は“光が差していて、散歩しながら聴いて気持ちいい”というイメージを武さんが持っていらっしゃったので、そういう気持ちが出せたらいいなと思いながら歌いました。
大人もワクワクできるはず…制作は達成感の連続だった
──出来上がった「夢のまた夢」を改めて聴いて、ご自身ではどう感じましたか?曲の雰囲気もそうですし、スペアザさんの演奏もそうですけど、とっても気持ちいい曲になったなと思います。それこそ天気の良い日に散歩しながら聴いてもらったら気持ちいいんじゃないかな。実際、俺自身もそうやって聴いたりしていますし。自分としては気に入っていますね。
そうですね。人によってもちろん違うと思いますけど、僕はこの映画を観て、いい大人がワクワクと夢を求めて楽しく挑戦している姿っていいなと感じたんです。それって役者という仕事も同じで。いい大人が子どものような感覚で一生懸命やっているわけじゃないですか。この映画の伝えたいことはそういうことやな、“自分の好きなことを、好きにやっていけばええやん”って。子どもの頃はそういう想いが、純度の高い状態であふれていますけど、大人になっても全然できることのはずで。だから最初に<忘れてなんてないさ>という歌詞を持ってきたりして。ワクワクすること、楽しいことを意識していれば、当たり前のように楽しくなってくる。ということは、この先も、今は想像していない面白いことが待っているだろうし。そういうものを想像しながら歌いました。
──お話を伺って、まさに桐谷さんは「夢のまた夢」もワクワクしながら作られたんじゃないかなと感じました。
そうですね。初めてのことに挑戦するときは、ワクワク感と「どうしたらいいんだろう」という不安もあると思うんですけど、そこでもどうしたら自分が面白いと感じるかということを大事にしたいと思っていて。今回も楽しんでやらせていただきました。
──実際、ご自身が出ない作品の主題歌を手がけてみていかがでしたか?
試写室で映画を見させてもらったのですが、映画を楽しみながらも、終わりの方で「もうすぐで俺の歌流れるやん」ってそわそわして(笑)。エンドロールと一緒に曲が流れて、最後のフレーズのところでちょうど武さんの名前が出て、劇場が明るくなる。あの感じはほんまに贅沢でしたね。映画と曲もリンクしていて「なんかええやん」って思いました。歌詞のフレーズが出た時点で達成感を感じているし、キヨサクくんが歌ってくれてまた達成感があって。さらに歌い終わって達成感、映画と合わさってまた達成感。「夢のまた夢」は達成感の繰り返しでした。
主題歌クレジット
桐谷健太「夢のまた夢」 (ユニバーサル J)
作詞:桐谷健太、もゆる 作曲:キヨサク 編曲:SPECIAL OTHERS
噓八百 なにわ夢の陣
2023年1月6日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開
Ⓒ2023「嘘八百 なにわ夢の陣」製作委員会
配給:ギャガ
監督:武正晴 脚本:今井雅子 足立紳 音楽:富貴晴美
出演:中井貴一 佐々木蔵之介
安田章大 中村ゆり 友近 森川葵
前野朋哉 宇野祥平 塚地武雅 吹越満 松尾諭
酒井敏也 桂雀々 山田雅人 土平ドンペイ Blake Crawford 高田聖子
麿赤兒 芦屋小雁 / 升毅 / 笹野高史