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六歩=six stepを追求し続けて築く自身のスタイル。B-BOY陸上の考えるブレイクダンスの表現とは。

六歩=six stepを追求し続けて築く自身のスタイル。B-BOY陸上の考えるブレイクダンスの表現とは。

J-WAVEが共同プロデュースするオンラインマガジン「守破離 -SHUHARI-」。“守破離”とは剣道や茶道などの修業における段階を示したもの。「守」は、師や流派の教え、型、技を忠実に守り、確実に身につける段階。「破」は、他の師や流派の教えについても考え、良いものを取り入れ、心技を発展させる段階。「離」は、一つの流派から離れ、独自の新しいものを生み出し確立させる段階。(※1)そんな“守破離”と“音”を切り口に人物のスタイルをリアルに掘り下げ、オリジナルインタビューをInstagramとJ-WAVE NEWSで配信していく。
(※1)引用:デジタル大辞泉「守破離」より

今回は、ダンサーのB-BOY陸上にインタビュー。フットワークを中心としたブレイクダンスのスタイルで活躍し、主宰する「six step propaganda」ではこれまで数々の映像作品を公開。2022年9月には東京・浅草の劇場、雷5656会館で最新作『OUTDOOR UNIT』を上映。ブレイクダンスの枠を越えた斬新なアイディアと圧巻のダンスでシーンを圧倒させた。そんな話題作を発信し続けるB-BOY陸上の考えるブレイクダンス、映像づくり、そして最新作『OUTDOOR UNIT』についての熱い思いを訊いた。

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Photo by Gaku Jungnickel

B-BOY陸上が考える「ブレイクダンスの表現」

──自己紹介お願いします。

陸上です。東京でブレイクダンスをやってます。
周りの友人たちとブレイクダンスの映像作品を撮影してて、いま全国各地で上映会のツアーをまわっています。

──B-BOYネーム「陸上」の由来は?

ブレイクダンスをやってるとみんなB-BOYネームで呼び合うんですけど、高校生のときに始めたブレイクダンスのチームメンバーがほぼバスケ部の中、僕だけ陸上部だったので「陸上」でいいじゃん。って先輩に決められました。ちなみに専門は800メートルを走る中距離でした。

──ダンスを始めたきっかけは?

若干恥ずかしいんですけど、高校の文化祭でクラスの出し物としてやったミュージカルが、初めてちゃんと練習して人前で踊ったダンスだと思います。練習で振り覚えが早くて周りからは踊れる人だと思われたらしく、友だちがチームに誘ってくれたことがきっかけで部活動(陸上部)とは別でブレイクダンスをやるようになって、どんどんのめり込んでいきました。

──陸上さんが主宰するsix step propagandaとは?

「six step propaganda」は別名「六歩啓蒙党」とも呼んでいて、何かと聞かれたら政党って答えてます。僕が昔も今もずっと追及している、ブレイクダンスの基礎となるフットワーク『六歩』に基づいた考えやクリエイションをZINEや映像、イベントを通して発信しています。中心メンバーはいますけど、“Crew”って言うのもちょっと違うと思ってたので、ふざけて政党って名乗りはじめました。

──なぜ映像作品を残そうと思ったのですか?

ブレイクダンスを表現する場所ってびっくりするほどバトルしか無いんですよ。昔から自分も出場しまくっていたし、ジャッジもやらせてもらっていたんですけど、数年前バトルに追われる日々に疲れてしまった時期があって。そのときにスケーターとかアーティストの映像や作品を見ていたら、B-BOYはものすごい練習するのに発表の瞬間がノリ重視すぎて全然時間をかけられてないと思ったんです。彼らは時間をかけて磨いたスキルや作った曲を、きちんと残るカタチで作品にしている。それがすごくうらやましくて、ブレイクダンスでも時間をかけた映像作品をつくりたいと考えるようになりました。

初めは何して良いか分からなさすぎて、何人かで「コンビニ前でフットワークバトルをやってみた」みたいな企画からスタートして、それから色んな場所に行き、撮り方を試行錯誤して行きついたのが「狭いとこで踊るブレイクダンスは映像で見るとめちゃめちゃかっこいい。」ということでした。街中で狭いスポットを見つけては踊って撮影して、を繰り返しています。

そんな感じで撮影を続けて、初めてちゃんと作品にしたのが2019年。ブレイクダンスに音楽や自分たちのアイディアが重なり全く違うクリエイションになることがすごく面白かったし、かっこいい作品に仕上がって上映会も盛り上がり、本当に楽しかったです。それから毎年新しい試みを取り入れて実験的な作品をつくってきたんですけど、3作目が終わったときに「これまでの作品を越えるにはもっと時間をかけないとだめだ」と思って2年間撮り溜めることにしました。それで完成したのが最新作『OUTDOOR UNIT』です。
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──最新作『OUTDOOR UNIT』はどんな作品ですか?

今回のメンバーは陸上、NTK、MOJJA、VANILLA ICE、Y-HI、TANACHU、SHAVERROC、そしてフィルマーのSETCHA a.k.a NATURE。NTKはトラックメイカーでMOJJAはラッパーとしても活動しています。「OUTDOOR UNIT」は日本語で「室外機」。僕たちはずっと狭いところで映像を撮影してるんですけど、室外機って色んな場所に置かれないといけないのに全部ほとんど同じカタチだから、室外機に注目して街を歩くと面白いスキマがあることが多いんです。気が付いたらいつも近くにいて、よく見るとそれぞれに個性があったり、外に追い出されちゃってる感じも自分たちらしいなと思ってこの名前にしました。

今作の構想は2年前から始まりました。前作が終わってだいぶ燃え尽きていたんですけど、「次は映画館で上映したい」と目標を立てて、2022年9月に東京・浅草の劇場「雷5656会館」での上映が決まって一気に火が付きましたね。これまでにはない本当にかっこいいものを作りたいと思って始めたし、最終的には考えていた以上の作品が完成して大満足してます。今となってはスマホで見るものになったブレイクダンスの映像をわざわざ大画面で上映する意味を考えて、みんなで何度も話し合いを重ねました。今作で特に意識したのは、『ブレイクダンスをかっこよく残す』『日本のブレイクダンスとわかる映像にする(日本らしさを出す)』『映像でしかできないことを表現する』こと。さらに自分たちがインスピレーションを受けた映画の要素を入れたり、楽しく見てほしいから笑える要素や慣れない演技も入れたり。映像でしかできない新しい試みとして、特撮にもトライしました。特撮をいれたブレイクダンスの映像って世界で初めてなんじゃないかな。踊ってビルをぶっ壊したら面白いよねというアイディアから始まって、特殊映画研究室(※2)の石井那王貴さんに監督していただきました。(かなりわがまま聞いてもらいました。)色々話しましたが、まずはブレイクダンスがとにかくかっこいいから注目してほしいです。その上で54分間の大作の中に散りばめられた色んな要素から、ブレイクダンスのほかにも僕たちのライフスタイルや考えを感じ取ってもらえたらいいなと思います。

(※2)映画・ドラマ・CM等のミニチュア製作や特撮を手掛ける。主な参加作品は「タローマン」「大怪獣ブゴン」など。特殊映画研究室のYouTubeチャンネルで「OUTDOOR UNIT」特撮シーンのメイキングを公開中。
TwitterYouTube

B-BOY陸上の「守破離」

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Photo by Gaku Jungnickel

僕が作っていたZINEで「守破離」という言葉を使っていたので、自分なりにブレイクダンスについて考えてみます。

「守」:Foundation 六歩=six step

六歩=six stepは世界共通で一番最初に教わる、ブレイクダンスの最も基礎的なステップです。自分がやっていることは全部そこから派生したもので、全部のインスピレーションの出所は六歩にある。そこを外すと自分の中ではブレイクダンスじゃなくなってしまうので、基礎でありいつも大切にしているものです。

「破」:守を追求して生まれる自身のスタイル

ブレイクダンスってオリジナルでいることを常に要求されるんです。確かにその考え方も大事ではあるんですけど、 ただ人と違うことをやりたくて型を破るのは間違った「破」で、「守」があってこその「破」が大切だと思っています。
まずは身の程を知ること。自分のできること・できないことを理解する。自分はこういう体で、ここが堅い、でもこれは得意だ、これが気持ちいい、みたいに身体をこまかいところまで理解した状態で「守」である六歩をやると、それだけで自然とその人のスタイルになっている。
だから「人と違う」とか「自分らしく」とかじゃなくて、できるだけ「守」を突き詰めていくことによって、人間の身体や六歩の特性自体を楽しめるような状態になることが「破」なんじゃないかなと思います。

「離」:東京で作る新しいスタイル

ニューヨークで生まれたブレイクダンスは世界各地に広がって、だいたい3つのスタイルの変遷をたどって現在に至るんですけど、今その流れが止まってしまってるような気がします。その原因を考えたら、動きの追求よりも誰かの上に行きたいみたいな気持ちが大きくて、革新的な形も生まれずらいのかなと思ったんです。 だから自分や同志のB-BOYたちとは”動きの追求”で誰も見たことない形を作っていきたいです。東京で4つ目のスタイルを作れたらそれはもう「離」だなって思います。それを撮った映像と好きな音楽を掛け合わせた時に、お互いがお互いに影響し合って全く別次元のものになったとしたら、トラックメイカーとラッパーの関係性みたいでめちゃくちゃヒップホップだと思うんですよね。

「音」

──大事にしている一曲を教えてください。

Five Elements / BudaMunk feat. MONJU & OYG



──今後の予定は?

いま上映会で全国各地を回っています。これまでは東京・名古屋・金沢と回りましたが、各地のB-BOYや現場のみなさんのおかげで最高の上映会になりました。スクリーンで映像を見る形式だけど、ブレイクダンスの現場に行くノリで遊びに来てほしいです。一人で見るよりみんなで見たほうが盛り上がるし、おおって思った瞬間には現場のみんなと感じるままに気持ちを表現してほしいです。次は2023年1月22日(日)福岡・Kieth Flackで。
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Interview:Gaku Jungnickel
Text:Kana Shionoya

PROFILE

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B-BOY陸上
平成式和製ビーボーイ集団。six step propaganda通称六歩啓蒙党、その党首。 ヒップホップのマナーに則ったフットワークを中心としたスタイルで国内外で多数優勝。 またブレイクダンスの純度に重きを置いた作品・集会を多数発表・開催。 多くのビーボーイを街へと駆り出した「極東國東京区」シリーズの最新作にして最終章『OUTDOOR UNIT』2022年9月の東京上映を皮切りに全国ツアー巡業中。
陸上Instagramsix step propaganda InstagramSHOP
※上映会のお知らせは今後Instagramで告知していきます。
※『OUTDOOR UNIT』DVDは現在オンラインショップにて好評販売中。

「守破離 -SHUHARI-」 ー師から学び、型を破り、確立するー
"守破離"を切り口に「人」のスタイルをリアルに掘り下げるオンラインマガジン
https://www.instagram.com/shuhari_official/

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