アジカン、デビュー当時の自分たちに声をかけるなら? 「25年間、変わらないこと」も聞いた

ASIAN KUNG-FU GENERATIONが10月27日にライブツアー【ASIAN KUNG-FU GENERATION Tour 2022 「プラネットフォークス」】の横浜アリーナ公演を開催。この模様がWOWOWプラスで独占生中継される。

このツアーは、今年3月に25周年ツアーを終えたばかりのASIAN KUNG-FU GENERATIONが、最新アルバム『プラネットフォークス』を携えて5月より開催しているもの。横浜アリーナ公演では、アルバムに参加している、三船雅也(ROTH BART BARON)、塩塚モエカ(羊文学)、Rachel(chelmico)、OMSB(SIMI LAB)がゲスト出演することが決定している。

生中継を前に、ASIAN KUNG-FU GENERATIONメンバーにインタビューを実施。ツアーの手ごたえや横浜アリーナ公演の見どころ、また25年を経てもなお、バンドシーンを牽引する存在としてライブステージに立ち続けられる理由などを聞いた。



──現在、ライブツアー「ASIAN KUNG-FU GENERATION Tour 2022 『プラネットフォークス』」の最中ですが、現時点での手応えはどのようなものですか?

後藤正文:楽しくできていてうれしいです。とにもかくにもツアーができる喜びを噛み締めながら、毎晩素敵な時間を作れていて感無量です。

山田貴洋:今回『プラネットフォークス』という、とてもいいアルバムが作れまして。その曲を数年ぶりのホールツアーで演奏できているというのはとてもうれしいです。お客さんも待ってくれている感じがして、本当にいい空間が作れている気がします。

喜多建介:いつも「ライブに来て欲しい」と思いながらやっていますが、今回は特にその気持ちが強くて。実際にここまでいい状態で回れているので、「みんな見逃さないで」という気持ちがいつにも増して強いですね。去年暮れに開催した25周年ライブ「Special Concert “More Than a Quarter-Century”」は、ひさしぶりにサポートメンバーなしの4人だけで演奏して。それはそれですごく楽しかったのですが、今回のツアーはまたサポートメンバーを迎えた形なので、完成度が高いライブができているような手応えもあります。



伊地知潔:僕も手応えを感じているのですが、その理由の一つに、今回メンバー全員でステージ制作の会議から入っていることがあるのかなと思います。僕たちもアイディアを出しながら一緒に作り込んだ感覚があって。それに伴って、音響さんに対しても「こういう音で作ってほしい」みたいなこともいつも以上に言えたし、完成度を上げていこうという気持ちもいつも以上にあって。より充実しています。

山田:今、潔が言ったようにスタッフ含めてツアーへの足並みが全員揃っているということは、今回のツアーの良さにつながっていると思います。

伊地知:演奏していても、演出によってお客さんの顔が変わったのがすごくわかるんですよ。ネタバレになるので、どんな演出かは言わないでおきますが、画面越しでもわかると思うのでぜひ生中継でも見てもらいたいですね。


──『プラネットフォークス』収録曲の中で、今回のツアーで想定外の育ち方をしているものがあれば教えてください。

後藤:どれも思い入れはありますけど……ハンドマイクで歌う「Be Alright」はすごく解放された気分で歌えますね。いつもは演奏があったり、ギターでノイズを作ったりしているので、シンプルに歌だけ歌っていればいいという役割で自分が活躍できるというのは驚きでもあるし、ある種の納得感もあって。この曲を演奏するときはいつも「とってもいい瞬間だな」と思いますね。

山田:僕は「雨音」。作っているときはアジカンらしい曲だと思っていたのですが、80年代っぽいサウンド感やアレンジの力もあって、リスナーには新しいものとして届いているようで。そのリアクションは自分では想像していませんでしたね。ライブではこの曲をやる前に、ゴッチが僕に軽いふりを入れてくれるのですが、それもあって不思議な緊張感があって。毎回いつも違う気持ちで演奏しています。



喜多:「De Arriba」は音源もカッコよく録れましたが、ライブだとさらに骨太感が増していて。昔「広い場所で鳴らすロックバンドになりたい」と思っていたのですが、「De Arriba」のチェック用のライブ音源を聴いていると、それが実現できているような気持ちになります。

伊地知:僕はskillkillsのスグルくん(GuruConnect)にプロデュースしてもらった、Rachelさん(chelmico)とOMSBさん(SIMI LAB)のラッパー2人とコラボした「星の夜、ひかりの街」です。ドラムとしてのリズムの取り方が、ラッパーが歌っているところとゴッチが歌っているところで全然違うんですよ。だからレコーディングではスグルくんに「後ろノリでやってください」と言ってもらってレコーディングして。まだライブではやっていないのですが、横浜アリーナでは……(笑)。

喜多:やるんじゃないかっていう噂が(笑)。

伊地知:そういう噂があるので(笑)、楽しみですね。


──今ちょうどお話にも出ましたが、10月27日の横浜アリーナの公演では、三船雅也さん(ROTH BART BARON)、塩塚モエカさん(羊文学)、Rachelさん(chelmico)、OMSBさん(SIMI LAB)のゲスト出演が発表されています。どのようなライブになりそうですか?

後藤:もちろん、ゲストを迎えて再現される『プラネットフォークス』の曲もあります。実際にレコーディングに参加してくれた仲間たちを迎えて、今のASIAN KUNG-FU GENERATIONのコミュニティの広がりを、一緒に体験してもらえるとうれしいですね。

──当日はWOWOWプラスでの生中継もありますね。

後藤:会場に来られる人はもちろん、画面の向こうでもつながり合うことはできると思っています。演奏している側と聴いている側、という分かれ方ではない関わりみたいなものを、画面を通してでも立ち上がらせられたらうれしいなと思っています。



──結成25年を迎えたASIAN KUNG-FU GENERATIONですが、メジャーデビューした2003年にブレイクし、以降ずっとロックシーンを牽引する存在です。結成当時やメジャーデビュー当時の自分たちに声をかけるなら何と声をかけますか?

後藤:僕は言葉をかけないですね。駆け出しの自分たちに声をかけると、今の未来が変わってしまう可能性があるので。

喜多:ちょっと「四畳半タイムマシンブルース」っぽいね。

後藤:本当に。「そのままでいいよ」と言って縮こまる自分の姿が想像できるし、話しかけないほうがいいのかなって。そう考えると、自分たちに限らず、若い人たちに言葉をかけるということは余計なことなんだなと常々思いますよね。


──ほかの皆さんはいかがですか?

伊地知:これを聞いちゃうと……声をかけないほうがいい気がするよね(笑)。

山田:うん。声をかけない!

伊地知:かける言葉がないね。

後藤:あ、当時の潔にだけは言います、「料理とかばっかりやってちゃいけないよ」って。

伊地知:あはは(笑)。

喜多:でも料理のおかげで世界が広がったよね?

伊地知:うん。でもまぁ、そのせいで余計に料理をしてしまうというのはあるけど(笑)。

後藤:あとアジカンの仕事の日には、アジカンの現場に来たほうがいいよって(笑)。

伊地知:……声かけないほうがいいですね(笑)。



──(笑)。では最後に、25年間変わらないことや、変わらないように大切にしてきたことを教えてください。

伊地知:2週間続けたことはやめないということ。そういうものがずっと続けられる趣味になったりしているので。まぁその結果、趣味がどんどん増えちゃったんですけど(笑)。人との付き合いもそうで。同じ人と長く付き合うと、信頼関係が濃くなっていくじゃないですか。メンバー・スタッフ含めて、そういう付き合いが財産だと思えています。

喜多:「SUMMER SONIC 2022」に出演したとき、前後のバンドのライブを見ていて、ライブに対するワクワク感が大学生の頃から変わってないなと思ったんです。「サマソニ、出ないで見に行きたかった!」と思ったし。そういう「音楽を楽しみたい」とか「フェスに行きたい」という気持ちはずっと変わってないですね。これだけ自分がバンドで長くやっていても、ミーハーな気持ちもまだありますし。

山田:自分は、根本は変わってないなと思うことが多くて。もちろん世の中の状況、バンドの状況は10年前、20年前とは全然違うし、成長はしていますが、自分自身の根本は変わっていない。喜多くんのロックキッズマインドもそうですけど、基本的に変わっていないということが、自分たちをつなぎ止めているのかなと思いますね。あと、これだけ続けられているということは、音楽を好きだという気持ちも変わっていないんだと思います。



後藤:25年間、出会ってからほぼ髪型が変わらない山ちゃんがそう言うのは深いですね(笑)。でも確かに山ちゃんのある種の頑なさみたいなものが、バンドをつなぎ止めている部分はあると思います。自分のことで言えば、むしろ変わり続けたいと思っているというか。「変わらないでいたい」と思ったことがあまりない。変化していくことは自然なことであって、そこに逆らって「ここに留まりたい」と思うと苦しみが生まれると思うんです。フラットに「出たところで考えよう」みたいなメンタリティを保ち続けられているから、どういう状況に置かれても破綻しないでやってこられたんじゃないかな。「俺たちはこうじゃなきゃいけない」みたいなことを決めないで、楽しく音楽をやろうというところに一番のプライオリティを置いて、そこだけを守って25年間やってきた。そういう意味では、25年間変わらず音楽を好きなまま歩み続けられたことが、自分たちの現在のヘルシーな状況につながっているのかなと思います。

■放送情報
生中継!ASIAN KUNG-FU GENERATION Tour 2022 「プラネットフォークス」
10月27日(木)横浜アリーナ公演をWOWOWプラスにて独占生中継
https://www.wowowplus.jp/program/episode.php?prg_cd=CIIDM22057&episode_cd=0001&epg_ver_cd=06

■Tour 2022「プラネットフォークス」後半公演開催中!
詳細はツアー特設ページよりチェック!
http://www.akglive.com/tour2022/



(取材・文=小林千絵、写真:Tetsuya Yamakawa)

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