提供:日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社
病院での診察時、医師とのコミュニケーションは難しいものだ。限られた診察時間の中で、言いたいことを伝えきれなかったという経験を持つ人も多いのではないだろうか。
よりよい診察にするために、医師は何に取り組むべきか。患者はどんなことを心がけるのがよいか。患者と医師が信頼関係を築く方法を探るため、医師へのインタビューを実施した。
お話を伺ったのは、東京都新宿区にある聖母病院 皮膚科 部長の小林里実先生。聞き手はJ-WAVEナビゲーターの山中タイキが務めた。
山中:コロナ禍以降、診察時のコミュニケーションでは、どんな変化がありましたか。
小林:待合室だけではなく診察室でも、ソーシャルディスタンスを取るために患者さんと医師の椅子を2m離すようになりました。また、パンデミックが起こった場合を想定して、3か月分のお薬を処方し、診察の期間が以前より空くケースもあります。医師としては、患者さんとのコミュニケーションの量・質が落ちているのではないかと懸念していました。
ところが、患者さんはそう思っていなかったみたいなんです。"通院への不安があったけれど、電話診療等が可能になった"など、良い意味での変化もありカバーできていたのかもしれません。
山中:その点でも、少し認識のズレがあったのですね。また、コロナ禍での変化以外でも、コミュニケーションのギャップはあるようですね。調査結果では、「医師に相談したい」と思っていない人が、その理由として、「医師に尋ねても期待した答えが返ってこないから(48%)」「診察時間が限られているから(34%)」「医師に話すこと・聞くことだと思わなかったから(24%)」などと回答しています。サービス業などでは、顧客満足度を測るので日頃からこういったギャップを察知できますよね。そのような仕組みは病院にもあるのでしょうか?
小林:そういった仕組みはなく、患者さんの表情や通院頻度など、肌感覚が頼りです。その中で生じていたコミュニケーションギャップが、今回の「乾癬患者さんと医師の意識調査」の結果として反映されている部分もあるものと思います。
山中:なるほど。患者さんにとってコミュニケーション以上に大切なのは、病気を治すための"診察"ではないかと思います。診察におけるコミュニケーションはどういった意義があるのでしょうか?
小林:おっしゃる通り、患者さんがいちばん求めていらっしゃるのは病気が治ることですね。いまは様々な医学が進歩し、特に乾癬の治療はこの数十年で大きく進歩し、症状がほとんどない状態を実現できるようになりました。医師の責務は患者さんに必要かつ可能な治療を届けることであり、患者さんのQOL(生活の質)を上げるために乾癬がもたらす生活上の支障を把握することも重要になってきていると考えています。それには、コミュニケーションが重要なのです。ですから患者さんには、症状の程度だけでなく、「日常生活でもこんな悩みを抱えている」なども打ち明けてほしいのです。
山中:なるほど。そういった事情から、医師の約9割が「悩みを相談してほしい」と思っているという結果に結びついたのですね。
山中:「乾癬」はどんな症状が出るのでしょうか。
小林:赤々とした発疹ができ、その境界が明瞭で、皮膚面から盛り上がり、鱗屑(※)がパラパラと剥がれ落ちます。皮膚は通常、1.5カ月で生まれ変わりますが、乾癬の患者さんはこのサイクルが4~7日と極端に短いんです。また、関節炎を伴うこともあります。
※鱗屑(りんせつ):銀白色の皮膚の粉
山中:乾癬患者さんは、どんな大変さを抱えているのでしょうか。
小林:乾癬皮疹の見た目や痒みはもちろん、鱗屑が剥がれ落ちてしまう症状は、あらゆるシーンでの悩みを引き起こします。例えばショッピングに行っても、お洋服の試着に消極的になる方もいらっしゃいます。家で過ごしていても、床に鱗屑が落ちてしまい、家族に疎まれてしまった......という方もいらっしゃいます。関節の痛みで行動が制限されたり、暑い時期でも半袖が着られなかったり、美容院へ行けないなども、悩みとして聞かれますね。
また、関節炎も初期では検査でわからないことがあります。診断がつかないため周囲に仮病だと思われてしまい、うつ状態になってしまう患者さんも。ストレスで乾癬が更に悪化する方もいて、悪循環に陥ってしまうんですよね。
山中:「見た目」や、「痒い」などの身体症状以外に、生活上での困りごとがたくさんあるのですね。
小林:はい。そもそも乾癬は遺伝的素因と環境因子の相互作用によって、免疫システムに異常が生じることで発症すると考えられており、感染はしない病気です。しかし、病名も相まって「感染するのでは?」と周囲に誤解されることもあり、こういった誤った認識も患者さんの生活上での悩みにつながっています。周囲に説明してもなかなか理解を得られず、自身の病気の話を何度も繰り返すうちにくじけてしまう方もいらっしゃいます。
山中:周囲の知識不足も悩みのひとつだと。今回の調査を実施した日本ベーリンガーインゲルハイムが運営するWEBサイト「乾癬ひろば」では、どういった病気なのか解説が掲載されています。当事者でなくとも病気を知り、間違った理解に基づく思い込みをなくすことで、患者さんの悩みが減らせますね。
患者さんの症状の緩和や悩みの解決のためにはお医者さんへの相談が重要になると思いますが、最初から打ち明けてくれるものなのでしょうか。
小林:正直、難しいことだと思います。実際、今回の調査結果でも、患者さんが医師に相談するケースが少ないことが明らかになっていますね。
患者さんの中には、何年も症状に悩み、周囲に気を遣い、うちひしがれ、エネルギーを振り絞って病院に来る方もいます。そんな状態で、まだ信頼関係を築けていない医師に、いきなり悩みを伝えるのは困難です。医師という立場で思うのは、患者さんに「大変でしたね、よく来ましたね」と寄り添うことの大切さです。そうしたコミュニケーションがあって初めて、「このお医者さんは、自分がここに来るまでの数年間をわかってくれるかもしれない」と感じてくれるのではと思うんです。
山中:確かにそうした安心感は大事ですよね。僕の子どもにはアレルギーがあって通院しているんですが、最初の段階で患者さん側から何かをリクエストするのは難しいなと感じました。と同時に、お医者さんにとっても、言葉にならない患者さんの気持ちを汲み取っていくことは、症状や治療の説明とはまた違った難しさがあるのかな、と思います。
小林:私たち医師も、まずは症状と治療法を説明することに重きを置いてしまうんですよね。でも、いままでどれだけ困ってここに来たのか、今後どうしたいのかなどコミュニケーションをとり、悩みやゴールを両者で共有することは、治療のために重要だと思います。
山中:長期間治療を継続しなければならない慢性疾患の場合は、どんなゴール設定が考えられるでしょうか?
小林:人それぞれ短期的・長期的願望があると思うんです。「関節の痛みをやわらげて前みたいに走れるようになりたい」「Tシャツを着られるようになりたい」「頭のカサカサを気にせず美容院に行きたい」「半年後にデートに行けるようになりたい」。具体的なゴールを示してくれると、私たち医師がイメージしやすいのです
山中:まさに、日常的な悩みも相談することで導き出せるゴールですね。
小林:はい。その時思い描いている目標やゴールを伝えていただくことで、「夏に間に合うよう、短期間だけ強い薬を使ってみましょう」とか、希望を叶えるための具体的な治療方向を検討できます。だから「こんなこと、医師に相談していいのかな......」と遠慮しないで、ぜひ伝えてほしいんです。
山中:ただ、お医者さんにも多少なりとも余裕がないと話を聞けないのではないでしょうか。そういった時間や心の余裕は、実際にありますか?
小林:もちろんすべての患者さんの悩みに真摯に、時間をかけて向き合いたいのですが、実際はその時の状況によります。予約が集中してしまった場合など、日によってはそのあとの患者さんを診る時間がどうしても少なくなってしまう。時間的な制約があってその場で解決策が見出しにくい時でも、まずは一度悩みを投げかけてほしいと思っています。そうすれば次の診察までにデータを見直して検討できるかもしれません。
今回の調査では、「医師に相談して後悔した経験や、言われて辛かったことがある」と答えた方が約2割もいらっしゃいました。現実問題として、医師の経験値もあると思います。しかしそんなときでもくじけずに、また別のところに相談するとか、看護師に相談してもいいと思うんです。豊富な情報を持っているベテラン看護師もいて、看護師から医師に伝えてもらうこともできます。
山中:「お医者さんは忙しそうだから」と遠慮してしまう人もいると思いますが、お医者さんと患者さんの関係は対等だと考えた方がいいのでしょうか?
小林:その通りです。ぜひリラックスして受診していただきたいんです。聞きたいことがたくさんあるときは、優先順位をつけたメモ書きを用意するなどの方法で、スムーズになると思います。
山中:医師や看護師が患者さんの悩みに向き合うことはもちろん、患者さん側でもある程度、聞きたいことを整理する。「質問上手」になってもらうことが、それがお医者さんと患者さんのコミュニケーションを円滑にするポイントなんですね。
小林:はい。病気に向き合うのは、患者さん、医師、看護師によるチームです。同じ目的に向かって歩めればと思います。
山中:それを聞いて少し安心できました。乾癬だけでなく、他の病気の場合も同じですよね。
小林:そうです。患者さんには積極的に治療に参加してもらいたいし、医師には、自分ひとりですべてを解決する必要はないので、患者さんの状況によって周囲の医師や看護師、場合によっては患者会などともうまく連携してほしいと思います。
乾癬も含め、今は医療が非常に発達しています。専門性が深まるほど、医師の間でも得意分野が変わってくるんですよ。もしかしたら専門外でわからないこともあるかも知れない。けれどそんな時でも一旦患者さんの声を受け止めてから、躊躇せずに自分以外の専門家を積極的に使ってほしいと、同じ医師には伝えたいですね。
<取材・文:山田宗太朗、編集:小沢あや(ピース株式会社)、撮影:竹内洋平>
※調査概要
調査期間:2022/4/14~4/19
調査方法:インターネット調査
対象者:
1.ネオマーケティング社のモニターから、以下の基準でスクリーニングされた乾癬患者
条件:5種類の乾癬のうちいずれかの確定診断を受けた患者(116人)
性別:不問 年齢:18歳~99歳
地域:全国
2.メディリード社のモニターから、以下の基準でスクリーニングされた皮膚科医師
条件:直近1ヶ月以内に5名以上の乾癬患者さんを診察した皮膚科医師(100人)
性別:男女 年齢:24歳以上
地域:全国
調査協力:一般社団法人 INSPIRE JAPAN WPD 乾癬啓発普及協会、株式会社ネオマーケティング、株式会社メディリード
調査依頼元:日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社
病院での診察時、医師とのコミュニケーションは難しいものだ。限られた診察時間の中で、言いたいことを伝えきれなかったという経験を持つ人も多いのではないだろうか。
よりよい診察にするために、医師は何に取り組むべきか。患者はどんなことを心がけるのがよいか。患者と医師が信頼関係を築く方法を探るため、医師へのインタビューを実施した。
お話を伺ったのは、東京都新宿区にある聖母病院 皮膚科 部長の小林里実先生。聞き手はJ-WAVEナビゲーターの山中タイキが務めた。
乾癬患者と医師のコミュニケーションギャップとは
医師の約9割は「悩みを相談してほしい」と感じているが、悩みによっては医師に相談ができているのは患者の半数以下──そんなコミュニケーションギャップの実態が、とある調査で報告された。長期治療が必要になる「乾癬」という皮膚疾患の患者と、乾癬が専門の皮膚科医を対象に行われたもの(※)で、小林先生は監修を務めている。どうしてズレが生じてしまうのか。まずは、コロナ禍におけるコミュニケーションの変化から話を聞いた。山中:コロナ禍以降、診察時のコミュニケーションでは、どんな変化がありましたか。
小林:待合室だけではなく診察室でも、ソーシャルディスタンスを取るために患者さんと医師の椅子を2m離すようになりました。また、パンデミックが起こった場合を想定して、3か月分のお薬を処方し、診察の期間が以前より空くケースもあります。医師としては、患者さんとのコミュニケーションの量・質が落ちているのではないかと懸念していました。
ところが、患者さんはそう思っていなかったみたいなんです。"通院への不安があったけれど、電話診療等が可能になった"など、良い意味での変化もありカバーできていたのかもしれません。
山中:その点でも、少し認識のズレがあったのですね。また、コロナ禍での変化以外でも、コミュニケーションのギャップはあるようですね。調査結果では、「医師に相談したい」と思っていない人が、その理由として、「医師に尋ねても期待した答えが返ってこないから(48%)」「診察時間が限られているから(34%)」「医師に話すこと・聞くことだと思わなかったから(24%)」などと回答しています。サービス業などでは、顧客満足度を測るので日頃からこういったギャップを察知できますよね。そのような仕組みは病院にもあるのでしょうか?
J-WAVEナビゲーターの山中タイキ
山中:なるほど。患者さんにとってコミュニケーション以上に大切なのは、病気を治すための"診察"ではないかと思います。診察におけるコミュニケーションはどういった意義があるのでしょうか?
小林:おっしゃる通り、患者さんがいちばん求めていらっしゃるのは病気が治ることですね。いまは様々な医学が進歩し、特に乾癬の治療はこの数十年で大きく進歩し、症状がほとんどない状態を実現できるようになりました。医師の責務は患者さんに必要かつ可能な治療を届けることであり、患者さんのQOL(生活の質)を上げるために乾癬がもたらす生活上の支障を把握することも重要になってきていると考えています。それには、コミュニケーションが重要なのです。ですから患者さんには、症状の程度だけでなく、「日常生活でもこんな悩みを抱えている」なども打ち明けてほしいのです。
山中:なるほど。そういった事情から、医師の約9割が「悩みを相談してほしい」と思っているという結果に結びついたのですね。
皮疹や関節症状などの身体症状だけが、病気の悩みとは限らない
「乾癬」とは、体を守る免疫システムが過剰に活性化することで引き起こされる慢性的な皮膚の病気だ。有病率は国や地域、人種によって差があり、欧米では人口の約2〜3%だが、日本では約0.3~0.4%と少数。一般の認知度が低い病気であるがゆえの悩みも生じるそうだ。山中:「乾癬」はどんな症状が出るのでしょうか。
小林:赤々とした発疹ができ、その境界が明瞭で、皮膚面から盛り上がり、鱗屑(※)がパラパラと剥がれ落ちます。皮膚は通常、1.5カ月で生まれ変わりますが、乾癬の患者さんはこのサイクルが4~7日と極端に短いんです。また、関節炎を伴うこともあります。
※鱗屑(りんせつ):銀白色の皮膚の粉
聖母病院 皮膚科 部長 小林里実医師。今回の調査で監修を務めた
小林:乾癬皮疹の見た目や痒みはもちろん、鱗屑が剥がれ落ちてしまう症状は、あらゆるシーンでの悩みを引き起こします。例えばショッピングに行っても、お洋服の試着に消極的になる方もいらっしゃいます。家で過ごしていても、床に鱗屑が落ちてしまい、家族に疎まれてしまった......という方もいらっしゃいます。関節の痛みで行動が制限されたり、暑い時期でも半袖が着られなかったり、美容院へ行けないなども、悩みとして聞かれますね。
また、関節炎も初期では検査でわからないことがあります。診断がつかないため周囲に仮病だと思われてしまい、うつ状態になってしまう患者さんも。ストレスで乾癬が更に悪化する方もいて、悪循環に陥ってしまうんですよね。
山中:「見た目」や、「痒い」などの身体症状以外に、生活上での困りごとがたくさんあるのですね。
小林:はい。そもそも乾癬は遺伝的素因と環境因子の相互作用によって、免疫システムに異常が生じることで発症すると考えられており、感染はしない病気です。しかし、病名も相まって「感染するのでは?」と周囲に誤解されることもあり、こういった誤った認識も患者さんの生活上での悩みにつながっています。周囲に説明してもなかなか理解を得られず、自身の病気の話を何度も繰り返すうちにくじけてしまう方もいらっしゃいます。
山中:周囲の知識不足も悩みのひとつだと。今回の調査を実施した日本ベーリンガーインゲルハイムが運営するWEBサイト「乾癬ひろば」では、どういった病気なのか解説が掲載されています。当事者でなくとも病気を知り、間違った理解に基づく思い込みをなくすことで、患者さんの悩みが減らせますね。
患者さんの症状の緩和や悩みの解決のためにはお医者さんへの相談が重要になると思いますが、最初から打ち明けてくれるものなのでしょうか。
「乾癬ひろば」WEBサイトでは、病気の解説から治療費のサポート情報、さらに「スティグマ(※)について考えてみませんか?」などのコラムも掲載。当事者だけでなく、周囲の人の学びにも役立つサイトになっている(※さまざまな疾患、性別、職業など、その人の属性に対するネガティブな誤解に基づく認識)
患者さんの中には、何年も症状に悩み、周囲に気を遣い、うちひしがれ、エネルギーを振り絞って病院に来る方もいます。そんな状態で、まだ信頼関係を築けていない医師に、いきなり悩みを伝えるのは困難です。医師という立場で思うのは、患者さんに「大変でしたね、よく来ましたね」と寄り添うことの大切さです。そうしたコミュニケーションがあって初めて、「このお医者さんは、自分がここに来るまでの数年間をわかってくれるかもしれない」と感じてくれるのではと思うんです。
山中:確かにそうした安心感は大事ですよね。僕の子どもにはアレルギーがあって通院しているんですが、最初の段階で患者さん側から何かをリクエストするのは難しいなと感じました。と同時に、お医者さんにとっても、言葉にならない患者さんの気持ちを汲み取っていくことは、症状や治療の説明とはまた違った難しさがあるのかな、と思います。
小林:私たち医師も、まずは症状と治療法を説明することに重きを置いてしまうんですよね。でも、いままでどれだけ困ってここに来たのか、今後どうしたいのかなどコミュニケーションをとり、悩みやゴールを両者で共有することは、治療のために重要だと思います。
患者と医師のすれ違いを防ぐため、悩みやゴールの共有を
患者にとって、どんな病気も完治がゴールだという思いがある。しかし病気によっては完治が難しく、症状をコントロールしながら生きていかなければならない。その場合、患者として、医師にどんなゴールを相談するべきなのか。山中:長期間治療を継続しなければならない慢性疾患の場合は、どんなゴール設定が考えられるでしょうか?
小林:人それぞれ短期的・長期的願望があると思うんです。「関節の痛みをやわらげて前みたいに走れるようになりたい」「Tシャツを着られるようになりたい」「頭のカサカサを気にせず美容院に行きたい」「半年後にデートに行けるようになりたい」。具体的なゴールを示してくれると、私たち医師がイメージしやすいのです
山中:まさに、日常的な悩みも相談することで導き出せるゴールですね。
小林:はい。その時思い描いている目標やゴールを伝えていただくことで、「夏に間に合うよう、短期間だけ強い薬を使ってみましょう」とか、希望を叶えるための具体的な治療方向を検討できます。だから「こんなこと、医師に相談していいのかな......」と遠慮しないで、ぜひ伝えてほしいんです。
小林:もちろんすべての患者さんの悩みに真摯に、時間をかけて向き合いたいのですが、実際はその時の状況によります。予約が集中してしまった場合など、日によってはそのあとの患者さんを診る時間がどうしても少なくなってしまう。時間的な制約があってその場で解決策が見出しにくい時でも、まずは一度悩みを投げかけてほしいと思っています。そうすれば次の診察までにデータを見直して検討できるかもしれません。
今回の調査では、「医師に相談して後悔した経験や、言われて辛かったことがある」と答えた方が約2割もいらっしゃいました。現実問題として、医師の経験値もあると思います。しかしそんなときでもくじけずに、また別のところに相談するとか、看護師に相談してもいいと思うんです。豊富な情報を持っているベテラン看護師もいて、看護師から医師に伝えてもらうこともできます。
山中:「お医者さんは忙しそうだから」と遠慮してしまう人もいると思いますが、お医者さんと患者さんの関係は対等だと考えた方がいいのでしょうか?
小林:その通りです。ぜひリラックスして受診していただきたいんです。聞きたいことがたくさんあるときは、優先順位をつけたメモ書きを用意するなどの方法で、スムーズになると思います。
山中:医師や看護師が患者さんの悩みに向き合うことはもちろん、患者さん側でもある程度、聞きたいことを整理する。「質問上手」になってもらうことが、それがお医者さんと患者さんのコミュニケーションを円滑にするポイントなんですね。
小林:はい。病気に向き合うのは、患者さん、医師、看護師によるチームです。同じ目的に向かって歩めればと思います。
山中:それを聞いて少し安心できました。乾癬だけでなく、他の病気の場合も同じですよね。
小林:そうです。患者さんには積極的に治療に参加してもらいたいし、医師には、自分ひとりですべてを解決する必要はないので、患者さんの状況によって周囲の医師や看護師、場合によっては患者会などともうまく連携してほしいと思います。
乾癬も含め、今は医療が非常に発達しています。専門性が深まるほど、医師の間でも得意分野が変わってくるんですよ。もしかしたら専門外でわからないこともあるかも知れない。けれどそんな時でも一旦患者さんの声を受け止めてから、躊躇せずに自分以外の専門家を積極的に使ってほしいと、同じ医師には伝えたいですね。
※調査概要
調査期間:2022/4/14~4/19
調査方法:インターネット調査
対象者:
1.ネオマーケティング社のモニターから、以下の基準でスクリーニングされた乾癬患者
条件:5種類の乾癬のうちいずれかの確定診断を受けた患者(116人)
性別:不問 年齢:18歳~99歳
地域:全国
2.メディリード社のモニターから、以下の基準でスクリーニングされた皮膚科医師
条件:直近1ヶ月以内に5名以上の乾癬患者さんを診察した皮膚科医師(100人)
性別:男女 年齢:24歳以上
地域:全国
調査協力:一般社団法人 INSPIRE JAPAN WPD 乾癬啓発普及協会、株式会社ネオマーケティング、株式会社メディリード
調査依頼元:日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社