NFTがミュージシャンにもたらす好影響とは? 権利を守り、買う側にも喜び

大阪音楽大学の教授・脇田 敬さんが、「NFT」と「音楽」の関係について解説。またNFTで楽曲を発表したNicori Light Toursのko-heiがその裏側を語った。

脇田さんが登場したのはJ-WAVEで放送中の番組『SONAR MUSIC』(ナビゲーター:あっこゴリラ)。番組では、毎回ゲストを迎え、様々なテーマを掘り下げていく。ここでは3月24日(木)にオンエアした内容をテキストで紹介する。

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音楽業界もNFTを使って作品を発表する動きが加速

音楽とテクノロジーを掛け合わせた新しいビジネスに取り組む脇田さんは、まずNFTについて解説する。

あっこゴリラ:NFTは「Non-Fungible Token(非代替性トークン)」の略だと伺いましたが。

脇田:日本語にすると、デジタルデータなんですけど、複製できないという意味になると思います。

あっこゴリラ:権利がしっかりと守られるっていうところが重要なんですよね。

脇田:そうですね。デジタルなので人間が手作業でやるよりはデータの履歴が確実に記録されるわけなので。

あっこゴリラ:NFTを使って作品を発表するって感じですよね。

脇田:音楽にしろイラストにしろ動画にしろ、デジタルデータってコピーできるじゃないですか。CDを買ってた時代って手に持って「これは自分のものだ」って思えたんですけど、今はストリーミングとかYouTubeで音楽を聴いても、それが自分のものではないですよね。オンライン上にあるものを再生しているだけで持っているって実感はないですけど、デジタルデータなんですけど「これは私のものだ」と実感できることが大きな違いなのかなと思います。

脇田さんは「音楽」と「NFT」の関係について大きく2つの特徴があると言う。

脇田:ひとつはコピーが可能なことによって音源の価値が下がったものから、本来の「この作品が好きだ」って思い入れをちゃんと音源商品で感じることができること。もうひとつはNFT音源商品をリミックスしたりラップをのせてコラボレーションをしたりするとき、あっこゴリラさんの曲も誰かが勝手にいじったものとかあったりするじゃないですか。

あっこゴリラ: はい。

脇田:「広めてくれてありがたいな」って思ったり、「こんなのやられて嫌だな」って思ったりといろいろあるかと思いますけど、それについて例えばYouTubeで再生された収益がちゃんとアーティストに入ってくる。今、YouTubeはコンテンツIDというかたちで収益がアーティスト側に入ってきてますけど、それと同じようにインターネット上の全てのところで二次創作、リミックスや歌ってみた、踊ってみた、動画にBGMとして曲を使用した場合に、親元のマスター権利者に利益が戻ってくることがすごく画期的だと思います。

あっこゴリラ:これはめちゃくちゃデカいんですよ。今までNFTがなかったから、あやふやになっていたところがあると思うんです。だからこそ面白いものが生まれたりすることもあったと思うけど、そういうことで海外でも裁判になった話も聞くので、その権利が守られるってことでNFTは素晴らしいと思います。

NFTのメリット・デメリットは?

実際にNFTを活用するアーティスト側のメリットにはどんなものがあるのだろうか。

脇田:先ほどお伝えしましたが、二次創作の収益が確実に回収できることです。音楽業界はこういった技術が生まれてくることでビジネスの収益が増えてるし、今後はもっと増えると予想されています。あとデジタル化すると手間が省けます。

あっこゴリラ:逆にデメリットってどんなところですか?

脇田:NFTだからこそのデメリットがあるとは個人的には思ってないんですけど、デジタルビジネス全体的に開発段階というか歴史が浅いので法整備やモラルが整ってなかったりすることもあるので、その辺で言われているのが、作品の値段がどんどん上がっていくことです。投機対象になってしまう。例えばゴッホの絵が何兆円とかあるじゃないですか。そういうアートとか音楽とか芸術作品そもそものあり方を離れて、その差額で儲けようという人が入ってくる理由にもなると言われています。

あっこゴリラ:なるほど。NFTの作品は売る側が値段を設定することもできるし、オークションで買い手に値段を決めてもらうこともできるんですか?

脇田:両方できますね。いろんな設定が可能になります。買った人がもっと高い値段で売ることができるようになるので、デジタルの中に転売ヤーみたいな人が現れる可能性があります。

一方、NFTで作品を購入する側はどのようなメリットがあるのだろうか。脇田さんが続ける。

脇田:今の時代に生きる我々はパソコンとかスマホの画面をずっと見てるじゃないですか。その生活の中で本当に好きなもの、価値のあるものをちゃんと所有しているという実感が持てる。これはただのデータじゃなくて自分にとっての宝物だって思えることがメリットとしては非常に大きいと思います。

NFTだけのバージョンを録音

番組では、世界初音楽専門のNFTマーケットプレイス「The NFT Records」で楽曲を販売し、完売したというバンド・Nicori Light Toursのko-heiが登場。その裏側を語った。

Nicori Light Toursが発売した「The NFT Records」は多くの国内外アーティストの音楽作品をNFTとして展開する音楽業界で話題のマーケットプレイス。

あっこゴリラ:どういう経緯で販売したんですか?

ko-hei:新しい挑戦的な意味で、CD以外の届け方を、今回NFTをもらったので挑戦してみました。僕たちは楽曲を楽しんでもらえるように、いろんなバージョンを作りました。僕たちはツインボーカルなんですけど、僕・ko-heiバージョンだったり、相方のαyumuバージョンだったりを入れたスペシャルセットを限定50セットで販売しました。

あっこゴリラ:それはNFTを買った人しか聴けないんですよね?

ko-hei:そうです。

あっこゴリラ:それこそCDをリリースするときに、タワーレコード特典とかディスクユニオン特典みたいな感じで、ここで買ったらここでしか聴けない音源があるみたいなことと近い感じですよね。実際に販売してみてどうでした?

ko-hei:最初は39セットを発売したんですけど、1時間くらいで完売して、僕たちもそんなに早く売れると思ってなかったので11セット追加させてもらってそれもすぐに完売しました。

NFTで楽曲を販売すると告知したとき、ファンはポカンとしていたとko-heiは明かす。

ko-hei:でも、これからも変わって行く時代の中でNFTを利用して、そういった届け方も広まっていくんじゃないかなという意味でやってみました。

あっこゴリラ:これから絶対に広まると思うし、めちゃくちゃ早いですよね。作業としては楽でした?

ko-hei:ひとりバージョンを録ったり、いろんな特別バージョンを企画したので、レコーディングは普通より長かったですね。

あっこゴリラ:それ以外の事務的なものはどうでした?

ko-hei:普通に音楽を届けるよりかは、やりやすかったというか。これからいろんなアーティストがNFTを使うんじゃないかなと思っています。

Nicori Light Toursは3月から9月にかけて7カ月連続配信を行う。3月25日に第一弾の『DATSU!!!』をリリースする。

坂本龍一もNFT作品を販売

Nicori Light Toursの他にも、さまざまなアーティストがNFTを活用して作品を販売する動きが見られる。

坂本龍一は代表曲の『Merry Christmas Mr. Lawrence』の音源の右手のメロディーを1音ずつデジタル上で分割し、NFTとして販売した。

脇田:このアイデアはすごいですよね。これを購入すると「あの音は私のものだ」って思えるわけです。これって今までなかったことですからね。

あっこゴリラ:売る側も買う側もちょっと面白いなって気持ちを感じます。

脇田:坂本さんは2021年に活動が思うようにできなくて、唯一の演奏はこのNFT商品らしく、ファンはこんなことを言われたら買わずにはいられないですよね。そういうストーリーも込められている。このテクノロジーをどう使いこなすかっていう坂本さんの思想とかメッセージがうまく表現されていてさすがだなって思いました。

あっこゴリラ:海外でも面白い例があるんですよね?

脇田:エミネムがNFTに力をいれていて、すごい金額を売り上げてるんです。その中にエミネムが作ったトラックも含まれていて、そのトラックを購入したラッパーがそのトラックにラップをのせてリリースしたら非常に話題になったんです。
脇田:これはエミネムも想定していたと思います。ちょっと挑発する人が出てきても面白いんじゃないかと。そのリスクも楽しみに変えるエミネムらしさがNFTを通して表現されていることが本当に素晴らしいと思います。

現在、海外アーティストを中心にNFTで何をするかを競っている状況と脇田さんは解説し、「どんな意味を付けるんだという表現を競争している感じがすごく面白い」と話した。

Nicori Light Tourの最新情報は、公式サイトまたは、オフィシャルInstagramまで。

J-WAVE『SONAR MUSIC』は月曜~木曜の22:00-24:00にオンエア。
radikoで聴く
2022年3月31日28時59分まで

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番組情報
SONAR MUSIC
月・火・水・木曜
22:00-24:00

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