アパレルや飲食業界でよく目にするようになった「フェアトレード」という言葉。この公正な貿易という概念は、昨今さまざまなフィールドで注目を集めている。スポーツ業界でフェアトレードを実践するひとりが、倉林啓士郎さんだ。
パキスタンでサッカーボールを製造する株式会社イミオの代表を務める傍ら、J2リーグに所属するFC琉球の会長を務める彼に、スポーツとフェアトレードのこれからの関係について話を聞いた。
倉林さんが登場したのは別所哲也がナビゲーターを務める『J-WAVE TOKYO MORNING RADIO』のワンコーナー「Allbirds MORNING INSIGHT」。オンエアは2月17日(木)。
倉林:大学在学中に読んだ新聞記事で、世界の手縫いサッカーボールの8割がパキスタンで作られているということ、そしてそこで子どもたちが学校にも行けずに毎日ボールを縫っていることを知りました。ずっとサッカー少年だった自分としてはその状況にショックを受けたんです。そんな中で、パキスタンでのフェアトレード、サッカボール製造という事業にもビビッときて、自分が取り組むべき事業ではないかと思ったんです。子どもが働かなくていいような状況を作り、自分を育ててくれたサッカーに恩返ししたいという思いでフェアトレードのサッカーボールを作り始めました。
別所:素晴らしい! だって、それまでパキスタンに行ったことはないわけでしょう?
倉林:そうですね。スタートしてすぐにパキスタンには飛びました。
倉林さんの行動力に感動した別所。当時のパキスタンについて詳しく聞く。
倉林:我々がビジネスをスタートした当初は、世界的にも児童労働が問題になっていましたし、当時、パキスタンでいちばん大きかったボールの生産工場が倒産して、逆に労働環境が失われるような危機もあったんですけど、僕たちはそういった労働環境の透明性を保つ仕組みをまず作っていかないといけないと思い、フェアトレードの基準を満たした工場と契約をして生産を始めました。サッカーボール産業でいうと競技人口が多いので世界から注目されやすいということも追い風になり、早い段階で児童労働問題も改善され始めたと感じています。この問題は現在かなり健全化された方だと思います。
倉林:自分自身も北京オリンピックでのアスリートの活躍に感動を覚えたひとりなんですが、スポーツには人々にエンターテイメントを提供したり、感動させたり、それだけでなく健康面、そして教育、地域振興、地方創生など、そういったことに寄与する大きな力があると思っています。また、スポーツの主役となるアスリートの価値も今後どんどん上がっていくと思っていますし、活躍の場が広がっていくんじゃないかなと。社会への貢献だけでなくビジネスとしても収益性や可能性が年々拡大しているんじゃないかなと思いますね。
スポーツには地方創生などの力を秘めていると話す倉林さん。そんな彼は現在、沖縄県をホームタウンに活動するサッカークラブFC琉球の会長という顔を持つ。
別所:倉林さんは、今シーズンJ2で戦うFC琉球の会長でもいらっしゃいます。でも東京出身ですよね?
倉林:僕自身は東京生まれ、東京育ちです。
別所:ね! でも沖縄のフットボールクラブ。沖縄との関係やクラブとの出会いは?
倉林:FC琉球は2003年に沖縄初のJリーグ入りを目指すクラブとして創設されてまして、2014年にスタートしたJ3リーグに初めて加盟しました。そのときにイミオ社でユニフォームなどのスポンサード、提供を行なっていたことが私自身の沖縄との接点ですね。
別所:Jリーグの理念にも「クラブと自治体による街づくり」というものがありますけど、沖縄とサッカー、そして地域社会、コミュニティはどんな形で構築されていますか?
倉林:まず、FC琉球はJ3に加盟はしたもののなかなか経営も成績も芳しくない状況が続いて……。そんな中で我々が2016年に出資という形で資金提供を行い、当時は沖縄のJリーグクラブを無くしてはいけないという気持ちが強くて、経営を引き受けていくことを決断したんです。やるからには地元との繋がりというものをより強めていかないといけないと思いましたし、最初は認知度も高くなかったので、一つひとつ自分たちの考えていること、沖縄とともに強くなるという理念伝えていくことで、どんどん自治体のサポートを受けていけるようになったんです。
倉林さんの強い信念があってか、FC琉球は2018年にJ3リーグを優勝しJ2リーグへ昇格。この結果は沖縄県で大々的に報道され、一気に認知やチームの価値が上昇していった。
現在は、チーム初となる練習拠点のグラウンド、クラブハウスの整備が行われ、グラウンドの横には地域の方が訪れることができるグラウンド・ゴルフが出来るコースなどが併設される。その他にもFC琉球は地域との関わりを大事にしているようだ。
別所:倉林さんはコロナ禍に置いてサッカーボールの寄贈や子ども食堂へのサポートなど多くを展開されていますが、スポーツチームの在り方をどのように考えていますか?
倉林:私の尊敬するJリーグの村井チェアマンも言っているんですけど、「Jリーグは株式会社ではあるけども、社会への公共財」という考え方を大切にしています。過去のような経営危機を再び起こさないようにもちろん収益性も求めないといけないですし、競技として観ていて楽しいサッカーも求めないといけないんですが、その上でFC琉球がいることで、沖縄や地域のみなさまが元気になることや一緒に強くなる、そんなクラブにしていきたいと思っていますね。
『J-WAVE TOKYO MORNING RADIO』のワンコーナー「Allbirds MORNING INSIGHT」では、あらゆる世界の本質にインサイトしていく。放送は月曜~木曜の8時35分頃から。
(構成:笹谷淳介)
パキスタンでサッカーボールを製造する株式会社イミオの代表を務める傍ら、J2リーグに所属するFC琉球の会長を務める彼に、スポーツとフェアトレードのこれからの関係について話を聞いた。
倉林さんが登場したのは別所哲也がナビゲーターを務める『J-WAVE TOKYO MORNING RADIO』のワンコーナー「Allbirds MORNING INSIGHT」。オンエアは2月17日(木)。
ショッキングに感じた、児童労働問題
倉林さんが代表を務める株式会社イミオは、高品質・ハイデザイン・フェアトレードのサッカーボールなどサッカー用品を製造する会社。2004年に創業し、自社ブランド「sfida」を中心に多くの店舗で展開している。 中でもサッカーボールはパキスタンや中国、インドなどでも製造され、フェアトレードを実践。パキスタンでの製造は17年前から行われているが、当時のパキスタンでの状況は彼にとって非常にショッキングな状態だったという。倉林:大学在学中に読んだ新聞記事で、世界の手縫いサッカーボールの8割がパキスタンで作られているということ、そしてそこで子どもたちが学校にも行けずに毎日ボールを縫っていることを知りました。ずっとサッカー少年だった自分としてはその状況にショックを受けたんです。そんな中で、パキスタンでのフェアトレード、サッカボール製造という事業にもビビッときて、自分が取り組むべき事業ではないかと思ったんです。子どもが働かなくていいような状況を作り、自分を育ててくれたサッカーに恩返ししたいという思いでフェアトレードのサッカーボールを作り始めました。
別所:素晴らしい! だって、それまでパキスタンに行ったことはないわけでしょう?
倉林:そうですね。スタートしてすぐにパキスタンには飛びました。
倉林さんの行動力に感動した別所。当時のパキスタンについて詳しく聞く。
倉林:我々がビジネスをスタートした当初は、世界的にも児童労働が問題になっていましたし、当時、パキスタンでいちばん大きかったボールの生産工場が倒産して、逆に労働環境が失われるような危機もあったんですけど、僕たちはそういった労働環境の透明性を保つ仕組みをまず作っていかないといけないと思い、フェアトレードの基準を満たした工場と契約をして生産を始めました。サッカーボール産業でいうと競技人口が多いので世界から注目されやすいということも追い風になり、早い段階で児童労働問題も改善され始めたと感じています。この問題は現在かなり健全化された方だと思います。
スポーツは地方創生の力も秘めている
「顔が見える貿易を行う」ため、発注者と生産者の間に入る業者も極力少なくし、直接取引を行っている、倉林さん。サッカーボールは年間20万球を越える生産量を誇る。他にもサッカーにまつわるさまざまな事業を展開している中で、スポーツを介した社会デザインについてどう考えているのだろう。倉林:自分自身も北京オリンピックでのアスリートの活躍に感動を覚えたひとりなんですが、スポーツには人々にエンターテイメントを提供したり、感動させたり、それだけでなく健康面、そして教育、地域振興、地方創生など、そういったことに寄与する大きな力があると思っています。また、スポーツの主役となるアスリートの価値も今後どんどん上がっていくと思っていますし、活躍の場が広がっていくんじゃないかなと。社会への貢献だけでなくビジネスとしても収益性や可能性が年々拡大しているんじゃないかなと思いますね。
スポーツには地方創生などの力を秘めていると話す倉林さん。そんな彼は現在、沖縄県をホームタウンに活動するサッカークラブFC琉球の会長という顔を持つ。
別所:倉林さんは、今シーズンJ2で戦うFC琉球の会長でもいらっしゃいます。でも東京出身ですよね?
倉林:僕自身は東京生まれ、東京育ちです。
別所:ね! でも沖縄のフットボールクラブ。沖縄との関係やクラブとの出会いは?
倉林:FC琉球は2003年に沖縄初のJリーグ入りを目指すクラブとして創設されてまして、2014年にスタートしたJ3リーグに初めて加盟しました。そのときにイミオ社でユニフォームなどのスポンサード、提供を行なっていたことが私自身の沖縄との接点ですね。
社会への公共財として、チームを活性化したい
スポンサードをきっかけにFC琉球との関係がスタートした倉林さん。クラブの会長としての仕事は並大抵のものではない。別所:Jリーグの理念にも「クラブと自治体による街づくり」というものがありますけど、沖縄とサッカー、そして地域社会、コミュニティはどんな形で構築されていますか?
倉林:まず、FC琉球はJ3に加盟はしたもののなかなか経営も成績も芳しくない状況が続いて……。そんな中で我々が2016年に出資という形で資金提供を行い、当時は沖縄のJリーグクラブを無くしてはいけないという気持ちが強くて、経営を引き受けていくことを決断したんです。やるからには地元との繋がりというものをより強めていかないといけないと思いましたし、最初は認知度も高くなかったので、一つひとつ自分たちの考えていること、沖縄とともに強くなるという理念伝えていくことで、どんどん自治体のサポートを受けていけるようになったんです。
倉林さんの強い信念があってか、FC琉球は2018年にJ3リーグを優勝しJ2リーグへ昇格。この結果は沖縄県で大々的に報道され、一気に認知やチームの価値が上昇していった。
現在は、チーム初となる練習拠点のグラウンド、クラブハウスの整備が行われ、グラウンドの横には地域の方が訪れることができるグラウンド・ゴルフが出来るコースなどが併設される。その他にもFC琉球は地域との関わりを大事にしているようだ。
別所:倉林さんはコロナ禍に置いてサッカーボールの寄贈や子ども食堂へのサポートなど多くを展開されていますが、スポーツチームの在り方をどのように考えていますか?
倉林:私の尊敬するJリーグの村井チェアマンも言っているんですけど、「Jリーグは株式会社ではあるけども、社会への公共財」という考え方を大切にしています。過去のような経営危機を再び起こさないようにもちろん収益性も求めないといけないですし、競技として観ていて楽しいサッカーも求めないといけないんですが、その上でFC琉球がいることで、沖縄や地域のみなさまが元気になることや一緒に強くなる、そんなクラブにしていきたいと思っていますね。
『J-WAVE TOKYO MORNING RADIO』のワンコーナー「Allbirds MORNING INSIGHT」では、あらゆる世界の本質にインサイトしていく。放送は月曜~木曜の8時35分頃から。
(構成:笹谷淳介)
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