「倫理的な」という意味をもつ「エシカル」。エシカル・ファッション、エシカル食品、エシカル・ジュエリーなど、さまざまな形で見聞きする機会が増えた。どういうものなのか、また今の課題について、エシカル基準策定担当理事の足立直樹さんに話を聞いた。
足立さんが登場したのは、J-WAVEで放送中の番組『J-WAVE TOKYO MORNING RADIO』(ナビゲーター:別所哲也)のワンコーナー「Allbirds MORNING INSIGHT」。
【2021年12月22日(水)のオンエア】
足立:自然環境のことをしっかり考えているという意味でアピールをしている商品も多く存在していると思います。一方で、働いている方の労働環境は必ずしも配慮されてなかったりする場合もあるんですよね。それだと困ってしまいますし、場合によっては少し「エシカル」という言葉を売り文句にしすぎている側面もある。私たちはそれを「エシカル・ウオッシュ」と言ったりするんですけども、そういったことを少しなんとかしたいなというところなんです。
足立:「JEI」自体は、2017年にできたた新しい団体です。もともとは消費者庁が倫理的消費を進めようと、「倫理的消費調査研究会」を今から6年ほど前にスタートさせたんです。そのときに環境や人権、動物福祉、あるいはファッションやメーカー、企業や流通に関わる方たちを多く集めて調査研究会を開いたんですが、「研究だけで終わらせるのはよくないよね」ということで本格的にこれを推進しようと、「JEI」を発足させました。
「エシカル基準」を公表したのが、「JEI」だ。今年10月に日本で初めて定められた。自然環境や人権をはじめ、配慮すべきことが8つに分かれている。
足立:動物の福祉や、消費者のことをきちんと尊重して情報開示しているかも含まれます。また、商品を作る際にはいろいろな地域の方と関わるので、「地域社会のことにも配慮しているのか」など、それぞれの分野でいくつかの項目をみて、トータルでは43項目についてチェックしていただく包括的なものになっています。
別所:これは評価としてはABCなんですか? 6段階と聞いているんですけども。
足立:43項目の一つひとつについて6段階あります。基本はABCDの4段階ですけども、Aよりも少し優れているA +、さらには世界で最先端のレベルということでSという評価も設けています。一般的にはAを目指していただいて、大企業の場合にはA +を目指していただきたいと思っています。
別所は「先ほど、動物福祉とおっしゃいましたけど」と具体的な内容について聞いた。
足立:動物福祉の場合、「動物実験を行わない」ということは皆さんお聞きになったことがあるんじゃないかと思います。もちろん、動物実験を行わないということもひとつの項目になっています。それ以外にも、最近の「エシカル・ファッション」では、動物性の原料はそもそも使わない。例えば、毛皮やダウンを避けているメーカーもあるので、そういった項目を入れたり。さらに一般的なものであれば、動物の原材料を使う場合があるんですけど、その生産過程で適正な配慮をしているのかどうか。動物たちがきちんと苦痛を感じない状況で育てられているか、そんなようなことも入っていますね。
JEIエシカル基準の詳細は、公式サイト(https://www.jeijc.org/ethical-standard/20211013-1/)まで。
別所:足立さんご自身あるいは推進協議会としては「エシカル」と「サステナブル」の違いや、重なる部分はどういうところにあるとお考えですか?
足立:かなり重なるところが多いんですけども、「サステナブル」は言葉が示すように社会が持続していくために、あるいは継続していくために必要な条件・状態をいうと思うんですよ。通常は環境と社会に関するさまざまな条件を満たしていると持続可能であるということかなと。「エシカル」はそれよりカバーする範囲が広くて、持続する上にすべての人や生き物が気持ちよく安心して生きていけるというところを追加しています。なので、「エシカル」は環境や社会だけでなく命を重視していると言っていいんじゃないかなという風に思っています。
活動をしていく中で、手応えや実感はあるのだろうか、別所が問う。
足立:本当にいろんな方が興味を持っていただいているんですけども、それと同時に不都合なことも分かっていて。
別所:というと?
足立:例えば、最近農業や特に畜産業の環境負荷が非常に高いということが科学的に分かってきたんです。温室効果ガスは、もしかすると1/3〜1/4近くが食べ物から由来をしているということも分かってきています。なので、どうにかしないといけないんですけど、もちろん「食べるな」とは言えない。だからそこを配慮しましょう、あるいはなるべくそこを減らすような食べ方をしましょうという風に言うしかないんです。そのときに「じゃあこの食事はサステナブルな形で作られましたよ」と言えば十分かと言えば不十分ですし、そこで重要になってくるのが「エシカル」。実はヴィーガンも動物がかわいそうということに加えて、地球のことも考えてヴィーガンになるという方も増えていると聞いています。
別所:今後、「エシカル基準」をどのように広げていきますか?
足立:地方の企業や中小企業で頑張ってらっしゃるところがたくさんあるので、そういうところに、まず自分たちのきちんとした活動のアピールに使っていただきたいと思っているんです。なるべくそういった企業にたくさん使ってもらって“正直者が得をする”、そういう経済にしたいと思っています。また、もうひとつ重要だと思うのはそういった活動を支えてくれる、あるいはこれはそもそもの話になってしまいますが、経済の上で大きな割合を占めるのは公共調達。つまりは自治体や国が買うというものなんですね。ですので、自治体などに、こういう基準に従った調達をしてくれるような働きかけをしていきたいなと思っています。
『J-WAVE TOKYO MORNING RADIO』のワンコーナー「Allbirds MORNING INSIGHT」では、あらゆる世界の本質にインサイトしていく。放送は月曜~木曜の6時30分頃から。 (構成:笹谷淳介)
足立さんが登場したのは、J-WAVEで放送中の番組『J-WAVE TOKYO MORNING RADIO』(ナビゲーター:別所哲也)のワンコーナー「Allbirds MORNING INSIGHT」。
【2021年12月22日(水)のオンエア】
本当に配慮されているか? 「エシカル」の課題
「エシカル」という言葉を聞いたことがあっても、実は正しく説明できない……という人は少なくないだろう。足立さんも、注目されるのはいいことだとしたうえで、「いったい何を指しているのか、どこまで含めているのかということは、なかなか分かりにくいと思うんです」と所感を述べた。足立:自然環境のことをしっかり考えているという意味でアピールをしている商品も多く存在していると思います。一方で、働いている方の労働環境は必ずしも配慮されてなかったりする場合もあるんですよね。それだと困ってしまいますし、場合によっては少し「エシカル」という言葉を売り文句にしすぎている側面もある。私たちはそれを「エシカル・ウオッシュ」と言ったりするんですけども、そういったことを少しなんとかしたいなというところなんです。
自然環境、人権以外にも…「エシカル基準」とは?
別所は“エシカル基準”という新たな基準が生まれたことにも触れた。「JEI(日本エシカル推進協議会)」という団体もある。いったい、どんな活動をしているのだろうか。足立:「JEI」自体は、2017年にできたた新しい団体です。もともとは消費者庁が倫理的消費を進めようと、「倫理的消費調査研究会」を今から6年ほど前にスタートさせたんです。そのときに環境や人権、動物福祉、あるいはファッションやメーカー、企業や流通に関わる方たちを多く集めて調査研究会を開いたんですが、「研究だけで終わらせるのはよくないよね」ということで本格的にこれを推進しようと、「JEI」を発足させました。
「エシカル基準」を公表したのが、「JEI」だ。今年10月に日本で初めて定められた。自然環境や人権をはじめ、配慮すべきことが8つに分かれている。
足立:動物の福祉や、消費者のことをきちんと尊重して情報開示しているかも含まれます。また、商品を作る際にはいろいろな地域の方と関わるので、「地域社会のことにも配慮しているのか」など、それぞれの分野でいくつかの項目をみて、トータルでは43項目についてチェックしていただく包括的なものになっています。
別所:これは評価としてはABCなんですか? 6段階と聞いているんですけども。
足立:43項目の一つひとつについて6段階あります。基本はABCDの4段階ですけども、Aよりも少し優れているA +、さらには世界で最先端のレベルということでSという評価も設けています。一般的にはAを目指していただいて、大企業の場合にはA +を目指していただきたいと思っています。
別所は「先ほど、動物福祉とおっしゃいましたけど」と具体的な内容について聞いた。
足立:動物福祉の場合、「動物実験を行わない」ということは皆さんお聞きになったことがあるんじゃないかと思います。もちろん、動物実験を行わないということもひとつの項目になっています。それ以外にも、最近の「エシカル・ファッション」では、動物性の原料はそもそも使わない。例えば、毛皮やダウンを避けているメーカーもあるので、そういった項目を入れたり。さらに一般的なものであれば、動物の原材料を使う場合があるんですけど、その生産過程で適正な配慮をしているのかどうか。動物たちがきちんと苦痛を感じない状況で育てられているか、そんなようなことも入っていますね。
JEIエシカル基準の詳細は、公式サイト(https://www.jeijc.org/ethical-standard/20211013-1/)まで。
「サステナブル」と「エシカル」の違い
「エシカル」のほかに最近よく耳にするのは、「サステナブル」。これは持続可能を意味する言葉だ。別所:足立さんご自身あるいは推進協議会としては「エシカル」と「サステナブル」の違いや、重なる部分はどういうところにあるとお考えですか?
足立:かなり重なるところが多いんですけども、「サステナブル」は言葉が示すように社会が持続していくために、あるいは継続していくために必要な条件・状態をいうと思うんですよ。通常は環境と社会に関するさまざまな条件を満たしていると持続可能であるということかなと。「エシカル」はそれよりカバーする範囲が広くて、持続する上にすべての人や生き物が気持ちよく安心して生きていけるというところを追加しています。なので、「エシカル」は環境や社会だけでなく命を重視していると言っていいんじゃないかなという風に思っています。
活動をしていく中で、手応えや実感はあるのだろうか、別所が問う。
足立:本当にいろんな方が興味を持っていただいているんですけども、それと同時に不都合なことも分かっていて。
別所:というと?
足立:例えば、最近農業や特に畜産業の環境負荷が非常に高いということが科学的に分かってきたんです。温室効果ガスは、もしかすると1/3〜1/4近くが食べ物から由来をしているということも分かってきています。なので、どうにかしないといけないんですけど、もちろん「食べるな」とは言えない。だからそこを配慮しましょう、あるいはなるべくそこを減らすような食べ方をしましょうという風に言うしかないんです。そのときに「じゃあこの食事はサステナブルな形で作られましたよ」と言えば十分かと言えば不十分ですし、そこで重要になってくるのが「エシカル」。実はヴィーガンも動物がかわいそうということに加えて、地球のことも考えてヴィーガンになるという方も増えていると聞いています。
“正直者が得をする”経済へ
コーナーの最後、別所は今後の展望を聞いた。別所:今後、「エシカル基準」をどのように広げていきますか?
足立:地方の企業や中小企業で頑張ってらっしゃるところがたくさんあるので、そういうところに、まず自分たちのきちんとした活動のアピールに使っていただきたいと思っているんです。なるべくそういった企業にたくさん使ってもらって“正直者が得をする”、そういう経済にしたいと思っています。また、もうひとつ重要だと思うのはそういった活動を支えてくれる、あるいはこれはそもそもの話になってしまいますが、経済の上で大きな割合を占めるのは公共調達。つまりは自治体や国が買うというものなんですね。ですので、自治体などに、こういう基準に従った調達をしてくれるような働きかけをしていきたいなと思っています。
『J-WAVE TOKYO MORNING RADIO』のワンコーナー「Allbirds MORNING INSIGHT」では、あらゆる世界の本質にインサイトしていく。放送は月曜~木曜の6時30分頃から。 (構成:笹谷淳介)
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