J-WAVEで放送中の番組『SONAR MUSIC』(ナビゲーター:あっこゴリラ)。番組では、毎回ゲストを迎え、様々なテーマを掘り下げていく。
2月23日(火・祝)のオンエアでは、クラムボンのミトと音楽ライターの平賀哲雄さんがゲストに登場。「未来を作った小室サウンド」をテーマにお届けした。
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まずは、小室哲哉が本格的に音楽シーンに登場したTM NETWORK時代からスタート!
TM NETWORKとは、1984年にデビューした3人組ユニット。メンバーは、リーダーでシンセサイザー/キーボードの小室哲哉、ボーカルの宇都宮隆、ギター/キーボードの木根尚登。ロックを基盤にしたダイナミックなシンセサイザーサウンドで一世風靡。徐々にダンスミュージックを取り入れ音楽的にも進化していく。アニメ『シティーハンター』の主題歌として制作された87年リリースの『Get Wild』が大ヒット。解散や数度の活動休止はありながらも断続的に続いてきた音楽家・小室哲哉の原点にして最も長く活動するグループである。
あっこゴリラ:ミトさんはTM NETWORKのどこに衝撃を受けましたか?
ミト:当時はシンセがいっぱい並んでて、そのサウンドのキラキラさといい、歌詞も自分たちの青春がわしづかみされるようなリリックがたくさんあって、すべてにおいてまるで出来上がったアニメや漫画を見ているような気分でしたね。しかも、それがどんどんどんどん変化してモードが変わっていって、物語を見ているようでした。
あっこゴリラ:平賀さんはどうでした?
平賀:ボーカルの宇都宮さんの隣で、フロントマンより目立ってる人がいて(笑)。たくさんのシンセサイザーを使いながら、今まで聴いたことないようなサウンドで、それが小室哲哉さんの最初の印象ですね。音楽番組でも、他の共演者とは毛色が違ってて、当時は異端児過ぎて、テレビを見て「なんだ、この人は! 」って笑っちゃうくらい衝撃を受けました。
あっこゴリラ:平賀さんは、最大のヒットとなった『Get Wild』の30周年アルバムのブックレットインタビューを担当したそうですが、この曲の凄さはどこにあったと思いますか?
平賀:単純に、そもそも『Get Wild』の30周年アルバムってちょっとおかしいじゃないですか(笑)。
あっこゴリラ:あははははは! 確かに。
平賀:一つの楽曲のアニバーサリーアルバムが出るなんて、他のアーティストではまずないことだと思います。このアルバムは、4枚組で36曲入ってて、4時間20分くらいあって、それが全部『Get Wild』なんです。
あっこゴリラ:ヤバすぎる! 『Get Wild』のリミックスがいっぱい入ってるってことですよね。
平賀:はい。当時ブックレットのインタビューをさせてもらったときに、本人たちも「聴いてもどれがどれかわからない」って言ってました(笑)。
あっこゴリラ:あはははは。おもしろいな~。
平賀:でも、それだけ万人に愛され続けたってことだと思います。こんなにいかようにも進化させられる楽曲を作ったってことがやっぱりすごいですよね。
あっこゴリラ:ミトさんは雑誌の企画で、このアルバムを全て聴いて分析したそうですが、どうでしたか?
ミト:4時間20分聴いた後に喋ってるんで、多分8時間くらいその現場にいたと思うんですけど、おもしろいもので疲れないんですよ。
あっこゴリラ:え~!
ミト:聴き疲れが起こるかなって思ったんですけど、当たり前だけどファン目線もありつつ、本当に自分が好きな音楽だからこそ、聴きながら楽しくなっちゃって、36人のFANKS(TM NETWORKファンの名称)と話しているみたいな感じでしたね。
【TM NETWORK『Nights Of The Knife』を聴く】
あっこゴリラ:ミトさんは、TM NETWORKに衝撃を受け、ピアノやシンセサイザーを始めたとのことですが、聴く音楽もTM NETWORKから広がっていったのでしょうか?
ミト:もちろんそこからシンセだったり、テクノだったりを聴くようになりました。TMNに変わったときに、テーマを「ハードロックとプログレを融合したJ-POP、J-ROCKを作っていく」って言ってて。
あっこゴリラ:うんうん。
ミト:でも当時中学生くらいで、プログレって何なのかわからなくて親父に聞いてみたら、親父のレコードの棚からキングクリムゾンが出てきたんです。それがきっかけで、さらに掘り下げていって、洋楽を知ることになったんです。
あっこゴリラ:なるほど~。TMを追ってるといろんな音楽が知れるってことですね。
TM NETWORKは、現在の“リミックス”の形である「ボーカル以外のサウンドは作り替えてOK」というオーダーで、海外プロデューサーに既存曲の再構築を依頼したアルバム『DRESS』を発表したり、ミュージカル仕立てのコンセプトアルバム『CAROL』の制作、『Get Wild』のように時代に合わせて何度もバージョン違いを発表するなど音楽業界的にも新しいことをやってきた。
あっこゴリラ:当時は、「リミックス」って言わなかったんですね。
ミト:セルフカバーって言っていましたね。TMって、実は毎回毎回ライブのたびにアレンジ変えていくんですよ。だからツアーの初日と最終公演のアレンジが全然違う。これが、TMのズルいところなんですよ。
あっこゴリラ:あはははは。そうした活動の中で、特に影響を受けた動きはありましたか?
ミト:とにかく新しいものを引っ張ってくるのがTMであり、小室さんの趣向でもあったりするので、やっぱりそこにすごく感銘を受けて、クラムボン自体も「今、どれがフレッシュか」っていうのを自分たちなりに取り入れてます。そういう柔軟な考えを植え付けてくれたのは、確実にTMのおかげです。
あっこゴリラ:2014年にリリースされたクラムボンのトリビュートアルバムでは、小室さんによる『バイタルサイン-Tetsuya Komuro Remix-』が収録されましたが、憧れの人によるリミックスはいかがでしたか?
ミト:実は、トリビュートアルバムの詳細を聞かされないままこのリミックスバージョンを聴いたんです。それが、実は小室さんによるリミックスだって知って、人生最初で最後のドッキリくらいのびっくりの仕方でした。マジで言葉なかったですね。
【H Jungle With t『WOW WAR TONIGHT ~時には起こせよムーヴメント』を聴く】
あっこゴリラ:小室さんは作曲だけでなく作詞もされますが、今のJ-POPにも影響を与えていると感じる特徴やラインはありますか?
ミト:普通はリリックを入れて情報量増やしたいと思うんです。でも小室さんは、初期の頃から“人に歌ってもらって、踊ってもらいたい”、そのスタンスが節々にあるんです。
あっこゴリラ:うんうん。
ミト:実は小室さんのリリックって、どちらかと言うと印象や風景のイメージが多くて、その情景ごとに自分の気持ちが上がるようなリリックを当てていくんです。背中を押すんじゃなくて、寄り添うような感じが、今のJ-POP、J-ROCKのリリックに影響してるんじゃないかなって思います。
あっこゴリラ:こうやって話を聞いてくと、リリックだけじゃなくて、小室さんのサウンドによって、日本でクラブも根付いたんじゃないかなって思います。
ミト:そうですね。“人は踊りたいんだ”っていうのを、かなりポピュラーに大衆音楽に入れ込んだと思います。
あっこゴリラ:最後に、小室哲哉、そして、小室サウンドが未来に残したものは何だと思いますか?
ミト:やっぱりダンス、そして、歌うことの楽しみみたいなものを教えてくれたと思います。
あっこゴリラ:小室さんのプロデュースワークはどこから始まったんでしょうか?
平賀:TM NETWORK時代からプロデューサー目線ではあったんですけど、本格的に始まったのは、1993年にデビューしたtrfからで、クラブシーンに目を向けたことでその才覚が発揮されます。1993年って、その少し前にカラオケボックスが流行り始めたくらいのときで。でもクラブやディスコ帰りの若者がカラオケに行っても歌える曲がなかったんです。
あっこゴリラ:そうだったんだ~。
平賀:そこで、そういう子たちに歌って踊れるダンスミュージックを発信しようと思い付いて、trfの大ヒット曲の連発に繋がっていきます。これがプロデューサーとしての小室哲哉の快進撃の始まりです。
あっこゴリラ:なるほど~。カラオケ文化との連動があったんですね。おもしろいな~。
平賀:その後も、篠原涼子さんや安室奈美恵さん、華原朋美さん、H jungle with t、globeなど、音楽プロデューサーとして一時代を築きます。近年も、乃木坂46や浜崎あゆみさんへ楽曲提供するなど進化は止まらないです。
あっこゴリラ:平賀さんは小室さんだけでなく、安室奈美恵さんなど小室ファミリーのみなさんにも多くのインタビューをされてきたそうですが、プロデューサーとしてどういった部分が優れていたと感じますか?
平賀:音楽プロデューサーって、それまで世界的に見るといいトラックメイカーのことをいい音楽プロデューサーって呼んでたんですよね。でも日本の音楽プロデューサーはちょっと違って、服装からメイクなどのヴィジュアルからどんなダンスを踊るのか、どんな言葉を発信していくのか、そこまで含めてコントロールして、世の中に憧れられるような存在にしていくってところが、90年代の小室さんが始めたプロデュースのあり方だったと思います。
【安室奈美恵『How to be a girl』を聴く】
あっこゴリラ:小室さんの歌詞で、特に印象に残っているものはありますか?
平賀:たくさんあって悩んだんですけど、globeの『FACES PLACES』という曲の歌詞がすごく画期的で。実は、小室哲哉の半生を詰め込んだ歌詞にもなっていて、超重要曲なんです。
あっこゴリラ:へえ~!
平賀:歌詞の中に年号がいくつか出てくるんですけど、これは小室さんにとって全部重要な意味を持つ年号になっています。
あっこゴリラ:おお~! 自伝みたいですね。
平賀:そうなんです。そのネタバレを小室さんは、2015年に『FACES PLACES』から18年も経ってからサラっと種明かししたんです! あはははは。
あっこゴリラ:あはははは。18年言わなかったってすごいな~。
【globe『FACES PLACES』を聴く】
最後に、小室哲哉、そして小室サウンドが未来に残したものは何か訊いてみた。
平賀:音楽を奏でる人たちや愛する人たちへのバトンかなと思っています。音楽には制限はないということ、それがその人の人生をこんなに豊かにおもしろく彩っていくんだということを、自らの音楽人生で体現し続けてる人だと思います。
J-WAVE『SONAR MUSIC』は月~木の22:00-24:00にオンエア。
2月23日(火・祝)のオンエアでは、クラムボンのミトと音楽ライターの平賀哲雄さんがゲストに登場。「未来を作った小室サウンド」をテーマにお届けした。
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小室哲哉の原点、TM NETWORK
安室奈美恵、globe、trf、華原朋美、H jungle with tなど、90年代より時代を彩るポップアイコンたちと共に数多くのミリオンヒットを放ち、一時代を築いた日本を代表する音楽プロデューサー・小室哲哉。アーティストとしてもステージに立ち続け、ダンスミュージック、クラブミュージックとポップスを融合し、シンセサイザーという楽器の可能性を広げ、ポップスシーンを拡張し続けてきた日本の至宝! 番組では、小室哲哉の現代へも繋がるその功績を振り返る。まずは、小室哲哉が本格的に音楽シーンに登場したTM NETWORK時代からスタート!
TM NETWORKとは、1984年にデビューした3人組ユニット。メンバーは、リーダーでシンセサイザー/キーボードの小室哲哉、ボーカルの宇都宮隆、ギター/キーボードの木根尚登。ロックを基盤にしたダイナミックなシンセサイザーサウンドで一世風靡。徐々にダンスミュージックを取り入れ音楽的にも進化していく。アニメ『シティーハンター』の主題歌として制作された87年リリースの『Get Wild』が大ヒット。解散や数度の活動休止はありながらも断続的に続いてきた音楽家・小室哲哉の原点にして最も長く活動するグループである。
あっこゴリラ:ミトさんはTM NETWORKのどこに衝撃を受けましたか?
ミト:当時はシンセがいっぱい並んでて、そのサウンドのキラキラさといい、歌詞も自分たちの青春がわしづかみされるようなリリックがたくさんあって、すべてにおいてまるで出来上がったアニメや漫画を見ているような気分でしたね。しかも、それがどんどんどんどん変化してモードが変わっていって、物語を見ているようでした。
あっこゴリラ:平賀さんはどうでした?
平賀:ボーカルの宇都宮さんの隣で、フロントマンより目立ってる人がいて(笑)。たくさんのシンセサイザーを使いながら、今まで聴いたことないようなサウンドで、それが小室哲哉さんの最初の印象ですね。音楽番組でも、他の共演者とは毛色が違ってて、当時は異端児過ぎて、テレビを見て「なんだ、この人は! 」って笑っちゃうくらい衝撃を受けました。
あっこゴリラ:平賀さんは、最大のヒットとなった『Get Wild』の30周年アルバムのブックレットインタビューを担当したそうですが、この曲の凄さはどこにあったと思いますか?
平賀:単純に、そもそも『Get Wild』の30周年アルバムってちょっとおかしいじゃないですか(笑)。
あっこゴリラ:あははははは! 確かに。
平賀:一つの楽曲のアニバーサリーアルバムが出るなんて、他のアーティストではまずないことだと思います。このアルバムは、4枚組で36曲入ってて、4時間20分くらいあって、それが全部『Get Wild』なんです。
あっこゴリラ:ヤバすぎる! 『Get Wild』のリミックスがいっぱい入ってるってことですよね。
平賀:はい。当時ブックレットのインタビューをさせてもらったときに、本人たちも「聴いてもどれがどれかわからない」って言ってました(笑)。
あっこゴリラ:あはははは。おもしろいな~。
平賀:でも、それだけ万人に愛され続けたってことだと思います。こんなにいかようにも進化させられる楽曲を作ったってことがやっぱりすごいですよね。
あっこゴリラ:ミトさんは雑誌の企画で、このアルバムを全て聴いて分析したそうですが、どうでしたか?
ミト:4時間20分聴いた後に喋ってるんで、多分8時間くらいその現場にいたと思うんですけど、おもしろいもので疲れないんですよ。
あっこゴリラ:え~!
ミト:聴き疲れが起こるかなって思ったんですけど、当たり前だけどファン目線もありつつ、本当に自分が好きな音楽だからこそ、聴きながら楽しくなっちゃって、36人のFANKS(TM NETWORKファンの名称)と話しているみたいな感じでしたね。
【TM NETWORK『Nights Of The Knife』を聴く】
柔軟な考えを植え付けてくれた
ここからは、クラムボンのミトに小室サウンドの魅力について伺った。あっこゴリラ:ミトさんは、TM NETWORKに衝撃を受け、ピアノやシンセサイザーを始めたとのことですが、聴く音楽もTM NETWORKから広がっていったのでしょうか?
ミト:もちろんそこからシンセだったり、テクノだったりを聴くようになりました。TMNに変わったときに、テーマを「ハードロックとプログレを融合したJ-POP、J-ROCKを作っていく」って言ってて。
あっこゴリラ:うんうん。
ミト:でも当時中学生くらいで、プログレって何なのかわからなくて親父に聞いてみたら、親父のレコードの棚からキングクリムゾンが出てきたんです。それがきっかけで、さらに掘り下げていって、洋楽を知ることになったんです。
あっこゴリラ:なるほど~。TMを追ってるといろんな音楽が知れるってことですね。
TM NETWORKは、現在の“リミックス”の形である「ボーカル以外のサウンドは作り替えてOK」というオーダーで、海外プロデューサーに既存曲の再構築を依頼したアルバム『DRESS』を発表したり、ミュージカル仕立てのコンセプトアルバム『CAROL』の制作、『Get Wild』のように時代に合わせて何度もバージョン違いを発表するなど音楽業界的にも新しいことをやってきた。
あっこゴリラ:当時は、「リミックス」って言わなかったんですね。
ミト:セルフカバーって言っていましたね。TMって、実は毎回毎回ライブのたびにアレンジ変えていくんですよ。だからツアーの初日と最終公演のアレンジが全然違う。これが、TMのズルいところなんですよ。
あっこゴリラ:あはははは。そうした活動の中で、特に影響を受けた動きはありましたか?
ミト:とにかく新しいものを引っ張ってくるのがTMであり、小室さんの趣向でもあったりするので、やっぱりそこにすごく感銘を受けて、クラムボン自体も「今、どれがフレッシュか」っていうのを自分たちなりに取り入れてます。そういう柔軟な考えを植え付けてくれたのは、確実にTMのおかげです。
あっこゴリラ:2014年にリリースされたクラムボンのトリビュートアルバムでは、小室さんによる『バイタルサイン-Tetsuya Komuro Remix-』が収録されましたが、憧れの人によるリミックスはいかがでしたか?
ミト:実は、トリビュートアルバムの詳細を聞かされないままこのリミックスバージョンを聴いたんです。それが、実は小室さんによるリミックスだって知って、人生最初で最後のドッキリくらいのびっくりの仕方でした。マジで言葉なかったですね。
【H Jungle With t『WOW WAR TONIGHT ~時には起こせよムーヴメント』を聴く】
あっこゴリラ:小室さんは作曲だけでなく作詞もされますが、今のJ-POPにも影響を与えていると感じる特徴やラインはありますか?
ミト:普通はリリックを入れて情報量増やしたいと思うんです。でも小室さんは、初期の頃から“人に歌ってもらって、踊ってもらいたい”、そのスタンスが節々にあるんです。
あっこゴリラ:うんうん。
ミト:実は小室さんのリリックって、どちらかと言うと印象や風景のイメージが多くて、その情景ごとに自分の気持ちが上がるようなリリックを当てていくんです。背中を押すんじゃなくて、寄り添うような感じが、今のJ-POP、J-ROCKのリリックに影響してるんじゃないかなって思います。
あっこゴリラ:こうやって話を聞いてくと、リリックだけじゃなくて、小室さんのサウンドによって、日本でクラブも根付いたんじゃないかなって思います。
ミト:そうですね。“人は踊りたいんだ”っていうのを、かなりポピュラーに大衆音楽に入れ込んだと思います。
あっこゴリラ:最後に、小室哲哉、そして、小室サウンドが未来に残したものは何だと思いますか?
ミト:やっぱりダンス、そして、歌うことの楽しみみたいなものを教えてくれたと思います。
90年代に小室哲哉が始めたプロデュースのあり方
ここからは、音楽ライターの平賀哲雄さんにプロデューサーとしての小室哲哉について伺った。あっこゴリラ:小室さんのプロデュースワークはどこから始まったんでしょうか?
平賀:TM NETWORK時代からプロデューサー目線ではあったんですけど、本格的に始まったのは、1993年にデビューしたtrfからで、クラブシーンに目を向けたことでその才覚が発揮されます。1993年って、その少し前にカラオケボックスが流行り始めたくらいのときで。でもクラブやディスコ帰りの若者がカラオケに行っても歌える曲がなかったんです。
あっこゴリラ:そうだったんだ~。
平賀:そこで、そういう子たちに歌って踊れるダンスミュージックを発信しようと思い付いて、trfの大ヒット曲の連発に繋がっていきます。これがプロデューサーとしての小室哲哉の快進撃の始まりです。
あっこゴリラ:なるほど~。カラオケ文化との連動があったんですね。おもしろいな~。
平賀:その後も、篠原涼子さんや安室奈美恵さん、華原朋美さん、H jungle with t、globeなど、音楽プロデューサーとして一時代を築きます。近年も、乃木坂46や浜崎あゆみさんへ楽曲提供するなど進化は止まらないです。
あっこゴリラ:平賀さんは小室さんだけでなく、安室奈美恵さんなど小室ファミリーのみなさんにも多くのインタビューをされてきたそうですが、プロデューサーとしてどういった部分が優れていたと感じますか?
平賀:音楽プロデューサーって、それまで世界的に見るといいトラックメイカーのことをいい音楽プロデューサーって呼んでたんですよね。でも日本の音楽プロデューサーはちょっと違って、服装からメイクなどのヴィジュアルからどんなダンスを踊るのか、どんな言葉を発信していくのか、そこまで含めてコントロールして、世の中に憧れられるような存在にしていくってところが、90年代の小室さんが始めたプロデュースのあり方だったと思います。
【安室奈美恵『How to be a girl』を聴く】
あっこゴリラ:小室さんの歌詞で、特に印象に残っているものはありますか?
平賀:たくさんあって悩んだんですけど、globeの『FACES PLACES』という曲の歌詞がすごく画期的で。実は、小室哲哉の半生を詰め込んだ歌詞にもなっていて、超重要曲なんです。
あっこゴリラ:へえ~!
平賀:歌詞の中に年号がいくつか出てくるんですけど、これは小室さんにとって全部重要な意味を持つ年号になっています。
あっこゴリラ:おお~! 自伝みたいですね。
平賀:そうなんです。そのネタバレを小室さんは、2015年に『FACES PLACES』から18年も経ってからサラっと種明かししたんです! あはははは。
あっこゴリラ:あはははは。18年言わなかったってすごいな~。
【globe『FACES PLACES』を聴く】
最後に、小室哲哉、そして小室サウンドが未来に残したものは何か訊いてみた。
平賀:音楽を奏でる人たちや愛する人たちへのバトンかなと思っています。音楽には制限はないということ、それがその人の人生をこんなに豊かにおもしろく彩っていくんだということを、自らの音楽人生で体現し続けてる人だと思います。
J-WAVE『SONAR MUSIC』は月~木の22:00-24:00にオンエア。
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