文学性が高いと評される、ASIAN KUNG-FU GENERATION(以下、アジカン)の歌詞。約5万字の歌詞を分析すると、珍しい特徴が見えてきた。
歌詞を手がけるボーカル・ギターの後藤正文は9月24日(金)、J-WAVEで放送中の番組『INNOVATION WORLD』に出演。同番組のナビゲーターである川田十夢が、解析システム「シンガー・ソング・タグ・クラウド」を用いてアジカンの歌詞世界を紐解いた。
このトークはデジタル音声コンテンツ「SPINEAR」でも配信。Spotifyなどサブスクリプションサービスで聴くことができる。
川田:159曲に含まれる5万字ぐらいを分析したんですね。Gotch(後藤)は意識的なのか、意識していないところもあるのか、言葉を使い分けていて、その発見がいくつかありました。
後藤:一人称や二人称はどうしても増えがちですよね。だからそれ以外でなにを使っているのかは興味深いですけど、なんとなく想像つきそうな気がする。
川田:分析結果をお伝えしてもいいですか?
後藤:どうぞ、どうぞ。聞きたいです。
川田の分析によると、アジカンで一番多く歌われている二人称は「君」。一人称は「僕」が多く登場していた。また、ほかのアーティストにはあまり見られない特徴も発見できたと川田はいう。
川田:僕が一番気になったというか「これはGotchだな」と思ったのが、「希望」と「悲しみ」、「闇」と「光」、「生きる」と「消える」、「夜」と「朝」、対比になるようなモチーフを同時に扱っている印象を受けますね。
後藤:確かにそうですね。
川田:両方を扱う人はそんなにいない。僕はけっこうこの分析を続けていますけど、どちらかに偏りがちなんです。だけどアジカンのGotchは両方を歌のなかに秘めているというか、両方を扱う印象があるんです。それはシンガーソングライターとしてはすごく珍しいことなんですよね。
後藤:あ、そうなんですね。僕は普通のことなのかと思ってましたよ。
川田:あとは、アジカンは特に日本語が多いですね。いかがですか?
後藤:「アジカンはなるべく日本語で書こう」というトライアルをしてきたので。英語を使うときでもカタカナ変換みたいなイメージでやってきたから、分析結果を見ても日本語が多いですよね。でもその対比する言葉は確かにそうで、どちらかに振り切って書かないのが自分のやり方な気がします。自分のなかでは、前向き一辺倒でも変な気がするというか。だから分析結果通りなんじゃないかなっていう。
川田:Gotchがアジカンから離れても(ソロでも)両方のスタンスです。モノの見え方って、人によっても立場によっても違うし、どちらかだけ語ったり歌ったりすると嘘っぽくなっちゃうなというのがあるけど、Gotchはそのへんがニュートラル。
後藤:前向きなものってやり切ったときの清々しさやエネルギーがあるのはわかるんですけど、自分がやると危うさを感じるというか。「希望に満ちた未来」みたいなのを描くのって難しい。そのなかのネガティブなものって、なくすことはできないと思うから。
川田:ソロの最新サードアルバム『Lives By The Sea』を含めた上で解析すると、「僕ら」が多いですね。ソロだと1人だから「僕」になりそうなんですけど、ソロのほうがむしろ「僕ら」と歌っているんです。
後藤:確かに。社会的なことをわりと歌っているかもしれないですね。ファースト(『Can't Be Forever Young』)では特にそうだったかもしれないし、あとはソロがゆえに意外と個人的なことではない視点のほうを意識しているのかもしれないです。生活のなかで自分が感じたことを歌うんですけど、なるべく三人称を増やしたいみたいな気持ちがソロのほうがあるのかもしれないですね。
川田:あとは英語が多い印象です。
後藤:そうですね。セカンドアルバム『Good New Times』もほとんど英詞で作っちゃったので。
川田:あと冠詞の「The」が多い。「あのパーティー」や「あのボーダー」など具体的なものがあるんだなという印象があります。
後藤:抽象的なものより「あの」とか指し示すものが具体的にあるということですよね。そうかもしれないです。
川田:それがとても印象的でしたね。
後藤:「ない」はたぶん韻を踏むときに非常に便利だというのがあるのかもしれないですね。いろいろなところに韻の「ai(アイ)」があるので。「なにがない? あれもない、これもない」みたいな感じで、ないものをたくさん探していくと自然と韻が踏める、みたいな。そういう使い方をしているかもしれないです。
川田:ソロとアジカンに通じて言えることは「君」と「ない」の重要度でしたね。
後藤:なるほどねえ。すごい、面白い。これはでもみんなやられたくないんじゃないですか(笑)?
川田:なんか嫌ですよね、本人としては。
後藤:たとえばこういう分析結果がスタジオとかにあったりすると次の歌詞が書きづらい(笑)。
川田:そうですよね(笑)。この資料は差し上げます。「いままでにない言葉を使いたいな」というときにはいいかもしれないので、ぜひ使ってみてください。
後藤:確かにそうですね。ありがとうございます。
アジカンと川田は、10月9日(土)、10日(日)に開催を控える「INNOVATION WORLD FESTA」でコラボレーション。この日限りのスペシャルARライブを披露する。出演は9日(土)。配信チケットが現在発売中だ。
・「J-WAVE INNOVATION WORLD FESTA 2021 supported by CHINTAI」詳細 https://www.j-wave.co.jp/iwf2021/?jw_ref=iwf21_jnw
今年は各界のイノベーターやクリエイターを迎えて仕事へのこだわりや、描く未来について語り合う「ROAD TO INNOVATION」は毎週金曜日の20時10分ごろからオンエア。
歌詞を手がけるボーカル・ギターの後藤正文は9月24日(金)、J-WAVEで放送中の番組『INNOVATION WORLD』に出演。同番組のナビゲーターである川田十夢が、解析システム「シンガー・ソング・タグ・クラウド」を用いてアジカンの歌詞世界を紐解いた。
このトークはデジタル音声コンテンツ「SPINEAR」でも配信。Spotifyなどサブスクリプションサービスで聴くことができる。
「闇」と「光」─対比になる言葉が使われている
「シンガー・ソング・タグ・クラウド」とは、川田が独自開発した、歌詞を分析してアーティストの深層を考察する解析システムだ。アジカンの歌詞のワードクラウド
後藤:一人称や二人称はどうしても増えがちですよね。だからそれ以外でなにを使っているのかは興味深いですけど、なんとなく想像つきそうな気がする。
川田:分析結果をお伝えしてもいいですか?
後藤:どうぞ、どうぞ。聞きたいです。
川田の分析によると、アジカンで一番多く歌われている二人称は「君」。一人称は「僕」が多く登場していた。また、ほかのアーティストにはあまり見られない特徴も発見できたと川田はいう。
川田:僕が一番気になったというか「これはGotchだな」と思ったのが、「希望」と「悲しみ」、「闇」と「光」、「生きる」と「消える」、「夜」と「朝」、対比になるようなモチーフを同時に扱っている印象を受けますね。
後藤:確かにそうですね。
川田:両方を扱う人はそんなにいない。僕はけっこうこの分析を続けていますけど、どちらかに偏りがちなんです。だけどアジカンのGotchは両方を歌のなかに秘めているというか、両方を扱う印象があるんです。それはシンガーソングライターとしてはすごく珍しいことなんですよね。
後藤:あ、そうなんですね。僕は普通のことなのかと思ってましたよ。
川田:あとは、アジカンは特に日本語が多いですね。いかがですか?
後藤:「アジカンはなるべく日本語で書こう」というトライアルをしてきたので。英語を使うときでもカタカナ変換みたいなイメージでやってきたから、分析結果を見ても日本語が多いですよね。でもその対比する言葉は確かにそうで、どちらかに振り切って書かないのが自分のやり方な気がします。自分のなかでは、前向き一辺倒でも変な気がするというか。だから分析結果通りなんじゃないかなっていう。
川田:Gotchがアジカンから離れても(ソロでも)両方のスタンスです。モノの見え方って、人によっても立場によっても違うし、どちらかだけ語ったり歌ったりすると嘘っぽくなっちゃうなというのがあるけど、Gotchはそのへんがニュートラル。
後藤:前向きなものってやり切ったときの清々しさやエネルギーがあるのはわかるんですけど、自分がやると危うさを感じるというか。「希望に満ちた未来」みたいなのを描くのって難しい。そのなかのネガティブなものって、なくすことはできないと思うから。
ソロになると「僕」よりも「僕ら」に?
一方、後藤のソロとしての活動にはアジカンと異なる一面があると川田は分析した。後藤ソロのワードクラウド
後藤:確かに。社会的なことをわりと歌っているかもしれないですね。ファースト(『Can't Be Forever Young』)では特にそうだったかもしれないし、あとはソロがゆえに意外と個人的なことではない視点のほうを意識しているのかもしれないです。生活のなかで自分が感じたことを歌うんですけど、なるべく三人称を増やしたいみたいな気持ちがソロのほうがあるのかもしれないですね。
川田:あとは英語が多い印象です。
後藤:そうですね。セカンドアルバム『Good New Times』もほとんど英詞で作っちゃったので。
川田:あと冠詞の「The」が多い。「あのパーティー」や「あのボーダー」など具体的なものがあるんだなという印象があります。
後藤:抽象的なものより「あの」とか指し示すものが具体的にあるということですよね。そうかもしれないです。
川田:それがとても印象的でしたね。
「ない」という言葉はバンド、ソロともに出てくる
また、後藤の歌詞にはソロとアジカンの両方に「ない」がよく出てくると川田。「~しない」「頼りない」「くだらない」「消えない」など、いろいろな言葉につく「ない」は、作曲もする後藤にとって使いやすい言葉なのか、と川田は質問する。後藤:「ない」はたぶん韻を踏むときに非常に便利だというのがあるのかもしれないですね。いろいろなところに韻の「ai(アイ)」があるので。「なにがない? あれもない、これもない」みたいな感じで、ないものをたくさん探していくと自然と韻が踏める、みたいな。そういう使い方をしているかもしれないです。
川田:ソロとアジカンに通じて言えることは「君」と「ない」の重要度でしたね。
後藤:なるほどねえ。すごい、面白い。これはでもみんなやられたくないんじゃないですか(笑)?
川田:なんか嫌ですよね、本人としては。
後藤:たとえばこういう分析結果がスタジオとかにあったりすると次の歌詞が書きづらい(笑)。
川田:そうですよね(笑)。この資料は差し上げます。「いままでにない言葉を使いたいな」というときにはいいかもしれないので、ぜひ使ってみてください。
後藤:確かにそうですね。ありがとうございます。
アジカンと川田は、10月9日(土)、10日(日)に開催を控える「INNOVATION WORLD FESTA」でコラボレーション。この日限りのスペシャルARライブを披露する。出演は9日(土)。配信チケットが現在発売中だ。
・「J-WAVE INNOVATION WORLD FESTA 2021 supported by CHINTAI」詳細 https://www.j-wave.co.jp/iwf2021/?jw_ref=iwf21_jnw
今年は各界のイノベーターやクリエイターを迎えて仕事へのこだわりや、描く未来について語り合う「ROAD TO INNOVATION」は毎週金曜日の20時10分ごろからオンエア。
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