2020年、新型コロナウイルスをはじめ、さまざまな自然災害が私たちを襲い、「自然の前に我々はあまりにも無力である」ということも、あらためて痛感させられた。ニューノーマルと言われる新たな生活様式の中で、私たちはどう自然と向き合い共存していくのか。
J-WAVE では11月3日(火・祝)に特別番組『J-WAVE SPECIAL TSUCHIYA EARTHOLOGY』(ナビゲーター:小山薫堂/高島 彩)をオンエア。「人間が自然と共存するために必要な知恵とは何か?」という問いから、3時間の番組を通じて「自然に学ぶ」ものを考えた。
ここでは日本を代表する建築家の隈 研吾と小山薫堂が北海道・帯広に訪れた様子をお届けする。この地で見つけた、これからの時代に必要な自然と共存した暮らしとは?
このホテルは2018年11月に、施設内の実験住宅や牧場の記憶を継承するリノベーション建築をホテルへとコンバージョンするかたちで誕生。先進的な建築と十勝の無垢な自然を原体験として楽しめるホテルとしてのサービス提供と、「資源再読」をテーマにSDGsに向けた研究を展開している研究者と協働し、その社会実装のプロセスを国内外に向けて情報発信をしている。
参考:「MEMU EARTH HOTEL」公式サイト
http://memu.earthhotel.jp/about/
今回は隈と小山は、「MEMU EARTH HOTEL」の縁から北海道の自然の中で暮らす人たちを取材した。
ELEZOは十勝・豊頃町大津に食肉総合ラボラトリーを建設し、生産狩猟、枝肉熟成流通、シャルキュトリ製造、レストランの4ブランド構成において食の一貫生産管理体制を構築し運営している。
【関連記事】日本で初めてハンターを社員に!ジビエレストラン「ELEZO HOUSE」が明かす、狩りのこだわり
私たちが生きて行くうえで避けられないサイクルに真摯に向き合い、新たな食肉文化への挑戦を行う、ELEZOの代表の佐々木章太さんに話を訊いた。
小山:このラボラトリーはいつ建てられたのですか?
佐々木:12年前に建て、ちょうど最近増設したばかりです。肉が一番輝き、食材が一番喜ぶ施設を念頭に置いて 設計をお願いしました。
小山:隈さんは今まで食材が喜ぶという視点で設計をされたことはありますか?
隈:そういうリクエストは受けたことないですね(笑)。食材が主役っていいですね。
二人はサラミやテリーヌなどを仕込むシャルキュトリ製造の部屋を訪れた。山で獲ったものが温かい状態でくるので、それを急激に冷ますための空間があり、その先に本熟成庫がある。
肉を保存しておく大きな冷蔵庫、本熟成庫には、豚肉や鹿肉、熊の肉までズラリと並び、小山と隈はその様子に圧倒されたようだった。
小山:ここ間接照明が入ってますね。
隈:間接照明に肉たちが照らされてきれいで、芸術的に見えるね。
小山:まさに食材のための空間ですね。
佐々木:アトリエではないですけど、そういう風にスタッフが思いながら仕事をすることが僕らの基本なんです。そうじゃない環境で、一番上の人間が「こうしなさい」「ああしなさい」ではなくて、おのずとそうなる雰囲気を僕のほうで作らないといけないと思っています。ようやくそれに近いことができたと思っています。
現在、ELEZOは15人のスタッフがいて、その内10人が料理人だという。また、料理人の妻なども雇用するため、夫婦で一緒に働ける環境でもある。全員で共同生活を送るという一風変わった会社だ。
隈:コミューン的な感じですよね。共同生活だと、熱い思いがものの中にこもりそうな感じがします。
佐々木:僕らは特にものづくりをやっているので、その製品や商品に人が宿らないことはおかしいと思っています。一生懸命にひたむきに作っていたら、その人らしさのようなものが宿ると思っているので。
小山:いい肉って水のような感覚を受けます。これは清らかなる肉ですよね。
佐々木:希薄とは異なる清らかさがあると思っています。若いもの、クセのないものを食べていけば、きれいと錯覚してしまいがちですが、それはどちらかというと希薄なもの。しっかり作ったうえで清らかっていうのは一番難しいけど醍醐味なんですよね。
小山:肉の味がしっかりしながら、くどくないですよね。
小山は「魚は天然物がよいとされるのに対して、肉は天然物、つまりジビエはおいしくないと言われてきた」と話題を振る。
小山:でも、肉も天然物の方がおいしいんですか?
佐々木:おいしいですね。今までジビエが批判されてきたのは、漁師も猟師も、大きいものを獲ってなんぼの世界だったからです。マグロもそうだし、鹿でも、大きいトロフィーを獲ってなんぼ。でも、大きい個体になるとそれなりに年を重ねているので、個性が肉に全部反映されちゃうんです。つまり、大きな鹿を獲って、よかれと思ってご近所に配って、処理施設に販売して、目利きをしないままずっと流通されてきました。
小山:それがおいしくないというイメージを定着させたわけですね。
佐々木:そうなんです。だから、僕らは若齢の鹿、オスは2歳で生殖ができます。メスは3歳で子どもを身ごもることができるのですが、そこから1年達した月齢がうちの(捕獲の)ルールなんです。
小山:種を絶やさないようにしながら、一番おいしい状態で捕獲するんですね。僕らも頼まれないと撃ちに行きません。日本で初めてハンターを雇用した企業でもあります。
佐々木さんは自然に学んでいることについて、こう語る。
佐々木:生きていく知恵やあり方が、自然や決して室内ではない外に詰まっている。そういうことを自然から学んでいるような気がします。厨房の中にいるよりも、アイデアやこうあるべきじゃないかというものを、ものすごく感じるのが自然だと思っています。
隈:この場所は地面を感じるんです。地面の盛り上がり方が、エネルギーが詰まっているように感じて、そのエネルギーが豚にのり移るような気がして、佐々木さんの力で食卓まで届けられる。大地と連続している。お皿の上に大きな自然の連環を感じましたね。
小山:「カムイトウウポポ」とはどういう意味なんでしょうか?
酒井:「カムイ」は神様、「トウ」は湖、あるいは沼、そして「ウポポ」はアイヌの歌という意味です。
小山:幼い頃から環境を意識して暮らしてきたという記憶はありますか?
酒井:私は小学校にあがる前までは、草小屋というか母の作った家で暮らしていました。
小山:隈さんが設計した「MEMU EARTH HOTEL」の建築は、アイヌの建築をベースに作られたんですよね。
隈:普通の茅葺きって屋根だけだけど、アイヌの家は全部が覆われていて、柔らかい。それが環境的にも性能が評価されていて、夏の間でも家の中で薪を焚いて床を温めて、その余熱で冬でも温かいっていう、最高度の環境技術で。それにインスピレーションを受けてMEMUを作ったので、アイヌの文化にはとても関心があります。
酒井さんは自然への思いを、こう表現する。
酒井:たとえば、山に入るときには山の神様に「どうか入ることをお許しください」と、山菜を採るときも山の神様に感謝しながら、川でサケを捕るときには、川の神様に感謝して、全てのものに神様が宿っていると考えているので、それは今でも同じだと思います。
その後、酒井さんがウポポを披露。竹山さんが竹と糸で作られたアイヌの伝統楽器・ムックリを演奏すると、隈は驚きを隠せない様子。
隈:小さい竹が、こんな宇宙に通じるような音を出せるのが信じられない。
小山:言葉を聞いているような感じもしますし、音楽を超えている感じがありますよね。
隈:人間の体と楽器が完全に一体化している。こういう体験って初めで味わいました。
酒井さんはアイヌ文化の素晴らしさについて「一言では言えないですけど、アイヌ語もそうだし、踊りもそう、ウポポももちろん。ウポポは楽譜も何にもないけど、耳で聴いていまだに残っていて、またそれを伝えていくことも素晴らしい文化だと思う」と語る。
小山:つい私たちは何かに記録したり、メディアに頼りますけど、言葉で伝えるって人と人が接し合いながら伝えていくってことですよね。
隈:体の振動が伝わってくる感じですね。メディアとか何かにするとそれって消えてしまうじゃないですか。それが消えない、体同士が接して初めて伝わる感じがしましたね。建築ってそうやって体に響かないと意味がないと思っていて。写真で撮ってカッコよくても意味がないんです。目の前で体験してそこで響くものを感じないといけないと思います。メディアとか媒体を超えた建築を作りたいんです。ここにはすごいヒントがたくさんありました。
隈:人間は都市にいると、自然を感じられないだけじゃなくて、自分自身が自然から切れちゃっている。切れちゃってるってことはすごく人間が弱くなっていることじゃないかな。それを今回のコロナでも感じたし。今日お会いした方はみんな大地につながっているような感じがして、それが強さでもあるし、その方たちが作り出しているものの強さにもつながっている気がしましたね。
小山:隈さんは「負ける建築」とよく話されていますが、建築が負けるってことは、人の強さを感じさせることでもあるんですか?
隈:建築が負けるって言うのは、建築が自然に勝とうとしても実際には勝てるわけがない。ただ、自然を破壊しているだけで、それは建築が一番の罪を犯していることになる。自然に対して負けるつもりじゃないと。勝つつもりが、一番大きな害悪になっているなと思います。それで「負ける建築」って考えたんですよね。
小山:今日会ったみなさんも、自然に対して謙虚でしたよね。今の時代を生きていくために、謙虚がひとつのキーワードなんですかね。
隈:20世紀は、自然は征服できるって感じで進んできてしまいました。建築物は自然の征服の極致みたいにしてデザインされてきた。でも、征服したつもりがすごくいろんなかたちで、自然に逆襲されている。そもそも征服なんてできっこないわけです。そういうことを今日の人たちのスタンスから学んで、そういうスタンスから、これからどうやって新しい時代をつくっていけるかなって。あの人たちすごいなってことだけではなく、学んで新しい時代をつくらないといけないと思いますね。
J-WAVE では11月3日(火・祝)に特別番組『J-WAVE SPECIAL TSUCHIYA EARTHOLOGY』(ナビゲーター:小山薫堂/高島 彩)をオンエア。「人間が自然と共存するために必要な知恵とは何か?」という問いから、3時間の番組を通じて「自然に学ぶ」ものを考えた。
ここでは日本を代表する建築家の隈 研吾と小山薫堂が北海道・帯広に訪れた様子をお届けする。この地で見つけた、これからの時代に必要な自然と共存した暮らしとは?
「地球に泊まり、風土から学ぶ」ホテル
隈は北海道広尾郡大樹町芽武にある「地球に泊まり、風土から学ぶ」をコンセプトに立てられた、世界でも類を見ないホテル「MEMU EARTH HOTEL」に携わっている。このホテルは2018年11月に、施設内の実験住宅や牧場の記憶を継承するリノベーション建築をホテルへとコンバージョンするかたちで誕生。先進的な建築と十勝の無垢な自然を原体験として楽しめるホテルとしてのサービス提供と、「資源再読」をテーマにSDGsに向けた研究を展開している研究者と協働し、その社会実装のプロセスを国内外に向けて情報発信をしている。
参考:「MEMU EARTH HOTEL」公式サイト
http://memu.earthhotel.jp/about/
今回は隈と小山は、「MEMU EARTH HOTEL」の縁から北海道の自然の中で暮らす人たちを取材した。
肉が一番輝き、食材が一番喜ぶ施設
まず二人は北海道の食肉料理人集団「ELEZO(エレゾ)」を訪れた。ELEZOは十勝・豊頃町大津に食肉総合ラボラトリーを建設し、生産狩猟、枝肉熟成流通、シャルキュトリ製造、レストランの4ブランド構成において食の一貫生産管理体制を構築し運営している。
【関連記事】日本で初めてハンターを社員に!ジビエレストラン「ELEZO HOUSE」が明かす、狩りのこだわり
私たちが生きて行くうえで避けられないサイクルに真摯に向き合い、新たな食肉文化への挑戦を行う、ELEZOの代表の佐々木章太さんに話を訊いた。
中央がELEZOの代表の佐々木章太さん
佐々木:12年前に建て、ちょうど最近増設したばかりです。肉が一番輝き、食材が一番喜ぶ施設を念頭に置いて 設計をお願いしました。
小山:隈さんは今まで食材が喜ぶという視点で設計をされたことはありますか?
隈:そういうリクエストは受けたことないですね(笑)。食材が主役っていいですね。
二人はサラミやテリーヌなどを仕込むシャルキュトリ製造の部屋を訪れた。山で獲ったものが温かい状態でくるので、それを急激に冷ますための空間があり、その先に本熟成庫がある。
肉を保存しておく大きな冷蔵庫、本熟成庫には、豚肉や鹿肉、熊の肉までズラリと並び、小山と隈はその様子に圧倒されたようだった。
小山:ここ間接照明が入ってますね。
隈:間接照明に肉たちが照らされてきれいで、芸術的に見えるね。
小山:まさに食材のための空間ですね。
佐々木:アトリエではないですけど、そういう風にスタッフが思いながら仕事をすることが僕らの基本なんです。そうじゃない環境で、一番上の人間が「こうしなさい」「ああしなさい」ではなくて、おのずとそうなる雰囲気を僕のほうで作らないといけないと思っています。ようやくそれに近いことができたと思っています。
現在、ELEZOは15人のスタッフがいて、その内10人が料理人だという。また、料理人の妻なども雇用するため、夫婦で一緒に働ける環境でもある。全員で共同生活を送るという一風変わった会社だ。
隈:コミューン的な感じですよね。共同生活だと、熱い思いがものの中にこもりそうな感じがします。
佐々木:僕らは特にものづくりをやっているので、その製品や商品に人が宿らないことはおかしいと思っています。一生懸命にひたむきに作っていたら、その人らしさのようなものが宿ると思っているので。
生きていく知恵やあり方が、自然に詰まっている
見学後、小山と隈は、ELEZOの肉を味わいながら、佐々木さんに肉に対する哲学などを訊いた。小山:いい肉って水のような感覚を受けます。これは清らかなる肉ですよね。
佐々木:希薄とは異なる清らかさがあると思っています。若いもの、クセのないものを食べていけば、きれいと錯覚してしまいがちですが、それはどちらかというと希薄なもの。しっかり作ったうえで清らかっていうのは一番難しいけど醍醐味なんですよね。
小山:肉の味がしっかりしながら、くどくないですよね。
小山は「魚は天然物がよいとされるのに対して、肉は天然物、つまりジビエはおいしくないと言われてきた」と話題を振る。
小山:でも、肉も天然物の方がおいしいんですか?
佐々木:おいしいですね。今までジビエが批判されてきたのは、漁師も猟師も、大きいものを獲ってなんぼの世界だったからです。マグロもそうだし、鹿でも、大きいトロフィーを獲ってなんぼ。でも、大きい個体になるとそれなりに年を重ねているので、個性が肉に全部反映されちゃうんです。つまり、大きな鹿を獲って、よかれと思ってご近所に配って、処理施設に販売して、目利きをしないままずっと流通されてきました。
小山:それがおいしくないというイメージを定着させたわけですね。
佐々木:そうなんです。だから、僕らは若齢の鹿、オスは2歳で生殖ができます。メスは3歳で子どもを身ごもることができるのですが、そこから1年達した月齢がうちの(捕獲の)ルールなんです。
小山:種を絶やさないようにしながら、一番おいしい状態で捕獲するんですね。僕らも頼まれないと撃ちに行きません。日本で初めてハンターを雇用した企業でもあります。
佐々木さんは自然に学んでいることについて、こう語る。
佐々木:生きていく知恵やあり方が、自然や決して室内ではない外に詰まっている。そういうことを自然から学んでいるような気がします。厨房の中にいるよりも、アイデアやこうあるべきじゃないかというものを、ものすごく感じるのが自然だと思っています。
隈:この場所は地面を感じるんです。地面の盛り上がり方が、エネルギーが詰まっているように感じて、そのエネルギーが豚にのり移るような気がして、佐々木さんの力で食卓まで届けられる。大地と連続している。お皿の上に大きな自然の連環を感じましたね。
全てのものに神様が宿っている
続いて、二人は北海道の先住民族として知られるアイヌの人、帯広カムイトウウポポ保存会・会長の酒井奈々子さんと演奏者の竹山美奈さんを「MEMU EARTH HOTEL」に迎え、その文化や自然への思いを訊いた。アイヌ文化を守る「帯広カムイトウウポポ保存会」の酒井奈々子さんと竹山美奈さん
酒井:「カムイ」は神様、「トウ」は湖、あるいは沼、そして「ウポポ」はアイヌの歌という意味です。
小山:幼い頃から環境を意識して暮らしてきたという記憶はありますか?
酒井:私は小学校にあがる前までは、草小屋というか母の作った家で暮らしていました。
小山:隈さんが設計した「MEMU EARTH HOTEL」の建築は、アイヌの建築をベースに作られたんですよね。
隈:普通の茅葺きって屋根だけだけど、アイヌの家は全部が覆われていて、柔らかい。それが環境的にも性能が評価されていて、夏の間でも家の中で薪を焚いて床を温めて、その余熱で冬でも温かいっていう、最高度の環境技術で。それにインスピレーションを受けてMEMUを作ったので、アイヌの文化にはとても関心があります。
酒井さんは自然への思いを、こう表現する。
酒井:たとえば、山に入るときには山の神様に「どうか入ることをお許しください」と、山菜を採るときも山の神様に感謝しながら、川でサケを捕るときには、川の神様に感謝して、全てのものに神様が宿っていると考えているので、それは今でも同じだと思います。
その後、酒井さんがウポポを披露。竹山さんが竹と糸で作られたアイヌの伝統楽器・ムックリを演奏すると、隈は驚きを隠せない様子。
隈:小さい竹が、こんな宇宙に通じるような音を出せるのが信じられない。
小山:言葉を聞いているような感じもしますし、音楽を超えている感じがありますよね。
隈:人間の体と楽器が完全に一体化している。こういう体験って初めで味わいました。
酒井さんはアイヌ文化の素晴らしさについて「一言では言えないですけど、アイヌ語もそうだし、踊りもそう、ウポポももちろん。ウポポは楽譜も何にもないけど、耳で聴いていまだに残っていて、またそれを伝えていくことも素晴らしい文化だと思う」と語る。
小山:つい私たちは何かに記録したり、メディアに頼りますけど、言葉で伝えるって人と人が接し合いながら伝えていくってことですよね。
隈:体の振動が伝わってくる感じですね。メディアとか何かにするとそれって消えてしまうじゃないですか。それが消えない、体同士が接して初めて伝わる感じがしましたね。建築ってそうやって体に響かないと意味がないと思っていて。写真で撮ってカッコよくても意味がないんです。目の前で体験してそこで響くものを感じないといけないと思います。メディアとか媒体を超えた建築を作りたいんです。ここにはすごいヒントがたくさんありました。
大地につながっているような感じがした
隈は今回の取材を振り返り、「一日でいろんな種類の自然に会えて、いろんな種類の人に会えたけど、どの自然もどの人もつながっている感じがして、すごく感動した」と語る。隈:人間は都市にいると、自然を感じられないだけじゃなくて、自分自身が自然から切れちゃっている。切れちゃってるってことはすごく人間が弱くなっていることじゃないかな。それを今回のコロナでも感じたし。今日お会いした方はみんな大地につながっているような感じがして、それが強さでもあるし、その方たちが作り出しているものの強さにもつながっている気がしましたね。
小山:隈さんは「負ける建築」とよく話されていますが、建築が負けるってことは、人の強さを感じさせることでもあるんですか?
隈:建築が負けるって言うのは、建築が自然に勝とうとしても実際には勝てるわけがない。ただ、自然を破壊しているだけで、それは建築が一番の罪を犯していることになる。自然に対して負けるつもりじゃないと。勝つつもりが、一番大きな害悪になっているなと思います。それで「負ける建築」って考えたんですよね。
小山:今日会ったみなさんも、自然に対して謙虚でしたよね。今の時代を生きていくために、謙虚がひとつのキーワードなんですかね。
隈:20世紀は、自然は征服できるって感じで進んできてしまいました。建築物は自然の征服の極致みたいにしてデザインされてきた。でも、征服したつもりがすごくいろんなかたちで、自然に逆襲されている。そもそも征服なんてできっこないわけです。そういうことを今日の人たちのスタンスから学んで、そういうスタンスから、これからどうやって新しい時代をつくっていけるかなって。あの人たちすごいなってことだけではなく、学んで新しい時代をつくらないといけないと思いますね。
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