森友学園をめぐる財務省の公文書改ざん問題で夫・赤木俊夫さんを亡くし、国と佐川元国税庁長官に対して裁判を起こしている赤木雅子さんが7月、この問題を発覚当初から追い続けてきたジャーナリストの相澤冬樹と共著『私は真実が知りたい 夫が遺書で告発「森友」改ざんはなぜ?』(文藝春秋)を上梓した。
8月5日(木)放送の『JAM THE WORLD』のワンコーナー「UP CLOSE」では、雅子さんへのインタビューをオンエア。夫・俊夫さんの生前の様子や、森友学園問題を通して感じた憤り、そして今思うことを訊いた。訊き手は水曜日のニューススーパーバイザー・安田菜津紀。
ふたりの話はJ-WAVEのポッドキャストサービス「SPINEAR」でも配信している。
安田が『私は真実が知りたい』を読んで印象に残ったのは、俊夫さんの仕事に対する真摯な姿勢だ。公文書の改ざんを要求されて苦しむ俊夫さんと寄り添ってきた雅子さんも、そう感じていたという。
赤木雅子:亡くなったあとに、近所の方から、夫が「僕の雇用主は国民だ」「国民のみなさんにできる国家公務員に誇りを持っている」と話していたと聞きました。それを聞いて、「そういうことを言う人だし、その通りだな」と思いました。
俊夫さんが遺した手書きのメモやパソコンの中の手記には、佐川元国税庁長官以外にも個人名が書かれていた。「恐ろしいな」と感じる雅子さんに対し、財務省からは、「マスコミとは接触しないほうがいい」「手記は公表しないほうがいい」といった働きかけがあった。実家で過ごしていても、マスコミに囲まれる日々。「大きなことになってしまった。手記などは出してはいけないものなのかな」という思いが強くなった。
安田菜津紀:「マスコミとは接触しないほうがいい」などの言葉は、当初まわりの気遣いだと感じたわけですね。
赤木雅子:はい。みなさんが守ってくれているんだろうなという感覚もありました。私の家族にも迷惑をかけたくないので、黙っていることが静かにおさまることであり、それが正しいとずっと思っていました。
安田菜津紀:しかし、麻生大臣が俊夫さんのお墓参りに行くという話があり、その間に立ったはずの職員、しかも俊夫さんが非常に慕っていた方が、雅子さんの意思をねじ曲げて伝えてしまい、麻生さんがメディアの前で「遺族が来てほしくない」という発言に至ってしまうこともありました。
赤木雅子:麻生さんには今でも来ていただいて、手を合わせてほしいと思っています。当時「来てほしい」と伝えましたが、次の日、その間に入っていた職員の方に「マスコミが来ると雅子さんが大変だから」と勝手に断られたときは、何度もお会いして信頼していた方に裏切られたような気がして、本当に腹が立って許せない気持ちでした。でも、我慢しました。黙っておくことが、自分の家族にも迷惑をかけない一番の方法だと思っていたからです。麻生さんのその話があったのは6月で、その職員の方に「私はすごく怒っている」と伝えられたのが、2ヶ月後の8月でした。それまでは自分の中に押し込めて生きていました。
安田菜津紀:なぜ俊夫さんひとりが改ざんを背負わされられるような構造になったのか。それが今に至るまで明らかにされていません。これまで財務省は「自分たちはこの問題の調査を行い、報告書を出した」と繰り返してきましたが、そもそも財務省が自身の調査を行うことには限界があると思います。せめて第三者視点が入った調査があれば、雅子さんが裁判に踏み切ることもなかったかもしれないですよね。
赤木雅子:そうですね。私は裁判をやめたいというか、そこまでやりたいわけではありません。こうして問題を取り上げていただけるのはうれしいですが、私の本心は静かに生活したいということ。だけど、私がこれを今やらないと真実は出てこないことがよくわかったので、頑張っています。
安田菜津紀:第三者視点もない、内輪のなかだけの調査のあり方についてどう思われますか?
赤木雅子:やっぱり第三者の人が調べてくれないと、都合のいいものしか出てきませんし、実際に6月の報告書も少しわかりにくいものでした。夫が亡くなったということ自体も出ていませんし、夫の手記も見せてほしいと言われていません。夫が何で苦しんだのかを調べずに報告書を書かれても、それが真実だとは思えないので、まやかしというか、ごまかされているような気がします。
俊夫さんの直属の上司だった池田 靖さんは、俊夫さんは改ざんがわかるようにファイルで整理していたはずだ、と話している。しかし、そもそもファイルは見当たらず、それが報告書のなかに反映されていない状況だ。
赤木雅子:そういった謎があるにもかかわらず、もう調べ尽くしたから再調査をしない。麻生大臣や安倍首相は何を言っておられるんだろうと。あるとわかっているのだから、それを出してくださったらいいわけですし。夫の公務災害の認定についての開示請求に関しても、開示された文章は真っ黒なものでした。
安田菜津紀:そもそも改ざんの強要は「公務なのか?」という疑問もありますよね。
赤木雅子:公務で犯罪のようなことをさせているのであれば、それはパワハラでもあると思います。それも明らかにしてほしいです。
安田菜津紀:麻生大臣のこの発言をどう感じましたか?
赤木雅子:切り捨てられたというか、見捨てられたという気持ちでとても悲しかったですね。
安田菜津紀:今、雅子さんは国家権力という大きな力の前で裁判を起こそうとしています。それはとても大きな怖さを伴いますよね。
赤木雅子:もちろん怖さもありますし、恐怖も感じます。それでも、夫が亡くなる前に人が変わったような様子になって苦しんで、人格が壊れる様子を一年間見た恐怖に比べたら、たいしたことはない。こんなことはなんともない。あのときのつらさと比べたら、比べものにならないので、夫のことを思えば、平気で進んでいけます。
安田菜津紀:メディアの前に出ること自体もとても勇気のいることだと思います。それでも、雅子さんを突き動かす力はどこから来るのでしょうか。
赤木雅子:人生であんなにつらい思いをしたのは、あのときが初めてでした。あんなに楽しくて明るくて元気な人間が、あんなに壊れるようになってしまい、しかも、それが職場のことですから。あのときの夫のことを思うと、元気やパワーが出るのではなく、一生懸命やろうという力になります。
雅子さんは、俊夫さんが元気だったときと、改ざんを強いられてつらい思いをしているときの写真を飾っているという。
赤木雅子:元気がない写真は改ざんの2ヶ月後の写真です。そのときの苦しんでいた夫のことを忘れたくなかった。元気なときの写真も飾って、どちらも忘れないように毎日見ながら生活しています。
赤木雅子:夫が亡くなった後に財務省や財務局の方がたくさんうちに来られて、私を組織の人間として扱うというか、「あなたはこの立場なんだから、麻生さんの墓参りを受けるなんておかしいでしょう」と話されるようなこともありました。それが男社会に引きずり込まれるような気になりましたし、すごく圧を感じたんですよね。
安田菜津紀:まるで赤木さんを組織の駒のように見てくる態度ですよね。
赤木雅子:それをすごく感じたので、男社会って嫌だなと思いました。こういうことが公務員の中でも一般の企業でもたくさん起きていることだと思いますが、これをなくさなくてはいけません。そういう社会にするためにも、男性もですが、特に女性の方々に読んでいただいて、社会を変えていっていただけたら一番うれしいなと思っています。
雅子さんによる、改ざん問題の第三者委員会による再調査を求めるオンライン署名には35万人以上が賛同している。
赤木雅子:夫が亡くなった当初、世間の人にどう思われているのだろうとか、裁判すると決まってもどう思われるのだろうという不安がすごくありました。署名以外にもたくさんのお手紙もいただいて、後ろから支えてくださっているんだなとすごく思いました。名前も公表して、こうやってインタビューを受けたりすることができるようになったのは、そうやって支えてくださる方々の声があったからだと思います。
最後に、雅子さんはリスナーに向けてメッセージを送った。
赤木雅子:夫が亡くなるまで追い詰められた改ざんはなぜ起きたのか。私はそれが知りたいだけで、安倍政権を倒したいとか安倍批判をしたいという思いはありません。事実を知りたいと思っているだけです。ひとりでも多くの方に、こういうことがあったと知っていただくだけでも、何か変わってくるのではないかと思います。ぜひ、この本も読んでいただきたいと思います。
J-WAVE『JAM THE WORLD』のコーナー「UP CLOSE」では、社会の問題に切り込む。放送時間は月曜~木曜の20時20分頃から。お聴き逃しなく。
8月5日(木)放送の『JAM THE WORLD』のワンコーナー「UP CLOSE」では、雅子さんへのインタビューをオンエア。夫・俊夫さんの生前の様子や、森友学園問題を通して感じた憤り、そして今思うことを訊いた。訊き手は水曜日のニューススーパーバイザー・安田菜津紀。
ふたりの話はJ-WAVEのポッドキャストサービス「SPINEAR」でも配信している。
「黙っているほうが正しいのかな」 しかし、裏切られて
雅子さんは夫・俊夫さんについて、「書道をしたり落語を聴いて楽しんだりと多趣味」だったと生前を振り返る。雅子さんも趣味を共有し、楽しんでいたのだそう。安田が『私は真実が知りたい』を読んで印象に残ったのは、俊夫さんの仕事に対する真摯な姿勢だ。公文書の改ざんを要求されて苦しむ俊夫さんと寄り添ってきた雅子さんも、そう感じていたという。
赤木雅子:亡くなったあとに、近所の方から、夫が「僕の雇用主は国民だ」「国民のみなさんにできる国家公務員に誇りを持っている」と話していたと聞きました。それを聞いて、「そういうことを言う人だし、その通りだな」と思いました。
俊夫さんが遺した手書きのメモやパソコンの中の手記には、佐川元国税庁長官以外にも個人名が書かれていた。「恐ろしいな」と感じる雅子さんに対し、財務省からは、「マスコミとは接触しないほうがいい」「手記は公表しないほうがいい」といった働きかけがあった。実家で過ごしていても、マスコミに囲まれる日々。「大きなことになってしまった。手記などは出してはいけないものなのかな」という思いが強くなった。
安田菜津紀:「マスコミとは接触しないほうがいい」などの言葉は、当初まわりの気遣いだと感じたわけですね。
赤木雅子:はい。みなさんが守ってくれているんだろうなという感覚もありました。私の家族にも迷惑をかけたくないので、黙っていることが静かにおさまることであり、それが正しいとずっと思っていました。
安田菜津紀:しかし、麻生大臣が俊夫さんのお墓参りに行くという話があり、その間に立ったはずの職員、しかも俊夫さんが非常に慕っていた方が、雅子さんの意思をねじ曲げて伝えてしまい、麻生さんがメディアの前で「遺族が来てほしくない」という発言に至ってしまうこともありました。
赤木雅子:麻生さんには今でも来ていただいて、手を合わせてほしいと思っています。当時「来てほしい」と伝えましたが、次の日、その間に入っていた職員の方に「マスコミが来ると雅子さんが大変だから」と勝手に断られたときは、何度もお会いして信頼していた方に裏切られたような気がして、本当に腹が立って許せない気持ちでした。でも、我慢しました。黙っておくことが、自分の家族にも迷惑をかけない一番の方法だと思っていたからです。麻生さんのその話があったのは6月で、その職員の方に「私はすごく怒っている」と伝えられたのが、2ヶ月後の8月でした。それまでは自分の中に押し込めて生きていました。
「謎」を放置して再調査をしない財務省―真実を明らかにしたい
俊夫さんの手記には、佐川元国税庁長官が改ざんを指示したと記載されていた。雅子さんは、それが本当だとしたら夫に指示が下りるまでに何人もの人が改ざんに携わっているはずだ、と話す。続けて、「改ざんという犯罪のようなことを指示できたのかが不思議でたまらなく、今はその経緯を知りたい」と語った。安田菜津紀:なぜ俊夫さんひとりが改ざんを背負わされられるような構造になったのか。それが今に至るまで明らかにされていません。これまで財務省は「自分たちはこの問題の調査を行い、報告書を出した」と繰り返してきましたが、そもそも財務省が自身の調査を行うことには限界があると思います。せめて第三者視点が入った調査があれば、雅子さんが裁判に踏み切ることもなかったかもしれないですよね。
赤木雅子:そうですね。私は裁判をやめたいというか、そこまでやりたいわけではありません。こうして問題を取り上げていただけるのはうれしいですが、私の本心は静かに生活したいということ。だけど、私がこれを今やらないと真実は出てこないことがよくわかったので、頑張っています。
安田菜津紀:第三者視点もない、内輪のなかだけの調査のあり方についてどう思われますか?
赤木雅子:やっぱり第三者の人が調べてくれないと、都合のいいものしか出てきませんし、実際に6月の報告書も少しわかりにくいものでした。夫が亡くなったということ自体も出ていませんし、夫の手記も見せてほしいと言われていません。夫が何で苦しんだのかを調べずに報告書を書かれても、それが真実だとは思えないので、まやかしというか、ごまかされているような気がします。
俊夫さんの直属の上司だった池田 靖さんは、俊夫さんは改ざんがわかるようにファイルで整理していたはずだ、と話している。しかし、そもそもファイルは見当たらず、それが報告書のなかに反映されていない状況だ。
赤木雅子:そういった謎があるにもかかわらず、もう調べ尽くしたから再調査をしない。麻生大臣や安倍首相は何を言っておられるんだろうと。あるとわかっているのだから、それを出してくださったらいいわけですし。夫の公務災害の認定についての開示請求に関しても、開示された文章は真っ黒なものでした。
安田菜津紀:そもそも改ざんの強要は「公務なのか?」という疑問もありますよね。
赤木雅子:公務で犯罪のようなことをさせているのであれば、それはパワハラでもあると思います。それも明らかにしてほしいです。
夫は亡くなる前、人が変わったように苦しんだ…2枚の写真
雅子さんが裁判に踏み切ると同時に、俊夫さんの手記が公表された。一方で、麻生大臣は会見で、「手記は読んでいないけれど、再調査の必要はない」と話している。安田菜津紀:麻生大臣のこの発言をどう感じましたか?
赤木雅子:切り捨てられたというか、見捨てられたという気持ちでとても悲しかったですね。
安田菜津紀:今、雅子さんは国家権力という大きな力の前で裁判を起こそうとしています。それはとても大きな怖さを伴いますよね。
赤木雅子:もちろん怖さもありますし、恐怖も感じます。それでも、夫が亡くなる前に人が変わったような様子になって苦しんで、人格が壊れる様子を一年間見た恐怖に比べたら、たいしたことはない。こんなことはなんともない。あのときのつらさと比べたら、比べものにならないので、夫のことを思えば、平気で進んでいけます。
安田菜津紀:メディアの前に出ること自体もとても勇気のいることだと思います。それでも、雅子さんを突き動かす力はどこから来るのでしょうか。
赤木雅子:人生であんなにつらい思いをしたのは、あのときが初めてでした。あんなに楽しくて明るくて元気な人間が、あんなに壊れるようになってしまい、しかも、それが職場のことですから。あのときの夫のことを思うと、元気やパワーが出るのではなく、一生懸命やろうという力になります。
雅子さんは、俊夫さんが元気だったときと、改ざんを強いられてつらい思いをしているときの写真を飾っているという。
赤木雅子:元気がない写真は改ざんの2ヶ月後の写真です。そのときの苦しんでいた夫のことを忘れたくなかった。元気なときの写真も飾って、どちらも忘れないように毎日見ながら生活しています。
「改ざんはなぜ起きたのか。私はそれが知りたいだけ」
雅子さんの著書『私は真実が知りたい』には、より女性に読んでほしいと綴られている。赤木雅子:夫が亡くなった後に財務省や財務局の方がたくさんうちに来られて、私を組織の人間として扱うというか、「あなたはこの立場なんだから、麻生さんの墓参りを受けるなんておかしいでしょう」と話されるようなこともありました。それが男社会に引きずり込まれるような気になりましたし、すごく圧を感じたんですよね。
安田菜津紀:まるで赤木さんを組織の駒のように見てくる態度ですよね。
赤木雅子:それをすごく感じたので、男社会って嫌だなと思いました。こういうことが公務員の中でも一般の企業でもたくさん起きていることだと思いますが、これをなくさなくてはいけません。そういう社会にするためにも、男性もですが、特に女性の方々に読んでいただいて、社会を変えていっていただけたら一番うれしいなと思っています。
雅子さんによる、改ざん問題の第三者委員会による再調査を求めるオンライン署名には35万人以上が賛同している。
赤木雅子:夫が亡くなった当初、世間の人にどう思われているのだろうとか、裁判すると決まってもどう思われるのだろうという不安がすごくありました。署名以外にもたくさんのお手紙もいただいて、後ろから支えてくださっているんだなとすごく思いました。名前も公表して、こうやってインタビューを受けたりすることができるようになったのは、そうやって支えてくださる方々の声があったからだと思います。
最後に、雅子さんはリスナーに向けてメッセージを送った。
赤木雅子:夫が亡くなるまで追い詰められた改ざんはなぜ起きたのか。私はそれが知りたいだけで、安倍政権を倒したいとか安倍批判をしたいという思いはありません。事実を知りたいと思っているだけです。ひとりでも多くの方に、こういうことがあったと知っていただくだけでも、何か変わってくるのではないかと思います。ぜひ、この本も読んでいただきたいと思います。
J-WAVE『JAM THE WORLD』のコーナー「UP CLOSE」では、社会の問題に切り込む。放送時間は月曜~木曜の20時20分頃から。お聴き逃しなく。
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