安倍政権となり「女性活躍」の取り組みが進んでいますが、その目安となる女性役員の比率は諸外国に比べて大きく遅れをとっている。英国で創設された、役員に占める女性割合の向上を目的とした世界的なキャンペーン「30% Club」の調査によると、フランスやドイツなどでは女性役員の比率が3割〜4割の水準であるのに対し、日本はようやく1割を超えた程度だった。
その要因のひとつには、女性役員の増加を阻む壁「オールド・ボーイズ・ネットワーク」があるという。それは一体どんなものなのか。ダイバーシティ・マネジメントを支援するNPO法人「J-Win」理事長の内永ゆか子さんが解説した。
【12月2日(月)『JAM THE WORLD』の「UP CLOSE」(ナビゲーター:グローバー/月曜担当ニュースアドバイザー:津田大介)】
■男性中心の組織で生まれる「オールド・ボーイズ・ネットワーク」
内永さんは開口一番で「調査では日本の女性役員の比率が1割を超えたとあるが、その1割も社外取締役が入っているので実質は1割もない」と指摘。その壁となる「オールド・ボーイズ・ネットワーク」とは一体どういうものなのか。
内永:成功して非常に長く続いてきた会社や団体などのいろいろな組織は、男性が中心となり続いているので、その人たちが作り上げてきた慣習やものの言い方、礼儀作法、仕事のやり方などが出来上がっている。それが「オールド・ボーイズ・ネットワーク」です。その男性中心の組織に女性が入れてもらえず、女性がいつもコミュニティのアウトサイダーとなり、それにより日々の仕事に支障が生じてしまう。「オールド・ボーイズ・ネットワーク」は、組織があり成功して頑張っている限り厳然としてあるものです。
内永さんは「オールド・ボーイズ・ネットワーク」の具体例を紹介する。
内永:例えば、ある企業で男性たちがゴルフ会に行ったり、飲み会に行ったり喫煙所に集まったりして、女性がいないところでいろんな話題を議論したりうわさ話をしたりしている。そのコミュニケーションで一種のコンセンサスが出来上がってしまい、そのコンセンサスが正式な組織の会議に上がり物事が決まってしまう。だから、会議の前にすでに物事は決まっているわけです。これは「オールド・ボーイズ・ネットワーク」のわかりやすい例です。
そのほか、組織内で「こういう時にはこういう振る舞いをする」という約束事、暗黙のルールを男性は代々受け継がれるが、女性は教わらないことが多いという。
内永:次の重役を決める際に、男性候補に対する評価は「あいつは可能性がある」「能力がある」などポジティブに捉えられる傾向にあり、また、他の重役が「あいつはいいヤツだ」と評価すると、他の重役がしいて「彼はそうでもない」とは言いません。ところが女性候補の場合はほとんどの場合で彼女の実績が問われます。
津田:なぜか男性は性格のよさとか、ポテンシャルとかを加味されますよね。
内永:加えて女性候補に「この人は育児をしている最中なのに本当に仕事ができるのか」とか「亭主が同じ会社にいるけど、彼女を先に昇進させてもいいのか」とか、男性はそうやって女性のマイナス要素を議論するんです。そういう状況が日々の生活や組織の中に蔓延しています。
津田:女性もその状況を不条理とは思わず当たり前のものとして受け入れていることが、これまでの社会ではありましたよね。
内永:そうですね。さらに言うと、女性はその状況が「オールド・ボーイズ・ネットワーク」だと気が付いていないんです。
■女性は重役に就きたくない?
内永さんは組織が「オールド・ボーイズ・ネットワーク」に陥る原因をこう解説する。
内永:ひとつは働き方の問題があります。この改善は政府が一生懸命に取り組んでいます。もうひとつは女性自身が「昇進したくない」という気持ちをもっているからです。ただ、女性に能力がなくて重役に就かないのではなくて、女性はその役職に就いたらいいことがあることに気が付いていないだけなんです。
津田:社外取締役ではない女性の内部取締役は10パーセントもいないわけですからね。
内永:女性は重役に就くと大変だと思っています。男性が昇進すると「大変だ」と言うけど、男性同士では「大変だと言うけど、本当は喜んでいるくせに」と会話が成り立つ。でも、女性は本当に大変だと真に受けてしまうんです。だから、女性は組織で上に行って自分の人生をかけることがエキサイティングだということにあまり気が付いていません。
女性たちに「キャリアアップは素晴らしいことだ」ともっと言わなきゃいけないと内永さんは語気を強める。
津田:ある会社の社長が「女性が管理職になりたくないというのは全くの嘘だ。そちゃんとそのメリットを提示してポジションも確保すれば女性はちゃんと管理職として働いてくれるから。経営者がサボっているだけだ」と話していました。
内永:女性も自覚をしていないので、ポジションを設ける必要がありますよね。ただ、そのポジションを設けた時に障害になるのが「オールド・ボーイズ・ネットワーク」です。
■組織のトップがオールド・ボーイズ・ネットワークを理解することが必要
内永さんは「男性が『オールド・ボーイズ・ネットワーク』に気付くことが、この障害を解消するために必要なことだ」と話す。
内永:男性のあなたたちが作ってきたネットワークが女性をはじき出しているのだと自覚する必要があります。「オールド・ボーイズ・ネットワーク」の話を男性にしても他人事のように振る舞うけど、一度でもいいから日々の言動において何がその問題に当たるのかを考えてほしいと思います。
津田:日本企業が「オールド・ボーイズ・ネットワーク」の壁を乗り越えるためにするべきことは何が求められますか?
内永:まずは組織のトップがこういった問題を理解することです。加えて、組織の中間層にこの問題を理解する男性のネットワークを作ることも必要です。その男性同士がお互いに話していくなかで「オールド・ボーイズ・ネットワーク」に対する気付きがたくさん出てくると思うので。
「オールド・ボーイズ・ネットワーク」を解決する一歩は、私たちの身近にあるこの問題を意識することではないだろうか。
J-WAVE『JAM THE WORLD』のコーナー「UP CLOSE」では、社会の問題に切り込む。放送時間は月曜~木曜の20時20分頃から。お聴き逃しなく。
【この記事の放送回をradikoで聴く】
PC・スマホアプリ「radiko.jpプレミアム」(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は「radiko.jpタイムフリー」機能で聴き直せます。
【番組情報】
番組名:『JAM THE WORLD』
放送日時:月・火・水・木曜 19時-21時
オフィシャルサイト: https://www.j-wave.co.jp/original/jamtheworld/
その要因のひとつには、女性役員の増加を阻む壁「オールド・ボーイズ・ネットワーク」があるという。それは一体どんなものなのか。ダイバーシティ・マネジメントを支援するNPO法人「J-Win」理事長の内永ゆか子さんが解説した。
【12月2日(月)『JAM THE WORLD』の「UP CLOSE」(ナビゲーター:グローバー/月曜担当ニュースアドバイザー:津田大介)】
■男性中心の組織で生まれる「オールド・ボーイズ・ネットワーク」
内永さんは開口一番で「調査では日本の女性役員の比率が1割を超えたとあるが、その1割も社外取締役が入っているので実質は1割もない」と指摘。その壁となる「オールド・ボーイズ・ネットワーク」とは一体どういうものなのか。
内永:成功して非常に長く続いてきた会社や団体などのいろいろな組織は、男性が中心となり続いているので、その人たちが作り上げてきた慣習やものの言い方、礼儀作法、仕事のやり方などが出来上がっている。それが「オールド・ボーイズ・ネットワーク」です。その男性中心の組織に女性が入れてもらえず、女性がいつもコミュニティのアウトサイダーとなり、それにより日々の仕事に支障が生じてしまう。「オールド・ボーイズ・ネットワーク」は、組織があり成功して頑張っている限り厳然としてあるものです。
内永さんは「オールド・ボーイズ・ネットワーク」の具体例を紹介する。
内永:例えば、ある企業で男性たちがゴルフ会に行ったり、飲み会に行ったり喫煙所に集まったりして、女性がいないところでいろんな話題を議論したりうわさ話をしたりしている。そのコミュニケーションで一種のコンセンサスが出来上がってしまい、そのコンセンサスが正式な組織の会議に上がり物事が決まってしまう。だから、会議の前にすでに物事は決まっているわけです。これは「オールド・ボーイズ・ネットワーク」のわかりやすい例です。
そのほか、組織内で「こういう時にはこういう振る舞いをする」という約束事、暗黙のルールを男性は代々受け継がれるが、女性は教わらないことが多いという。
内永:次の重役を決める際に、男性候補に対する評価は「あいつは可能性がある」「能力がある」などポジティブに捉えられる傾向にあり、また、他の重役が「あいつはいいヤツだ」と評価すると、他の重役がしいて「彼はそうでもない」とは言いません。ところが女性候補の場合はほとんどの場合で彼女の実績が問われます。
津田:なぜか男性は性格のよさとか、ポテンシャルとかを加味されますよね。
内永:加えて女性候補に「この人は育児をしている最中なのに本当に仕事ができるのか」とか「亭主が同じ会社にいるけど、彼女を先に昇進させてもいいのか」とか、男性はそうやって女性のマイナス要素を議論するんです。そういう状況が日々の生活や組織の中に蔓延しています。
津田:女性もその状況を不条理とは思わず当たり前のものとして受け入れていることが、これまでの社会ではありましたよね。
内永:そうですね。さらに言うと、女性はその状況が「オールド・ボーイズ・ネットワーク」だと気が付いていないんです。
■女性は重役に就きたくない?
内永さんは組織が「オールド・ボーイズ・ネットワーク」に陥る原因をこう解説する。
内永:ひとつは働き方の問題があります。この改善は政府が一生懸命に取り組んでいます。もうひとつは女性自身が「昇進したくない」という気持ちをもっているからです。ただ、女性に能力がなくて重役に就かないのではなくて、女性はその役職に就いたらいいことがあることに気が付いていないだけなんです。
津田:社外取締役ではない女性の内部取締役は10パーセントもいないわけですからね。
内永:女性は重役に就くと大変だと思っています。男性が昇進すると「大変だ」と言うけど、男性同士では「大変だと言うけど、本当は喜んでいるくせに」と会話が成り立つ。でも、女性は本当に大変だと真に受けてしまうんです。だから、女性は組織で上に行って自分の人生をかけることがエキサイティングだということにあまり気が付いていません。
女性たちに「キャリアアップは素晴らしいことだ」ともっと言わなきゃいけないと内永さんは語気を強める。
津田:ある会社の社長が「女性が管理職になりたくないというのは全くの嘘だ。そちゃんとそのメリットを提示してポジションも確保すれば女性はちゃんと管理職として働いてくれるから。経営者がサボっているだけだ」と話していました。
内永:女性も自覚をしていないので、ポジションを設ける必要がありますよね。ただ、そのポジションを設けた時に障害になるのが「オールド・ボーイズ・ネットワーク」です。
■組織のトップがオールド・ボーイズ・ネットワークを理解することが必要
内永さんは「男性が『オールド・ボーイズ・ネットワーク』に気付くことが、この障害を解消するために必要なことだ」と話す。
内永:男性のあなたたちが作ってきたネットワークが女性をはじき出しているのだと自覚する必要があります。「オールド・ボーイズ・ネットワーク」の話を男性にしても他人事のように振る舞うけど、一度でもいいから日々の言動において何がその問題に当たるのかを考えてほしいと思います。
津田:日本企業が「オールド・ボーイズ・ネットワーク」の壁を乗り越えるためにするべきことは何が求められますか?
内永:まずは組織のトップがこういった問題を理解することです。加えて、組織の中間層にこの問題を理解する男性のネットワークを作ることも必要です。その男性同士がお互いに話していくなかで「オールド・ボーイズ・ネットワーク」に対する気付きがたくさん出てくると思うので。
「オールド・ボーイズ・ネットワーク」を解決する一歩は、私たちの身近にあるこの問題を意識することではないだろうか。
J-WAVE『JAM THE WORLD』のコーナー「UP CLOSE」では、社会の問題に切り込む。放送時間は月曜~木曜の20時20分頃から。お聴き逃しなく。
【この記事の放送回をradikoで聴く】
PC・スマホアプリ「radiko.jpプレミアム」(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は「radiko.jpタイムフリー」機能で聴き直せます。
【番組情報】
番組名:『JAM THE WORLD』
放送日時:月・火・水・木曜 19時-21時
オフィシャルサイト: https://www.j-wave.co.jp/original/jamtheworld/