押井守が支援する「人類史上最大の基礎科学プロジェクト」とは

J-WAVEで放送中の番組『INNOVATION WORLD』(ナビゲーター:川田十夢)のワンコーナー「ROAD TO INNOVATION」。11月22日(金)のオンエアでは、映画監督の押井守とアニメプロデューサーの竹内宏彰が登場。地上に宇宙誕生の瞬間を再現する施設・ILC(国際リニアコライダー)の日本誘致を応援する「ILCサポーターズ」の活動について話を訊いた。さらに、作品作りの原動力も語った。


■最初で最後の恩返し、という気持ちで

『攻殻機動隊』や『パトレイバー』シリーズなどで知られる押井守監督。彼が発起人となり、各界の著名人が集まって結成された組織が「ILCサポーターズ」だ。

光速にまで加速した電子と陽電子を衝突させることで宇宙誕生の瞬間であるビックバンを人為的に再現するという、人類史上最大の基礎科学プロジェクト「国際リニアコライダー計画」。現在、この素粒子物理学研究の頂点となる施設を建設する計画が持ち上がっており、日本は候補地として名乗りを挙げている。押井が結成した「ILCサポーターズ」は、日本でのILC建設に向けた支援をしている。同組織の結成に至った理由とは何だったのか。

押井:山下卓さんという作家の方と、昔からずっとお付き合いしていて。そのお兄さんが東大の山下了教授で、会ってみたらすごく面白かったんですよ。そのとき、教授からリニアコライダーの話を伺って、「実際に誘致されたら工事現場とか行ってみたい」と返したんです。そうしたら教授から「(押井さんも)お役人にプレッシャーをかける役割をしませんか?」って言われて、それがサポーターズになり、気が付いたら発起人みたいになっていました。今までいい加減な妄想を形にして、それを科学と言ってご飯を食べてきた。だから、それをリアルな科学に恩返ししないとまずいんじゃないか、と思って引き受けたんです。
川田:ぼくは昔から押井さんの本を読んできて、押井さんは恩返しとか関係なく生きてゆく方だと思ってたので驚きました(笑)。
押井:そうなんだよね。でも色々あって、最初で最後という形で参加してます。

また押井は、竹内に声をかけた理由として「ぼくらは実務能力がないから、事務的な奴が必要だった」と明かす。竹内はプロデューサーとして、出てきたアイデアを形にする役割を担っている。


■誘致の成功で実現する未来とは

日本にILCが誘致された際、どんな可能性が広がるのだろうか。

竹内:日本が最有力候補地になっていて、来年春に答申が予定されています。それまでに、どれだけサポーター活動を盛り上げられるかということで、力を入れていきたいと思っています。
川田:さまざまな専門領域や最先端の研究が日本にあります。海外からも日本に研究に来るじゃないですか。こういう機会をもって、科学者、英知が集まって一つのことを行うというのは、未来のことを考えれば非常に重要なことですよね。
竹内:日本にILCが決まると、本当に世界中から最先端の科学者が集まるんですよ。トップクラスの科学者が日本に来て、周辺施設が作られたりという副産物もあって、日本の建築技術・宇宙工学が発展する。そうすると、ファッションや文化、教育も新しいものが生まれたり発展してゆくんです。


■作品を作る原動力

川田は、領域を超えたもの同士がお互い力を出し合わなければ、ILCのようなことはできない、と話す。続けて、「そのような機会を日本でやるということは非常に重要」だと力説する。

押井:「それって何の役に立つの」っていう意見が、今の日本を占めちゃってるわけですよ。ぼくが作っている映画なんて、別になくても生きていけるじゃないですか。でも、それは人間にとって生きる上で何かの役に立っているんです。何の役に立っているかわからないけど、20年、30年経ってやっと、何かの役に立ったかもしれないなってわかるような世界で、ぼくは生きているわけです。ILCとは全然レベルが違うけど、これも同じで「何の役に立つかわからないけど、やってみたい」なんだよね。
竹内:未知なるものというか、そういうものを認めてやってみるっていう寛容性が、今の日本にはなくなっているような気がしていて。
押井:1日中ゲームをやっても、ぼくは無駄とは思わない。世間的に無駄な時間と言うけれど、やっぱりすごく役に立っているわけ。そういう風にしか過ごせなかった人間こそが、何かを産み出したりね。それを信じないとね、世の中が本当に息苦しいわけですよ。
川田:ぼくは今日このコーナーで、押井さんと竹内さんに作品を作る原動力について伺おうと思っていたんですが、原動力は「無駄」ってことですかね。一見無駄だと思うことが、原動力であるという。
押井:ぼくは無駄と言われることに膨大な時間を使うことが大好きで、何かしら理由があるだろうと思ってるんですが、それが分かるまではこの活動をやってみようと思っています。

夢が広がる最先端科学の話から作品を作る原動力まで、興味深い話を聞くことができた放送となった。押井監督が応援する「ILCサポーターズ」の活動にもぜひ注目したい。

詳しくは、「ILCサポーターズ」のホームページにアクセスしてみてほしい。

各界のイノベーターやクリエイターを迎えて仕事へのこだわりや、描く未来について語り合う「ROAD TO INNOVATION」は毎週金曜日の20時25分ごろからオンエア。次回もお楽しみに。

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【番組情報】
番組名:「INNOVATION WORLD」
放送日時:毎週金曜 20時00分-22時00分
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/innovationworld/

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