現在Netflixで配信中のドラマ『全裸監督』は、1980年代「AV勃興期」にAV監督の村西とおるがAV女優の黒木 香とともに、わいせつ表現のタブーに挑んだ姿をもとに作られた。村西は自身の活動に、どんな思いを込めているのか。堀 潤が訊いた。
【この記事の放送回をradikoで聴く】(2019年9月5日28時59分まで)
【8月29日(木)のオンエア:『JAM THE WORLD』の「UP CLOSE」(ナビゲーター:グローバー/木曜担当ニュースアドバイザー:堀 潤)】
■『全裸監督』が注目される理由は...
村西の功績について、堀は「規制や世の中の"こうあるべき"に対して真っ向から勝負をして、傷だらけになりながらも表現してきたことだ」と話す。
村西:その根源は貧乏。哲学ではなく生きるために、豊かになりたい一心で、前科7犯、借金50億、アメリカで懲役370年の求刑と生き恥をさらして今日まで来ております。愚か者で恥知らずでございます。
今の日本に対して村西は「ガラパゴス化したコンプライアンスの自縛により閉塞感でいっぱい」と表現した。その状況下にありながらも、日本のみならず世界190カ国で、Netflixにより『全裸監督』は配信され、注目された。
村西:日本のエロチシズムが評価されたと思っています。でも『全裸監督』は「人生が素晴らしいときは、うまくいっているときではなく希望を失ったとき。希望を失ったあとの自分がどうなるかが一番大切であり重要なことだ」と提案しているのだと思います。
『全裸監督』の原作となった本橋信宏の著書『全裸監督 村西とおる伝』(太田出版)の帯には"人生、死んでしまいたいときには下を見ろ! おれがいる。"とあり、村西は「単なるエロを超えて人間の再生の物語を、エロチシズムを通じて追求したところが世間の琴線に触れたのではないか」と注目の理由を述べた。
■「これがわいせつだ」と切り捨てるのはナンセンス
村西は、「かつてセックスは、生殖行為のためにのみ行うものだと考える時代があった」と話す。しかし今は、女性の人生の喜びや楽しみ、そして幸せのために、男性に性を征服されず自立した世界で自分の性を楽しめる時代が訪れつつある。そのうえで、今の映像表現に疑問を投げかける。
村西:ネットのアダルト配信を見ている人の5割は女性だと聞いています。雑誌が売れない時代と言われながらも、女性週刊誌がセックス特集をすると記録的な大ヒットになる。そういう現実があるのに、セックスを扱うと「セックスを商品化している」とか「女性を差別化、奴隷化している」とか、そういうキャッチで攻めてくる。AV業界も同様で、男優でもっているのではなく、女優の華麗なるパフォーマンスでAVは存在しているんです。
『全裸監督』で黒木 香が、自分の中に汚い部分があってもそれは自分なんだ、それがありのまま出せるような世界にいたい、といった話をするシーンがある。堀は、そこが印象的だったようだ。
村西:日本発のアニメには素晴らしいファンタジーの世界があるけど、人間の実相はもっとドロドロ、ギラギラしているんです。そういうものに対しての視点が日本の映像作家にない。おちゃらけた恋愛モノをやっているから、誰もテレビなんか観なくなる。ガラパゴス化したコンプライアンスによって「あれがダメ」「これがダメ」と自縄自縛になっているんです。
「自分の信じるままに生きていかないと、視聴者やユーザーから支援を受けられない」と村西。体を張って突き進んでいくしか自分の朝はない、そういう世界でやってきたから、その中で負った向こう傷も思い出だ、と自身の活動を振り返った。
村西の話を聞いた堀は、今の情報環境はエロ産業に満ちているが「わいせつであるかどうか」「わい雑であるかどうか」の判断が難しいと述べる。
村西:堀さんがわいせつだと思うことと、私がわいせつだと思うことは全く違います。こんなに違う価値観の世界はない。ある人は太った人が好き、ある人は痩せた人が好き。愛し方でもそうです。さまざまなんですよ。それを「これがわいせつだ」と切り捨てるのは非常にナンセンスだと思います。
■「頑張れば何とかなる」希望を感じてもらえたら
次の世代に向けて村西は「自分の信じる道を生きましょう」とメッセージを送る。
村西:もし迷ったり、どうしようもないくらい苦しかったりしたら、ずっと下を見てください。 遠くのもっともっとどん底に私がいるから。
11月30日(土)からは、1996年、北海道で村西が行った撮影の裏側を収録したドキュメンタリー映画『M 村西とおる狂熱の日々 完全版』(R-15指定)が公開する。
村西:今から23年前、誰も公開できなかったアダルト映像の裏側を私は赤裸々に紹介した。この作品は15歳から観られる許可をもらっているので、ぜひ若い人たち、ものを作る人たちに観ていただきたい。頑張れば何とかなるんだ、というような勇気や希望を感じてもらえたら。今は何もやらないことがリスクだから、やることはリスクじゃないと私は訴えていきたいと思います。
番組では、「表現の不自由展」の中止などで議論が巻き起こる「あいちトリエンナーレ2019」を取り上げ、村西が「表現の自由」の問題について言及した。radikoでチェックしてみてほしい(2019年9月5日28時59分まで)。
J-WAVE『JAM THE WORLD』のコーナー「UP CLOSE」では、社会の問題に切り込む。放送時間は月曜~木曜の20時20分頃から。ぜひチェックしてほしい。
【この記事の放送回をradikoで聴く】(2019年9月5日28時59分まで)
PC・スマホアプリ「radiko.jpプレミアム」(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は「radiko.jpタイムフリー」機能で聴き直せます。
【番組情報】
番組名:『JAM THE WORLD』
放送日時:月・火・水・木曜 19時-21時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/jamtheworld/
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【8月29日(木)のオンエア:『JAM THE WORLD』の「UP CLOSE」(ナビゲーター:グローバー/木曜担当ニュースアドバイザー:堀 潤)】
■『全裸監督』が注目される理由は...
村西の功績について、堀は「規制や世の中の"こうあるべき"に対して真っ向から勝負をして、傷だらけになりながらも表現してきたことだ」と話す。
村西:その根源は貧乏。哲学ではなく生きるために、豊かになりたい一心で、前科7犯、借金50億、アメリカで懲役370年の求刑と生き恥をさらして今日まで来ております。愚か者で恥知らずでございます。
今の日本に対して村西は「ガラパゴス化したコンプライアンスの自縛により閉塞感でいっぱい」と表現した。その状況下にありながらも、日本のみならず世界190カ国で、Netflixにより『全裸監督』は配信され、注目された。
村西:日本のエロチシズムが評価されたと思っています。でも『全裸監督』は「人生が素晴らしいときは、うまくいっているときではなく希望を失ったとき。希望を失ったあとの自分がどうなるかが一番大切であり重要なことだ」と提案しているのだと思います。
『全裸監督』の原作となった本橋信宏の著書『全裸監督 村西とおる伝』(太田出版)の帯には"人生、死んでしまいたいときには下を見ろ! おれがいる。"とあり、村西は「単なるエロを超えて人間の再生の物語を、エロチシズムを通じて追求したところが世間の琴線に触れたのではないか」と注目の理由を述べた。
■「これがわいせつだ」と切り捨てるのはナンセンス
村西は、「かつてセックスは、生殖行為のためにのみ行うものだと考える時代があった」と話す。しかし今は、女性の人生の喜びや楽しみ、そして幸せのために、男性に性を征服されず自立した世界で自分の性を楽しめる時代が訪れつつある。そのうえで、今の映像表現に疑問を投げかける。
村西:ネットのアダルト配信を見ている人の5割は女性だと聞いています。雑誌が売れない時代と言われながらも、女性週刊誌がセックス特集をすると記録的な大ヒットになる。そういう現実があるのに、セックスを扱うと「セックスを商品化している」とか「女性を差別化、奴隷化している」とか、そういうキャッチで攻めてくる。AV業界も同様で、男優でもっているのではなく、女優の華麗なるパフォーマンスでAVは存在しているんです。
『全裸監督』で黒木 香が、自分の中に汚い部分があってもそれは自分なんだ、それがありのまま出せるような世界にいたい、といった話をするシーンがある。堀は、そこが印象的だったようだ。
村西:日本発のアニメには素晴らしいファンタジーの世界があるけど、人間の実相はもっとドロドロ、ギラギラしているんです。そういうものに対しての視点が日本の映像作家にない。おちゃらけた恋愛モノをやっているから、誰もテレビなんか観なくなる。ガラパゴス化したコンプライアンスによって「あれがダメ」「これがダメ」と自縄自縛になっているんです。
「自分の信じるままに生きていかないと、視聴者やユーザーから支援を受けられない」と村西。体を張って突き進んでいくしか自分の朝はない、そういう世界でやってきたから、その中で負った向こう傷も思い出だ、と自身の活動を振り返った。
村西の話を聞いた堀は、今の情報環境はエロ産業に満ちているが「わいせつであるかどうか」「わい雑であるかどうか」の判断が難しいと述べる。
村西:堀さんがわいせつだと思うことと、私がわいせつだと思うことは全く違います。こんなに違う価値観の世界はない。ある人は太った人が好き、ある人は痩せた人が好き。愛し方でもそうです。さまざまなんですよ。それを「これがわいせつだ」と切り捨てるのは非常にナンセンスだと思います。
■「頑張れば何とかなる」希望を感じてもらえたら
次の世代に向けて村西は「自分の信じる道を生きましょう」とメッセージを送る。
村西:もし迷ったり、どうしようもないくらい苦しかったりしたら、ずっと下を見てください。 遠くのもっともっとどん底に私がいるから。
11月30日(土)からは、1996年、北海道で村西が行った撮影の裏側を収録したドキュメンタリー映画『M 村西とおる狂熱の日々 完全版』(R-15指定)が公開する。
村西:今から23年前、誰も公開できなかったアダルト映像の裏側を私は赤裸々に紹介した。この作品は15歳から観られる許可をもらっているので、ぜひ若い人たち、ものを作る人たちに観ていただきたい。頑張れば何とかなるんだ、というような勇気や希望を感じてもらえたら。今は何もやらないことがリスクだから、やることはリスクじゃないと私は訴えていきたいと思います。
番組では、「表現の不自由展」の中止などで議論が巻き起こる「あいちトリエンナーレ2019」を取り上げ、村西が「表現の自由」の問題について言及した。radikoでチェックしてみてほしい(2019年9月5日28時59分まで)。
J-WAVE『JAM THE WORLD』のコーナー「UP CLOSE」では、社会の問題に切り込む。放送時間は月曜~木曜の20時20分頃から。ぜひチェックしてほしい。
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【番組情報】
番組名:『JAM THE WORLD』
放送日時:月・火・水・木曜 19時-21時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/jamtheworld/