先日、投開票された参議院選挙。注目を浴びる新しいポピュリズムの政党について、ナビゲーターの津田大介と思想家・東 浩紀さんが語り合いました。
【7月22日(月)のオンエア:『JAM THE WORLD』の「UP CLOSE」(ナビゲーター:グローバー/月曜担当ニュースアドバイザー:津田大介)】
http://radiko.jp/share/?sid=FMJ&t=20190722201807
■れいわ新選組の痛快な戦略
自民・公明両党は改選議席の過半数を上回る71議席を獲得して勝利。ただし、自民党は単独過半数を割りました。今回は憲法改正がひとつの争点でもありましたが、憲法改正に前向きな与党に対して日本維新の会を含めた改憲勢力は81議席に留まり、改憲発議に必要な3分の2には届きませんでした。
一方、れいわ新選組とNHKから国民を守る党(N国)が議席を獲得したことも大きな話題となりました。与党・野党が痛み分けをする状況の中、少しずつインターネットを通じたポピュリズムが日本でも政治の世界に流れ込んできました。
東:れいわ新選組がネットで盛り上がっていたことは知っていたんですが、それが本当にどれだけ票に結びつくのかに関して気になっていました。結果、比例代表で2議席を取ったことにちょっと驚きました。
津田:予想より多かったということですか?
東:そうですね。れいわ新選組をテレビがほとんど報道していないので、ネットの噂だけでここまでいけることは驚きなんじゃないですかね。
津田:僕は、比例代表で100から200万票くらいだと思っていたけど、実際は240万票くらいまでいきましたから、テレビの力を借りなくてもここまでこれるんだと。やっている彼らからすると痛快でしょうね。
東:れいわ新選組の代表・山本太郎さんは読みがあったと思います。最初から自身が落選することを覚悟して、ということはもちろん、特定枠で自分を3番目にしたことも絶妙なポジションでした。
津田:ある種の自民党の地方への配分枠としての特定枠を逆手に取り、そこに重度障がい者のふたりを入れてきた。これはすごい戦略だと思いました。
「大変痛快な戦略」だとしながらも、一方で懸念もあると東さん。
東:僕としては、れいわ新選組ってかなりポピュリズム的な政党だと思うんです。つまり、「現実に実現できないかもしれないけど、そうなったらいいな」という口当たりのいい政策を使い、かなり劇場型政治を演出して、一気に浮動層をかき集めることがポピュリズムだとしたら、今回のれいわ新選組はまさにそうであって、次回の衆院選にもこの戦略を持って向かうので、今後このポピュリズムにどのように接していくのかをリベラルは試されているところだと思います。日本での今までのリベラルは、ポピュリズム批判はそのまま右派批判で、在特会(在日特権を許さない市民の会)やネットから出てきたポピュリズムの流れは右側の方が早かった。でもそういう人たちに対して、「お前らはポピュリズムの祭りだけやっている無責任な人たちだ」と言っていればリベラルはよかったわけですが、これからはリベラル側でもそういった状況がでてくる。そのときにそちらに乗ってしまうのか、そこは冷静に実現可能な政策を議論する人たちを育てていく側に行くのか。これはリベラルの言論人だけじゃなくて、有権者全体が試される状況になってきたなと思います。
■ポピュリズムの現象を受け止める必要がある
以前『ニューズウィーク日本版』の特集でノンフィクションライターの石戸 諭さんが描いた「百田尚樹現象」と、同じく石戸さんが描く「山本太郎現象」は共通する部分があると、東さんは言及します。
東:イデオロギーは違うけど、今の表面に出てこない本音とか、「世界を根本から変えたい」というマグマみたいなものがあって、それをうまく掴んでいるところに百田尚樹さんがいたり、山本太郎さんがいたりするんだと思います。
そして東さんは、「そのときに僕たちが考えなくてはいけないのは、そういう現象をちゃんと受け止める必要がある」と続けます。
東:マスコミやジャーナリズムの問題でもありますが、彼らの言葉では捉えきれない現実があって、その思いがインターネットを中心として結晶化し、マグマのように動いてることは見ないといけない。ただ、それをそのまま実現すればそれが正義かと言えば、それはそうじゃない。そこの距離感を取っていかなければならないと思います。今までリベラルは、百田さんだったら百田さんを叩いていればよかったけど、山本さんに対しては「反安倍政権だから万歳だ」ってなってしまうと、実は同じようなマグマに巻き込まれてしまうかもしれない。僕は、れいわ新選組を全て否定するわけではないのですが、れいわ新選組の持っているマグマみたいなものにそのまま巻き込まれて、「このマグマに乗って安倍を倒せば世界はよくなるんだ」と言うリベラルな人は危険だと思います。
■これからリベラルは試される
今回の状況を受け東さんは、改めて「これからリベラルは試される時期になってくる」と予測しました。
東:元々、自民党の長期政権の中でなぜ左派がダメだったのかと言うと、現実に実現できないようなことばかり言っていて、「とりあえず『反自民党だ』と言えばなんとかなる」という人たちだと国民から思われて、左派とかリベラルは評判が悪くなった。それに対して、1990年代初めからの政界再編の中で「そうじゃないんだ」「やっぱり政権交代をすることが大事なんだ」という流れを作っていったんですよね。そのときにもう一度、単に反対しているだけの口当たりのいいことだけを言っているだけの、そして実現できないようなことばかり並べるのがリベラルになるのかどうかを、もう一度試されてきていると思うので、ここでポピュリズムに巻き込まれないでほしいなと僕は思っています。
【この記事の放送回をradikoで聴く】
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【番組情報】
番組名:『JAM THE WORLD』
放送日時:月・火・水・木曜 19時-21時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/jamtheworld/
【7月22日(月)のオンエア:『JAM THE WORLD』の「UP CLOSE」(ナビゲーター:グローバー/月曜担当ニュースアドバイザー:津田大介)】
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■れいわ新選組の痛快な戦略
自民・公明両党は改選議席の過半数を上回る71議席を獲得して勝利。ただし、自民党は単独過半数を割りました。今回は憲法改正がひとつの争点でもありましたが、憲法改正に前向きな与党に対して日本維新の会を含めた改憲勢力は81議席に留まり、改憲発議に必要な3分の2には届きませんでした。
一方、れいわ新選組とNHKから国民を守る党(N国)が議席を獲得したことも大きな話題となりました。与党・野党が痛み分けをする状況の中、少しずつインターネットを通じたポピュリズムが日本でも政治の世界に流れ込んできました。
東:れいわ新選組がネットで盛り上がっていたことは知っていたんですが、それが本当にどれだけ票に結びつくのかに関して気になっていました。結果、比例代表で2議席を取ったことにちょっと驚きました。
津田:予想より多かったということですか?
東:そうですね。れいわ新選組をテレビがほとんど報道していないので、ネットの噂だけでここまでいけることは驚きなんじゃないですかね。
津田:僕は、比例代表で100から200万票くらいだと思っていたけど、実際は240万票くらいまでいきましたから、テレビの力を借りなくてもここまでこれるんだと。やっている彼らからすると痛快でしょうね。
東:れいわ新選組の代表・山本太郎さんは読みがあったと思います。最初から自身が落選することを覚悟して、ということはもちろん、特定枠で自分を3番目にしたことも絶妙なポジションでした。
津田:ある種の自民党の地方への配分枠としての特定枠を逆手に取り、そこに重度障がい者のふたりを入れてきた。これはすごい戦略だと思いました。
「大変痛快な戦略」だとしながらも、一方で懸念もあると東さん。
東:僕としては、れいわ新選組ってかなりポピュリズム的な政党だと思うんです。つまり、「現実に実現できないかもしれないけど、そうなったらいいな」という口当たりのいい政策を使い、かなり劇場型政治を演出して、一気に浮動層をかき集めることがポピュリズムだとしたら、今回のれいわ新選組はまさにそうであって、次回の衆院選にもこの戦略を持って向かうので、今後このポピュリズムにどのように接していくのかをリベラルは試されているところだと思います。日本での今までのリベラルは、ポピュリズム批判はそのまま右派批判で、在特会(在日特権を許さない市民の会)やネットから出てきたポピュリズムの流れは右側の方が早かった。でもそういう人たちに対して、「お前らはポピュリズムの祭りだけやっている無責任な人たちだ」と言っていればリベラルはよかったわけですが、これからはリベラル側でもそういった状況がでてくる。そのときにそちらに乗ってしまうのか、そこは冷静に実現可能な政策を議論する人たちを育てていく側に行くのか。これはリベラルの言論人だけじゃなくて、有権者全体が試される状況になってきたなと思います。
■ポピュリズムの現象を受け止める必要がある
以前『ニューズウィーク日本版』の特集でノンフィクションライターの石戸 諭さんが描いた「百田尚樹現象」と、同じく石戸さんが描く「山本太郎現象」は共通する部分があると、東さんは言及します。
東:イデオロギーは違うけど、今の表面に出てこない本音とか、「世界を根本から変えたい」というマグマみたいなものがあって、それをうまく掴んでいるところに百田尚樹さんがいたり、山本太郎さんがいたりするんだと思います。
そして東さんは、「そのときに僕たちが考えなくてはいけないのは、そういう現象をちゃんと受け止める必要がある」と続けます。
東:マスコミやジャーナリズムの問題でもありますが、彼らの言葉では捉えきれない現実があって、その思いがインターネットを中心として結晶化し、マグマのように動いてることは見ないといけない。ただ、それをそのまま実現すればそれが正義かと言えば、それはそうじゃない。そこの距離感を取っていかなければならないと思います。今までリベラルは、百田さんだったら百田さんを叩いていればよかったけど、山本さんに対しては「反安倍政権だから万歳だ」ってなってしまうと、実は同じようなマグマに巻き込まれてしまうかもしれない。僕は、れいわ新選組を全て否定するわけではないのですが、れいわ新選組の持っているマグマみたいなものにそのまま巻き込まれて、「このマグマに乗って安倍を倒せば世界はよくなるんだ」と言うリベラルな人は危険だと思います。
■これからリベラルは試される
今回の状況を受け東さんは、改めて「これからリベラルは試される時期になってくる」と予測しました。
東:元々、自民党の長期政権の中でなぜ左派がダメだったのかと言うと、現実に実現できないようなことばかり言っていて、「とりあえず『反自民党だ』と言えばなんとかなる」という人たちだと国民から思われて、左派とかリベラルは評判が悪くなった。それに対して、1990年代初めからの政界再編の中で「そうじゃないんだ」「やっぱり政権交代をすることが大事なんだ」という流れを作っていったんですよね。そのときにもう一度、単に反対しているだけの口当たりのいいことだけを言っているだけの、そして実現できないようなことばかり並べるのがリベラルになるのかどうかを、もう一度試されてきていると思うので、ここでポピュリズムに巻き込まれないでほしいなと僕は思っています。
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番組名:『JAM THE WORLD』
放送日時:月・火・水・木曜 19時-21時
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