日本の音楽は、ネット戦略に“思い切り”が足りない―世界で通用するために必要なのは【J-WAVEナビゲーター座談会】

J-WAVEで1月1日に(火)にオンエアされた『J-WAVE 30th ANNIVERSARY SPECIAL SAISON CARD TOKIO HOT 100 30 YEAR ULTIMATE COUNTDOWN』(ナビゲーター:クリス・ペプラー)。開局30周年を迎えたJ-WAVEと同時にスタートしたカウントダウンプログラム『TOKIO HOT 100』を、この日限りのスペシャルバージョンでお届け。ここでは、J-WAVEナビゲーターを迎えて行われた、特別座談会の模様をご紹介します。

クリスに「新春特別座談会ということで、こいつらに来てもらいました!」と紹介されて登場したのは、番組『STEP ONE』(月~木 9:00-13:00)のナビゲーターを務めるサッシャと、番組『SONAR MUSIC』(月~木 21:00-24:00)のナビゲーターを務める藤田琢己。クリスを交え、J-WAVEナビゲーターの3名で「日本人アーティストが世界でバズるには!?」をテーマにトークを繰り広げました。


■世界のトレンドをもっと取り入れろ

韓国アーティストのBTS (防弾少年団)が、米アルバムチャート「ビルボード200」で1位を獲得するなど、世界を席巻しています。BTSのようなアジア勢が台頭するなか、日本人アーティストがグローバルで活躍するためには何が必要なのでしょうか。まずは藤田が、日本の“バンド”が世界で売れるために必要なことを、ONE OK ROCKを例に語りました。

藤田:実際に聞いた、現場の声を交えてバンドに限り話したいと思います。たとえばBABYMETALやきゃりーぱみゅぱみゅは少し特殊で、バンドとは違うバズり方だと思うんです。ピコ太郎もそうかもしれません。日本のバンドに限ると、今僕が一番期待を寄せているのがONE OK ROCK。日本ではドームツアー完売、海外だとだいたい2000~3000人のキャパが埋まります。ちょっとした地方、カンザスやミズーリでも1000はいきますし、LAだと5000ほど。英語で歌ってはいますが、日本のロックバンドとして成功しているのではないかなと。ワンオクは日本でも一生懸命活動していますし、世界へということで、フォーマットや音の流行りをラウドロックというジャンルにとどまらせないで、世界のトレンドと呼応するように音も変えていっていると思います。
クリス:最近だとEDMっぽいもんね。
藤田:CDで聴く分には、向こうのトレンドの音をきっちり意識していて、向こうのラジオでどうかかるか、リスナーにどう聴こえるかを学んでいます。ワンオクは、Fueled By Ramenという、Panic! At The DiscoやParamore、Fun.、twenty one pilotsなどが在籍しているレーベルと海外では契約しています。向こう側でどうウケるかで考えていますが、ネガティブに言ってしまうと、今までファンだった人たちに向けての音楽性ではないかもしれないということです。本人たちは「俺たちはもっと先にいく」と言っていて、海外でどう聴かれたいかを、きっちり意識しているんだと思います。ジレンマなのは、ほかのバンドです。さいたまスーパーアリーナが即完できるなど、日本である程度の動員があり、アルバムがチャートトップ10にランクインするほどのバンドも、バイリンガルで歌えたとしても、向こうに行く時に日本で認められている音楽性を捨てられるかどうか。twenty one pilotsみたいな音を作ってくれといわれたときに、「はい、そうですね」と言えるか。現時点では、それが非常に難しいのではないかなという印象です。今の向こうのトレンド、トラップっぽいトラックにあわせてロックバンドができるかが、バンドが世界という壁を破るのに必要なものの一つの要素だと思います。ハードロックだったりメタルだったりという要素を、きっちり日本のフィールドで評価を受けている音像を残したいのであれば、日本をベースにしてちょっと海外に行くくらいじゃなきゃダメなのかなと思います。
クリス:向こうのサウンドをもっと意識しなければならない、世界トレンドをもっと取り入れろと。
藤田:それが、バズる一つの要素だと思います。バンドシーンでいうと、そういうことが起きていると思います。そういうやり取りを、海外のレーベルと契約するにあたって、日本のバンドはつきつけられると思います。


■日本っぽさは拭い去れない

海を越えて活躍するためには、世界トレンドのサウンドを取り入れるべきだという藤田。日本のお客さんの音楽の趣味と、世界的なトレンドは違うということなのでしょうか。

クリス:日本と世界では違いがあると思う。最近はちがうかもしれないけど、島国の日本は、ユニークな素晴らしい文化を作っていて、それが日本のプライドでもあると思う。島国というアイデンティティを大事にしている日本で受け入れられるということは、同族感があるということ。だから、日本でミリオンセラーになるものは、外に行くと反比例して逆に落ちてしまう。日本の琴線に触れるってことは、すごく濃密ということで、それはグローバルではないんだよね。海外には、いろんな民族・文化があるから。日本って今ガラパゴス化しているし、若い子たちは海外に興味ないじゃん。J-WAVEが開局したときは洋楽ばっかりだったのが、数年前だとCDセールスの80%はJ-POPだった。そういった意味で、今の日本は特殊化しているよね。だから藤田くんの言うように、世界のトレンドを取り入れないと、サウンド的に活躍できないということなのかな。
藤田:もう一つの理由は、イギリスで活躍しているBO NINGENというちょっとサイケだったり、アバンギャルドでアートなバンドがいます。イギリスではファッション誌の4~6ページから見開きで特集を組まれるようなアーティストで、プライマル・スクリームに呼ばれたり、カサビアンと一緒に世界を回ったりしています。そのタイゲンくんが言っていたのは、向こうと同じような音を出したとしても、向こうからみたら「すごいジャパニーズ」だと思われるみたいなんです。完璧にコピったとしても、ジャパニーズ独自のスタイルをもっていると。根っこにあるので拭い去れないんですよね。音を世界と同じものにしたとしても個性は出ると思うので、それを良さにしてユニークさは保てると。J-POPぽさ、歌謡曲ぽさとは失われないということです。


■重要なのはインターネット戦略

一方でサッシャは、ストリーミングの時代にインターネットをもっとうまく活用する必要があると話します。

サッシャ:僕が思うのは、インターネットの使い方が下手ということ。今は、ストリーミング時代じゃないですか。Spotifyの2018年のランキングトップ100をみたとき、今ラテンブームが来ていて、純粋にラテン音楽が100曲中15曲入っているわけです。ラテンテイストを含めると、もっと多くランクインしています。これは、ストリーミングが出てくるまではなかったことです。ストリーミングでは、国境がすべて取り払われる。英語の次に多く話されている言語はスペイン語なので、単純にスペイン語を聴く層が多いことから、ランキングに入ってきた。それを無視できない状態になっていて、ルイス・フォンシとダディー・ヤンキーがジャスティン・ビーバーをフィーチャーしてみたり、逆にラテンのアーティストがアメリカのアーティストにフィーチャーされるなど、ラテンの基礎ができました。僕は日本もそれを狙うべきだと思うんです。日本は、権利を守るためにMVをショートバージョンしか公開しないとか、邦楽になるとライブの写真を撮っちゃいけないとか、制約が多くあります。K-POPは、ラテンの次に成功していると思うんです。彼らはMVをガンガン公開して、そのなかで(アーティストに)ハイブランドを着させたり、多くの話題を提供してバズを起こそうとしています。日本はその戦略がないので、極端に言ってしまうと、世界的に検索したときにインターネットに日本の音楽がないわけです。日本の曲がどこかの国の琴線に触れる可能性だってあるわけで、それを掘り出すツールであるインターネットがありながらも対策をしないから、金脈があっても掘り当てられない。網にすら引っかからない。インターネット戦略をしっかりやれば、日本の音楽のポテンシャルはものすごくあると思います。
藤田:BTSもそうですよね。
サッシャ:彼らは韓国語で歌って売れているわけなので、日本語で歌って売れない理由にはならない。
クリス:MVを観ると、BTSはすごくお金をかけているんだよね。日本はお金をかけないで、どうやって抑えるか。BTSは全世界の心をビジュアルで掴まないといけないということで、莫大な予算を使っているわけです。
サッシャ:例えば日本のアーティストで、100万の予算でMVを作ったと言っても、それを億にして話題を呼んで、向こうでスタジアムでやれば数億すぐに取り戻せるわけじゃないですか。外に対してアピールすることによって、もっと大事なものを取りに行くという発想がないから、インターネットの世界で無視されてしまっているのではないかなと。
クリス:純粋にビジネスとして音楽を作るのか。僕は、音楽はルーレットみたいにいろんな音楽があってもいいと思う。あまり計算されると、文化として開花しないと思うから。でもミュージックビジネスでもあるわけで、当てていくんだったらAmPmはすごいなと思う。
サッシャ:それはK-POPと同じだと思います。世界的に有名はミュージックライターにお願いしながらも、プロデュースは韓国人がやってバランスをとっている。BLACKPINKがインタースコープ・レコードと契約したので、次に世界的にヒットしていくと思う。彼女たちもそうですけど、MVではハイブランドしか着ない。億単位で制作しているから、何に対してどうお金をかけて、インターネットでどう存在感を示すか。そうすると思わぬところからクリックされるかもしれないですよね。


■かっこいいセクシーはJ-POPでは出せない?

トレンドのサウンドを取り込みつつ、インターネットをうまく利用することで、K-POPは世界で存在感を放つようになりました。これに加え、「パッション」も大事だとクリスは続けます。

クリス:年齢を重ねた男性陣って、ボーイバンドにそんなに興味がないと思う。でも、10年位前に、初めてBIGBANGをみてぶっ飛んだんだよね。クオリティがすごく高くて。メンバーたちは、「死に際はここだ」って意気込みでやっていて。日本のいわゆるボーイバンドになっちゃうと、汗をかかない、涼しい顔してやるっていうのが美学みたいなところがあるけど、ラテンのブームもしかり、世界は「パッション」なんだよね。ワンオクもそう、パッションなんだよ。日本だと涼しいのが美徳だけど、世界は汗がみたいんだよね。
サッシャ:あとはセクシーさもあると思います。日本だとセクシーさをだすとエロいってなっちゃうじゃないですか。でも、男女関係なく、かっこいいセクシーさはK-POPは出せるけど、J-POPは出せないのかなと。
クリス: K-POPは、国策として援助金も出ています。音楽だけではなく、韓国の文化を世界に広めるのを国がプッシュしているんだよね。韓国は日本と比べて国民も領土も少ない。そこで、どうやってソフトパワーを広めていくかという点では、音楽がでかいのかなという気はします。
サッシャ:スウェーデンやカナダもそうですよね。彼らも国策でやっています。スウェーデンは500万人ぐらいしか人口はいないですけど。
クリス:マックス・マーティンとか、スウェーデンのソングライターがアメリカのポップソングのほとんどを担当していますよ。
サッシャ:テイラー・スウィフトやケイティ・ペリーの楽曲は、マックス・マーティンが担当していますね。

最後にクリス、サッシャ、藤田らは、今後世界でのさらなる活躍を期待する日本人アーティストの名前を挙げました。クリスは、「パッション」を感じるというマキシマム ザ ホルモンとBABYMETAL、サッシャは、アメリカのシンガーに負けない歌唱力を持つRIRI、そして藤田は冒頭でも話したONE OK ROCKの今後に期待を寄せました。

オンエアではその他、30年分の総合チャート100曲をオンエア! 30年分のチャートNo.1の栄光は誰の頭上に輝いたのか? ぜひradikoでチェックしてみてください!

この記事の放送回をradikoで聴く
PC・スマホアプリ「radiko.jpプレミアム」(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は「radiko.jpタイムフリー」機能で聴き直せます。

【番組情報】
番組名:『J-WAVE 30th ANNIVERSARY SPECIAL SAISON CARD TOKIO HOT 100 30 YEAR ULTIMATE COUNTDOWN』
放送日時:2019年1月1日(火・祝)9:00~17:55
番組ページ:http://www.j-wave.co.jp/original/tokiohot100/

関連記事