J-WAVEで放送中の番組『JAM THE WORLD』(ナビゲーター:グローバー)のワンコーナー「UP CLOSE」。12月17日(月)のオンエアでは、月曜日のニュース・スーパーバイザーを務める津田大介が登場。作家・思想家の東 浩紀さんをお迎えし、「東さんが選ぶ2018年の重大ニュース」をお届けしました。
■日本国民は忘れっぽくなっている
まず取り上げたのは「安倍政権下で公文書をめぐる不祥事が相次ぐ」というニュース。夏くらいから報道されないため、みんな忘れている、と東さんは心配します。
東:決裁文書が改ざんされるというのは、大変なことです。まさに民主主義の根幹が揺らぎ、内閣が倒れてもおかしくないくらいの問題でした。もっと大騒ぎになるかと思ったら、人々はあっさり忘れている。この国民の忘れやすさ……どうしようもないですよ! 結論から言うと、日本はダメだよ! こんな大きな事件を忘れちゃダメですよ。こういうことを言うと、「そこを導くのが知識人の役目だ」と言われたりするのですが、どこまで頼ってくるのよと。こんな忘れやすいやつをどう導くんですかって話です。
マスコミのせいだけではなく、国民にも問題があると東さんは指摘します。
東:公文書改ざん問題を忘れちゃダメです、本当は。「じゃあ、東はこの問題を覚えていたのか」と問われると……もちろん俺も忘れてましたよ。
津田:(笑)。
東:そういう国です! みんなも悪い、俺も悪いと思っています! 思い出していきましょう。
津田:今年くらいから、いろいろと問題が発覚しても、当事者に近い人が後付け的に「そんなもんよ」と、堂々と言うケースが顕著に見られるようになりましたよね。森友学園の話で言えば、元官僚の言論人が「僕らのときもやっていたよね」と対談で明かしたりする。
東:そうですね。日本は実はめちゃくちゃな国だったことが現れた年でした。今までは建前で隠していたけど、今年は表面で語られるようになって、国民もそれを受け入れている。そういう国になってきたということですよね。政治家が不祥事を起こしても辞めないし、発言を変えても何の問題もないので、「別にそんなことを気にしてもしょうがない」となっています。こうなると怒ること自体もむなしい。知識人の役割はなくなってますよね。
■権力側が「国民に配慮するフリ」をやめた一年だった
津田は、東京医科大学や順天堂大学など、入試における差別が明るみに出たことにも、先進国として非常に恥ずかしいことだと言及しました。
東:それもビックリしたし、昨年話題となった「#MeToo」運動もどうなるかと思ったら、別にどうにもなっていない。
津田:アメリカなどは、例えばオフィシャルなカンファレンスで男女比が3対1とかになると聴衆からブーイングが起こるそうです。一方、日本の女性閣僚は片山さつきさん1人しかいない。
東:安倍政権は完全に女性を起用するフリをすることもやめてしまったんです。
津田:女性を配慮するとか女性活躍とか、他にも「沖縄に寄り添う」とか言っているけど、何にも寄り添っていないですよね。
東:今年は権力側が国民を配慮するフリをやめてしまった年だったと思います。「配慮なんかしてません」「それで、何が悪いんですか?」となってしまいました。これは大変なことですよ。
なぜ、そうなってしまったのでしょうか。
東:私たちが忘れっぽいからじゃないですか。
津田:国民が怒り疲れているからじゃないですかね。
東:そうかもしれないけど、例えば最近、市民連合なる市民団体のサイトにアクセスしてみたんですよ。そうしたら2017年の選挙で止まってるんです。反体制でもこの状態です。あの総選挙のときだけ騒いで、終わると落ち着いてしまう。一事が万事、この調子ですよ。
津田:これはインターネットの影響があるでしょうね。
東:それもあるけど、国民性もあるだろうし。ただ、SNSの時代になって安直に動員できるようになった結果、人々は忘れやすくなっています。いま国民は「リベラルの復活はあり得ない」という無気力状態に陥っているけど、振り返るとわずか2年半前はSEALDsの夏だったわけですよ。国会前講義と言って全てのメディアがキャンペーンをやって毎週金曜日は「これで日本は変わるんだ」って感じでした。それがわずか2年でこの状況。どうしてこうなんだろう。運動をしていた人はどこに行って、あのとき騒いでいた人もこの内容を思い出しているのかわかりません。
■市民運動は「粘り強さ」が大切だ
なかには、粘り強く活動する市民団体もいます。東さんは今年、熊本県・水俣市に初めて足を運んだそうです。
東:水俣には「相思社」という、水俣病を繰り返さない世の中を目指す市民運動があります。相思社は行政とは別で団体を作り、今でも水俣病で苦しんでいる人たちに対して医療支援や生活支援をしているんです。加えて、自分たちが水俣病のさまざまな資料を持っていて、その資料の博物館を充実させたいと、今年クラウドファンディングを行いました。そういう人たちを見ると、「これが本当の運動だし、これが本当の市民だな」と思いました。これは、イデオロギーに関係なく、多くの人が敬意を持つことだと思います。そういうことをやっている人たちは、日本には実はたくさんいるんです。
一方で、いつの間にか左翼運動、市民運動、政治運動がSNS的なお祭りの中に巻き込まれてしまっている状況にもあり、「もともと日本が持っていた粘り強い抵抗運動や公共権の芽生えを自ら壊している気がする」と東さんは話しました。
東:みんなが「ポピュリズムだ」とよく言うし、ポピュリズムは権力側だと思っているけど、実際には左翼の方がポピュリズム化しています。かつて「政権に対抗するんだ」とカッコいいサイトを作ってカッコいいチラシをまいて、カッコいい動画を作って拡散して。立憲民主党が「ツイッターのアカウントが一気に何十万フォロワーになりました」って騒いでいたけど「だから何?」って話ですよね。本当の政党は持続力であり、リベラルはもっと地味だけど持続する覚悟を持たなきゃいけないわけですよ。
東さんのコメントに同意見だとしながらも、「日本は水俣病やいろいろな差別の反対も含め、長い歴史を持った厚みのある社会運動があるのに、それらが全くインターネットに対応できていないことに問題がある気がする」と津田は投げかけます。
東:それらの運動が「インターネットに対応できていない」という言い方もできるけど、インターネットに対応した新しい運動が短期間に大きく伸びてしまい、政治家も運動家もそちらに巻き込まれすぎたんじゃないかな。
津田:ちょっと麻薬みたいなものですからね。
東:「ツイッターで何十万人も見てるの?」「すごい!」とか。
津田:「クラウドファンディングで何百万も集まっちゃった!」みたいなね。
この内容に関連して津田は、トルコのエルドアン大統領に対する反体制デモがあったときに、そこの現場で催涙ガスを浴びたプログラマーでもあり社会運動化でもあるゼイナップ・トゥフェックチーの著書『ツイッターと催涙ガス ネット時代の政治運動における強さと脆さ』(Pヴァイン)を紹介しました。
津田:ネットは動員力があり社会運動をすぐに盛り上げることはできるけど、そのぶん筋力はなくて持続しないしリーダーもいないから悪い方向に働く。結局、アメリカの公民権運動と最近のインターネットで盛り上がった社会運動を対比させて、「やっぱり公民権運動みたいに地道で強いものをやっていかないといけないんじゃないか」と語っている本です。
東:当然、そうだと思います。「反体制が」「貧困層が」「地方が」ということだけで、そのような運動を肯定してはいけないんですよ。最近、フランスで黄色いベスト運動が起こりましたよね。あれもリベラル知識人の人たちは無条件に応援してしまう部分があるけど、内実を見てみると「中心がない」「SNS」「地方発」など、大衆発かもしれないけど、非常に危ういものでもありますよね。
津田:黄色いベスト運動を実際になかでリサーチしている人に聞くと、彼らがいちばん多く指示しているのはマリーヌ・ル・ペンですよ。
東:そうですよね。やはり来年の欧州議会議員選挙が心配で「とにかくマクロン大統領を下ろせば何でもいいんだ」とみんなが結集する。結局、それをさらって行くのは誰だってことですよね。その部分を見ないといけないんだけど、まだまだ左翼側の「大衆が自発的に運動をする=善」という図式から出ていないんですよ。その結果、自分たちが育ててきた長い持続力を持つ運動の芽も摘んでいるように思います。
■ゴーン前会長を逮捕に思うこと
続いて取り上げたニュースは「日産自動車のカルロス・ゴーン前会長を逮捕」。
東:報道を見ていて思うのは、これはもしかしたら例のごとく日本の検察が先走って国際問題に発展し、あとあと足元をすくわれるのかなと思うくらい大変心配な案件なので、今年から来年にかけて注意して見ていきたいですね。
津田:報道もこの件をきちんと追いかけるべきだし、同時に、日本の司法制度の問題の可視化も含めた司法制度改革につなげられるといいですよね。でも、いまの政権はそこまでやらないだろうな……。
東:日本は、国を代表する場所に外国人が入ってくると、いろいろと難癖つけて追い出すことがありますよね。建築家のザハ・ハディドや、サッカー前日本代表監督のヴァヒド・ハリルホジッチとか。今回のニュースもそう見えますよね。
■インターネットの限界が見えてきた
最後に取り上げたニュースは「コインチェックで580億円相当の仮想通貨が流出」。
東:これを取り上げた理由は、津田さんのすすめで僕は仮想通貨のイーサリアムを20万円分ほどつぎ込んだんですけど、いま1万5千円まで価値が下がったからです。
津田:こないだ2万って言ってましたけど、下がったんですね。これは塩漬けですよ、まだワンチャンスあります(笑)。
東:ないでしょ(笑)。今年はインターネットが世の中を変える時代がひとつ終わった年だと思います。平成はちょうど技術革命が社会に普及する時期と重なっているんですよね。「インターネットが社会を変える」「そして日本も変わるんだ」という期待がずっとあり続けてきました。
「ある意味このコインチェック騒動はそれを象徴するような話」と東さん。
東:しかし、ここ数年でトランプ大統領の失言やフェイクニュースの問題など、いろんなかたちでインターネットの限界が見えてきました。この仮想通貨バブルって、その終焉を象徴する事件だったなと思います。ブロックチェーンは非常に素晴らしい技術なのに、単なるバブルのネタにしかならなかった。つまり素晴らしい技術を持っていても、人間はこれくらいしかできないんだなと示されてしまったことでもあると思います。
■2019年はどんな年になるか?
では果たして2019年はどのような年になるのでしょうか。
東:2019年は明るいといいですよね。おそらく、技術が社会を変え、技術が人間を変えるような話は今年で終わりだと思います。今年はシンギュラリティとか人工知能みたいな話がすごく流行った年でした。でも2019年はそういう話が一段落ついて、「我々はあまり変わらないよね」と足元を見る年に、世界的になっていくのではないかなと思っています。そこで「もう一度新しい技術を使ってどういうことができるだろ」ってことを地道に考えている人たちが本当に世の中を変える人たちになるんじゃないかと思います。
インターネットの限界が見えたと話す2019年。果たしてどんな社会が待っているのでしょうか。
お詫び:記事初出時、内容に誤りがありました。現在は訂正しております。ご迷惑をおかけした読者の皆様ならびに関係各位には深くお詫び申し上げます。(J-WAVE NEWS編集部)
【番組情報】 番組名:『JAM THE WORLD』 放送日時:月・火・水・木曜 19時-21時 オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/jamtheworld
■日本国民は忘れっぽくなっている
まず取り上げたのは「安倍政権下で公文書をめぐる不祥事が相次ぐ」というニュース。夏くらいから報道されないため、みんな忘れている、と東さんは心配します。
東:決裁文書が改ざんされるというのは、大変なことです。まさに民主主義の根幹が揺らぎ、内閣が倒れてもおかしくないくらいの問題でした。もっと大騒ぎになるかと思ったら、人々はあっさり忘れている。この国民の忘れやすさ……どうしようもないですよ! 結論から言うと、日本はダメだよ! こんな大きな事件を忘れちゃダメですよ。こういうことを言うと、「そこを導くのが知識人の役目だ」と言われたりするのですが、どこまで頼ってくるのよと。こんな忘れやすいやつをどう導くんですかって話です。
マスコミのせいだけではなく、国民にも問題があると東さんは指摘します。
東:公文書改ざん問題を忘れちゃダメです、本当は。「じゃあ、東はこの問題を覚えていたのか」と問われると……もちろん俺も忘れてましたよ。
津田:(笑)。
東:そういう国です! みんなも悪い、俺も悪いと思っています! 思い出していきましょう。
津田:今年くらいから、いろいろと問題が発覚しても、当事者に近い人が後付け的に「そんなもんよ」と、堂々と言うケースが顕著に見られるようになりましたよね。森友学園の話で言えば、元官僚の言論人が「僕らのときもやっていたよね」と対談で明かしたりする。
東:そうですね。日本は実はめちゃくちゃな国だったことが現れた年でした。今までは建前で隠していたけど、今年は表面で語られるようになって、国民もそれを受け入れている。そういう国になってきたということですよね。政治家が不祥事を起こしても辞めないし、発言を変えても何の問題もないので、「別にそんなことを気にしてもしょうがない」となっています。こうなると怒ること自体もむなしい。知識人の役割はなくなってますよね。
■権力側が「国民に配慮するフリ」をやめた一年だった
津田は、東京医科大学や順天堂大学など、入試における差別が明るみに出たことにも、先進国として非常に恥ずかしいことだと言及しました。
東:それもビックリしたし、昨年話題となった「#MeToo」運動もどうなるかと思ったら、別にどうにもなっていない。
津田:アメリカなどは、例えばオフィシャルなカンファレンスで男女比が3対1とかになると聴衆からブーイングが起こるそうです。一方、日本の女性閣僚は片山さつきさん1人しかいない。
東:安倍政権は完全に女性を起用するフリをすることもやめてしまったんです。
津田:女性を配慮するとか女性活躍とか、他にも「沖縄に寄り添う」とか言っているけど、何にも寄り添っていないですよね。
東:今年は権力側が国民を配慮するフリをやめてしまった年だったと思います。「配慮なんかしてません」「それで、何が悪いんですか?」となってしまいました。これは大変なことですよ。
なぜ、そうなってしまったのでしょうか。
東:私たちが忘れっぽいからじゃないですか。
津田:国民が怒り疲れているからじゃないですかね。
東:そうかもしれないけど、例えば最近、市民連合なる市民団体のサイトにアクセスしてみたんですよ。そうしたら2017年の選挙で止まってるんです。反体制でもこの状態です。あの総選挙のときだけ騒いで、終わると落ち着いてしまう。一事が万事、この調子ですよ。
津田:これはインターネットの影響があるでしょうね。
東:それもあるけど、国民性もあるだろうし。ただ、SNSの時代になって安直に動員できるようになった結果、人々は忘れやすくなっています。いま国民は「リベラルの復活はあり得ない」という無気力状態に陥っているけど、振り返るとわずか2年半前はSEALDsの夏だったわけですよ。国会前講義と言って全てのメディアがキャンペーンをやって毎週金曜日は「これで日本は変わるんだ」って感じでした。それがわずか2年でこの状況。どうしてこうなんだろう。運動をしていた人はどこに行って、あのとき騒いでいた人もこの内容を思い出しているのかわかりません。
■市民運動は「粘り強さ」が大切だ
なかには、粘り強く活動する市民団体もいます。東さんは今年、熊本県・水俣市に初めて足を運んだそうです。
東:水俣には「相思社」という、水俣病を繰り返さない世の中を目指す市民運動があります。相思社は行政とは別で団体を作り、今でも水俣病で苦しんでいる人たちに対して医療支援や生活支援をしているんです。加えて、自分たちが水俣病のさまざまな資料を持っていて、その資料の博物館を充実させたいと、今年クラウドファンディングを行いました。そういう人たちを見ると、「これが本当の運動だし、これが本当の市民だな」と思いました。これは、イデオロギーに関係なく、多くの人が敬意を持つことだと思います。そういうことをやっている人たちは、日本には実はたくさんいるんです。
一方で、いつの間にか左翼運動、市民運動、政治運動がSNS的なお祭りの中に巻き込まれてしまっている状況にもあり、「もともと日本が持っていた粘り強い抵抗運動や公共権の芽生えを自ら壊している気がする」と東さんは話しました。
東:みんなが「ポピュリズムだ」とよく言うし、ポピュリズムは権力側だと思っているけど、実際には左翼の方がポピュリズム化しています。かつて「政権に対抗するんだ」とカッコいいサイトを作ってカッコいいチラシをまいて、カッコいい動画を作って拡散して。立憲民主党が「ツイッターのアカウントが一気に何十万フォロワーになりました」って騒いでいたけど「だから何?」って話ですよね。本当の政党は持続力であり、リベラルはもっと地味だけど持続する覚悟を持たなきゃいけないわけですよ。
東さんのコメントに同意見だとしながらも、「日本は水俣病やいろいろな差別の反対も含め、長い歴史を持った厚みのある社会運動があるのに、それらが全くインターネットに対応できていないことに問題がある気がする」と津田は投げかけます。
東:それらの運動が「インターネットに対応できていない」という言い方もできるけど、インターネットに対応した新しい運動が短期間に大きく伸びてしまい、政治家も運動家もそちらに巻き込まれすぎたんじゃないかな。
津田:ちょっと麻薬みたいなものですからね。
東:「ツイッターで何十万人も見てるの?」「すごい!」とか。
津田:「クラウドファンディングで何百万も集まっちゃった!」みたいなね。
この内容に関連して津田は、トルコのエルドアン大統領に対する反体制デモがあったときに、そこの現場で催涙ガスを浴びたプログラマーでもあり社会運動化でもあるゼイナップ・トゥフェックチーの著書『ツイッターと催涙ガス ネット時代の政治運動における強さと脆さ』(Pヴァイン)を紹介しました。
津田:ネットは動員力があり社会運動をすぐに盛り上げることはできるけど、そのぶん筋力はなくて持続しないしリーダーもいないから悪い方向に働く。結局、アメリカの公民権運動と最近のインターネットで盛り上がった社会運動を対比させて、「やっぱり公民権運動みたいに地道で強いものをやっていかないといけないんじゃないか」と語っている本です。
東:当然、そうだと思います。「反体制が」「貧困層が」「地方が」ということだけで、そのような運動を肯定してはいけないんですよ。最近、フランスで黄色いベスト運動が起こりましたよね。あれもリベラル知識人の人たちは無条件に応援してしまう部分があるけど、内実を見てみると「中心がない」「SNS」「地方発」など、大衆発かもしれないけど、非常に危ういものでもありますよね。
津田:黄色いベスト運動を実際になかでリサーチしている人に聞くと、彼らがいちばん多く指示しているのはマリーヌ・ル・ペンですよ。
東:そうですよね。やはり来年の欧州議会議員選挙が心配で「とにかくマクロン大統領を下ろせば何でもいいんだ」とみんなが結集する。結局、それをさらって行くのは誰だってことですよね。その部分を見ないといけないんだけど、まだまだ左翼側の「大衆が自発的に運動をする=善」という図式から出ていないんですよ。その結果、自分たちが育ててきた長い持続力を持つ運動の芽も摘んでいるように思います。
■ゴーン前会長を逮捕に思うこと
続いて取り上げたニュースは「日産自動車のカルロス・ゴーン前会長を逮捕」。
東:報道を見ていて思うのは、これはもしかしたら例のごとく日本の検察が先走って国際問題に発展し、あとあと足元をすくわれるのかなと思うくらい大変心配な案件なので、今年から来年にかけて注意して見ていきたいですね。
津田:報道もこの件をきちんと追いかけるべきだし、同時に、日本の司法制度の問題の可視化も含めた司法制度改革につなげられるといいですよね。でも、いまの政権はそこまでやらないだろうな……。
東:日本は、国を代表する場所に外国人が入ってくると、いろいろと難癖つけて追い出すことがありますよね。建築家のザハ・ハディドや、サッカー前日本代表監督のヴァヒド・ハリルホジッチとか。今回のニュースもそう見えますよね。
■インターネットの限界が見えてきた
最後に取り上げたニュースは「コインチェックで580億円相当の仮想通貨が流出」。
東:これを取り上げた理由は、津田さんのすすめで僕は仮想通貨のイーサリアムを20万円分ほどつぎ込んだんですけど、いま1万5千円まで価値が下がったからです。
津田:こないだ2万って言ってましたけど、下がったんですね。これは塩漬けですよ、まだワンチャンスあります(笑)。
東:ないでしょ(笑)。今年はインターネットが世の中を変える時代がひとつ終わった年だと思います。平成はちょうど技術革命が社会に普及する時期と重なっているんですよね。「インターネットが社会を変える」「そして日本も変わるんだ」という期待がずっとあり続けてきました。
「ある意味このコインチェック騒動はそれを象徴するような話」と東さん。
東:しかし、ここ数年でトランプ大統領の失言やフェイクニュースの問題など、いろんなかたちでインターネットの限界が見えてきました。この仮想通貨バブルって、その終焉を象徴する事件だったなと思います。ブロックチェーンは非常に素晴らしい技術なのに、単なるバブルのネタにしかならなかった。つまり素晴らしい技術を持っていても、人間はこれくらいしかできないんだなと示されてしまったことでもあると思います。
■2019年はどんな年になるか?
では果たして2019年はどのような年になるのでしょうか。
東:2019年は明るいといいですよね。おそらく、技術が社会を変え、技術が人間を変えるような話は今年で終わりだと思います。今年はシンギュラリティとか人工知能みたいな話がすごく流行った年でした。でも2019年はそういう話が一段落ついて、「我々はあまり変わらないよね」と足元を見る年に、世界的になっていくのではないかなと思っています。そこで「もう一度新しい技術を使ってどういうことができるだろ」ってことを地道に考えている人たちが本当に世の中を変える人たちになるんじゃないかと思います。
インターネットの限界が見えたと話す2019年。果たしてどんな社会が待っているのでしょうか。
お詫び:記事初出時、内容に誤りがありました。現在は訂正しております。ご迷惑をおかけした読者の皆様ならびに関係各位には深くお詫び申し上げます。(J-WAVE NEWS編集部)
【番組情報】 番組名:『JAM THE WORLD』 放送日時:月・火・水・木曜 19時-21時 オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/jamtheworld