J-WAVEで放送中の番組『JAM THE WORLD』(ナビゲーター:グローバー)のワンコーナー「UP CLOSE」。9月3日(月)のオンエアでは、月曜日のニュース・スーパーバイザーを務める津田大介が登場。『首都水没』の著者で、公益財団法人リバーフロント研究所技術参与の土屋信行さんをスタジオに招き、東京を豪雨が襲った場合の状況と避難方法について伺いました。
■西日本豪雨は、東京で「1年間に降る雨の量」に近かった
記憶に新しい、7月の「西日本豪雨」。もし、東京が西日本豪雨クラスに見舞われた場合、被害はどこまで拡大する恐れがあるのでしょうか。
気象庁は1時間に80ミリ以上の降水量を「猛烈な雨」として「息苦しくなるような圧迫感」「恐怖を感じる」「車の運転は危険」と説明しています。7月の西日本豪雨では、高知県馬路村は雨量降雨計で約1400ミリの雨が観測されました。ちなみに1年間に東京で降る雨は、約1500ミリだと土屋さんは説明します。
土屋:西日本豪雨では、1時間に約120ミリの雨が降ったという記録が各地であり、それらはこのあいだの首都圏豪雨をはるかに超えています。
津田:降雨量の「ミリ」という単位は、具体的に何がどう「ミリ」なんですか?
土屋:雨を容器にためたときに、1時間の降雨量が10ミリだと容器に1センチたまり、100ミリだと10センチたまるということです。
津田:ということは、馬路村はトータルで1メートル以上たまったということですよね。それは尋常ではない雨量ですね。
■1日に800ミリの降雨があると、東京の街は耐えられない
昭和22年にカスリーン台風が来て大反乱を起こして以来、首都圏で西日本豪雨クラスの雨や大きな台風は直撃していません。しかし今後、東京が大雨による災害に見舞われるかもしれません。
2017年に国土交通省が、豪雨により荒川の堤防が決壊するシミュレーション動画を公開しました。西日本豪雨クラスの雨が東京を襲った場合、荒川は確実に決壊してしまうと土屋さんは解説します。
土屋:この国土交通省のシミュレーションは、3日間で550ミリくらいの雨を想定したものです。西日本豪雨では1日で800ミリの雨が高知県安芸市や土佐市などで降りました。他にも山梨県、静岡県、鹿児島県、熊本県なども600ミリ〜700ミリ降っています。
津田:それくらいの雨が東京で降ると荒川は決壊してしまいますよね。
土屋:1日で800ミリもの雨が降ると、東京の街は耐えられないのが現実ですね。
津田:その場合、荒川だけでなく他の川も危なくなりますよね。
土屋:危ないですね。いくつかの河川が同時に決壊する可能性はいくらでもあります。
■豪雨の際には地下から出て
豪雨が東京を襲った場合にどのような被害があるのでしょうか。
土屋:東京で便利に暮らすことができている要因のひとつに、通勤時間が短いということがあります。その最大の要素は地下鉄が発達していることで、そこに隣接した大きな地下街もあります。地下鉄は水道管のパイプを並べたようなもので、水は低い場所にしか行けない性質を持っているため、入ってきた水はどんどん低いところに行くわけですね。首都圏の地下鉄はつながっているので、満タンになるとどこかから水があふれてきます。荒川のシミュレーションでいくと、赤羽のあたりで決壊して水が地下鉄に入り、12時間後には丸の内や大手町にある地下鉄の入口から吹き出すと想定されています。
津田:そうなると地下鉄の運行はできないじゃないですか。
土屋:地下に水が入ってしまえば危険地帯になるので、運行はできません。
津田:それでは川が決壊するなど甚大な災害が起こった場合、東京にいる人はどのように避難すればよいですか?
土屋:その状態からの判断になると、いち早く地下鉄や地下街から出て、すぐそばにある大きなビルの少なくとも4階以上に避難してほしいです。
■まずは海抜ゼロメートル地帯か知ること
地下鉄の他にも、東京にある広大な「海抜ゼロメートル地帯」も危険だと話します。
土屋:海抜ゼロメートル地帯の中心部は、洪水が起こると水深10メートルに及ぶ場所もあります。ゼロメートルと言うと海面と一緒くらいと思われるかもしれませんが、実際は「海抜ゼロメートル以下の土地」という意味です。そういう場所に、約250万人が暮らしている状態です。
津田:大雨警報とか特別警戒警報があったら、海抜ゼロメートル地帯からは離れるか、その地域にある高いビルの上層階に避難することが必要になるわけですね。
避難するにも東日本大震災の時のように、都内では大渋滞など交通の問題が起こるのではないかと津田は懸念します。
土屋:江東五区(江東区、墨田区、江戸川区、葛飾区、足立区)の報告でも、時間をかけて避難しないとパニックのような交通渋滞が起こると言われています。東日本大震災の時は昼間でしたが、300万人が帰宅困難になりました。震災と一緒に水害が起こった場合は、居住する250万人と、働いている250万人が同時に避難する必要が出てきます。その場合は、少し高い建物にいる時は垂直避難と言って、より高い部屋に上がる。マンションであれば、事前に上層階の人と友達になっておいて、避難というと悲壮感が漂うので「雨が降ってきたから遊びに来たよ」という感じで、事前に避難するルールを作っておくことが必要ですね。
■「自分は大丈夫」と思わない
津田:この30年以内に首都圏直下型地震がかなりの確率で起きると言われ、そちらばかり注目されていますが、同時に水害の問題も意識を向けなくてはいけないですよね。
土屋:西日本豪雨の後のアンケートで、「自分は大丈夫だ」と思っていた人がたくさんいたと報告されています。それをみなさんも自分のことだと思って、知って恐れて備えてもらいたいですね。
自分の暮らす環境を見つめ直し、さまざまな災害に対応できる知識や準備を進めることが必要ではないでしょうか。
【番組情報】
番組名:『JAM THE WORLD』
放送日時:月・火・水・木曜 19時-21時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/jamtheworld
■西日本豪雨は、東京で「1年間に降る雨の量」に近かった
記憶に新しい、7月の「西日本豪雨」。もし、東京が西日本豪雨クラスに見舞われた場合、被害はどこまで拡大する恐れがあるのでしょうか。
気象庁は1時間に80ミリ以上の降水量を「猛烈な雨」として「息苦しくなるような圧迫感」「恐怖を感じる」「車の運転は危険」と説明しています。7月の西日本豪雨では、高知県馬路村は雨量降雨計で約1400ミリの雨が観測されました。ちなみに1年間に東京で降る雨は、約1500ミリだと土屋さんは説明します。
土屋:西日本豪雨では、1時間に約120ミリの雨が降ったという記録が各地であり、それらはこのあいだの首都圏豪雨をはるかに超えています。
津田:降雨量の「ミリ」という単位は、具体的に何がどう「ミリ」なんですか?
土屋:雨を容器にためたときに、1時間の降雨量が10ミリだと容器に1センチたまり、100ミリだと10センチたまるということです。
津田:ということは、馬路村はトータルで1メートル以上たまったということですよね。それは尋常ではない雨量ですね。
■1日に800ミリの降雨があると、東京の街は耐えられない
昭和22年にカスリーン台風が来て大反乱を起こして以来、首都圏で西日本豪雨クラスの雨や大きな台風は直撃していません。しかし今後、東京が大雨による災害に見舞われるかもしれません。
2017年に国土交通省が、豪雨により荒川の堤防が決壊するシミュレーション動画を公開しました。西日本豪雨クラスの雨が東京を襲った場合、荒川は確実に決壊してしまうと土屋さんは解説します。
土屋:この国土交通省のシミュレーションは、3日間で550ミリくらいの雨を想定したものです。西日本豪雨では1日で800ミリの雨が高知県安芸市や土佐市などで降りました。他にも山梨県、静岡県、鹿児島県、熊本県なども600ミリ〜700ミリ降っています。
津田:それくらいの雨が東京で降ると荒川は決壊してしまいますよね。
土屋:1日で800ミリもの雨が降ると、東京の街は耐えられないのが現実ですね。
津田:その場合、荒川だけでなく他の川も危なくなりますよね。
土屋:危ないですね。いくつかの河川が同時に決壊する可能性はいくらでもあります。
■豪雨の際には地下から出て
豪雨が東京を襲った場合にどのような被害があるのでしょうか。
土屋:東京で便利に暮らすことができている要因のひとつに、通勤時間が短いということがあります。その最大の要素は地下鉄が発達していることで、そこに隣接した大きな地下街もあります。地下鉄は水道管のパイプを並べたようなもので、水は低い場所にしか行けない性質を持っているため、入ってきた水はどんどん低いところに行くわけですね。首都圏の地下鉄はつながっているので、満タンになるとどこかから水があふれてきます。荒川のシミュレーションでいくと、赤羽のあたりで決壊して水が地下鉄に入り、12時間後には丸の内や大手町にある地下鉄の入口から吹き出すと想定されています。
津田:そうなると地下鉄の運行はできないじゃないですか。
土屋:地下に水が入ってしまえば危険地帯になるので、運行はできません。
津田:それでは川が決壊するなど甚大な災害が起こった場合、東京にいる人はどのように避難すればよいですか?
土屋:その状態からの判断になると、いち早く地下鉄や地下街から出て、すぐそばにある大きなビルの少なくとも4階以上に避難してほしいです。
■まずは海抜ゼロメートル地帯か知ること
地下鉄の他にも、東京にある広大な「海抜ゼロメートル地帯」も危険だと話します。
土屋:海抜ゼロメートル地帯の中心部は、洪水が起こると水深10メートルに及ぶ場所もあります。ゼロメートルと言うと海面と一緒くらいと思われるかもしれませんが、実際は「海抜ゼロメートル以下の土地」という意味です。そういう場所に、約250万人が暮らしている状態です。
津田:大雨警報とか特別警戒警報があったら、海抜ゼロメートル地帯からは離れるか、その地域にある高いビルの上層階に避難することが必要になるわけですね。
避難するにも東日本大震災の時のように、都内では大渋滞など交通の問題が起こるのではないかと津田は懸念します。
土屋:江東五区(江東区、墨田区、江戸川区、葛飾区、足立区)の報告でも、時間をかけて避難しないとパニックのような交通渋滞が起こると言われています。東日本大震災の時は昼間でしたが、300万人が帰宅困難になりました。震災と一緒に水害が起こった場合は、居住する250万人と、働いている250万人が同時に避難する必要が出てきます。その場合は、少し高い建物にいる時は垂直避難と言って、より高い部屋に上がる。マンションであれば、事前に上層階の人と友達になっておいて、避難というと悲壮感が漂うので「雨が降ってきたから遊びに来たよ」という感じで、事前に避難するルールを作っておくことが必要ですね。
■「自分は大丈夫」と思わない
津田:この30年以内に首都圏直下型地震がかなりの確率で起きると言われ、そちらばかり注目されていますが、同時に水害の問題も意識を向けなくてはいけないですよね。
土屋:西日本豪雨の後のアンケートで、「自分は大丈夫だ」と思っていた人がたくさんいたと報告されています。それをみなさんも自分のことだと思って、知って恐れて備えてもらいたいですね。
自分の暮らす環境を見つめ直し、さまざまな災害に対応できる知識や準備を進めることが必要ではないでしょうか。
【番組情報】
番組名:『JAM THE WORLD』
放送日時:月・火・水・木曜 19時-21時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/jamtheworld