J-WAVEで放送中の番組『JAM THE WORLD』(ナビゲーター:グローバー)のワンコーナー「UP CLOSE」。8月20日(月)のオンエアでは、月曜日のニュース・スーパーバイザーを務める津田大介が登場。ウナギの研究者で北里大学海洋生命科学部准教授の吉永龍起さんをお迎えし、格安でウナギが売られている理由などを伺いました。
■天然ウナギと養殖ウナギの違い
絶滅の恐れが指摘され、価格の高騰が伝えられるウナギですが、町の飲食店やスーパーに行くと1000円以下で売られる格安のウナギがあふれています。一体なぜ、このような現象が起きているのでしょうか。
まずはウナギの生態について吉永さんに教えていただきました。
吉永:ウナギは川や沼にいるので淡水魚だと思われがちですが、実は海の魚です。日本のウナギの場合はグアム島の近くで産まれ、それがフィリピンの方まで流されて、黒潮に乗り半年かけて日本の沿岸にやってきます。また、養殖ウナギは計画的に生産されているような印象がありますが、全て海で産まれた稚魚を捕って大きくしたものが養殖ウナギです。
養殖ウナギに関して、試験レベルでは稚魚から育てることはうまくいっているそうです。しかし、その事業化はできていません。
津田:この先、ウナギの完全養殖はできると考えますか。
吉永:実際にその研究をされている方は「着実に進歩はしているが、いつ完成するかの約束はできない」と言っています。どこかで1つ2つブレイクスルーがあれば完全養殖が実現すると思います。
津田:完全養殖が確立する前に、ウナギが絶滅してしまう恐れはありますか?
吉永:ウナギは海の魚なので、地球上からいなくなる絶滅はおそらく起こらないと考えています。ただ、日本人は毎年ウナギを1億から2億匹ほど食べているので、それだけの数を確保できなくなると、食べ物として絶滅する可能性はあります。
■ウナギの蒲焼きのDNA検査をする理由
吉永さんは、市販されているウナギの蒲焼きのDNA検査を行い、その結果を公表しています。
吉永:ウナギは世界で19種類あり、日本の食卓に上るのは、温帯の種類のニホンウナギ、ヨーロッパウナギ、アメリカウナギと、インドネシアのウナギの4種類です。温帯の3種類は見た目では区別がつきません。日本で養殖したウナギはほぼニホンウナギですが、中国では3種類の養殖をしているため、日本のマーケットに並ぶとJAS法では「中国産」としか書かれず、どの種類のウナギかは分かりません。それを知るためにはDNA検査が必要になるので、2011年から始めました。
DNA検査を始めた結果、中国産として売られているウナギの蒲焼きの中に、ヨーロッパウナギがありました。
吉永:ヨーロッパウナギは中国が1990年代から養殖をしていました。その前には日本でも養殖を試みたこともあります。しかし、日本は養殖に失敗し、中国では成功したため、その後中国ではフランスやスペインで捕ったシラスウナギを国内で養殖し、それを日本に輸出することが増えていきました。(日本国内の)消費のピークは2000年ごろにあり、その時の多くはヨーロッパウナギが占めていました。
津田:昔に比べて、1990年代くらいからでしょうか、ウナギが安く食べられるようになった印象があります。それは、中国の養殖と関係するわけですか?
吉永:そうですね。中国がヨーロッパウナギを大量に養殖してそれが日本にどんどん入り、日本国内のウナギもそのあおりを受けて値段が下がったのが2000年ごろです。
津田:ウナギを食べ尽くすようになった結果が、今の世界的なウナギの減少に影響を与えているのでしょうか。
吉永:ウナギをたくさん捕って食べたことはもちろんですが、それ以外にも川にダムができてウナギが成長する場所に行けなくなったことや、地球温暖化を含めた環境変動などが相まってウナギの減少を進めています。しかし、どの問題がいちばん減少を進めているかは分からない状況です。
■ウナギの減少対策は難しい
ウナギは天然資源であるため、減少を防ぐために「どれだけ捕っていいのか」という基準を設ける事が大切だと吉永さんは話します。しかし、それには大きな問題点があるとも指摘しました。
吉永:そもそも地球上にウナギがどれだけ生息しているかすら分からず、さらに海で産まれたものが半年や1年をかけてどれくらいの数が沿岸に帰ってくるかを予測することも難しい。養殖する場合も、どれくらいの稚魚を捕っていいという基準を決められないという現状です。
津田:減少への対策はされているんでしょうか?
吉永:ウナギがどれくらい減ったかすら分からないので、何か保全の対策をしたとしても、その効果があったかどうかも分かりません。そのため、基本的なところから改めて始めているというのが現状です。
検証することが非常に困難なこの問題について、今後も取り上げていきたいと吉永さんは話します。
吉永:ウナギは天然の資源で、すごく(管理が)難しいわけですね。ただ、ウナギを賢く消費できるような手段を見つけることができれば、ウナギだけでなく他の天然資源に関しても賢い消費の仕方が学べるだろうと考えています。ウナギをモデルにしてチャレンジしていくことは、天然資源に依存した従属栄養生物である人間にとっては重要ことだと思います。
私たちが普段何気なく食べているウナギ。これからも持続的に食べていくためには、考えるべきことがたくさんあるようです。
【この記事の放送回をradikoで聴く】
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【番組情報】
番組名:『JAM THE WORLD』
放送日時:月・火・水・木曜 19時-21時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/jamtheworld
■天然ウナギと養殖ウナギの違い
絶滅の恐れが指摘され、価格の高騰が伝えられるウナギですが、町の飲食店やスーパーに行くと1000円以下で売られる格安のウナギがあふれています。一体なぜ、このような現象が起きているのでしょうか。
まずはウナギの生態について吉永さんに教えていただきました。
吉永:ウナギは川や沼にいるので淡水魚だと思われがちですが、実は海の魚です。日本のウナギの場合はグアム島の近くで産まれ、それがフィリピンの方まで流されて、黒潮に乗り半年かけて日本の沿岸にやってきます。また、養殖ウナギは計画的に生産されているような印象がありますが、全て海で産まれた稚魚を捕って大きくしたものが養殖ウナギです。
養殖ウナギに関して、試験レベルでは稚魚から育てることはうまくいっているそうです。しかし、その事業化はできていません。
津田:この先、ウナギの完全養殖はできると考えますか。
吉永:実際にその研究をされている方は「着実に進歩はしているが、いつ完成するかの約束はできない」と言っています。どこかで1つ2つブレイクスルーがあれば完全養殖が実現すると思います。
津田:完全養殖が確立する前に、ウナギが絶滅してしまう恐れはありますか?
吉永:ウナギは海の魚なので、地球上からいなくなる絶滅はおそらく起こらないと考えています。ただ、日本人は毎年ウナギを1億から2億匹ほど食べているので、それだけの数を確保できなくなると、食べ物として絶滅する可能性はあります。
■ウナギの蒲焼きのDNA検査をする理由
吉永さんは、市販されているウナギの蒲焼きのDNA検査を行い、その結果を公表しています。
吉永:ウナギは世界で19種類あり、日本の食卓に上るのは、温帯の種類のニホンウナギ、ヨーロッパウナギ、アメリカウナギと、インドネシアのウナギの4種類です。温帯の3種類は見た目では区別がつきません。日本で養殖したウナギはほぼニホンウナギですが、中国では3種類の養殖をしているため、日本のマーケットに並ぶとJAS法では「中国産」としか書かれず、どの種類のウナギかは分かりません。それを知るためにはDNA検査が必要になるので、2011年から始めました。
DNA検査を始めた結果、中国産として売られているウナギの蒲焼きの中に、ヨーロッパウナギがありました。
吉永:ヨーロッパウナギは中国が1990年代から養殖をしていました。その前には日本でも養殖を試みたこともあります。しかし、日本は養殖に失敗し、中国では成功したため、その後中国ではフランスやスペインで捕ったシラスウナギを国内で養殖し、それを日本に輸出することが増えていきました。(日本国内の)消費のピークは2000年ごろにあり、その時の多くはヨーロッパウナギが占めていました。
津田:昔に比べて、1990年代くらいからでしょうか、ウナギが安く食べられるようになった印象があります。それは、中国の養殖と関係するわけですか?
吉永:そうですね。中国がヨーロッパウナギを大量に養殖してそれが日本にどんどん入り、日本国内のウナギもそのあおりを受けて値段が下がったのが2000年ごろです。
津田:ウナギを食べ尽くすようになった結果が、今の世界的なウナギの減少に影響を与えているのでしょうか。
吉永:ウナギをたくさん捕って食べたことはもちろんですが、それ以外にも川にダムができてウナギが成長する場所に行けなくなったことや、地球温暖化を含めた環境変動などが相まってウナギの減少を進めています。しかし、どの問題がいちばん減少を進めているかは分からない状況です。
■ウナギの減少対策は難しい
ウナギは天然資源であるため、減少を防ぐために「どれだけ捕っていいのか」という基準を設ける事が大切だと吉永さんは話します。しかし、それには大きな問題点があるとも指摘しました。
吉永:そもそも地球上にウナギがどれだけ生息しているかすら分からず、さらに海で産まれたものが半年や1年をかけてどれくらいの数が沿岸に帰ってくるかを予測することも難しい。養殖する場合も、どれくらいの稚魚を捕っていいという基準を決められないという現状です。
津田:減少への対策はされているんでしょうか?
吉永:ウナギがどれくらい減ったかすら分からないので、何か保全の対策をしたとしても、その効果があったかどうかも分かりません。そのため、基本的なところから改めて始めているというのが現状です。
検証することが非常に困難なこの問題について、今後も取り上げていきたいと吉永さんは話します。
吉永:ウナギは天然の資源で、すごく(管理が)難しいわけですね。ただ、ウナギを賢く消費できるような手段を見つけることができれば、ウナギだけでなく他の天然資源に関しても賢い消費の仕方が学べるだろうと考えています。ウナギをモデルにしてチャレンジしていくことは、天然資源に依存した従属栄養生物である人間にとっては重要ことだと思います。
私たちが普段何気なく食べているウナギ。これからも持続的に食べていくためには、考えるべきことがたくさんあるようです。
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【番組情報】
番組名:『JAM THE WORLD』
放送日時:月・火・水・木曜 19時-21時
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