J-WAVEで放送中の番組『JAM THE WORLD』(ナビゲーター:グローバー)のワンコーナー「UP CLOSE」。7月11日(水)のオンエアでは、水曜日のニュース・スーパーバイザーを務めるフォトジャーナリスト・安田菜津紀が登場しました。
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■保育園の「落選狙い」は育児休業の制度と関係している
保育所に入所の申し込みをしてもなかなか入れない待機児童。厚生労働省によると去年の10月の時点で、およそ5万5千人ものぼります。保育所に入るために偽装離婚する人もいるようです。しかし今、あえて倍率の高い保育所に申し込んで落とされる、「保育所の落選狙い」も増えているとの指摘があります。
なぜこのようなことが起きているのか? この日は東京都市大学の客員教授で、保育や子育ての問題に詳しいジャーナリスト、猪熊弘子さんに伺いました。
猪熊:これは育児休業の制度ともすごくリンクしています。去年の10月から、育児休業の給付金がもらえる期間が2年まで伸びることになったんですね。給付金をもらう手続きには、「保育園に入れませんでした」という不承諾通知が必要です。そこがリンクしているので、育児休業を延ばすためにわざと保育園に落ちようとする人が出てくるのです。
内定の辞退を選択する人がいると、どんな問題があるのでしょうか。
猪瀬:たくさんの人が申し込んでますので、ひとり辞退する人が出ると次の人がどんどん繰り上がっていきます。自治体は、その事務手続きというのが大変だと言っています。単純に繰り上げる手続きだけであれば、さほど難しいことではありませんが、自治体は待機児童が多い地域は公正を期すために何度も長い会議を行っています。それが簡単に辞退されてしまうと、一生懸命に会議をした苦労がムダになってしまう場合もあるのです。
さらに、わざと落ちようとした人が偶然入れてしまい、本当に入りたかった人が入れないという問題もあります。
猪瀬:本来的にはその人の働きかたの自由もありますので、育児休業の年限と保育所に入れなかったから延ばすっていうことの、それがリンクしているというのがちょっと問題があるんじゃないかなと思います。
世田谷区では、育児休業を延ばす場合は、保育所の不承諾があるなしに関わらず、その人の希望で延ばすことが可能になるよう、内閣府に訴えています。しかし、本当に入りたい人なのか、または落選狙いの人なのかは、事前にわかりません。やはり制度上の仕組みに大きな問題があるようです。
猪瀬:保育所に入れなかったから、「育児休業を伸ばしますよ。その期間はお金の給付が出ますよ」ということなので、そこがリンクしないほうが実際はいいんじゃないかなと私は思っています。
この問題の広がりを受けて、今月の2日に内閣府は「落選狙い」の対策を検討するように厚生労働省に要請しました。では今後、この問題にはどんな対策が考えられるのでしょうか?
例えば、子どもがいてフリーランスで働いているような、これまで育休を取ったことがない人からすると、「育児休業をとって、子どもの近くにいて、しかも給付金をもらえるなんてずるい」と思う人もいるので、公平にするのは非常に難しいと猪瀬さんは話します。
猪瀬:ただ、みなさんに思い出していただきたいんですけど、「3年間、抱っこし放題」って安倍首相が言ったのが、2013年の4月だったんですね。それから5年。あの「3年間、抱っこし放題」という言葉のインパクトがすごく大きくて「みんなそうなっている」と思っている人も多いのでは。実現していないことを知ってもらいたいです。
理由はあれど休めば休むぶん、キャリアとしては後退していきますし、給付金があっても給料ほどではないため、共働きでなければ生活が厳しい人もいます。自分の生活状況を考えた結果が「落選狙い」という人もいるかもしれません。まだまだ議論する必要がある、根深い問題です。
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【番組情報】
番組名:『JAM THE WORLD』
放送日時:月・火・水・木曜 19時-21時
オフィシャルサイト:http://www.j-wave.co.jp/original/jamtheworld
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■保育園の「落選狙い」は育児休業の制度と関係している
保育所に入所の申し込みをしてもなかなか入れない待機児童。厚生労働省によると去年の10月の時点で、およそ5万5千人ものぼります。保育所に入るために偽装離婚する人もいるようです。しかし今、あえて倍率の高い保育所に申し込んで落とされる、「保育所の落選狙い」も増えているとの指摘があります。
なぜこのようなことが起きているのか? この日は東京都市大学の客員教授で、保育や子育ての問題に詳しいジャーナリスト、猪熊弘子さんに伺いました。
猪熊:これは育児休業の制度ともすごくリンクしています。去年の10月から、育児休業の給付金がもらえる期間が2年まで伸びることになったんですね。給付金をもらう手続きには、「保育園に入れませんでした」という不承諾通知が必要です。そこがリンクしているので、育児休業を延ばすためにわざと保育園に落ちようとする人が出てくるのです。
内定の辞退を選択する人がいると、どんな問題があるのでしょうか。
猪瀬:たくさんの人が申し込んでますので、ひとり辞退する人が出ると次の人がどんどん繰り上がっていきます。自治体は、その事務手続きというのが大変だと言っています。単純に繰り上げる手続きだけであれば、さほど難しいことではありませんが、自治体は待機児童が多い地域は公正を期すために何度も長い会議を行っています。それが簡単に辞退されてしまうと、一生懸命に会議をした苦労がムダになってしまう場合もあるのです。
さらに、わざと落ちようとした人が偶然入れてしまい、本当に入りたかった人が入れないという問題もあります。
猪瀬:本来的にはその人の働きかたの自由もありますので、育児休業の年限と保育所に入れなかったから延ばすっていうことの、それがリンクしているというのがちょっと問題があるんじゃないかなと思います。
世田谷区では、育児休業を延ばす場合は、保育所の不承諾があるなしに関わらず、その人の希望で延ばすことが可能になるよう、内閣府に訴えています。しかし、本当に入りたい人なのか、または落選狙いの人なのかは、事前にわかりません。やはり制度上の仕組みに大きな問題があるようです。
猪瀬:保育所に入れなかったから、「育児休業を伸ばしますよ。その期間はお金の給付が出ますよ」ということなので、そこがリンクしないほうが実際はいいんじゃないかなと私は思っています。
この問題の広がりを受けて、今月の2日に内閣府は「落選狙い」の対策を検討するように厚生労働省に要請しました。では今後、この問題にはどんな対策が考えられるのでしょうか?
例えば、子どもがいてフリーランスで働いているような、これまで育休を取ったことがない人からすると、「育児休業をとって、子どもの近くにいて、しかも給付金をもらえるなんてずるい」と思う人もいるので、公平にするのは非常に難しいと猪瀬さんは話します。
猪瀬:ただ、みなさんに思い出していただきたいんですけど、「3年間、抱っこし放題」って安倍首相が言ったのが、2013年の4月だったんですね。それから5年。あの「3年間、抱っこし放題」という言葉のインパクトがすごく大きくて「みんなそうなっている」と思っている人も多いのでは。実現していないことを知ってもらいたいです。
理由はあれど休めば休むぶん、キャリアとしては後退していきますし、給付金があっても給料ほどではないため、共働きでなければ生活が厳しい人もいます。自分の生活状況を考えた結果が「落選狙い」という人もいるかもしれません。まだまだ議論する必要がある、根深い問題です。
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【番組情報】
番組名:『JAM THE WORLD』
放送日時:月・火・水・木曜 19時-21時
オフィシャルサイト:http://www.j-wave.co.jp/original/jamtheworld