J-WAVEで放送中の番組『JAM THE WORLD』(ナビゲーター:グローバー)のワンコーナー「UP CLOSE」。6月7日(木)のオンエアでは、木曜日のニュース・スーパーバイザー、堀 潤が登場。高校時代のセクハラ被害を告発した「劇団トレメンドスサーカス」を主宰する知乃さんと、知乃さんの代理人弁護士、馬奈木厳太郎さんをお迎えして「セクハラ被害を訴える難しさ」をテーマにお話を伺いました。
■「#MeToo」や「Time's Up」とは
2017年10月、ハリウッドの大物プロデューサーによるセクハラ行為を告発する記事を『ニューヨーク・タイムズ』が掲載。これをきっかけに、セクハラや性的暴行の被害を訴える「#MeToo」運動や、被害の撲滅を訴える「Time's Up」が世界的なムーブメントとなり、いまなお続いています。
堀:「#MeToo」は、知乃さんにとってどのような存在ですか?
知乃:「#MeToo」のハッシュタグを初めて見たときに、「つぶやかなきゃいけないんですか?」みたいな意見をすごく目にしたんですけど、私は「私も被害にあった!」とみんなで相談し合えるハッシュタグだと思っていました。いまは「#MeToo」で誰かが被害を告発する投稿が多いと思うんですけど、「私も被害にあったよ」と人と繋がれたらいいなと思ってつぶやいたのが、最初でした。
堀:“共有する”ことが目的だった、ということですね。
■高校生のときにカラオケで…
知乃さんは、高校時代に受けたセクハラ被害について語りました。
知乃:約3年前、現役の女子高校生だった私は、役者をしながら少しモデル業もしていました。そのときにツイッターで、加害者となる演出家が、「モデルを募集している」という要項をつぶやいていたので応募しました。それで、モデルとプロデュースの立場として、私は演出家の彼と初めて会いました。撮影はカメラマンを含め、基本的に3人。でも、撮影後の打ち上げがふたりきりになってしまって。打ち上げでご飯を食べたあと、演出家から「歌もみてあげられるよ」って言われてカラオケに行ったんですよ。そのカラオケで彼がすごく近くて、足とか触られました。
さらに、その演出家は知乃さんが好きな劇団の話題に触れ、「僕はその劇団の仕事も紹介してあげるよ」と話し、近づいてきたと知乃さんは言います。
知乃:それで私の足を触りながら「ひとりでするのを見ててくれたら、その劇団の仕事を紹介してあげる」って言われました。ここで私が叫んでもカラオケだから何も起こらないなと思って、その場は穏便にやり過ごしたというか、その行為に及んだことはないんですけど、叫ぶでもなく殴るでもなく、なんとかその場をしのいで帰ってきました。
■自分が悪いと思い込んでしまう
演出家から被害を受けた知乃さんは当時、母や所属していた劇団のメンバーたちから「ふたりきりでご飯に行くときは、何かあるかもしれないから気をつけるように」と言われていたそうです。しかし、その助言を守らず危険な目にあってしまったことから「自分が悪かったんだ」と、しばらくは誰にもこの被害を話せなかったと言います。ようやく被害にあってから1年後に当時の劇団の代表に被害内容を相談し、その2年後の今年に加害者の演出家を告発したと明かしました。
知乃さんから被害の相談を受けた馬奈木さんは、相談後の経緯を以下のように話します。
馬奈木:(知乃さんが被害の声をあげたことは)かなり反響を呼びました。加害者の実名をあげたことにより、加害者の仕事がなくなったというプロセスがありました。私は加害者側も今後の人生があると考えました。同時に、ありがちなのは、声をあげた人がかえって不利益を被ったり、声をあげたけれどそれっきりになってしまっている場合が多く、それじゃダメだと。声をあげた人が不利益にならず「大丈夫なんだ」ということを知ってもらいたい。そのためにも、交渉をして示談という形でまとめて、その経過をお互いの名前で報告することを約束事として取り付けました。そうすることがお互いのメリットになるはずだと思い、そこを交渉の際には約束事のひとつに入れて発表しました。
■「#MeToo」は今後どうするべきか
「#MeToo」運動に対して、「日本は欧米のように広がっていないのでは」と指摘されることがあります。
堀:今後、どのような取り組みが必要なってくるのでしょうか?
知乃:「#MeToo」運動が一過性のものとして見られがちですが、あまり無関心にならないでほしいです。自分のまわりで見えていないだけで、必ずあることだと思います。セクシャリティに関することなので、閉鎖的に自分のなかに閉じ込めてしまいがちな話だと思うので、基本的には表に見えづらい問題であるということを、全員が認識する必要があるかなと思います。表に見えづらい問題だから無視していいわけではなくて、見えづらいけど必ずどこにでもある問題で、自分が常にアンテナを張り続けることによって「#MeToo」運動がもっと拡散したり、いろいろな動きが出ると思います。
馬奈木:声をあげた人たちが孤立せず、「まわりに支えてくれる人がいるんだよ」ということを、今回の知乃さんのケースを目にして、知っていただきたいと思います。
最後に知乃さんは「セクハラやパワハラは、まわりになかなか言いづらいことだと思いますが、自分が悪いと押さえ込まずに、私のツイッターのダイレクトメールでもいいので、ぜひ相談してください」とリスナーに声をかけました。
セクハラなどの被害を誰にも言えない人は、知乃さんに相談してみてはいかがでしょうか。自分だけで抱えていた問題が、解決に向かう糸口になるかもしれません。
さて、次回6月14日(木)の『JAM THE WORLD』は、病児保育をはじめ、子どもの健やかな育成環境を実現するために多方面で活動されている、認定NPO法人フローレンス代表理事・駒崎弘樹さんをお迎えし、「子どもの虐待 通報マニュアル」について伺います。どうぞお聴き逃しなく。
【この記事の放送回をradikoで聴く】
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【番組情報】
番組名:『JAM THE WORLD』
放送日時:月・火・水・木曜 19時-21時
オフィシャルサイト:http://www.j-wave.co.jp/original/jamtheworld/
■「#MeToo」や「Time's Up」とは
2017年10月、ハリウッドの大物プロデューサーによるセクハラ行為を告発する記事を『ニューヨーク・タイムズ』が掲載。これをきっかけに、セクハラや性的暴行の被害を訴える「#MeToo」運動や、被害の撲滅を訴える「Time's Up」が世界的なムーブメントとなり、いまなお続いています。
堀:「#MeToo」は、知乃さんにとってどのような存在ですか?
知乃:「#MeToo」のハッシュタグを初めて見たときに、「つぶやかなきゃいけないんですか?」みたいな意見をすごく目にしたんですけど、私は「私も被害にあった!」とみんなで相談し合えるハッシュタグだと思っていました。いまは「#MeToo」で誰かが被害を告発する投稿が多いと思うんですけど、「私も被害にあったよ」と人と繋がれたらいいなと思ってつぶやいたのが、最初でした。
堀:“共有する”ことが目的だった、ということですね。
■高校生のときにカラオケで…
知乃さんは、高校時代に受けたセクハラ被害について語りました。
知乃:約3年前、現役の女子高校生だった私は、役者をしながら少しモデル業もしていました。そのときにツイッターで、加害者となる演出家が、「モデルを募集している」という要項をつぶやいていたので応募しました。それで、モデルとプロデュースの立場として、私は演出家の彼と初めて会いました。撮影はカメラマンを含め、基本的に3人。でも、撮影後の打ち上げがふたりきりになってしまって。打ち上げでご飯を食べたあと、演出家から「歌もみてあげられるよ」って言われてカラオケに行ったんですよ。そのカラオケで彼がすごく近くて、足とか触られました。
さらに、その演出家は知乃さんが好きな劇団の話題に触れ、「僕はその劇団の仕事も紹介してあげるよ」と話し、近づいてきたと知乃さんは言います。
知乃:それで私の足を触りながら「ひとりでするのを見ててくれたら、その劇団の仕事を紹介してあげる」って言われました。ここで私が叫んでもカラオケだから何も起こらないなと思って、その場は穏便にやり過ごしたというか、その行為に及んだことはないんですけど、叫ぶでもなく殴るでもなく、なんとかその場をしのいで帰ってきました。
■自分が悪いと思い込んでしまう
演出家から被害を受けた知乃さんは当時、母や所属していた劇団のメンバーたちから「ふたりきりでご飯に行くときは、何かあるかもしれないから気をつけるように」と言われていたそうです。しかし、その助言を守らず危険な目にあってしまったことから「自分が悪かったんだ」と、しばらくは誰にもこの被害を話せなかったと言います。ようやく被害にあってから1年後に当時の劇団の代表に被害内容を相談し、その2年後の今年に加害者の演出家を告発したと明かしました。
知乃さんから被害の相談を受けた馬奈木さんは、相談後の経緯を以下のように話します。
馬奈木:(知乃さんが被害の声をあげたことは)かなり反響を呼びました。加害者の実名をあげたことにより、加害者の仕事がなくなったというプロセスがありました。私は加害者側も今後の人生があると考えました。同時に、ありがちなのは、声をあげた人がかえって不利益を被ったり、声をあげたけれどそれっきりになってしまっている場合が多く、それじゃダメだと。声をあげた人が不利益にならず「大丈夫なんだ」ということを知ってもらいたい。そのためにも、交渉をして示談という形でまとめて、その経過をお互いの名前で報告することを約束事として取り付けました。そうすることがお互いのメリットになるはずだと思い、そこを交渉の際には約束事のひとつに入れて発表しました。
■「#MeToo」は今後どうするべきか
「#MeToo」運動に対して、「日本は欧米のように広がっていないのでは」と指摘されることがあります。
堀:今後、どのような取り組みが必要なってくるのでしょうか?
知乃:「#MeToo」運動が一過性のものとして見られがちですが、あまり無関心にならないでほしいです。自分のまわりで見えていないだけで、必ずあることだと思います。セクシャリティに関することなので、閉鎖的に自分のなかに閉じ込めてしまいがちな話だと思うので、基本的には表に見えづらい問題であるということを、全員が認識する必要があるかなと思います。表に見えづらい問題だから無視していいわけではなくて、見えづらいけど必ずどこにでもある問題で、自分が常にアンテナを張り続けることによって「#MeToo」運動がもっと拡散したり、いろいろな動きが出ると思います。
馬奈木:声をあげた人たちが孤立せず、「まわりに支えてくれる人がいるんだよ」ということを、今回の知乃さんのケースを目にして、知っていただきたいと思います。
最後に知乃さんは「セクハラやパワハラは、まわりになかなか言いづらいことだと思いますが、自分が悪いと押さえ込まずに、私のツイッターのダイレクトメールでもいいので、ぜひ相談してください」とリスナーに声をかけました。
セクハラなどの被害を誰にも言えない人は、知乃さんに相談してみてはいかがでしょうか。自分だけで抱えていた問題が、解決に向かう糸口になるかもしれません。
さて、次回6月14日(木)の『JAM THE WORLD』は、病児保育をはじめ、子どもの健やかな育成環境を実現するために多方面で活動されている、認定NPO法人フローレンス代表理事・駒崎弘樹さんをお迎えし、「子どもの虐待 通報マニュアル」について伺います。どうぞお聴き逃しなく。
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番組名:『JAM THE WORLD』
放送日時:月・火・水・木曜 19時-21時
オフィシャルサイト:http://www.j-wave.co.jp/original/jamtheworld/