J-WAVEで放送中の番組『JAM THE WORLD』(ナビゲーター:グローバー)のワンコーナー「UP CLOSE」。4月10日(火)のオンエアでは、火曜日のニュース・スーパーバイザー・青木 理が「働き方改革関連法案」について、ゲストの働き方評論家・常見陽平さんと共に考えました。
■「働き方改革関連法案」とは
政府は4月6日(金)の閣議で、本国会の最重要法案に政府が位置付けている、「働き方改革関連法案」を決定し、国会に提出しました。この過程では、労働時間をめぐる厚労省のずさんな調査が問題となり、「裁量労働制の拡大」の法案については提出を撤回しました。
「働き方改革関連法案」では、時間外労働に上限規制を設ける一方で、専門職で年収が高い人を労働時間の規制対象から外すという「高度プロフェッショナル制度」の導入など、計8本の改正案が盛り込まれています。ここにはどんな問題点があり、今後どんな議論が必要なのでしょうか。
これまでの国会での議論、与党内での議論を見て、働き方評論家の常見陽平さんはこう語ります。
常見:率直に言うと「高度プロフェッショナル制度」とかって言ってるけど、低度でアマチュアな議論が繰り返されてきたと思いますね。そもそも目的と手段がずれている。「一億総活躍社会」だとか、「人づくり革命」だとか、いちいちポエム的な文言を使っていて、あたかも美しい未来が作られそうに演出しているけど、やっぱり安倍政権の関心事って、いかに労働力の絶対量を増やすかってことなんですよね。
特に「高度プロフェッショナル制度」も「裁量労働制の拡大」も、「働き方改革」の実現会議などで、表に議論として出てきませんでした。どちらかといえば、前に出ていたのは残業の規制や「同一労働同一賃金」についてでした。
常見:しかも悪質なのは、自民党はこれをこの前の選挙の公約で書いていないんですよ。野党が批判して「残業代ゼロ法案を許すな」的なことを言うから、自民党は「働き方改革」と一言で丸めているんです。
安倍政権は国会での議論を避けていて、それが安倍政権の悪いところであり、許してはいけないところだと常見さんは言います。
■現状の裁量労働制は「労働者の定額働かせ放題」
撤回された「裁量労働制の拡大」については、そもそも現状の「裁量労働制」にも大いに問題があるため、拡大の前に見直しが必要なのではないか、と常見さんは指摘します。
裁量労働制は、もともとの主旨では、出社時間と退社時間は労働者が決めなければいけません。例えば「今日は昼から働こう」といったことが認められるべきなのです。しかし、現状ではほとんどの会社で労働時間が決められています。「それは裁量労働制じゃない」と常見さん。
常見:結局「安く使える」っていう論理でやっている。だから政府も経済団体も「柔軟な働き方でイノベーションを」みたいなことを言うんだけれども、結局「定額で使い放題にしたいんでしょ?」っていうね。「新料金プラン出ました」くらいの感じなんです。
■日本の生産性が低いのは「労働者のせいじゃない」
しかし、そういった経営者側にとって有利なものだけではなく、法案の中には、残業時間の規制や、年間に必ず取らなければいけない有給日数の規定、健康管理の強化など、まだ十分ではないと言われていますが、労働者を守る部分も盛り込まれています。
一方、残業時間や有休消化を規制することによって、逆にサービス残業が増えたり、他の日にしわ寄せがくるのではないかという不安が出てきます。
常見:突き詰めると、「そういった規制を課すことによって、本当に労働時間を減らす気があるのか?」と。もうちょっと仕事を減らさないとダメなんですよ。あるいはITに投資して効率化しないとダメなんですよ。その発想がないなと思います。
日本はヨーロッパなどに比べて、時間あたりの生産性が低いですが、「労働者が怠けているから低いというものではない」と常見さん。生産性の高い国は、石油や金融センターなど、儲かる産業があるからこそ。常見さんは、日本の産業は付加価値が低いと解説しました。
常見:国民の7割がGDP(国内総生産)ベースでも労働者ベースでも、サービス業に従事していて、付加価値の低い儲からない競争をさせられているということだと思うんです。
青木:つまり、生産性が低いっていうのを労働者のせいにするんじゃなくって、そもそも経営者とか政府の責任だろうと。
常見:そうなんですよ。だからその辺を国民のみなさんはもっと怒ったほうがいいと思います。結局この改革っていうのは、労働者の味方のようで、「働かせ方“改悪”」ですから。美しい言葉で国民を手なづけて、もっと働く絶望社会が待っているんですよ。
労働者にとっては不安なワードが飛び交った今回の討論。いま国会で騒がれている森友・家計問題より、『働き方改革関連法案』のほうが、私たちにとって身近で深刻な問題であることは間違いなさそうです。
次週、4月17日(火)のオンエアでは、立憲民主党国対委員長・辻元清美さんをゲストにお迎えします。財務省の文書改ざん問題を受け、内閣支持率が軒並みダウン。「安倍晋三首相に責任がある」とする声も「ない」の声を大幅に上回りました。しかし、政党支持率を見ると、野党はほぼ横ばい……。今、野党はどうなっているのか? どうあるべきなのか? 青木と徹底議論を行います。お聞き逃しなく!
【この記事の放送回をradikoで聴く】
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【番組情報】
番組名:『JAM THE WORLD』
放送日時:月・火・水・木曜 19時-21時
オフィシャルサイト:http://www.j-wave.co.jp/original/jamtheworld/
■「働き方改革関連法案」とは
政府は4月6日(金)の閣議で、本国会の最重要法案に政府が位置付けている、「働き方改革関連法案」を決定し、国会に提出しました。この過程では、労働時間をめぐる厚労省のずさんな調査が問題となり、「裁量労働制の拡大」の法案については提出を撤回しました。
「働き方改革関連法案」では、時間外労働に上限規制を設ける一方で、専門職で年収が高い人を労働時間の規制対象から外すという「高度プロフェッショナル制度」の導入など、計8本の改正案が盛り込まれています。ここにはどんな問題点があり、今後どんな議論が必要なのでしょうか。
これまでの国会での議論、与党内での議論を見て、働き方評論家の常見陽平さんはこう語ります。
常見:率直に言うと「高度プロフェッショナル制度」とかって言ってるけど、低度でアマチュアな議論が繰り返されてきたと思いますね。そもそも目的と手段がずれている。「一億総活躍社会」だとか、「人づくり革命」だとか、いちいちポエム的な文言を使っていて、あたかも美しい未来が作られそうに演出しているけど、やっぱり安倍政権の関心事って、いかに労働力の絶対量を増やすかってことなんですよね。
特に「高度プロフェッショナル制度」も「裁量労働制の拡大」も、「働き方改革」の実現会議などで、表に議論として出てきませんでした。どちらかといえば、前に出ていたのは残業の規制や「同一労働同一賃金」についてでした。
常見:しかも悪質なのは、自民党はこれをこの前の選挙の公約で書いていないんですよ。野党が批判して「残業代ゼロ法案を許すな」的なことを言うから、自民党は「働き方改革」と一言で丸めているんです。
安倍政権は国会での議論を避けていて、それが安倍政権の悪いところであり、許してはいけないところだと常見さんは言います。
■現状の裁量労働制は「労働者の定額働かせ放題」
撤回された「裁量労働制の拡大」については、そもそも現状の「裁量労働制」にも大いに問題があるため、拡大の前に見直しが必要なのではないか、と常見さんは指摘します。
裁量労働制は、もともとの主旨では、出社時間と退社時間は労働者が決めなければいけません。例えば「今日は昼から働こう」といったことが認められるべきなのです。しかし、現状ではほとんどの会社で労働時間が決められています。「それは裁量労働制じゃない」と常見さん。
常見:結局「安く使える」っていう論理でやっている。だから政府も経済団体も「柔軟な働き方でイノベーションを」みたいなことを言うんだけれども、結局「定額で使い放題にしたいんでしょ?」っていうね。「新料金プラン出ました」くらいの感じなんです。
■日本の生産性が低いのは「労働者のせいじゃない」
しかし、そういった経営者側にとって有利なものだけではなく、法案の中には、残業時間の規制や、年間に必ず取らなければいけない有給日数の規定、健康管理の強化など、まだ十分ではないと言われていますが、労働者を守る部分も盛り込まれています。
一方、残業時間や有休消化を規制することによって、逆にサービス残業が増えたり、他の日にしわ寄せがくるのではないかという不安が出てきます。
常見:突き詰めると、「そういった規制を課すことによって、本当に労働時間を減らす気があるのか?」と。もうちょっと仕事を減らさないとダメなんですよ。あるいはITに投資して効率化しないとダメなんですよ。その発想がないなと思います。
日本はヨーロッパなどに比べて、時間あたりの生産性が低いですが、「労働者が怠けているから低いというものではない」と常見さん。生産性の高い国は、石油や金融センターなど、儲かる産業があるからこそ。常見さんは、日本の産業は付加価値が低いと解説しました。
常見:国民の7割がGDP(国内総生産)ベースでも労働者ベースでも、サービス業に従事していて、付加価値の低い儲からない競争をさせられているということだと思うんです。
青木:つまり、生産性が低いっていうのを労働者のせいにするんじゃなくって、そもそも経営者とか政府の責任だろうと。
常見:そうなんですよ。だからその辺を国民のみなさんはもっと怒ったほうがいいと思います。結局この改革っていうのは、労働者の味方のようで、「働かせ方“改悪”」ですから。美しい言葉で国民を手なづけて、もっと働く絶望社会が待っているんですよ。
労働者にとっては不安なワードが飛び交った今回の討論。いま国会で騒がれている森友・家計問題より、『働き方改革関連法案』のほうが、私たちにとって身近で深刻な問題であることは間違いなさそうです。
次週、4月17日(火)のオンエアでは、立憲民主党国対委員長・辻元清美さんをゲストにお迎えします。財務省の文書改ざん問題を受け、内閣支持率が軒並みダウン。「安倍晋三首相に責任がある」とする声も「ない」の声を大幅に上回りました。しかし、政党支持率を見ると、野党はほぼ横ばい……。今、野党はどうなっているのか? どうあるべきなのか? 青木と徹底議論を行います。お聞き逃しなく!
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【番組情報】
番組名:『JAM THE WORLD』
放送日時:月・火・水・木曜 19時-21時
オフィシャルサイト:http://www.j-wave.co.jp/original/jamtheworld/