J-WAVEで放送中の番組『JAM THE WORLD』(ナビゲーター:グローバー)のワンコーナー「UP CLOSE」。4月24日(火)のオンエアでは、火曜日のニュース・スーパーバイザー、青木 理が登場。ゲストに映画監督のヤン ヨンヒ(梁 英姫)さんをお迎えし、3月にヤンさんが出版した小説『朝鮮大学校物語』についてお話を伺いました。
ヤンさんは1964年大阪生まれ。両親は韓国の済州島出身の在日朝鮮人二世です。父は朝鮮総連の幹部、3人の兄は帰還事業で北朝鮮に戻っています。ヤンさんは安藤サクラさん主演の映画『かぞくのくに』など、自身の家族についてのドキュメンタリーや映画を制作しています。
『朝鮮大学校物語』はヤンさんにとってはじめての小説となります。東京・小平市の朝鮮大学校を舞台にした青春物語で、この大学に通う女性と、隣接する美術大学に通う男性の恋愛物語でもあります。
青木:これはヤンさんの実話ですか?
ヤン:恋愛の部分は100パーセント妄想です(笑)。恋愛の部分だけが妄想かもしれないっていうくらい、ディテールは1980年代を舞台に、学校の校則とか当時の東京の様子とか国際的な情勢とか、ほとんど事実にならいつつ、そこにちょっとフィクショナブルな恋の話を入れてみました。
総連系といわれるコリアンの人たちが学ぶ場所として朝鮮学校や朝鮮大学校がありますが、そこはどのような学校なのでしょうか。
ヤン:小学校から高校まである朝鮮学校と、朝鮮大学校は、ちょっと区別したほうがいいくらい、朝鮮大学校は思想教育ガッツリですね。高校までは、北朝鮮が祖国だと習います。また、いまは北朝鮮の指導者の肖像画こそ掲げていませんが「偉大なる指導者だ」と。だけど、いろんな個人を崇拝したり、いろんな宗教だったりする学校ってけっこうあると思うんですよね。私は朝鮮大学校とか朝鮮学校だけを特殊と言いたくなくて、「特殊な学校っていっぱいあるじゃん」みたいなね。そのなかで私が通った学校は「こんな感じですよ」っていうのを、朝鮮学校に対する差別はよくないということで……朝鮮学校の特殊性を強調せず、日本の学校と変わらないですよっていう言い方もあるんですが、私は日本の学校と変わらないからいいじゃんって言うより、本当にオープンにガッツリとこうですよって見せたほうがいいと思ってるんです。
ヤンさんは「教育内容についての批判はありだと思いますが、だからといってそこに通っている子どもたちが差別を受けていいことにはならない」と続けます。
ヤン:これは矛盾しているように聞こえるかもしれないけど、矛盾しているように聞こえる現状のほうが問題だと思ってまして。全然わかり合えてないから、在日の話や朝鮮学校の話をしようと思うととにかく説明しなきゃいけないんですよね。だから、もっとオープンに語ったほうがいいと思う。『かぞくのくに』も『ディア・ピョンヤン―家族は離れたらアカンのや』も作品を発表した当時は、「オブラートに包もうとしているのを、なんであの女はいちいち見せるんだ」みたいに言われるんですが、1、2年経つと話がしやすくなるんですよね。だから『朝鮮大学校物語』も、当事者の方々は「こんなことまで書いてるの?」「暴露しちゃっていいの?」ってギョッとするかもしれないけれど、時間が経ったらそうなるんじゃないか。10年前くらいから「いつかこんな作品を出したいな」っていうのはあったので。私にしては面白い大学生活を送ったなと、やっと今は言えるんですよね。突き放して考えられる。
『朝鮮大学校物語』では「強い思想教育を受け祖国のために働くんだ」と考える多くの学生たちが登場しますが、「最近の子たちはそのような考えでもないんじゃないか?」と青木はヤンさんに質問します。
ヤン:そうだと思います。だって、当時のガチガチな朝鮮大学校の教育を受けて育ったのが私ですからね。いかにあまり効果がないかっていう(笑)。それはもうピンキリですよ。それはどこの大学も一緒で、東大出て官僚になる方もいらっしゃれば、自由に生きている方もいらっしゃると思うんです。だから、「この国籍だから」「この学校を出たから」ってひとくくりにして見がちというか、特に在日に関しては「在日」ってくくられちゃうし、朝鮮学校を出たとか国籍でとかでくくられちゃうんですけど、フタを開けると「こんな面白い個人がいる」「こんな小さな悩みがある」っていう、どっちかっていうとその自分の青春時代との共通項をたくさん探せる話だとも思いますし、いまと変わらない悩みもたくさんあると思います。日本人同士の恋愛でもお互いのちょっとした言葉で傷つけ合ったり、なにかうまくわかり合えないってあると思うんですよね。そんなに特殊なことだと私は思っていないんです。
「UP CLOSE」では他にも、ヤンさんの活動と家族について、国籍について、ヘイトスピーチについてなど、日本、北朝鮮、韓国を背景に持つヤンさんの視点からお話を伺いました。
ヤンさんは現在、新作ドキュメンタリー映画『スープとイデオロギー』(仮題)を製作中で、この作品のクラウドファンディングも実施中です。小説『朝鮮大学校物語』と共にぜひチェックしてみてください。
【この記事の放送回をradikoで聴く】
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【番組情報】
番組名:『JAM THE WORLD』
放送日時:月・火・水・木曜 19時?21時
オフィシャルサイト:http://www.j-wave.co.jp/original/jamtheworld/
ヤンさんは1964年大阪生まれ。両親は韓国の済州島出身の在日朝鮮人二世です。父は朝鮮総連の幹部、3人の兄は帰還事業で北朝鮮に戻っています。ヤンさんは安藤サクラさん主演の映画『かぞくのくに』など、自身の家族についてのドキュメンタリーや映画を制作しています。
『朝鮮大学校物語』はヤンさんにとってはじめての小説となります。東京・小平市の朝鮮大学校を舞台にした青春物語で、この大学に通う女性と、隣接する美術大学に通う男性の恋愛物語でもあります。
青木:これはヤンさんの実話ですか?
ヤン:恋愛の部分は100パーセント妄想です(笑)。恋愛の部分だけが妄想かもしれないっていうくらい、ディテールは1980年代を舞台に、学校の校則とか当時の東京の様子とか国際的な情勢とか、ほとんど事実にならいつつ、そこにちょっとフィクショナブルな恋の話を入れてみました。
総連系といわれるコリアンの人たちが学ぶ場所として朝鮮学校や朝鮮大学校がありますが、そこはどのような学校なのでしょうか。
ヤン:小学校から高校まである朝鮮学校と、朝鮮大学校は、ちょっと区別したほうがいいくらい、朝鮮大学校は思想教育ガッツリですね。高校までは、北朝鮮が祖国だと習います。また、いまは北朝鮮の指導者の肖像画こそ掲げていませんが「偉大なる指導者だ」と。だけど、いろんな個人を崇拝したり、いろんな宗教だったりする学校ってけっこうあると思うんですよね。私は朝鮮大学校とか朝鮮学校だけを特殊と言いたくなくて、「特殊な学校っていっぱいあるじゃん」みたいなね。そのなかで私が通った学校は「こんな感じですよ」っていうのを、朝鮮学校に対する差別はよくないということで……朝鮮学校の特殊性を強調せず、日本の学校と変わらないですよっていう言い方もあるんですが、私は日本の学校と変わらないからいいじゃんって言うより、本当にオープンにガッツリとこうですよって見せたほうがいいと思ってるんです。
ヤンさんは「教育内容についての批判はありだと思いますが、だからといってそこに通っている子どもたちが差別を受けていいことにはならない」と続けます。
ヤン:これは矛盾しているように聞こえるかもしれないけど、矛盾しているように聞こえる現状のほうが問題だと思ってまして。全然わかり合えてないから、在日の話や朝鮮学校の話をしようと思うととにかく説明しなきゃいけないんですよね。だから、もっとオープンに語ったほうがいいと思う。『かぞくのくに』も『ディア・ピョンヤン―家族は離れたらアカンのや』も作品を発表した当時は、「オブラートに包もうとしているのを、なんであの女はいちいち見せるんだ」みたいに言われるんですが、1、2年経つと話がしやすくなるんですよね。だから『朝鮮大学校物語』も、当事者の方々は「こんなことまで書いてるの?」「暴露しちゃっていいの?」ってギョッとするかもしれないけれど、時間が経ったらそうなるんじゃないか。10年前くらいから「いつかこんな作品を出したいな」っていうのはあったので。私にしては面白い大学生活を送ったなと、やっと今は言えるんですよね。突き放して考えられる。
『朝鮮大学校物語』では「強い思想教育を受け祖国のために働くんだ」と考える多くの学生たちが登場しますが、「最近の子たちはそのような考えでもないんじゃないか?」と青木はヤンさんに質問します。
ヤン:そうだと思います。だって、当時のガチガチな朝鮮大学校の教育を受けて育ったのが私ですからね。いかにあまり効果がないかっていう(笑)。それはもうピンキリですよ。それはどこの大学も一緒で、東大出て官僚になる方もいらっしゃれば、自由に生きている方もいらっしゃると思うんです。だから、「この国籍だから」「この学校を出たから」ってひとくくりにして見がちというか、特に在日に関しては「在日」ってくくられちゃうし、朝鮮学校を出たとか国籍でとかでくくられちゃうんですけど、フタを開けると「こんな面白い個人がいる」「こんな小さな悩みがある」っていう、どっちかっていうとその自分の青春時代との共通項をたくさん探せる話だとも思いますし、いまと変わらない悩みもたくさんあると思います。日本人同士の恋愛でもお互いのちょっとした言葉で傷つけ合ったり、なにかうまくわかり合えないってあると思うんですよね。そんなに特殊なことだと私は思っていないんです。
「UP CLOSE」では他にも、ヤンさんの活動と家族について、国籍について、ヘイトスピーチについてなど、日本、北朝鮮、韓国を背景に持つヤンさんの視点からお話を伺いました。
ヤンさんは現在、新作ドキュメンタリー映画『スープとイデオロギー』(仮題)を製作中で、この作品のクラウドファンディングも実施中です。小説『朝鮮大学校物語』と共にぜひチェックしてみてください。
【この記事の放送回をradikoで聴く】
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【番組情報】
番組名:『JAM THE WORLD』
放送日時:月・火・水・木曜 19時?21時
オフィシャルサイト:http://www.j-wave.co.jp/original/jamtheworld/