J-WAVEで放送中の番組「JAM THE WORLD」(ナビゲーター:グローバー)のワンコーナー「UP CLOSE」。1月31日(水)のオンエアでは、水曜日のニュース・スーパーバイザーを務めるフォトジャーナリスト・安田菜津紀による、テリー・ジョージ監督へのインタビューの模様をお送りしました。
ルワンダの虐殺を伝えた映画『ホテル・ルワンダ』でも知られるジョージ監督。最新作『THE PROMISE/君への誓い』は、1915年から翌年にかけて起こったオスマン帝国(現在のトルコ共和国)による150万人のアルメニア人大量虐殺に翻弄された3人の男女の物語です。本作を通じて、これまであまり知られていなかった事実を世に問おうとしています。
ジョージ監督は本作を撮影した理由について「『ホテル・ルワンダ』の撮影時、歴史上の大虐殺に関するリサーチを進めて行く中で、1915年に大量虐殺が起きたという事実にたどり着きました。アルメニア人の大虐殺は、近代国家がなした最初の大虐殺でした。虐殺を意味する『ジェノサイド』という言葉は、アルメニア人の大虐殺を形容するために作られた言葉なのです。歴史上語り継がなければならない使命感を感じ、作品を撮るに至りました」と語りました。
虐殺の事実が知られていない一つの理由は、トルコ政府が否定し続けてきたことが挙げられます。「政治的タブーを描くにあたり困難は?」という質問には、以下のように答えてくれました。
「英米を含む多くの国が、虐殺が起きたことを公言していません。いかにトルコ政府が力を使ってこの事実を伏せてきたかを示していると思います。いろいろな議論を巻き起こしかねないテーマを扱う映画ですので、宣伝も一切せず、撮影現場でもセキュリティ・ガードを立たせるなど細心の注意を払いました。
トロント国際映画祭で上映したのですが、そこでサイバー攻撃に遭いました。上映後日、「IMDb」という映画評価サイトに5万5千の映画評が投稿されましたが、全て10点中0点でした。トルコ側からのコントロールが働いていたのです。本作を評価してくれた評論家が攻撃されたり、出演者が攻撃されたりもしました。劇場では、チケットをおさえて他の客が購入できないように邪魔をするボイコット活動も各地で起きていました」(ジョージ監督、以下同)
世界では、権力側が報道に対して圧力をかけ、制限しようとする動きが目立っています。その傾向について、ジョージ監督は以下のように語りました。
「クリスチャン・ベイルが演じるクリス・マイヤーズは、ジャーナリズムの流れを変えようとした人物です。前線で自分の目でみたものを、自分の意見を伴う形で報じるジャーナリストでした。ベイルさんは、当時のジャーナリズムも緻密に調べ上げ役作りをしてくれました。今日のジャーナリズムを見てみると、フェイクニュースというレッテルを張られるのは、真実を報道しようとしている姿勢の証拠だと思います。アメリカの大統領は、気に食わないものは全てフェイクニュースだと言います。ジャーナリズムに風当たりの強い世の中で、細心の注意を払い、きめ細やかな報道をしていくことが大事だと思います。
今のメディアや報道番組はかなり扇動的なものになってきています。きっちりとした報道が、苦境に立たされていると思います。トルコのエルドアン大統領に対して意義を唱えるようなジャーナリストが投獄されるようなことが、現に起きているわけです。真実を勝ち取っていくのは闘いですが、闘っていかなければ民主主義は繁栄していきません。また、今後起こるかもしれない虐殺を防ぐことはできないと思うので、ジャーナリズムをサポートしていくことが大事だと思います」
ジョージ監督が今、気になっている世界情勢は、「難民問題とそれに対する報道」だそう。ロヒンギャ、アフガニスタン、シリアなどの難民を敵として描き、命からがら逃げてきた人ではなく侵入者と捉えることに違和感を唱えました。
「難民は大虐殺を生き残って、逃れてきた人です。今回『THE PROMISE/君への誓い』で描いたアルメリア人の難民も、フランスやイギリス、アメリカなどに渡り、繁栄して安定的な社会を築き上げた民族です。これぞ難民の潜在力なのです。自分の家族を引き連れ、シリアやトルコ、地中海を渡りギリシャへ流れついて、ドイツに歩く。そうやって逃げてきただけで、立派な市民になる力があると思います。彼らの唯一の願いは、安定した生活を家族に与えることです。それだけを願う彼らを、受け入れるべきです。このことは、本作が語っている大切なメッセージの一つです」と話してくれました。
映画『THE PROMISE/君への誓い』は、2018年2月3日(土)新宿バルト9ほか全国ロードショーです。
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【番組情報】
番組名:「JAM THE WORLD」
放送日時:月・火・水・木曜 19時-21時
オフィシャルサイト:http://www.j-wave.co.jp/original/jamtheworld
ルワンダの虐殺を伝えた映画『ホテル・ルワンダ』でも知られるジョージ監督。最新作『THE PROMISE/君への誓い』は、1915年から翌年にかけて起こったオスマン帝国(現在のトルコ共和国)による150万人のアルメニア人大量虐殺に翻弄された3人の男女の物語です。本作を通じて、これまであまり知られていなかった事実を世に問おうとしています。
ジョージ監督は本作を撮影した理由について「『ホテル・ルワンダ』の撮影時、歴史上の大虐殺に関するリサーチを進めて行く中で、1915年に大量虐殺が起きたという事実にたどり着きました。アルメニア人の大虐殺は、近代国家がなした最初の大虐殺でした。虐殺を意味する『ジェノサイド』という言葉は、アルメニア人の大虐殺を形容するために作られた言葉なのです。歴史上語り継がなければならない使命感を感じ、作品を撮るに至りました」と語りました。
虐殺の事実が知られていない一つの理由は、トルコ政府が否定し続けてきたことが挙げられます。「政治的タブーを描くにあたり困難は?」という質問には、以下のように答えてくれました。
「英米を含む多くの国が、虐殺が起きたことを公言していません。いかにトルコ政府が力を使ってこの事実を伏せてきたかを示していると思います。いろいろな議論を巻き起こしかねないテーマを扱う映画ですので、宣伝も一切せず、撮影現場でもセキュリティ・ガードを立たせるなど細心の注意を払いました。
トロント国際映画祭で上映したのですが、そこでサイバー攻撃に遭いました。上映後日、「IMDb」という映画評価サイトに5万5千の映画評が投稿されましたが、全て10点中0点でした。トルコ側からのコントロールが働いていたのです。本作を評価してくれた評論家が攻撃されたり、出演者が攻撃されたりもしました。劇場では、チケットをおさえて他の客が購入できないように邪魔をするボイコット活動も各地で起きていました」(ジョージ監督、以下同)
世界では、権力側が報道に対して圧力をかけ、制限しようとする動きが目立っています。その傾向について、ジョージ監督は以下のように語りました。
「クリスチャン・ベイルが演じるクリス・マイヤーズは、ジャーナリズムの流れを変えようとした人物です。前線で自分の目でみたものを、自分の意見を伴う形で報じるジャーナリストでした。ベイルさんは、当時のジャーナリズムも緻密に調べ上げ役作りをしてくれました。今日のジャーナリズムを見てみると、フェイクニュースというレッテルを張られるのは、真実を報道しようとしている姿勢の証拠だと思います。アメリカの大統領は、気に食わないものは全てフェイクニュースだと言います。ジャーナリズムに風当たりの強い世の中で、細心の注意を払い、きめ細やかな報道をしていくことが大事だと思います。
今のメディアや報道番組はかなり扇動的なものになってきています。きっちりとした報道が、苦境に立たされていると思います。トルコのエルドアン大統領に対して意義を唱えるようなジャーナリストが投獄されるようなことが、現に起きているわけです。真実を勝ち取っていくのは闘いですが、闘っていかなければ民主主義は繁栄していきません。また、今後起こるかもしれない虐殺を防ぐことはできないと思うので、ジャーナリズムをサポートしていくことが大事だと思います」
ジョージ監督が今、気になっている世界情勢は、「難民問題とそれに対する報道」だそう。ロヒンギャ、アフガニスタン、シリアなどの難民を敵として描き、命からがら逃げてきた人ではなく侵入者と捉えることに違和感を唱えました。
「難民は大虐殺を生き残って、逃れてきた人です。今回『THE PROMISE/君への誓い』で描いたアルメリア人の難民も、フランスやイギリス、アメリカなどに渡り、繁栄して安定的な社会を築き上げた民族です。これぞ難民の潜在力なのです。自分の家族を引き連れ、シリアやトルコ、地中海を渡りギリシャへ流れついて、ドイツに歩く。そうやって逃げてきただけで、立派な市民になる力があると思います。彼らの唯一の願いは、安定した生活を家族に与えることです。それだけを願う彼らを、受け入れるべきです。このことは、本作が語っている大切なメッセージの一つです」と話してくれました。
映画『THE PROMISE/君への誓い』は、2018年2月3日(土)新宿バルト9ほか全国ロードショーです。
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放送日時:月・火・水・木曜 19時-21時
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