J-WAVEで放送中の番組「LAUGH SKETCH」(ナビゲーター:佐藤オオキ)。8月12日(土)のオンエアでは、小説家の朝井リョウさんをお迎えして「記憶」をテーマにお送りしました。
まずは、エッセイと記憶に関する話から始まりました。朝井さんによると、“小説は共感が大事”と言われるものの、「夏は暑い」ということを書いても共感されず、「これは自分だけかな」と思うようなことを書いた方が、共感されるそうです。
佐藤:そういうことって、日常で感じたときにメモをしますか?
朝井:昔はメモをしていたけど…メモをしちゃうと、等しく記録されてしまうというか、「記憶」が「記録」になってしまうんです。それが嫌で。
佐藤:広がらない感じがしますよね。
朝井:情報がフラットになってしまうというか。「小説を書くぞ」というときに思い出されることが濃厚に残っていることなので、濃淡が大事だと思うんです。なんでもフラットに残しちゃうと、小説にするまでもないものまで捏造してしまって、それでお金をもらって、ご飯を食べちゃうから怖いじゃないですか。
佐藤:(笑)。
続いて、エッセイの題材にまつわる話になりました。エッセイは個人のエピソードを話にするため、たとえそうではなかったとしても、まわりの知り合いから“自分のことを書かれている”と思われてしまうことがあるそうです。
朝井:友だちに「これ、私とのことを書いたでしょ」って言われて、いくら「そうじゃない」って言っても信じてもらえなくて。電話で、まるでクライアントみたいに…正式に“絶交を依頼”されたこともあるんです。
佐藤:本当に!?
朝井:すごく仲が良かったし、まったくその人のことを書いたわけでもないけど、自分のことを書かれたと思われることは結構多いです。
佐藤:日記みたいに思われちゃうんでしょうね。でもその素材は、自分の記憶とは限らないということですね。
朝井:そうです。音楽を聴いて素敵な気持ちになると、この気持ちを再現したいと思うことがあるんです。その気持ちを再現するために、どういうシーンがあればいいか、というようなことを逆算して考えていくことがあります。自分の中でそういう物語力が刺激される曲のトップに君臨しているのが、チャットモンチーの「染まるよ」っていう曲で、本当に良い曲なんです。詞もメロディーも声の抑揚も。
佐藤:そうなんですか! 実は先日、亀田誠治さんと食事をさせていただいて、亀田さんが「自分の棺に入れてほしい曲」の話をしていて、その中に入ってました!
朝井:ぜひ、棺に入れましょう(笑)。
さらに、嫌なことをどうやって忘れられるかどうか…という話になりました。佐藤は嫌なことは覚えていないそうで、そんな佐藤を朝井さんは羨ましがっていました。
佐藤:仕事が5つとかだったりすると忘れられなくて疲れちゃうけど、400もの仕事をやっていると、とにかく1つのことに集中するしかないから、ほかの399はスパっと忘れられるから助かってます。
朝井:そうなんですか。では、復讐心で仕事をしたことはありませんか?
佐藤:復讐心!?
朝井:僕はあるんです。これは自分でも良くないと思います。悪い記憶を忘れたいけど、忘れられないんです。
佐藤:作品と向き合い続けると、だんだん分からなくなってきて、リセットして、一度他人事にしたいなって思うんです。「このアイデア、それほど良くないんじゃないか?」って思いながら鍛錬していくっていう感覚があって、何度忘れられるかが大事だったりするんです。
朝井:一度忘れるっていう視点が持てなくて、同窓会で同級生に会っても、嫌なことばかり覚えてるんです。体育祭で優勝したときにみんなが泣いていても、泣いていない人のことを覚えてるんです。でも、そのことを書くと、泣いていた人のことを書くよりも、共感を得たりするんです。
佐藤:なるほど!
と、話は尽きませんでした。そんな朝井さんの最新エッセイは「風と共にゆとりぬ」(文藝春秋)。どうぞ、手に取ってみてください。
※PC・スマホアプリ「radiko.jpプレミアム」(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は「radiko.jpタイムフリー」機能で聴き直せます。
【番組情報】
番組名:「LAUGH SKETCH」
放送日時:毎週土曜 21時-21時54分
オフィシャルサイト:http://www.j-wave.co.jp/original/laughsketch/
まずは、エッセイと記憶に関する話から始まりました。朝井さんによると、“小説は共感が大事”と言われるものの、「夏は暑い」ということを書いても共感されず、「これは自分だけかな」と思うようなことを書いた方が、共感されるそうです。
佐藤:そういうことって、日常で感じたときにメモをしますか?
朝井:昔はメモをしていたけど…メモをしちゃうと、等しく記録されてしまうというか、「記憶」が「記録」になってしまうんです。それが嫌で。
佐藤:広がらない感じがしますよね。
朝井:情報がフラットになってしまうというか。「小説を書くぞ」というときに思い出されることが濃厚に残っていることなので、濃淡が大事だと思うんです。なんでもフラットに残しちゃうと、小説にするまでもないものまで捏造してしまって、それでお金をもらって、ご飯を食べちゃうから怖いじゃないですか。
佐藤:(笑)。
続いて、エッセイの題材にまつわる話になりました。エッセイは個人のエピソードを話にするため、たとえそうではなかったとしても、まわりの知り合いから“自分のことを書かれている”と思われてしまうことがあるそうです。
朝井:友だちに「これ、私とのことを書いたでしょ」って言われて、いくら「そうじゃない」って言っても信じてもらえなくて。電話で、まるでクライアントみたいに…正式に“絶交を依頼”されたこともあるんです。
佐藤:本当に!?
朝井:すごく仲が良かったし、まったくその人のことを書いたわけでもないけど、自分のことを書かれたと思われることは結構多いです。
佐藤:日記みたいに思われちゃうんでしょうね。でもその素材は、自分の記憶とは限らないということですね。
朝井:そうです。音楽を聴いて素敵な気持ちになると、この気持ちを再現したいと思うことがあるんです。その気持ちを再現するために、どういうシーンがあればいいか、というようなことを逆算して考えていくことがあります。自分の中でそういう物語力が刺激される曲のトップに君臨しているのが、チャットモンチーの「染まるよ」っていう曲で、本当に良い曲なんです。詞もメロディーも声の抑揚も。
佐藤:そうなんですか! 実は先日、亀田誠治さんと食事をさせていただいて、亀田さんが「自分の棺に入れてほしい曲」の話をしていて、その中に入ってました!
朝井:ぜひ、棺に入れましょう(笑)。
さらに、嫌なことをどうやって忘れられるかどうか…という話になりました。佐藤は嫌なことは覚えていないそうで、そんな佐藤を朝井さんは羨ましがっていました。
佐藤:仕事が5つとかだったりすると忘れられなくて疲れちゃうけど、400もの仕事をやっていると、とにかく1つのことに集中するしかないから、ほかの399はスパっと忘れられるから助かってます。
朝井:そうなんですか。では、復讐心で仕事をしたことはありませんか?
佐藤:復讐心!?
朝井:僕はあるんです。これは自分でも良くないと思います。悪い記憶を忘れたいけど、忘れられないんです。
佐藤:作品と向き合い続けると、だんだん分からなくなってきて、リセットして、一度他人事にしたいなって思うんです。「このアイデア、それほど良くないんじゃないか?」って思いながら鍛錬していくっていう感覚があって、何度忘れられるかが大事だったりするんです。
朝井:一度忘れるっていう視点が持てなくて、同窓会で同級生に会っても、嫌なことばかり覚えてるんです。体育祭で優勝したときにみんなが泣いていても、泣いていない人のことを覚えてるんです。でも、そのことを書くと、泣いていた人のことを書くよりも、共感を得たりするんです。
佐藤:なるほど!
と、話は尽きませんでした。そんな朝井さんの最新エッセイは「風と共にゆとりぬ」(文藝春秋)。どうぞ、手に取ってみてください。
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【番組情報】
番組名:「LAUGH SKETCH」
放送日時:毎週土曜 21時-21時54分
オフィシャルサイト:http://www.j-wave.co.jp/original/laughsketch/