J-WAVEの日曜22時からの番組「J-WAVE SELECTION」。毎月第2・第3・最終日曜がレギュラープログラムで、第2日曜は文化人類学者の竹村真一が、ゲストと共に「進むべき未来」を提言する「SMBC EARTH TALK」をお届けしています。
3月12日のオンエアでは、“日本のタクシー業界の雄”として90年近い歴史を有する日本交通株式会社の代表取締役会長・川鍋一朗さんをゲストにお迎えし、「東京から考える交通の未来」をテーマに語り合いました。
タクシー業界というと、過当競争、特に「Uber」などが展開するライドシェアにより、タクシー業界そのものがなくなってしまうのではないかというような、新しい環境が生まれてきている現在。しかしその中で、「いやいや、タクシー業界にできることはいっぱいあるぞ」とばかりに、日本交通のサービスにはユニークなものが数々あります。
竹村:いろいろと面白い発想がありますんで、そのあたりから聞いていきたいんですが…。
川鍋:はい。16年前に家業である日本交通に初めて入った時に、乗務員のやりがいが今ひとつないと感じたんですね。普通に(タクシーを)流していると、手を上げられて、「別にあなたに乗りたかったわけじゃないのよ」と、「たまたま、あなたが来たから乗った」、こういう感じなんですね。
そのため、一生懸命いいサービスをしても、乗務員には虚しさがあるとおっしゃいます。また、その場は素晴らしい評価を得ても、また会うことはなかなかありません。これを繰り返していると、「何もしなくても同じ」となってしまう、これがタクシー業界の構造の一番の問題だと感じられたそうです。
そこで川鍋さんは、「タクシーは“拾う”から“選ぶ”時代へ」というのを掲げ、どうすればお客さんに選んでもらえるかということに、すべてのエネルギーを集中させてきたそうです。そのために作った商品の一つが、普通のタクシーよりもワングレード高い「黒タク」。そしてもう一つが、目的がはっきりしている人のための「陣痛タクシー」や、子供の送迎用として子供だけで乗れる「キッズタクシー」でした。
陣痛タクシーはある日、川鍋さんがコールセンターでオペレーターさんたちと話していると、急に緊迫した連絡が入り、ひととおり落ち着いた後で「今のなんだったんですか?」と聞くと、陣痛のお客さんだったのだそうです。しかもそれは珍しいことではなく、毎日あると知った川鍋さんは、オペレーターからの「できればそういう人に完全に配車できるようにしたい」という声もあり、陣痛タクシーを始めたそうです。しかし、思いついてもすぐに始められない課題があったとおっしゃいます。
「陣痛タクシーをやると、乗っている運転手が嫌がるんじゃないかと思って。やっぱり我々の仕事は、お乗りいただくお客様の満足と、運転している運転手の満足、両方同時に高めていかないといけない」(川鍋さん)
しかしいざ提案してみると、反発どころか賛成の意見が多かったそう。
その理由は、乗せたお客さんに実は陣痛と突然告げらたら、緊張していつものような運転ができなくなってしまう。しかし最初から知っていれば、事前に病院までのルートもナビに登録できる上、落ち着いて病院まで送れる、というものでした。
「キッズタクシー」の場合は、学校にタクシーが迎えに行っても怪しまれないよう、事前に学校側ときちんと顔を合わせたり、送迎した後の報告メールもしているそうです。このサービスは子どもだけを預かるという大きな責任が伴うため、勉強やトレーニングなど準備に半年もかかったそう。「最初のお客様をお送りした時は、もうこっちも感動的でした」(川鍋さん)
これらのサービスは、正直なところ、まだそこまで大きなビジネスにはなっていないそうですが、それよりも良かったことは、運転手がやりがいを感じるようになったこと、と川鍋さんはおっしゃいます。「流しの時には『別にあなたじゃなくていいのよ』という世界から、逆に『○○さん、あなたに来て欲しい』とリピートするんですよね」と川鍋さん。
利用者の目的別にサービスを開始したのは2010年。今では、キッズタクシーなどの乗務員になりたいと、入社する人も増えているそうです。すごい効果ですよね。
この他この日の番組では、タクシーを含め自動車交通がどういう方向へ進化していくのか、それによって東京を始め世界がどのような進化をしていくのか、そんな未来についてもお聞きしました。
※PC・スマホアプリ「radiko.jpプレミアム」(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は「radiko.jpタイムフリー」機能で聴き直せます。
【番組情報】
番組名:「SMBC EARTH TALK」
放送日時:毎月第2日曜 22時-22時54分
オフィシャルサイト:http://www.j-wave.co.jp/special/earthtalk/
3月12日のオンエアでは、“日本のタクシー業界の雄”として90年近い歴史を有する日本交通株式会社の代表取締役会長・川鍋一朗さんをゲストにお迎えし、「東京から考える交通の未来」をテーマに語り合いました。
タクシー業界というと、過当競争、特に「Uber」などが展開するライドシェアにより、タクシー業界そのものがなくなってしまうのではないかというような、新しい環境が生まれてきている現在。しかしその中で、「いやいや、タクシー業界にできることはいっぱいあるぞ」とばかりに、日本交通のサービスにはユニークなものが数々あります。
竹村:いろいろと面白い発想がありますんで、そのあたりから聞いていきたいんですが…。
川鍋:はい。16年前に家業である日本交通に初めて入った時に、乗務員のやりがいが今ひとつないと感じたんですね。普通に(タクシーを)流していると、手を上げられて、「別にあなたに乗りたかったわけじゃないのよ」と、「たまたま、あなたが来たから乗った」、こういう感じなんですね。
そのため、一生懸命いいサービスをしても、乗務員には虚しさがあるとおっしゃいます。また、その場は素晴らしい評価を得ても、また会うことはなかなかありません。これを繰り返していると、「何もしなくても同じ」となってしまう、これがタクシー業界の構造の一番の問題だと感じられたそうです。
そこで川鍋さんは、「タクシーは“拾う”から“選ぶ”時代へ」というのを掲げ、どうすればお客さんに選んでもらえるかということに、すべてのエネルギーを集中させてきたそうです。そのために作った商品の一つが、普通のタクシーよりもワングレード高い「黒タク」。そしてもう一つが、目的がはっきりしている人のための「陣痛タクシー」や、子供の送迎用として子供だけで乗れる「キッズタクシー」でした。
陣痛タクシーはある日、川鍋さんがコールセンターでオペレーターさんたちと話していると、急に緊迫した連絡が入り、ひととおり落ち着いた後で「今のなんだったんですか?」と聞くと、陣痛のお客さんだったのだそうです。しかもそれは珍しいことではなく、毎日あると知った川鍋さんは、オペレーターからの「できればそういう人に完全に配車できるようにしたい」という声もあり、陣痛タクシーを始めたそうです。しかし、思いついてもすぐに始められない課題があったとおっしゃいます。
「陣痛タクシーをやると、乗っている運転手が嫌がるんじゃないかと思って。やっぱり我々の仕事は、お乗りいただくお客様の満足と、運転している運転手の満足、両方同時に高めていかないといけない」(川鍋さん)
しかしいざ提案してみると、反発どころか賛成の意見が多かったそう。
その理由は、乗せたお客さんに実は陣痛と突然告げらたら、緊張していつものような運転ができなくなってしまう。しかし最初から知っていれば、事前に病院までのルートもナビに登録できる上、落ち着いて病院まで送れる、というものでした。
「キッズタクシー」の場合は、学校にタクシーが迎えに行っても怪しまれないよう、事前に学校側ときちんと顔を合わせたり、送迎した後の報告メールもしているそうです。このサービスは子どもだけを預かるという大きな責任が伴うため、勉強やトレーニングなど準備に半年もかかったそう。「最初のお客様をお送りした時は、もうこっちも感動的でした」(川鍋さん)
これらのサービスは、正直なところ、まだそこまで大きなビジネスにはなっていないそうですが、それよりも良かったことは、運転手がやりがいを感じるようになったこと、と川鍋さんはおっしゃいます。「流しの時には『別にあなたじゃなくていいのよ』という世界から、逆に『○○さん、あなたに来て欲しい』とリピートするんですよね」と川鍋さん。
利用者の目的別にサービスを開始したのは2010年。今では、キッズタクシーなどの乗務員になりたいと、入社する人も増えているそうです。すごい効果ですよね。
この他この日の番組では、タクシーを含め自動車交通がどういう方向へ進化していくのか、それによって東京を始め世界がどのような進化をしていくのか、そんな未来についてもお聞きしました。
※PC・スマホアプリ「radiko.jpプレミアム」(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は「radiko.jpタイムフリー」機能で聴き直せます。
【番組情報】
番組名:「SMBC EARTH TALK」
放送日時:毎月第2日曜 22時-22時54分
オフィシャルサイト:http://www.j-wave.co.jp/special/earthtalk/